降圧薬を飲んでいる人が特に気をつけたい飲み合わせは、グレープフルーツと一部のカルシウム拮抗薬、痛み止め(NSAIDs)と複数の降圧薬の組み合わせ、カリウムを増やす薬・サプリメントの3つです。どれも「絶対に一緒に使えない」わけではありませんが、薬の効きすぎや腎臓への負担、血液中のカリウムの上がりすぎにつながることがあります。自己判断で薬をやめるのではなく、市販薬やサプリメントを足す前に、お薬手帳を見せて医師・薬剤師に確認することがいちばん確実な対策です。
「飲み合わせ」とは?なぜ降圧薬で問題になるのか
飲み合わせ(薬物相互作用)とは、ある薬の効き方が、ほかの薬や食べ物、サプリメントによって強まったり弱まったりすることです。起こり方は大きく2つに分けられます。1つは、薬が体に吸収されたり分解されたりする量が変わり、血液中の薬の濃度そのものが変わるタイプです。もう1つは、濃度は変わらなくても、体への作用が重なったり打ち消し合ったりするタイプです。
降圧薬でこの問題が起こりやすいのには理由があります。高血圧は長く付き合う病気で、降圧薬は何年も続けて飲むことが多い薬です。年齢とともに、膝や腰の痛み、不眠、胃腸の不調、脂質異常症や糖尿病など、ほかの薬を飲む機会も増えていきます。日本高血圧学会の最新のガイドラインでは、年齢などにかかわらず降圧目標を130/80mmHg未満とする方針が示されており(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」の要点(Hypertension Research, 2025))、目標まで下げるために降圧薬そのものを2〜3種類飲んでいる人も少なくありません。薬の数が増えるほど、組み合わせの数も増えます。
もう1つの理由は、降圧薬の「効きすぎ」と「効かなさ」のどちらも体に影響することです。効きすぎれば、立ちくらみやふらつき、転倒につながります。逆に効果が弱まれば、血圧が目標まで下がらず、脳卒中や心臓病の予防という本来の目的が果たせません。降圧薬の種類ごとの特徴は降圧剤の種類と効果で解説しています。この記事では、その中でも患者さん自身が日常生活で気づきやすい飲み合わせを取り上げます。
グレープフルーツとカルシウム拮抗薬の飲み合わせ
降圧薬の飲み合わせとして最もよく知られているのが、グレープフルーツです。グレープフルーツに含まれるフラノクマリンという成分は、小腸で薬を分解する酵素(CYP3A4)の働きを止めてしまいます。その結果、ふだんなら腸で分解されて体に入らない分まで吸収され、血液中の薬の濃度が高くなります。カナダの研究者による総説では、グレープフルーツと飲み合わせが問題になる薬は85種類以上あり、そのうち重い副作用につながりうる薬が43種類に増えていると報告されています(出典:Bailey DG, et al. CMAJ. 2013)。
降圧薬の中で影響を受けやすいのは、カルシウム拮抗薬の一部です。同じ総説では、フェロジピンやニフェジピンは血圧の下がりすぎや足のむくみが起こりうる薬として挙げられ、代わりの候補としてアムロジピンが示されています。つまり、同じカルシウム拮抗薬でも、薬によって影響の大きさが違います。自分の薬がどれに当たるかは、薬の名前だけでは判断しにくいため、薬剤師に確認するのが確実です。
注意したいのは、この作用が「一緒に飲んだときだけ」の問題ではないことです。総説によると、コップ1杯(約200mL)のジュースや果実1個でも影響が出ることがあり、酵素の働きは新しく作り直されるまで戻らないため、飲んでから10時間後でも約半分、24時間後でも約4分の1の影響が残ると報告されています。「薬と時間をずらせば大丈夫」とは言い切れないのはこのためです。また、グレープフルーツだけでなく、ダイダイ(マーマレードの原料になる苦味のあるオレンジ)、ライム、ブンタン(ザボン)にも同じ成分が含まれる一方、温州みかんやバレンシアオレンジなどの甘いオレンジは問題にならないとされています。
この総説は、高齢の方ほど影響を受けやすいことにも触れています。高齢になると薬の数が増えるうえ、血圧が下がりすぎたときに体が補う力が弱くなるためです。カルシウム拮抗薬を飲んでいてグレープフルーツが好きな方は、「食べてはいけない」と決めつける前に、いまの薬で問題になるかどうかを薬剤師に聞いてみてください。必要に応じて、影響の少ない薬に変えるという選択肢もあります。
痛み止め(NSAIDs)と降圧薬の飲み合わせ
ロキソプロフェンやイブプロフェンなど、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる痛み止めは、病院の処方だけでなく市販薬としても広く使われています。NSAIDsは、体に塩分と水分をためやすくし、血管を広げる物質の働きを弱めるため、それ自体で血圧を上げたり、降圧薬の効果を弱めたりすることがあります。痛み止めや市販薬で血圧が上がるしくみは薬剤誘発性高血圧の原因と対策で詳しく解説しています。
飲み合わせとして特に知っておきたいのは、腎臓への影響です。ACE阻害薬やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は腎臓に入る血管の圧を調整し、利尿薬は体の水分を減らします。そこにNSAIDsが加わると、腎臓に流れる血液を保つしくみが同時に弱まり、急性腎障害(急に腎臓の働きが落ちる状態)が起こりやすくなると考えられています。この組み合わせは英語圏で「トリプル・ワミー(三重の打撃)」と呼ばれることもあります。
