若い方の高血圧では、年齢や生活習慣だけが原因とは限らず、ほかの病気が血圧を押し上げている「二次性高血圧」が隠れていることがあります。二次性高血圧の精査を受けた18〜40歳の高血圧2,090人を調べたフランスの研究では、約3割(29.6%)に二次性高血圧が見つかりました(出典:de Freminville ら, Hypertension 2024)。日本高血圧学会のガイドラインも、若い年齢での高血圧では二次性高血圧を強く疑うよう示しており(出典:JSH2025)、一度きちんと原因を調べておくことが、その後の治療を考えるうえで大切です。
若い人の高血圧は「珍しくない」けれど、軽く見られがち
健康診断で「血圧が高め」と指摘されても、20代や30代では自覚症状がなく、仕事の忙しさもあってそのままになりやすいものです。「まだ若いから大丈夫」「緊張していただけだろう」と考えてしまう方も少なくありません。けれども、若い時期に血圧が高い状態が続くと、その期間が長くなるぶん、将来の心血管病や慢性腎臓病のリスクを積み重ねやすいと考えられています。JSH2025にも、長く高血圧が続いた若い成人は生涯を通じた心血管病や慢性腎臓病のリスクが高い、という趣旨の記述があります(出典:JSH2025)。
そのため、若い方の高血圧では「下げること」だけでなく、「なぜ高いのかを一度確かめること」が重要になります。まず、診察室での一度きりの測定ではなく、家庭で正しく測った血圧で本当に高いのかを確認することから始めます。測り方については血圧の正しい測り方で、診察室だけ高くなる場合については白衣高血圧の記事で解説しています。
二次性高血圧とは?本態性高血圧との違い
高血圧の大部分は、はっきりした原因が特定できない「本態性高血圧」です。体質(遺伝的な素因)、塩分の摂りすぎ、肥満、運動不足、飲酒、ストレスなどが重なって起こると考えられています。一方、二次性高血圧は、ホルモンの病気、腎臓や腎臓につながる血管の病気、睡眠中の呼吸の異常、薬や健康食品の影響など、血圧を上げる「はっきりした原因」がある高血圧です。両者の違いは本態性高血圧と二次性高血圧の違いの記事でも詳しく紹介しています。
アメリカの家庭医向け専門誌のレビューによると、高血圧の患者さん全体のうち二次性高血圧が占める割合は5〜10%程度とされています(出典:Charles ら, American Family Physician 2017)。日本のガイドラインでも、二次性高血圧のうち最も多いものは原発性アルドステロン症で、高血圧全体の5〜10%を占めるという報告が紹介されています(出典:JSH2025)。二次性高血圧は、原因となる病気を治療すれば血圧が下がったり、薬が少なくて済んだりする可能性がある点が、本態性高血圧と大きく異なります。さらに、ガイドラインは二次性高血圧では本態性高血圧に比べて合併症のリスクが高いことにも触れています。だからこそ、見逃さないことに意味があります。
研究が示す、若い高血圧に隠れている原因
若い成人の二次性高血圧について、これまで「どのくらいの頻度で、何が多いのか」ははっきりしていませんでした。この疑問に答えようとしたのが、2024年に高血圧の専門誌 Hypertension に発表されたフランスの研究です。18〜40歳で高血圧が確認され、二次性高血圧のスクリーニングを一通り受けた2,090人が対象でした(出典:de Freminville ら, Hypertension 2024)。
結果として、2,090人のうち619人(29.6%)に二次性高血圧が見つかりました。内訳でもっとも多かったのは原発性アルドステロン症で、続いて腎臓に血液を送る血管が細くなる腎血管性高血圧、腎臓そのものの病気(原発性腎疾患)、褐色細胞腫(またはパラガングリオーマ)、薬や物質による高血圧の順でした。注目すべきは、血圧が160/100mmHg未満の人でも二次性高血圧の割合は低くならず、服用している降圧薬の数にかかわらず同じ傾向だったことです。「血圧がそれほど高くないから大丈夫」とは言えない、ということになります。
