健康診断や家庭で「血圧が高い」と言われて受診すると、診察室で何をされるのか不安になる方は少なくありません。初診で行うのは、血圧の確認、これまでの経過や生活習慣についての問診、尿・血液・心電図などの一般的な検査が中心で、特別な検査を最初から何種類も受けるわけではありません。目的は、血圧がどのくらい高いかを確かめることに加えて、血圧の高い原因が別にないか、すでに心臓・腎臓・目・脳に影響が出ていないかを調べることです。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
まず「本当に高血圧か」を確かめる
受診の最初のステップは、診断の確認です。ガイドラインでは、高血圧の目安は診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上、24時間自由行動下血圧(ABPM)の平均で130/80mmHg以上とされています。診察室と家庭で診断が食い違うときは、家庭血圧にもとづく診断を優先すると定められています。家庭血圧は、朝と晩の測定値を7日間(少なくとも5日間)分平均して評価します。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
このため、診察室で高かった方でも、すぐに「高血圧です」と決まるとは限りません。診察室でだけ高くなる状態は白衣高血圧、反対に診察室では正常なのに家庭では高い状態は仮面高血圧と呼ばれ、どちらも家庭血圧を見ないと区別がつきません。受診前から家庭で測っておくと診察がスムーズに進みます。測り方は血圧の正しい測り方、血圧計の選び方は家庭用血圧計の選び方で詳しく解説しています。
診察室では緊張で血圧が上がることがあるため、診断が難しいときには24時間自由行動下血圧測定(ABPM)が使われることがあります。ABPMでは、24時間の平均が130/80mmHg以上、日中の平均が135/85mmHg以上、夜間の平均が120/70mmHg以上のいずれかに当てはまれば、高血圧または仮面高血圧とみなします。すべてが基準を下回れば、正常または白衣高血圧と考えます。なお、家庭以外でも、職場や公共施設に置かれた自動血圧計、薬局で測った血圧は、自己測定による血圧として診断に役立てられます。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
診察室血圧140/90mmHgが目安とされる背景には、日本の久山町研究などで、収縮期血圧が120未満かつ拡張期血圧が80未満の人で心血管病による死亡の累積率が最も低く、収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上になると、リスクが有意に高まることが示されている点があります。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
問診で聞かれること
診察ではまず、いつ、どんな機会(健診、診察、自己測定など)に血圧が高いと指摘されたか、その期間や程度、すでに治療を受けた経験があれば薬の種類・効果・副作用が確認されます。あわせて、高血圧・糖尿病・心血管病の家族歴とその発症年齢、出生時の体重や子どもの頃の体重増加、女性では妊娠中に高血圧・糖尿病・腎機能の異常・尿蛋白を指摘されたことがあるかも尋ねられます。生活習慣についても、食事、飲酒、運動などを聞かれます。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
問診でとくに重視されるのは、血圧が上がる別の原因(二次性高血圧)を示す手がかりです。体重の増加や糖尿病・脂質異常症があること、家族にいびきや無呼吸を指摘されたこと、朝の頭痛、日中の眠気、抑うつ、集中力の低下、夜間の頻尿などは、睡眠時無呼吸などを疑うきっかけになります。血尿や蛋白尿、夜間頻尿は腎臓の病気を示すことがあります。また、ステロイドや消炎鎮痛薬(NSAIDs)、甘草を含む漢方薬、経口避妊薬など、血圧を上げうる薬を使っていないかも確認されます。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)お薬手帳や市販薬・サプリメントの情報は、忘れずに持参しましょう。
診察でわかること
診察では、座って安静にした状態で血圧と脈拍を測ります。初診では左右の腕の血圧や脈の差も確認することが勧められています。足の動脈の病気や起立時の血圧低下が疑われるときは、上肢と下肢の血圧差や、立ち上がったときの血圧・脈拍の変化も調べます。身長と体重からBMIを計算し、おへその高さで立ったまま腹囲を測って、肥満や内臓脂肪の目安にします。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
さらに、心臓や血管の音、お腹の血管雑音、腎臓の腫れ、手足の脈の触れ方などを確かめ、二次性高血圧や心不全、動脈硬化を示すサインがないかを見ます。たとえば皮膚が薄くなる、赤紫色の線(皮膚線条)が出る、体毛が濃くなるといった所見はホルモンの病気を疑う手がかりになります。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
初診で行う一般的な検査
ガイドラインでは、初診時に行う一般検査として、尿検査、血球計算、血液生化学検査、胸部X線、心電図が挙げられています。これらの検査は、健康診断や職場の健診の結果で代えられる場合もあります。経過を見ていく中では、腎機能(クレアチニン)、尿酸、電解質、中性脂肪、HDLコレステロール、総コレステロール(またはLDLコレステロール)、空腹時血糖、肝機能などを、患者さんのリスクに応じて調べます。降圧薬のうち利尿薬やRAS阻害薬を使う方、高齢の方では、ナトリウムとカリウムの測定が特に重要とされています。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
