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治療抵抗性高血圧とは?薬が効きにくいときに考えること

2026 9/01
臨床医学
2026年9月1日
治療抵抗性高血圧とは?薬が効きにくいときに考えること

血圧の薬を3種類飲んでいるのに、家庭で測るとやはり高いまま。量を増やしても、薬の種類を変えても、思うように下がらない。こうした状態は「治療抵抗性高血圧」と呼ばれます。名前の響きから「もう打つ手がない状態」と受け取られがちですが、実際にはそうではありません。むしろ、下がらない理由をひとつずつ確かめていくと、それまで見落とされていた原因が見つかることが少なくない状態です。この記事では、治療抵抗性高血圧という言葉が何を指すのか、血圧が下がりにくくなる背景には何があるのか、そして医療機関ではどのように調べていくのかを、患者さんの立場から順を追って整理します。

目次

治療抵抗性高血圧とは?

治療抵抗性高血圧は、一般に「利尿薬を含む3種類の降圧薬を、それぞれ最大量あるいは体が許容できる範囲の最大量まで使っているにもかかわらず、目標としている血圧まで下がらない状態」を指します。加えて、4種類以上の薬を使ってようやく目標値に収まっている場合も、同じ枠組みで扱われます(出典:Carey RM ほか「Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management」Hypertension 2018)。日本でも、日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が第12章を「治療抵抗性高血圧」に、第11章を「コントロール不良の高血圧」に充て、独立した項目として扱っています。

ここで押さえておきたいのは、「3種類」という数だけで決まるわけではないという点です。3剤のうちに利尿薬が入っているか、それぞれの薬が十分な量で使われているか、そして本当に血圧が下がっていないと確認できているか。この3つが揃って初めて、治療抵抗性という判断に近づきます。逆に言えば、このどれかが欠けている段階では、まだ「本当に効いていない」と決めつけることはできません。

頻度としては、治療を受けている高血圧の方のうちおおよそ1割強にみられると報告されています。24件の研究、のべ96万人あまりを対象にしたメタ解析では、観察研究をまとめた場合の割合は13.72%(95%信頼区間 11.19〜16.24%)でした(出典:Achelrod D ほか、American Journal of Hypertension 2015)。ただしこの解析の著者自身が指摘しているとおり、対象となった研究の多くは、後で述べる「見せかけの抵抗性」を十分に除外できていません。したがって、本当に薬が効いていない人の割合は、この数字より低いと考えられます。

「本当に効いていない」とは限らない|見せかけの抵抗性

治療抵抗性高血圧を考えるとき、専門家がまず確認するのは「これは本物か」という点です。実際には薬が効いているのに、事情があって血圧が高く見えているだけ、という状況が少なくないためです。これを見せかけの抵抗性(偽性抵抗性)と呼びます。Carey RM ほか「Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management」Hypertension 2018でも、治療抵抗性と診断する前提として、服薬状況の確認と白衣効果の除外が必要だと明記されています。

診察室では高く、家庭では下がっている

診察室で測ると高いのに、家庭で測ると落ち着いている——いわゆる白衣効果です。医療機関という環境そのものが緊張を生み、一時的に血圧を押し上げます。この状態を「薬が効いていない」と判断して薬を増やしていくと、家庭では下がりすぎて、立ちくらみやふらつきが出ることもあります。だからこそ、治療がうまくいっているかどうかの判断には、診察室の数値だけでなく家庭血圧が欠かせません。測るタイミングや姿勢によって数値は変わるため、正しい血圧の測り方をあらためて確認しておくと、記録の信頼性が上がります。

薬が指示どおりに飲めていない

もうひとつ多いのが、服薬が続いていないケースです。責められるべきことではありません。薬の種類が増えるほど飲み忘れは起きやすくなり、副作用への不安、飲み方の複雑さ、費用の負担など、続けにくくなる理由はいくつも重なります。ここで大切なのは、飲めていない事実を医師に伝えられるかどうかです。伝えないまま診察が進むと、「この量でも下がらない」という前提で薬が追加され、必要以上に多剤になってしまいます。飲み忘れが多いこと自体を相談すれば、1日1回にまとめる、配合剤に切り替えるなど、続けやすい形を一緒に探すことができます。

