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高血圧の降圧目標はいくつ?診察室と家庭の目標値と下げすぎの注意点

2026 10/20
臨床医学
2026年10月20日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

高血圧の降圧目標はいくつ?診察室と家庭の目標値と下げすぎの注意点

高血圧の治療では、診察室で測る血圧を130/80mmHg未満、家庭で測る血圧を125/75mmHg未満にすることが、現在の日本のガイドラインが示す目標です。以前は75歳以上や一部の持病がある人で目標が緩められていましたが、最新版では年齢や持病にかかわらず同じ目標が基本になりました。ただし、立ちくらみなどの「下げすぎのサイン」に気をつけながら、数か月かけて少しずつ近づけていくのが原則で、介護が必要な方や認知症のある方では、主治医が一人ひとりに合わせて目標を決めます。

この記事では、降圧目標の数字の意味、診察室と家庭で目標が違う理由、年齢や持病による考え方、そして「下げすぎ」を避けるために知っておきたいことを、ガイドラインと臨床試験の結果をもとに解説します。

目次

降圧目標とは?「診断の基準」とは別の数字

血圧の数字には、大きく分けて2種類の「線」があります。ひとつは「この値を超えたら高血圧と診断する」という診断の基準で、診察室では140/90mmHg以上、家庭では135/85mmHg以上が高血圧とされます。もうひとつが、治療を始めたあとに「ここまで下げることを目指す」という治療の目標、つまり降圧目標です。

この2つは混同されやすく、「140を切ったからもう大丈夫」と考えてしまう方が少なくありません。しかし、治療の目標は診断の基準よりも低く設定されています。高血圧の治療の目的は、血圧の数字そのものを下げることではなく、脳卒中や心筋梗塞、心不全、腎臓病といった将来の病気を防ぐことです。そのためには、診断の線をぎりぎり下回るだけでは足りず、もう一段下まで下げたほうが病気を防ぐ効果が大きいことが、多くの研究で確かめられてきました(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」Hypertension Research)。

なお、正常な血圧の範囲や、高血圧の分類そのものについては「血圧の正常値と高血圧の基準」で詳しく紹介しています。

最新のガイドラインが示す降圧目標

日本高血圧学会が2025年に公表した「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、降圧目標が次のように整理されました。

  • ✔ 診察室血圧:130/80mmHg未満
  • ✔ 家庭血圧:125/75mmHg未満
  • ✔ 年齢(75歳以上を含む)や、脳卒中の既往・糖尿病・慢性腎臓病などの持病の有無にかかわらず、この目標が基本

ガイドラインの作成にあたっては、一般の高血圧の方、脳卒中を経験した方、糖尿病のある方、75歳以上の方など、対象ごとに臨床試験をまとめて分析し直しています。その結果、どのグループでも、収縮期血圧(上の血圧)を130mmHg未満、あるいは130/80mmHg未満を目指して下げたほうが、それより高い目標の場合に比べて心血管の病気が少なかったと報告されています。また、こうした分析の範囲では、年齢や持病に関連した重い副作用が増えるという結果は出ていませんでした。これを受けて、JSH2025では「年齢や病気、合併症によらず130/80mmHg未満」という目標が示されました(出典:Ohya Y, et al. Key highlights of the JSH2025. Hypertension Research 2025)。

ひとつ前の版(JSH2019)では、75歳未満の方は130/80mmHg未満としつつ、75歳以上の方や、脳血管障害のある方の一部(両側の頸動脈が狭くなっている場合など)は140/90mmHg未満と、目標が緩められていました(出典:Umemura S, et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019). Hypertension Research 2019)。2025年版で目標が一本化されたのは、この6年ほどの間に、高齢の方を含めて「しっかり下げることの利点」を示す研究が増えたためです。ガイドラインの改訂全体の流れは「高血圧治療の最新情報」でも紹介しています。

目標を130/80mmHg未満にした根拠となった研究

降圧目標の議論を大きく動かしたのが、2015年に米国で発表されたSPRINT試験です。心血管の病気のリスクが高い(ただし糖尿病のない)約9,400人を、収縮期血圧120mmHg未満を目指すグループと、140mmHg未満を目指すグループに分けて比べました。その結果、低い目標のグループのほうが、心筋梗塞・脳卒中・心不全・心血管死をまとめた発生率が約25%低く、あらゆる原因による死亡も少なくなりました。その一方で、低血圧、失神、電解質の異常、急性腎障害といった重い副作用は、低い目標のグループで多くみられています(出典:SPRINT Research Group. N Engl J Med 2015)。

SPRINT試験には75歳以上の方も約2,600人参加しており、その方々だけを取り出して分析しても、低い目標のグループで心血管の病気と死亡が少なかったことが報告されています。重い副作用全体の頻度は2つのグループで差がありませんでしたが、低血圧は低い目標のグループでやや多くみられました(出典:Williamson JD, et al. JAMA 2016)。