また、二次性高血圧の割合は18〜30歳より30〜40歳のほうが高く、女性であること、血液中のカリウムが低いこと(低カリウム血症)、2種類以上の降圧薬を使っていること、高血圧の家族歴がないこと、BMIが25未満であること、糖尿病があることが、二次性高血圧の多さと関連していました。肥満のある方に多い本態性高血圧のイメージとは少し違い、「やせ型で家族に高血圧の人がいないのに血圧が高い」という方こそ、原因を調べる価値が高いことがうかがえます。研究者らは、40歳未満で高血圧のあるすべての人が二次性高血圧のスクリーニングを受けるべきだと結論づけています。
ただし、この研究は二次性高血圧の精査を受けた人たちを集計したものです。そのため、「若い高血圧の方の約3割が必ず二次性高血圧」という意味ではなく、一般の若い高血圧の方全体の割合をそのまま示しているわけでもない点には注意してください。それでも、若い世代では決してまれではなく、調べる価値のある頻度だということは、この研究から読み取れます。
若い人に多い二次性高血圧の主な原因
原発性アルドステロン症
副腎から「アルドステロン」というホルモンが過剰に出て、体に塩分と水分がたまり、カリウムが失われることで血圧が上がる病気です。上の研究でも若い世代で最も多い原因でした。低カリウム血症を伴うことがあり、血液検査で見つかる手がかりになります。詳しくは原発性アルドステロン症の記事をご覧ください。
腎血管性高血圧と腎臓の病気
腎臓は血圧の調節に深く関わる臓器で、腎臓に入る血管が細くなったり、腎臓そのものに病気があったりすると、血圧が上がりやすくなります。高齢者では動脈硬化による腎動脈の狭窄や腎不全が多い原因とされますが(出典:Charles ら, American Family Physician 2017)、若い方でも腎血管性高血圧や腎臓の病気が一定の割合を占めていました。腎血管性高血圧については腎動脈狭窄症と高血圧、腎臓の病気については高血圧と腎臓病の記事で解説しています。
褐色細胞腫・パラガングリオーマ
カテコールアミンというホルモンを過剰に出す腫瘍で、頭痛、動悸、発汗といった発作的な症状と血圧の急な上昇を伴うことがあります。頻度は高くありませんが、見逃すと危険な病気です。詳しくは褐色細胞腫と高血圧をご覧ください。
睡眠時無呼吸、甲状腺の病気、薬や健康食品
先ほどのレビューでは、ほかにも睡眠時無呼吸、クッシング症候群、甲状腺の病気、大動脈縮窄症、特定の薬の使用が二次性高血圧の原因として挙げられています(出典:Charles ら, American Family Physician 2017)。いびきや日中の眠気が強い方は睡眠時無呼吸症候群と高血圧、動悸や体重減少がある方は甲状腺機能亢進症と高血圧の記事が参考になります。市販の風邪薬や痛み止め、ピル、一部のサプリメントなどが血圧に影響することもあり、薬剤誘発性高血圧で解説しています。
こんなときは二次性高血圧を疑う
JSH2025は、若い年齢での高血圧に加えて、突然の発症、治療に反応しにくい難治性の高血圧、年齢や血圧の高さに比べて臓器障害が強い場合に、二次性高血圧を強く疑うとしています(出典:JSH2025)。アメリカのレビューでも、重症または治療抵抗性の高血圧、発症年齢が30歳未満、これまで安定していた血圧が急に上がった場合などが、疑うきっかけとして挙げられています(出典:Charles ら, American Family Physician 2017)。これらと上の研究の結果を合わせると、次のような点に当てはまる方は、早めに医師へ伝えておくとよいでしょう。
- 40歳未満で高血圧と指摘された(とくに30歳未満)
- 血圧が急に上がった、またはこれまで安定していたのに高くなってきた
- 2種類以上の降圧薬でも下がりにくい(詳しくは治療抵抗性高血圧)
- 血液検査でカリウムが低いと言われたことがある
- 体型はやせ〜標準で、家族に高血圧の人がいない
- 頭痛・動悸・発汗の発作や、強いいびき・日中の眠気がある
医療機関ではどのように調べるのか
二次性高血圧の調べ方は、特別なものから始めるわけではありません。まず、問診で発症した年齢、家族歴、服用中の薬やサプリメント、睡眠や体重の変化などを確認し、身体診察と通常の血液・尿検査で手がかりを探します。JSH2025は、血圧や臓器障害、心血管病のリスクを評価しながら、二次性高血圧の診断につながる検査を、費用対効果を考えて選んで行うことを求めています(出典:JSH2025)。初診時の流れは高血圧と言われて初めて受診するときで紹介しています。