英国の約48万7,000人の降圧薬利用者を調べた研究では、利尿薬・ACE阻害薬・ARBのうち1種類にNSAIDsを加えた場合は急性腎障害の増加はみられませんでしたが、利尿薬とACE阻害薬またはARBの2種類にNSAIDsを加えた「3剤の組み合わせ」では、急性腎障害の発生率が約1.31倍に高まっていました。特に、使い始めて最初の30日間は約1.82倍と、リスクが最も高かったと報告されています(出典:Lapi F, et al. BMJ. 2013)。一人ひとりにとっての絶対的なリスクは高くありませんが、「降圧薬を2種類以上飲んでいる人が、新しく痛み止めを飲み始める」場面は注意が必要だといえます。
脱水になりやすい状況、たとえば夏場に汗を多くかいたとき、下痢や嘔吐が続くとき、食事や水分がとれないときは、腎臓への負担がさらに大きくなります。痛み止めを続けて使う必要がある場合や、市販の痛み止めを買う場合は、降圧薬を飲んでいることを伝え、どの痛み止めを選ぶか、どれくらいの期間使うかを医師や薬剤師と相談してください。
カリウムを増やす薬・サプリメントとの組み合わせ
ACE阻害薬やARB、スピロノラクトンやエプレレノンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MR拮抗薬)は、体からカリウムが出ていくのを抑える作用をもっています。これは心臓や腎臓を守るうえで役立つ面もありますが、カリウムを増やすものが重なると、血液中のカリウムが上がりすぎる「高カリウム血症」が起こることがあります。高カリウム血症は、脱力感やしびれのほか、重くなると不整脈の原因になります。
この組み合わせの影響を示した研究として、カナダ・オンタリオ州の66歳以上の住民を対象にした調査があります。心不全に対するスピロノラクトンの有効性を示した臨床試験が発表された後、ACE阻害薬を飲んでいる心不全の高齢者でスピロノラクトンの処方が大きく増え、それに伴って高カリウム血症による入院が1,000人あたり2.4人から11.0人に、高カリウム血症に関連した死亡も1,000人あたり0.3人から2.0人に増えたと報告されています(出典:Juurlink DN, et al. N Engl J Med. 2004)。臨床試験で有効だった組み合わせでも、検査による見守りが十分でない実際の診療では、思わぬ副作用につながりうることを示した研究です。
患者さんの身近なところでは、カリウムのサプリメントや、塩化カリウムを使った一部の減塩調味料にも注意が必要です。カリウムは本来、血圧を下げる方向に働く大切な栄養素で、野菜や果物からとることは勧められています(カリウム・マグネシウムと血圧もご覧ください)。ただし、ACE阻害薬・ARB・MR拮抗薬を飲んでいる方や、腎臓の働きが落ちている方は、サプリメントなどでまとめてカリウムをとる前に主治医に相談してください。定期的な血液検査でカリウムの値を確認してもらうことも大切です。
市販のかぜ薬・漢方薬にも注意が必要?
市販薬の中には、降圧薬の効果を打ち消す方向に働くものもあります。代表的なのが、鼻づまりを抑える成分として一部のかぜ薬や鼻炎薬に含まれるプソイドエフェドリンです。24件の臨床試験(1,285人)をまとめた解析では、プソイドエフェドリンによって収縮期血圧が平均で約1mmHg、脈拍が1分あたり約3回上がり、血圧がコントロールされている高血圧の方でも同じ程度の上昇がみられました。用量が多いものや、成分がすぐに溶け出すタイプほど上昇が大きい傾向も報告されています(出典:Salerno SM, et al. Arch Intern Med. 2005)。平均すればわずかな変化ですが、人によっては大きく上がることもあるため、高血圧の治療中であることを店頭で伝えて選んでもらうと安心です。
もう1つは、漢方薬や胃腸薬、のど飴などに含まれる甘草(カンゾウ)です。甘草の主成分であるグリチルリチンは、体に塩分と水分をため、カリウムを失わせる方向に働き、血圧を上げることがあります。この状態は「偽アルドステロン症」と呼ばれます。健康な成人を対象にした研究では、甘草を含む菓子(リコリス)を1日50gから200g、2〜4週間食べてもらったところ、量に比例して収縮期血圧が3.1〜14.4mmHg上昇し、最も少ない量でも上昇がみられました(出典:Sigurjónsdóttir HA, et al. J Hum Hypertens. 2001)。甘草は複数の漢方薬に含まれていることが多いため、漢方薬を2種類以上飲んでいる場合は量が重なっていないか確認してもらいましょう。漢方薬と血圧の関係は高血圧と漢方薬でも取り上げています。
なお、甘草でカリウムが失われる作用は、サイアザイド系やループ系の利尿薬でカリウムが下がる作用と同じ方向に働きます。利尿薬を飲んでいる方が甘草を含む薬を長く続けると、低カリウム血症による脱力や筋肉のけいれんなどが起こりやすくなるため、手足に力が入らない、だるさが続くといった変化があれば早めに相談してください。
飲み合わせのトラブルを防ぐためにできること
飲み合わせの問題の多くは、医師や薬剤師が「何を飲んでいるか」を知っていれば防ぐことができます。逆にいえば、複数の医療機関にかかっている場合や、市販薬・サプリメントを自分で選んでいる場合に見落とされやすくなります。日常生活では、次のような点を意識してみてください。