アジアの研究も続きました。中国で60〜80歳の高血圧の方約8,500人を対象に行われたSTEP試験では、収縮期血圧110〜130mmHg未満を目指したグループで、130〜150mmHg未満を目指したグループよりも、脳卒中や心筋梗塞などをまとめた発生が約26%少なくなりました。安全性や腎臓への影響に大きな差はありませんでしたが、低血圧はやはり低い目標のグループで多かったと報告されています(出典:Zhang W, et al. N Engl J Med 2021)。さらに、糖尿病や脳卒中の既往がある人も含めた約11,000人のESPRIT試験でも、120mmHg未満を目指すことで主要な心血管の病気が減り、その効果は糖尿病や脳卒中の既往の有無で変わりませんでした。一方で、失神は低い目標のグループで多くみられています(出典:Liu J, et al. Lancet 2024)。

これらの研究に共通しているのは、「下げたほうが病気は減るが、下げることに伴う症状や副作用にも注意が必要」という点です。日本のガイドラインが目標を120mmHg未満ではなく130/80mmHg未満としているのは、効果と安全性のバランスをとった結果だと理解するとよいでしょう。

診察室と家庭で目標が違うのはなぜ?

診察室では130/80mmHg未満、家庭では125/75mmHg未満と、目標が5mmHgずつ違うのには理由があります。家庭で落ち着いて測る血圧は、病院で緊張しながら測る血圧よりも、一般に低めに出ます。そのため、診断の基準も家庭のほうが低く(家庭135/85mmHg、診察室140/90mmHg)設定されており、治療の目標も同じように家庭のほうが低くなっています。家庭血圧の目標値125/75mmHgは、日本で行われた家庭血圧の追跡研究(HOMED-BP研究やHONEST研究)の結果に基づいています(出典:日本高血圧学会「JSH2025」)。

ガイドラインでは、治療中も診察室の外で測る血圧、とくに家庭血圧を中心に管理することが勧められています。診察室の血圧と家庭の血圧で判断が分かれるときは、家庭血圧のほうを優先して考えます。診察室でだけ高くなる「白衣高血圧」や、逆に家庭でだけ高くなる「仮面高血圧」があるためです。治療の効果を正しく評価するためにも、毎日決まった時間に、決まった手順で家庭血圧を測ることが大切です。測り方のポイントは「血圧の正しい測り方」にまとめています。

家庭血圧を見るときは、1回1回の数字に一喜一憂するのではなく、朝と晩それぞれ数日分の平均で判断します。たまたま1回だけ130台が出たからといって、すぐに薬が効いていないとは限りません。逆に、ふだんの平均が目標を超えている状態が続くなら、受診時に記録を見せて主治医と相談しましょう。

75歳以上の方、介護が必要な方の目標の考え方

高齢の方は「年をとったら血圧は少し高めでよい」と言われてきた経緯があり、目標が一本化されたことに驚かれる方もいるかもしれません。JSH2025では、75歳以上でも、自分で外出して通院できる程度の体力があり、治療に無理なく耐えられている方では、収縮期血圧130mmHg未満を目指すことが強く勧められています。SPRINT試験の分析では、フレイル(虚弱)の程度にかかわらず、しっかり下げることの利点がみられたとされています。

一方で、介護が必要な方や認知症のある方、日常生活の動作が大きく低下している方は、これまでの臨床試験にほとんど参加していません。そのため、ガイドラインでも「この人たちに同じ結果をそのまま当てはめることはできない」とし、心身の機能が低下している場合は個別に判断することを強く勧めています。施設に入所している80歳以上の方を対象としたフランスの観察研究では、収縮期血圧が130mmHg未満で2種類以上の降圧薬を飲んでいた方の生存率が低かったという報告もあります。高齢の方では、血圧が下がりすぎると転倒やふらつきにつながりやすく、筋力の低下や骨粗しょう症があるとけがにもつながりかねません(出典:日本高血圧学会「JSH2025」)。

つまり「75歳以上だから目標が緩い」のではなく、「75歳以上でも元気な方は同じ目標、心身の状態が弱っている方は主治医と相談して決める」というのが今の考え方です。高齢の方の高血圧の特徴は「高齢者の高血圧」で詳しく解説しています。

目標までどのくらいの期間で下げるのか

降圧目標は「すぐに達成しなければならない数字」ではありません。JSH2025では、副作用や体調の変化がないかに気をつけながら、数か月かけて目標に到達することを目指すとしています。薬は少ない量や1種類から始め、効果と体調をみながら量を調整したり、作用の違う薬を組み合わせたりして、段階的に目標へ近づけていきます。ただし、心血管の病気のリスクが特に高い方では、2種類の薬を最初から併用するなどして、数週間で目標に届くようにすることも検討されます。

なかなか目標に届かないからといって、自分の判断で薬を増やしたり、効かないと思って飲むのをやめたりするのは危険です。3種類以上の薬を使っても目標に届かない場合は「治療抵抗性高血圧」として、塩分のとりすぎや睡眠時無呼吸、ホルモンの病気などが隠れていないかを調べ直すことがあります。詳しくは「治療抵抗性高血圧とは?」をご覧ください。降圧薬の種類や組み合わせについては「降圧剤の種類と効果」で紹介しています。

