高血圧そのものには、特徴的な自覚症状はほとんどありません。頭痛やめまいが高血圧の人にやや多いという報告はありますが、症状の有無で血圧の高さを判断することはできず、症状がなくても血圧が高いことは普通にあります。血圧は、症状ではなく測った数値で確かめるものです。
「血圧が高いと頭が痛くなる」「めまいがするのは血圧のせいかもしれない」と考えている方は少なくありません。一方で、健康診断で血圧が高いと言われても「どこも悪くないから大丈夫」と受け流してしまう方もいます。どちらも、症状と血圧の関係を少し単純に捉えている面があります。この記事では、頭痛やめまいと血圧の関係について研究で分かっていることを整理し、症状がなくても確かめたいこと、そして症状があるときの受診の目安をまとめます。
高血圧は「症状が出にくい」と言われる理由
血圧がゆるやかに高い状態は、体が少しずつ慣れていくため、痛みや苦しさとして感じにくいと考えられています。厚生労働省が医療者向けにまとめた資料でも、臓器の急な障害をともなわない高血圧は、通常は症状がないと説明されています。さらに同じ資料の患者さん向けの部分では、血圧が上がること自体に特徴的な症状はなく、重症の場合に頭痛、片側の脱力、胸の痛み、息苦しさ、動悸などが出ることがある、という整理がされています(出典:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 重症高血圧」)。
症状が出にくいことは、気づきにくさにつながります。高血圧の患者さんの体験を調べた質的研究や調査をまとめたシステマティックレビュー(41件の研究を対象)では、症状がなければ高血圧ではない、あるいは治療は要らないと受け止める誤解が、血圧管理の妨げになることが指摘されています。また、症状を感じたときだけ薬を飲み、楽になると自己判断でやめてしまう患者さんの語りも報告されています(出典:Horne ら「Symptom experiences in hypertension: A mixed methods systematic review」2022年(オックスフォード・ブルックス大学リポジトリ収載の査読後原稿))。薬をやめてよいかどうかの考え方は、高血圧の薬はやめられる?で詳しく扱っています。
頭痛やめまいと血圧:研究で分かっていること
「頭痛やめまいは血圧のせい」という見方については、研究の結果が一致していません。ここでは代表的な3つの研究を紹介します。
ブラジルの大学病院の高血圧外来を受診した1,763人を調べた横断研究では、51.3%(903人)が頭痛を訴えていました。しかし、中等度から重度の高血圧がある人と、そうでない人とで頭痛の頻度に差はなく(オッズ比1.02、95%信頼区間0.79〜1.30)、重い高血圧だからといって頭痛が多いとは言えないという結果でした(出典:Fuchs ら「Headache is not more frequent among patients with moderate to severe hypertension」Journal of Human Hypertension 2003年)。
イタリアの高齢の外来患者3,858人を対象にした研究では、頭痛は高血圧のある人の32.5%、血圧が正常な人の27.4%に、めまいは41.5%と35.3%にみられ、わずかに高血圧の人で多くなっていました。ところが、この差は「自分が高血圧だと知っているかどうか」で補正すると消えてしまいました。つまり、高血圧と診断されて意識していることが症状の訴えを増やしていた可能性があります。著者らは、これらの症状は降圧治療を始める根拠にも、効果を判断する根拠にもならないと結論づけています(出典:Di Tullio ら「Prevalence of symptoms generally attributed to hypertension or its treatment」Journal of Hypertension 1988年)。
一方、ドイツの一般開業医を対象とした研究では、朝の診察室血圧を測り、症状を質問票で尋ねています。治療を受けていない高血圧の患者さん2,154人では、めまいが19.6%、頭痛が17.0%にみられ、血圧が正常な1,399人の13.6%と7.4%より明らかに多くなっていました。さらに、血圧が高い群ほど症状の割合が高くなる傾向もありました(出典:Middeke ら「Prevalence of hypertension-attributed symptoms in routine clinical practice: a general practitioners-based study」Journal of Human Hypertension 2008年)。
3つの研究は対象も方法も異なるため、単純には比べられません。ただ、全体としては、頭痛やめまいが高血圧の人にやや多い可能性はあるものの、症状の出方には個人差が大きく、症状の有無から血圧の高さを当てることはできない、と読むのが妥当です。システマティックレビューの中でも、同じ日の血圧とめまいや頭痛などの症状に関連がなかったとする713人の研究が紹介されています(前掲 Horne ら)。一方で、降圧治療によって症状が改善し、目標の血圧に達した人ほど改善が大きかったという報告もあり、症状と血圧の関係は「ない」とも「ある」とも言い切れない、複雑なものだと考えられます。
症状を目安にしてしまうことの落とし穴
症状と血圧の関係がはっきりしない以上、症状を目安にして血圧を判断すると、二つの方向で間違えやすくなります。ひとつは、頭痛やめまいが出るたびに血圧のせいだと考えてしまうことです。頭痛やめまいの原因は、睡眠不足、肩や首の緊張、脱水、片頭痛、耳の病気、薬の影響など多岐にわたります。血圧が正常でも起こりますし、血圧が高いときに偶然重なっていただけ、ということも珍しくありません。
もうひとつは、症状がないから血圧は問題ないと考えてしまうことです。こちらのほうが、実際には大きな落とし穴です。血圧が高い状態が長く続くと、脳卒中、心臓病、腎臓病などのリスクが少しずつ高まりますが、その間、自覚症状がないことが多いからです。血管への負担の大きさは、症状の強さとは関係なく進みます。たとえば、高血圧と脳卒中や高血圧と腎臓病の記事で触れているように、合併症が目に見える形で現れるのは、かなり進んでからになることも少なくありません。