測り方や薬の使い方に見直す余地がある

腕に対してカフ(腕帯)が小さすぎると、実際より高い値が出ることが知られています。腕の太い方が標準サイズのカフで測っている場合、それだけで数値が上振れします。また、3剤使っていても利尿薬が入っていない、あるいは入っていても量が少ないという場合には、まだ治療を強める余地が残っています。自分がどの系統の薬を何mg使っているのかをお薬手帳で把握しておくと、診察時のやりとりがスムーズになります。

血圧が下がりにくくなる背景にあるもの

見せかけの抵抗性を除いたうえで、それでも下がらない場合には、体の側に血圧を押し上げ続ける要因が残っていると考えます。その代表が食塩です。治療抵抗性高血圧の方12人を対象に、1日の食塩摂取量を低く抑えた期間と多く摂った期間を入れ替えて比較した無作為化クロスオーバー試験では、低食塩期間の診察室血圧が高食塩期間と比べて収縮期で22.7mmHg、拡張期で9.1mmHg低い結果でした(出典:Pimenta E ほか、Hypertension 2009)。参加者が12人と非常に小規模な研究であり、この数字がそのまま誰にでも当てはまるわけではありませんが、薬が効きにくい背景に体内の余分な塩分と水分の貯留があることを示した研究として、繰り返し引用されています。

食塩は、意識して減らしているつもりでも見落としが生じやすい要素です。汁物や漬物といった分かりやすいものだけでなく、加工食品やパン、麺類のつゆ、市販の惣菜など、味が濃いと感じない食品にも相当量が含まれています。減塩がうまく進まないと感じるときは、自己流で調整を続けるより、管理栄養士による栄養指導を受けられるか医師に相談したほうが近道になることがあります。

体重、飲酒、運動不足も血圧に直接効いてきます。とくに飲酒は、量が多い状態が続くと降圧薬の効きを鈍らせる方向に働きます。また、痛みや炎症に使う一部の市販薬・処方薬、風邪薬や鼻炎薬に含まれる血管を収縮させる成分、一部の漢方薬やサプリメント、女性ホルモン製剤なども、血圧を上げる方向に作用することがあります。Carey RM ほか「Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management」Hypertension 2018では、こうした「降圧薬の効果を妨げる薬剤」の確認を、治療抵抗性を評価する手順のひとつに位置づけています。市販薬やサプリメントを使っている場合は、それが血圧と関係なさそうに見えても、お薬手帳にまとめて医師・薬剤師に見せておくとよいでしょう。

隠れた病気が原因になっていることがある

薬が効きにくい高血圧では、背景に別の病気が潜んでいる割合が高くなります。高血圧には、はっきりした原因を特定できない本態性高血圧と、原因となる病気があってその結果として血圧が上がる二次性高血圧があり、後者は原因を治療することで血圧が改善する可能性があります。両者の違いは本態性高血圧と二次性高血圧の違いで詳しく解説していますが、治療抵抗性という状況では、この二次性高血圧をあらためて疑い直す意味が大きくなります。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」でも、第15章が二次性高血圧に充てられています。

とくに関わりが深いのが、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される原発性アルドステロン症です。アルドステロンには体に塩分と水分をため込む働きがあり、これが続くと血圧が下がりにくくなります。血液検査でカリウムが低めに出ることが手がかりになる場合もありますが、カリウムが正常でも否定はできません。詳しくは原発性アルドステロン症と高血圧を参照してください。

睡眠時無呼吸症候群も、見落とされやすい原因のひとつです。睡眠中に呼吸が止まるたびに体は低酸素にさらされ、交感神経が繰り返し刺激されて、夜間から早朝にかけての血圧が下がりにくくなります。治療抵抗性高血圧と閉塞性睡眠時無呼吸を併せ持つ患者を対象とした12件の試験・718人分をまとめたメタ解析では、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を行った群で24時間平均の収縮期血圧が5.92mmHg、拡張期血圧が4.44mmHg低下したと報告されています(出典:Sun L ほか、Current Hypertension Reports 2024)。いびきや日中の強い眠気を指摘されたことがある方は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の関係もあわせて確認しておくとよいでしょう。