「下げすぎ」のサインに注意

目標が低くなったことで、心配になるのが「下げすぎ」です。ガイドラインでも、血圧を下げる際には慎重に進め、副作用に注意するよう繰り返し述べています。特に、収縮期血圧を120mmHg未満まで強く下げた場合には、副作用が増えることが報告されています。注意したい主な症状や変化は次のとおりです。

  • ✔ めまい、ふらつき、立ちくらみ
  • ✔ 立ち上がったときに目の前が暗くなる、気が遠くなる(失神しかける)
  • ✔ 強いだるさ、疲れやすさ
  • ✔ 血液検査での腎機能の悪化やカリウム値の上昇

このうち、立ち上がったときに血圧が大きく下がる「起立性低血圧」は、高齢の方や脱水気味のとき、薬の量や種類を変えた直後に起こりやすく、転倒の原因にもなります。夏場の汗や下痢・嘔吐で水分が失われたとき、食事がとれないときなども、ふだんと同じ薬で血圧が下がりすぎることがあります。こうした症状があるときは、薬を自己判断でやめるのではなく、家庭血圧の記録と症状を持って早めに受診し、薬の量や種類を見直してもらいましょう。立ちくらみと降圧薬の関係は「高血圧と起立性低血圧」で詳しく解説しています。

また、目標まで下がって安定してくると、「もう薬はいらないのでは」と感じる方もいます。降圧薬は高血圧を根本から治す薬ではなく、飲んでいる間の血圧を下げて血管を守る薬です。減薬や中止が検討できる条件もありますが、それは主治医と一緒に判断することです。考え方は「降圧薬はやめられる?」で紹介しています。

持病がある場合の目標と、主治医との相談のしかた

糖尿病、慢性腎臓病、脳卒中の既往、心不全などの持病がある方も、JSH2025では基本の目標は130/80mmHg未満です。ただし、持病によって使う薬の選び方や、検査で注意して見る項目は変わります。たとえば慢性腎臓病では腎機能やカリウム値の変化を確認しながら薬を調整し、腎機能が大きく低下している場合は薬を少なめの量から始めるといった配慮がされます。同じ「130/80mmHg未満」でも、どのような道筋で目指すかは人によって異なるのです。

主治医と目標について話すときは、「自分の目標は診察室でいくつ、家庭でいくつか」をはっきり確認しておくと、日々の家庭血圧の見方がわかりやすくなります。家庭血圧の記録を毎回持参し、めまいやだるさなど気になる症状があればあわせて伝えましょう。また、高血圧の原因として別の病気(二次性高血圧)が隠れていることもあり、その場合は原因の治療で血圧が下がりやすくなります。気になる方は「本態性高血圧と二次性高血圧の違い」も参考にしてください。

まとめ

高血圧の治療で目指す血圧は、現在のガイドラインでは診察室130/80mmHg未満、家庭125/75mmHg未満が基本です。年齢や持病によって目標を緩める考え方は見直され、75歳以上でも元気な方は同じ目標を目指します。一方で、下げすぎによるふらつきや失神には注意が必要で、数か月かけて少しずつ近づけていくこと、心身の機能が弱っている方では個別に目標を決めることが大切です。

  • ✔ 降圧目標は診断の基準(140/90mmHg)より低い「治療で目指す数字」
  • ✔ 家庭血圧は朝晩数日分の平均で判断し、診察室より家庭の値を重視する
  • ✔ めまい・立ちくらみなどが出たら、薬を自己判断でやめずに早めに相談する
  • ✔ 自分の目標値(診察室・家庭)を主治医と確認しておく

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この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNS・関連リンク

  • YouTube Dr.鎌形の正しい医療ナビ
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  • 株式会社EN
  • 医療法人社団季邦会

参考文献

  • Ohya Y, et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertension Research. 2026;49:9-235.
  • Ohya Y, et al. Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertension Research. 2025;48:2500-2511.
  • Umemura S, et al. The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH 2019). Hypertension Research. 2019;42:1235-1481.
  • SPRINT Research Group. A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control. N Engl J Med. 2015;373:2103-2116.
  • Williamson JD, et al. Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years. JAMA. 2016;315:2673-2682.
  • Zhang W, et al. Trial of Intensive Blood-Pressure Control in Older Patients with Hypertension (STEP). N Engl J Med. 2021;385:1268-1279.
  • Liu J, et al. Lowering systolic blood pressure to less than 120 mm Hg versus less than 140 mm Hg in patients with high cardiovascular risk with and without diabetes or previous stroke (ESPRIT). Lancet. 2024;404:245-255.
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血圧の学校編集部は、医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務によって構成されています。日本高血圧学会のガイドラインや国内外の論文をもとに、血圧と上手に付き合うための情報をわかりやすくお届けします。すべての記事は鎌形博展医師(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)の監修のもとに制作しています。

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