「血圧が上がるとのぼせる」「顔がほてる」「肩がこる」といった症状についても、よく耳にしますが、今回確認した一次文献では、血圧との関係を裏づける十分な根拠は見つかりませんでした。こうした感覚を頼りに血圧の状態を推測するのは避け、数値で確かめるようにしましょう。
すぐに受診や救急相談が必要な症状
「症状は目安にならない」ことと、「症状を軽く見てよい」ことは別の話です。血圧が非常に高いときに、脳や心臓、大血管などに急な障害が起きている場合があり、これは高血圧緊急症と呼ばれます。厚生労働省の資料では、次のような症状は、血圧の高さにかかわらず急いで対応が必要な可能性があるものとして挙げられています(出典:前掲の厚生労働省マニュアル)。
- 突然の強い頭痛、吐き気や嘔吐、視野のかすみ、意識がぼんやりする、けいれん(脳の障害の可能性)
- 片側の手足の脱力やまひ、しびれ、ろれつが回らない、言葉が出にくい(脳卒中の可能性)
- 胸の痛みや締めつけ、息苦しさ、急な動悸(心臓の障害の可能性)
- 胸や背中の突き刺すような強い痛み(大動脈の障害の可能性)
こうした症状が突然現れたときは、血圧を測り直して様子を見るより、救急車を呼ぶか、救急相談の窓口に連絡することが優先です。なお、同じ資料には、180/120mmHgのような非常に高い値が出ていても、こうした症状がまったくない場合には、必ずしも救急受診は必要なく、早めに医療機関へ相談する対応が勧められると書かれています。血圧が高く出たときの動き方は、血圧の急上昇の記事も参考にしてください。
症状がなくても確かめたいこと:血圧を数字で知る
症状が当てにならない以上、高血圧に気づく方法は血圧を測ることしかありません。日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、診察室で測った血圧が140/90mmHg以上を高血圧、130〜139/80〜89mmHgを高値血圧とし、家庭で測った血圧では135/85mmHg以上を高血圧、125〜134/75〜84mmHgを高値血圧としています。この分類は2019年版から変わっていません。また、治療を始めた後の目標は、診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満とされています(出典:Ohya ら「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)」Hypertension Research 2025年)。ガイドラインの全文ではなく、この要点をまとめた論文で確認した数値です。
同じ論文では、家庭血圧の測定が診断と管理の中心に位置づけられており、家庭血圧に基づいて治療を調整したほうが、診察室の血圧だけに基づくより降圧効果が大きいというメタ解析も紹介されています。診察室では緊張で高く出る人もいれば、反対に診察室では正常でも家では高い人もいます。症状がなくても、家庭で毎日同じ条件で測っておくことが、いちばん確かな備えになります。測り方は血圧の正しい測り方、血圧計を選ぶときの注意点は家庭用血圧計の選び方にまとめています。
健康診断などで血圧が高いと指摘されたときや、家庭血圧が継続して基準を超えているときは、症状がなくても、一度内科などの医療機関で相談することをお勧めします。逆に、頭痛やめまいなどがあって血圧を測っても正常範囲だった場合は、血圧以外の原因が隠れている可能性があるため、その症状について改めて医療機関に相談してください。
まとめ
- 高血圧には特徴的な自覚症状がほとんどなく、症状がなくても血圧が高いことはよくあります。
- 頭痛やめまいが高血圧の人にやや多いという報告はありますが、研究結果は一致せず、症状の有無で血圧は判断できません。
- 突然の強い頭痛、片側のまひ、胸の痛み、息苦しさなどが出たときは、血圧の数字にかかわらず救急相談や受診を優先します。
- 血圧は症状ではなく数値で確かめます。家庭血圧が135/85mmHg以上、または診察室血圧が140/90mmHg以上なら、症状がなくても医療機関に相談しましょう。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 重症高血圧」
- Ohya Y, et al. Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertens Res. 2025;48:2500-2511
- Fuchs FD, et al. Headache is not more frequent among patients with moderate to severe hypertension. J Hum Hypertens. 2003;17:787-790
- Di Tullio M, et al. Prevalence of symptoms generally attributed to hypertension or its treatment: Study on blood pressure in elderly outpatients (SPAA). J Hypertens. 1988;6(Suppl 1):S87-S90
- Middeke M, et al. Prevalence of hypertension-attributed symptoms in routine clinical practice: a general practitioners-based study. J Hum Hypertens. 2008;22:252-258
- Horne CE, et al. Symptom experiences in hypertension: A mixed methods systematic review. 2022(Oxford Brookes University RADAR 収載の査読後原稿)