- ✔ お薬手帳を1冊にまとめ、受診のたび・薬局で薬を受け取るたびに見せる
- ✔ 市販薬・サプリメント・漢方薬を買うときは、降圧薬を飲んでいることを薬剤師に伝える
- ✔ 新しい薬を始めてから、ふらつき・立ちくらみ・むくみ・だるさなどが出たら、自己判断で中止せず相談する
- ✔ グレープフルーツなどの食品について気になる場合は、いまの薬で問題になるかを確認する
- ✔ 下痢や嘔吐で水分がとれない日は、薬をどうするか事前に主治医と決めておく
飲み合わせが心配だからといって、降圧薬を自分の判断でやめてしまうのは避けてください。急に薬をやめると、血圧が大きく上がることがあります。薬を減らしたりやめたりできるかどうかの考え方は降圧薬はやめられる?で解説しています。また、飲み合わせ以外の原因で体調の変化が起きている可能性もあるため、降圧薬の副作用もあわせて参考にしてください。
家庭血圧を記録している方は、新しい薬を始めた前後の値を見比べると、飲み合わせの影響に気づく手がかりになります。いつもより明らかに低い値が続く、あるいは高い値が続くといった変化があれば、記録を持って相談しましょう。
まとめ
降圧薬は長く続ける薬だからこそ、ほかの薬や食品との組み合わせに目を向けることが大切です。グレープフルーツは一部のカルシウム拮抗薬の効きを強めることがあり、時間をずらしても影響が残ることがあります。痛み止め(NSAIDs)は、利尿薬とACE阻害薬・ARBを一緒に飲んでいる場合、特に使い始めの時期に腎臓への負担が大きくなることが研究で示されています。ACE阻害薬・ARB・MR拮抗薬を飲んでいる方は、カリウムのサプリメントや減塩調味料にも注意が必要です。市販のかぜ薬や甘草を含む漢方薬は、血圧を上げる方向に働くことがあります。
どの組み合わせも、事前に医師や薬剤師が把握していれば避けたり調整したりできるものです。お薬手帳を1冊にまとめ、新しい薬やサプリメントを始める前に「降圧薬を飲んでいます」と伝える習慣をつけましょう。気になる症状や血圧の変化があれば、薬を自己判断でやめずに、かかりつけの医療機関に相談してください。
血圧の相談ができるクリニック
本サイトを運営する株式会社ENの関連法人・医療法人社団季邦会では、首都圏5拠点で高血圧をはじめとする生活習慣病の外来を行っています。健診で血圧を指摘された方、家庭血圧が高めで迷っている段階の方もご相談いただけます。
- いびき・睡眠時無呼吸「高血圧といびきの」神保町駅前内科クリニック高血圧・いびき・睡眠時無呼吸。神保町駅A3出口 徒歩1分。オンライン診療対応。予約・詳細を見る
- 甲状腺・睡眠時無呼吸巣鴨クリニック内科・糖尿病内科・甲状腺内科。睡眠時無呼吸にも対応。Web予約・Web問診。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科街のクリニック 大島駅前内科・糖尿病甲状腺内科・呼吸器内科。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科・土日診療街のクリニック 立川・村山内科・糖尿病内科・甲状腺内科・呼吸器内科。土日診療、在宅医療・オンライン診療。予約・詳細を見る
- 内科・呼吸器内科街のクリニック 日野・八王子内科・呼吸器内科・糖尿病内科など。予約・詳細を見る
※ 本サイトは株式会社ENが運営しています。掲載のクリニックは当社の関連法人である医療法人社団季邦会が運営する診療所です。
お近くの医療機関を地域や診療科から探したい方へ他のクリニックを探す
この記事が含まれるガイド
あわせて読みたい
この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertens Res. 2025;48(10):2500-2511.
- Bailey DG, Dresser G, Arnold JMO. Grapefruit–medication interactions: forbidden fruit or avoidable consequences? CMAJ. 2013;185(4):309-316.
- Lapi F, Azoulay L, Yin H, Nessim SJ, Suissa S. Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ. 2013;346:e8525.
- Juurlink DN, et al. Rates of hyperkalemia after publication of the Randomized Aldactone Evaluation Study. N Engl J Med. 2004;351(6):543-551.
- Salerno SM, et al. Effect of oral pseudoephedrine on blood pressure and heart rate: a meta-analysis. Arch Intern Med. 2005;165(15):1686-1694.
- Sigurjónsdóttir HA, et al. Liquorice-induced rise in blood pressure: a linear dose-response relationship. J Hum Hypertens. 2001;15:549-552.



