健康診断や病院で測った血圧が「今日はたまたま高かった」のか「実際に高血圧なのか」を判断するには、正しい方法で繰り返し測ることが欠かせません。血圧は測る場所や測り方によって数値が変わり、同じ人でも診察室と自宅とで結果が異なることは珍しくありません。
この記事では、高血圧の診断基準、診察室血圧・家庭血圧・24時間血圧(ABPM)の違い、そして自宅で正確に血圧を測るための具体的な手順を解説します。
高血圧の診断基準|どこで測るかで基準値が変わる
高血圧の診断基準は、測定する場所によって数値が異なります。これは、病院で測ると緊張などで血圧が上がりやすい人がいる一方、自宅では普段どおりの血圧が測れるためです。
| 測定方法 | 高血圧とされる基準 |
| 診察室血圧 | 140/90 mmHg 以上 |
| 家庭血圧 | 135/85 mmHg 以上 |
| 24時間血圧(ABPM・24時間平均) | 130/80 mmHg 以上 |
この基準は長年大きく変わっていませんが、日本高血圧学会は2025年8月に6年ぶりとなる「高血圧管理・治療ガイドライン2025」を発行しました。診断基準そのものは従来どおりですが、治療の目標については年齢や合併症の有無にかかわらず、診察室血圧130/80 mmHg未満、家庭血圧125/75 mmHg未満に統一されたと報告されています(出典:公益社団法人日本栄養士会「【日本高血圧学会】高血圧管理・治療ガイドライン2025を発表」2025年9月2日、日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。目標をどこまで下げるかは年齢や持病によって医師が個別に判断するため、数値の一人歩きではなく主治医との相談が前提になります。
白衣高血圧・仮面高血圧|見逃されやすい2つのタイプ
診察室と家庭で血圧の結果が食い違うケースには、次の2パターンがあります。
- 白衣高血圧 診察室では高いが、家庭では正常。緊張により一時的に上がると考えられ、今のところ心血管リスクへの影響ははっきりしていませんが、将来的に持続性の高血圧に移行することがあるため、定期的な確認が必要です。
- 仮面高血圧 診察室では正常だが、家庭では高い。家庭血圧を測っていなければ見逃されてしまうタイプで、持続する高血圧と同程度かそれ以上に心血管リスクが高いとされています。
米国心臓協会(AHA)の血圧測定に関する科学的声明でも、仮面高血圧は心血管疾患のリスクが明確に高いグループとされており、診察室の数値だけで「正常」と判断しない重要性が指摘されています(出典:Muntner P, et al. Measurement of Blood Pressure in Humans: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension. 2019;73(5):e35-e66.)。このタイプを見つけるためにも、次に説明する家庭血圧の測定が重要になります。
家庭血圧の正しい測り方
日本高血圧学会は、上腕で測るタイプの血圧計を使った家庭血圧測定を推奨しています。手首式は測定時の腕の角度で誤差が出やすいため、可能であれば上腕式を選びましょう。
測定前の準備
- トイレを済ませておく(膀胱に尿がたまっていると血圧が高めに出ることがあります)
- 椅子に座って1〜2分安静にしてから測る
- 測定中は話さない、動かない
- カフを巻く腕は心臓の高さに置く
測るタイミング
- 朝 起床後1時間以内・朝食前・服薬前
- 晩 就寝直前
回数と記録
1回の機会につき原則2回測定し、その平均値を記録します。週に5日以上測定し、朝晩の記録を主治医に見せることが勧められています(出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」)。記録には血圧手帳やアプリを使うと、受診時に経過を伝えやすくなります。
診察室血圧・24時間血圧(ABPM)の役割
診察室血圧は最も広く使われている測定方法ですが、白衣高血圧の影響を受けやすいという弱点があります。一方、24時間血圧測定(ABPM)は専用の機器を装着し、日中・夜間を通して自動的に血圧を測り続ける方法で、白衣高血圧や仮面高血圧の判定、夜間の血圧評価に役立つため、家庭血圧や診察室血圧の結果だけで判断が難しい場合に医師が提案することがあります。夜間の血圧が高い状態は、日中の血圧が正常であっても心血管疾患のリスクと関連することが報告されています(出典:前掲Muntner, et al. 2019)。