糖代謝の異常があると心血管リスクは高くなるため、疑われる場合はHbA1cや空腹時血糖、75gブドウ糖負荷試験が検討されます。また、めまいやふらつきがある方には、安静にして測った後、立ち上がって1〜3分後の血圧を比べる「起立試験」が行われることがあります。立位で収縮期血圧が下がるだけでなく、反対に20mmHg以上上がる場合(起立性高血圧)も、臓器障害と関連するとされています。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)立ちくらみについては高血圧と起立性低血圧の記事も参考にしてください。
心臓・腎臓・目への影響を調べる
高血圧が長く続くと、心臓、腎臓、脳、目に変化が出ます。ガイドラインは、糖尿病や心血管病の既往がある高リスクの方では、血圧が高値正常以上の段階から臓器障害を評価することが望ましいとしています。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
心臓については、心電図で左室肥大(心臓の壁が厚くなること)や心房細動がわかります。心房細動が見つかった場合は循環器の医師に相談することが勧められています。心臓超音波検査は、心不全が疑われるときに行います。腎臓は、eGFRと尿蛋白で評価します。尿蛋白0.15g/gCr以上(アルブミン尿30mg/gCr以上)またはeGFR60mL/分/1.73m²未満が3か月を超えて続く状態が慢性腎臓病(CKD)と定義されています。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)詳しくは高血圧と腎臓病をご覧ください。
目については、眼底検査が一般に用いられます。糖尿病のある方には眼底検査が欠かせないとされ、視神経乳頭のむくみは高血圧性脳症という緊急の状態でみられるため、高血圧緊急症が疑われるときは眼底検査が強く勧められています。一方で、脳のCTやMRIは、高血圧の臓器障害を調べる通常のスクリーニングとしては一般的ではないとされています。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
二次性高血圧は常に頭の片隅に
ガイドラインは、すべての高血圧の患者さんで二次性高血圧の可能性を考え、疑う所見を見逃さずに適切な検査を行うこと、疑わしければ専門医に紹介することを求めています。たとえば原発性アルドステロン症は、高血圧のある人の5〜10%にみられるとされ、二次性高血圧では最も多い病気です。有病率の高い群では積極的に検査を行い、確認検査へと進みます。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)詳しくは本態性高血圧と二次性高血圧の違い、原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸症候群と高血圧の記事で解説しています。
受診の前に準備しておくとよいこと
診察を有効に使うために、家庭で測った血圧の記録、直近の健診結果、飲んでいる薬のわかるもの(お薬手帳など)、気になる症状のメモをまとめておくと便利です。血圧は一回ごとにぶれる数値なので、数値の推移が診断の大きな手がかりになります。
検査の結果はどのように使われるか
初診の検査は、「高血圧かどうか」を決めるだけでなく、治療の進め方を考える材料になります。ガイドラインは、血圧の重症度に加えて、ほかの合併症のリスクを考慮して治療方針を決めるとしています。血圧が同じでも、糖尿病や腎臓病、心血管病の既往があれば、より早い段階から丁寧な評価と管理が必要になるということです。一方で、検査で異常が見つからなくても、血圧が高い状態が続けば将来のリスクは高まるため、生活習慣の見直しや経過の観察は欠かせません。(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」)
検査値や所見は、一度で結論が出るものではありません。血圧と同じように、時間をかけて繰り返し測り、変化を追うことで意味が見えてきます。気になる点は、診察のときに遠慮なく質問してみてください。
まとめ
高血圧と言われて初めて受診したときは、診断の確認、問診と診察、一般的な検査、臓器障害と二次性高血圧の手がかりの確認という順で進むのが基本です。検査の多くは健診で受けている内容とも重なります。
- 診断の目安は、診察室140/90mmHg以上、家庭135/85mmHg以上、24時間平均130/80mmHg以上。食い違うときは家庭血圧を優先
- 問診では経過・家族歴・生活習慣・使っている薬を確認し、二次性高血圧の手がかりを探す
- 初診の一般検査は、尿検査・血液検査・胸部X線・心電図。健診結果で代えられる場合もある
- 心臓・腎臓・目への影響は、心電図、eGFRと尿蛋白、眼底検査などで評価する
- 家庭血圧の記録とお薬手帳を持って受診するとスムーズ
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
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研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
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