このほか、腎臓の機能低下や腎臓に血液を送る動脈の狭窄、甲状腺の病気、副腎から別のホルモンが過剰に出る病気なども、血圧が下がりにくい背景として知られています。どれも自覚症状に乏しく、血圧が高いこと以外に手がかりが少ないため、「薬が効かない」という事実そのものが検査を進めるきっかけになります。

放置するとどうなるのか

治療抵抗性高血圧が問題になるのは、単に数値が高いままだからではなく、その状態が続くと心臓や血管、脳、腎臓への負担が積み重なるためです。日本で行われたJ-HOP研究のデータを用いた解析では、診察室血圧と家庭血圧の両方で高値が確認された治療抵抗性高血圧の方の心血管イベント(脳卒中、冠動脈疾患、心不全、大動脈解離)の発生率は1000人年あたり34.7件で、同じく3剤以上を使いながら血圧が良好に管理できていた方の11.9件と比べて有意に高いという結果でした。さらに、すでに心血管疾患の既往がある方では39.4件、既往のない方では22.7件と差がみられました(出典:Kario K ほか、Hypertension 2025)。

この研究が示しているのは、薬の数ではなく実際に血圧が下がっているかどうかが結果を分けるということです。3剤以上を使っていても、きちんと目標まで下がっている方のリスクは相対的に低く抑えられていました。同時に、この解析では診察室血圧だけでなく家庭血圧を組み合わせて判定している点も重要です。家庭での測定と記録が、治療抵抗性を正しく見極めるための土台になっています。

医療機関ではどのように調べ、どう対応するのか

「薬が効かない」と相談を受けた医療機関がまず行うのは、新しい薬を足すことではありません。ここまで見てきた要因を、順番に確かめていく作業です。家庭血圧の記録を確認して白衣効果の有無を判断し、必要に応じて24時間血圧測定(ABPM)を行います。服薬の状況を具体的に聞き取り、飲み忘れがどの程度あるのかを共有します。カフのサイズが適切かを確かめ、現在の処方に利尿薬が含まれているか、それぞれの薬が十分な量で使われているかを見直します。そのうえで、血圧を上げる方向に働く薬やサプリメントがないかを確認し、血液・尿検査やホルモンの検査、画像検査などで二次性高血圧のスクリーニングを進めていきます。

こうした確認を経てもなお血圧が下がらない場合に、薬の組み合わせを組み替える段階に入ります。研究の場では、この段階で追加する薬について比較が行われてきました。イギリスで実施されたPATHWAY-2試験では、3剤で下がらなかった患者335人に、スピロノラクトン、ビソプロロール、ドキサゾシン、プラセボをそれぞれ12週間ずつ順番に上乗せして比較したところ、家庭収縮期血圧の低下はスピロノラクトンでプラセボより8.70mmHg大きく、他の2剤と比べても平均4.26mmHg大きいという結果でした(出典:Williams B ほか(PATHWAY-2試験)Lancet 2015)。この結果は、治療抵抗性高血圧の背景に体内の塩分貯留があるという考え方を裏づけるものとして受け止められています。

ただし、これは「誰にでもこの薬を足せばよい」という意味ではありません。スピロノラクトンは血液中のカリウムが上がりやすく、この試験でも285人中6人で一時的にカリウムが6.0mmol/Lを超えています。腎機能が低下している方では、より慎重な判断と定期的な血液検査が必要になります。どの薬をどう組み合わせるかは、腎機能、年齢、他の持病、これまでの副作用の経験などを踏まえて医師が個別に判断する領域です。ご自身の判断で薬を足したり減らしたりせず、下がらない状況をそのまま医師に伝えることが、次の一手につながります。

原因を絞り込むための検査が一般内科の範囲を超える場合には、高血圧を専門とする医師や、内分泌・腎臓・循環器といった診療科への紹介が検討されます。どこに相談すればよいか迷う場合は、高血圧はどこで診てもらう?診療科と医療機関の選び方も参考になります。