測定結果をどう受け止める?よくある誤解
「収縮期(上の血圧)が160を超えなければ様子を見てよい」という誤解が広がっていることがありますが、これは正しくありません。前述のとおり、2025年のガイドラインでは130/80 mmHg(診察室)が行動を起こす一つの目安として位置づけられています。数値が基準に近づいてきたら、自己判断で放置せず医師に相談することが勧められます。
逆に、1回だけ高い値が出たからといって、それだけで高血圧と決めつける必要もありません。緊張、運動直後、会話中の測定などは数値を押し上げる要因になります。数日〜1週間程度、同じ条件で測り続けた記録をもとに判断することが大切です。
測定を続けるためのコツ
- 毎日同じ条件で測る 測定時刻・服装(腕を出しやすい服)・姿勢をできるだけそろえる
- 測定30分前はカフェイン・喫煙・運動を避ける 一時的に血圧が上がるため
- 同じ機種を使い続ける 機器を変えると数値の連続性が失われる
- 記録を止めない 数値が落ち着いてきた時期こそ、変化に気づくために測定を継続する
測り方の基本を押さえたら、次は数値の意味を正しく理解することが大切です。基準値の詳しい分類は正常血圧の範囲は?高血圧の基準値と分類で、二次性高血圧の可能性については本態性高血圧と二次性高血圧の違いとは?で解説しています。急に血圧が上がったときの対応は血圧の急上昇を防ぐには?危険な瞬間と対策をご覧ください。
まとめ
- 高血圧の基準は診察室140/90mmHg以上、家庭135/85mmHg以上で、測る場所によって数値が異なります
- 2025年のガイドラインでは、治療の目標が年齢によらず診察室130/80mmHg未満・家庭125/75mmHg未満に統一されました
- 診察室だけ高い「白衣高血圧」、家庭だけ高い「仮面高血圧」はどちらも見逃されやすいタイプです
- 家庭血圧は上腕式の機器で、朝晩それぞれ2回測定し平均を記録するのが基本です
- 記録は自己判断の材料ではなく、主治医に見せて相談するための材料として活用しましょう
測定機器は上腕式を選ぶ
家庭血圧計には上腕式と手首式がありますが、日本高血圧学会は上腕式の使用を推奨しています。手首式は手首の位置が心臓の高さからずれやすく、測定のたびに誤差が生じやすいためです。上腕式であっても、腕帯(カフ)のサイズが自分の腕の太さに合っていないと正確な値が得られないため、購入時にはカフのサイズも確認することが大切です。医療機器として認証された家庭用血圧計を選ぶことも、精度を保つうえで重要なポイントです。
継続して記録することの意味
家庭血圧は、1回だけ測って終わりにするのではなく、朝・晩それぞれ2回ずつ測定し、その平均値を記録として残していくことが基本です。数日〜1週間程度の記録をつけることで、その日だけの変動に惑わされず、自分の血圧の傾向をより正確に把握できます。近年はスマートフォンアプリと連動する血圧計も増えており、測定値を自動的にグラフ化できるものもあります。紙の手帳でもアプリでも構いませんが、継続して記録し、通院時にその記録を持参することで、医師が治療方針を判断する際の重要な手がかりになります。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(2025年8月29日発行). https://www.jpnsh.jp/guideline.html
- 日本高血圧学会. 「家庭で血圧を測定しましょう」(家庭血圧測定パンフレット). PDF
- Muntner P, Shimbo D, Carey RM, et al. Measurement of Blood Pressure in Humans: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension. 2019;73(5):e35-e66. PubMed
- 公益社団法人日本栄養士会. 「【日本高血圧学会】高血圧管理・治療ガイドライン2025を発表」2025年9月2日. https://www.dietitian.or.jp/trends/2025/447.html