そのうえで、疑う病気に応じてホルモンの血液検査や画像検査、睡眠中の呼吸の検査などを追加します。どの検査が必要かは、年齢、血圧の高さ、カリウムの値、症状などで変わりますので、自己判断で決めず、医師と相談しながら進めることが大切です。なお、本人に自覚症状がないことも多く、「症状がないから調べなくてよい」とは言えません。
原因が見つからなくても、若い高血圧は放置しない
精査をして二次性高血圧が見つからなければ、本態性高血圧として、生活習慣の見直しや必要に応じた治療を考えていきます。ここで大切なのは、若いから軽症とは限らないという点です。2020年にBMJに発表された、18〜45歳の約450万人を含む17のコホート研究のメタ解析では、平均14.7年の追跡で、血圧が高いほど心血管イベントのリスクが段階的に上がっていました。至適血圧の人と比べた相対リスクは、正常血圧で1.19、正常高値血圧で1.35、1度高血圧で1.92、2度高血圧で3.15でした(出典:Luo ら, BMJ 2020)。
一方で、この論文は、若い世代の絶対的なリスクの上がり方はそれほど大きくなく、血圧を下げる治療の効果を示した証拠はまだ限られているため、積極的な介入は慎重に検討すべきだとも結論づけています。つまり、「若いうちから全員がすぐに薬を飲むべき」という話ではありません。家庭血圧の経過をみながら、減塩、体重管理、運動、節酒、睡眠の確保といった生活習慣の見直しを土台にし、薬が必要かどうかは血圧の高さやほかのリスクをふまえて医師と相談して決めていく、という姿勢が現実的です。
受診までにできる準備
受診の際は、朝と夜の家庭血圧の記録、服用中のすべての薬とサプリメント(市販薬を含む)、家族に高血圧・心臓病・腎臓病の人がいるか、いつ頃から血圧が高いと言われたか、健診での血圧とカリウムなどの血液検査の結果を持っていくと、診察が進めやすくなります。JSH2025も、診察では家族の高血圧歴や発症年齢の確認を求めています(出典:JSH2025)。遺伝と高血圧の関係は高血圧と遺伝の記事もあわせてご覧ください。
頭痛、動悸、発汗が発作的に起こる、手足の脱力が続く、血圧が突然かなり高くなったといった場合は、受診の予定を待たず、早めに内科などの医療機関に相談してください。
まとめ
- 若い方の高血圧では、二次性高血圧が隠れていることがあり、18〜40歳の高血圧を精査した研究では約3割に見つかりました。
- 最も多い原因は原発性アルドステロン症で、腎血管性高血圧、腎臓の病気、褐色細胞腫、薬や物質なども原因になります。
- 血圧がそれほど高くなくても、やせ型、家族歴がない、カリウムが低い、降圧薬が効きにくいといった場合は、特に原因の確認が大切です。
- 原因が見つからなくても、若い時期の高血圧は将来の心血管リスクと関係します。生活習慣の見直しと家庭血圧の経過観察を続け、治療の必要性は医師と相談しましょう。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」Hypertension Research
- de Freminville JB, et al. Prevalence and Risk Factors for Secondary Hypertension in Young Adults. Hypertension. 2024;81(11):2340-2349
- Luo D, et al. Association between high blood pressure and long term cardiovascular events in young adults: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2020;370:m3222
- Charles L, Triscott J, Dobbs B. Secondary Hypertension: Discovering the Underlying Cause. Am Fam Physician. 2017;96(7):453-461