通院しながら自分でできること

治療抵抗性高血圧では、患者さん自身が持ち込む情報が診断の質を大きく左右します。とくに家庭血圧の記録は、白衣効果を除外し、薬の効き方を時間帯ごとに把握するうえで代わりのきかない材料です。朝と夜、決まった時間に、同じ条件で測って記録する。この地道な作業が、次の診察での判断を具体的にします。

  • 朝は起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前に測る
  • 夜は就寝前に測る
  • 背もたれのある椅子に座り、1〜2分安静にしてから測る
  • カフの位置を心臓の高さに合わせる
  • 測った値は高くても低くてもそのまま記録し、選んで書かない

あわせて、飲んでいるものをすべて把握しておくことも役に立ちます。処方薬だけでなく、市販の痛み止め、風邪薬、鼻炎薬、サプリメント、健康食品まで含めて一覧にしておくと、血圧を上げる要因が紛れ込んでいないかを医師が確認しやすくなります。飲み忘れがある場合も、正直に伝えたほうが結果的に薬の数を減らせる可能性があります。

一方で、避けたほうがよいこともあります。血圧が下がらないからといって自己判断で薬を増やす、逆に効かないと感じて自分で中止する、といった対応は危険です。とくに降圧薬を急に中止すると、血圧が急激に跳ね上がることがあります。また、「薬に頼らず下げたい」という気持ちから民間療法や健康食品に切り替えてしまうと、原因の特定が遅れ、その間も臓器への負担が続きます。生活習慣の見直しは治療の土台として重要ですが、薬の代わりになるものではありません。

まとめ

治療抵抗性高血圧は、利尿薬を含む3剤を十分な量で使っても目標値まで下がらない状態を指します。ただし、この診断にたどり着く前に確認すべきことがいくつもあります。家庭では下がっていないか、薬は続けられているか、カフのサイズや処方内容に見直す余地はないか。そこを整理したうえで、なお下がらない場合には、食塩の摂取量、飲酒や体重、血圧を上げる薬の使用、そして睡眠時無呼吸症候群や原発性アルドステロン症といった二次性高血圧を順に調べていくことになります。

「薬が効かない」という状況は、治療の行き止まりではなく、まだ見つかっていない原因があるというサインです。日本の研究でも、3剤以上を使っていても血圧が良好に管理できている方では心血管イベントの発生率が低く抑えられていました。家庭血圧を記録し、飲んでいるものを正確に伝え、下がらない事実をそのまま医師と共有する。この3つが、次の手を見つけるための出発点になります。

参考文献

  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(2025年8月29日発行)第11章 コントロール不良の高血圧/第12章 治療抵抗性高血圧/第15章 二次性高血圧
  • Carey RM, et al. Resistant Hypertension: Detection, Evaluation, and Management: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension. 2018;72(5):e53-e90.
  • Achelrod D, Wenzel U, Frey S. Systematic review and meta-analysis of the prevalence of resistant hypertension in treated hypertensive populations. Am J Hypertens. 2015;28(3):355-61.
  • Kario K, et al. Relationship Between Home Blood Pressure Monitoring-Confirmed Resistant Hypertension and Cardiovascular Prognosis. Hypertension. 2025;82(12):2241-2251.
  • Pimenta E, et al. Effects of dietary sodium reduction on blood pressure in subjects with resistant hypertension: results from a randomized trial. Hypertension. 2009;54(3):475-81.
  • Williams B, et al. Spironolactone versus placebo, bisoprolol, and doxazosin to determine the optimal treatment for drug-resistant hypertension (PATHWAY-2). Lancet. 2015;386(10008):2059-2068.
  • Sun L, et al. Effect of Continuous Positive Airway Pressure on Blood Pressure in Patients with Resistant Hypertension and Obstructive Sleep Apnea: An Updated Meta-analysis. Curr Hypertens Rep. 2024;26(5):201-211.

監修

監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

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血圧の学校編集部は、医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務によって構成されています。すべての記事は鎌形博展医師(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)の監修のもとに制作しています。

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