高血圧は、日本で最も多くの人が該当する生活習慣病のひとつで、その数は約4,300万人にのぼると推計されています。しかし自覚症状がほとんどないため、「指摘されたけれど、そのままにしている」という方も少なくありません。この記事では、2025年8月に改訂された最新の日本高血圧学会のガイドライン(JSH2025)に基づき、高血圧の定義、分類、原因、症状、治療の基本方針を整理します。
高血圧の定義
高血圧の診断基準は、医療機関で測る「診察室血圧」と、自宅で測る「家庭血圧」とで異なります。診察室血圧では収縮期140mmHg以上・拡張期90mmHg以上、家庭血圧では収縮期135mmHg以上・拡張期85mmHg以上が高血圧と定義されており、この基準値自体はJSH2025でも据え置かれています。一方、血圧の管理が必要とされる範囲は広がっており、診察室血圧120/80mmHg以上を「正常高値血圧」として、すでに生活習慣の見直しなどの管理対象に位置づけている点が特徴です(出典:CareNet.com「JSH2025発刊」2025年9月8日)。
血圧の分類
- 正常血圧:収縮期120mmHg未満 かつ 拡張期80mmHg未満
- 正常高値血圧:収縮期120〜129mmHg かつ 拡張期80mmHg未満
- 高値血圧:収縮期130〜139mmHg または 拡張期80〜89mmHg
- Ⅰ度高血圧:収縮期140〜159mmHg または 拡張期90〜99mmHg
- Ⅱ度高血圧:収縮期160〜179mmHg または 拡張期100〜109mmHg
- Ⅲ度高血圧:収縮期180mmHg以上 または 拡張期110mmHg以上
この分類は、健診結果などで自分の血圧がどの段階にあるかを把握する目安になります。「高値血圧」の段階はまだ高血圧の診断基準には満たないものの、すでに心血管疾患のリスクが高まり始める範囲とされているため、放置せず生活習慣を見直すことが推奨されています。
日本における高血圧の有病者数
日本の高血圧有病者数は約4,300万人と推計されており、これは成人の約3人に1人にあたる規模です(出典:Nomura S, et al. Lancet Regional Health – Western Pacific. 2022、CareNet.com経由で確認)。この数字は2017年の推計とほぼ同水準で、依然として日本人にとって非常に身近な病気であることがわかります。しかし、治療を受けている人のなかでも血圧が目標値まで十分にコントロールできていない人が多いことも課題として指摘されています。
高血圧の原因:本態性と二次性
高血圧の大部分(約9割)は、特定の一つの原因を特定できない「本態性高血圧」に分類されます。加齢、塩分の摂りすぎ、肥満、運動不足、ストレス、遺伝的な体質など、複数の要因が積み重なって徐々に血圧が上昇していくタイプです。残りの約1割は、特定の病気やホルモンの異常が原因となる「二次性高血圧」で、原発性アルドステロン症や睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進症などが代表例です。二次性高血圧は原因を治療することで血圧が大きく改善する可能性があるため、本態性高血圧と二次性高血圧の違いもあわせてご確認ください。
症状:自覚症状に乏しいことが最大の特徴
高血圧の最大の特徴は、血圧がかなり高くなるまで自覚症状がほとんど現れないことです。頭痛やめまい、動悸といった症状が出るのは重症化してからであることが多く、多くの人は健診での指摘によって初めて自分の血圧の高さに気づきます。この「症状の乏しさ」こそが高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれる理由であり、放置した場合のリスクを正しく理解し、症状がなくても定期的に血圧を確認する習慣が重要になります。
治療の基本方針
高血圧の治療は、生活習慣の改善と、必要に応じた降圧薬による薬物療法を組み合わせて行うのが基本です。JSH2025では、降圧目標が年齢にかかわらず診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)に統一され、従来設けられていた75歳以上の患者に対する140/90mmHg未満という例外的な目標が撤廃されました。生活習慣の見直しだけで目標値に届く方もいれば、降圧薬による治療が必要な方もおり、どちらの場合も自己判断で治療を中断せず、主治医と相談しながら進めることが大切です。
なぜ「診察室血圧」と「家庭血圧」で基準が違うのか
診察室血圧の基準値(140/90mmHg)と家庭血圧の基準値(135/85mmHg)が異なるのは、医療機関を受診したという状況そのものが緊張や不安を引き起こし、血圧を一時的に押し上げる「白衣現象」が起こりやすいためです。そのため、リラックスした自宅環境で測る家庭血圧のほうが、より低い基準値が採用されています。JSH2025を含む近年のガイドラインでは、診察室での測定に加えて、家庭血圧を日常的に記録することの重要性がこれまで以上に強調されており、診察室では正常なのに家庭血圧が高い「仮面高血圧」や、逆に診察室でだけ高くなる「白衣高血圧」を見分けるためにも、朝晩の家庭血圧測定が推奨されています。
JSH2025の主な改訂ポイント
2025年8月29日に発刊されたJSH2025は、2019年版から6年ぶりの改訂となりました。改訂の柱のひとつが、前述の通り降圧目標を全年齢で統一したことですが、それ以外にも、降圧薬の第一選択薬群(G1)にβ遮断薬(ビソプロロールやカルベジロールなど)が復活したこと、食塩摂取量の管理に加えて尿中のナトリウム・カリウム比(目標4未満、理想は2未満)という新しい指標が導入されたこと、生活習慣の管理にスマートフォンアプリやウェアラブル端末といったデジタル技術の活用が新たに盛り込まれたことなどが挙げられます。ガイドラインの名称も「治療ガイドライン」から「管理・治療ガイドライン」へと変更され、日々の血圧管理そのものを重視する姿勢が示されています(出典:CareNet.com、日本高血圧学会公式サイト)。
健診で「要治療」「要精査」と言われたら
健診結果で血圧について「要治療」「要精査」の判定を受けた場合、自覚症状がないからと放置せず、必ず医療機関を受診することが重要です。初診では、問診と血圧測定に加えて、血液検査・尿検査・心電図などを通じて、腎機能や糖代謝、心臓への負担の有無を確認し、二次性高血圧の可能性がないかもあわせてスクリーニングされることがあります。「まだⅠ度だから様子を見よう」と自己判断で放置してしまうと、気づかないうちに血管や臓器への負担が蓄積してしまうことがあるため、健診の指摘は血圧管理を見直す良いきっかけとして活用することをおすすめします。かかりつけ医を持ち、定期的に血圧の推移を確認してもらうことが、長期的な健康管理の第一歩になります。
血圧の相談ができるクリニック
本サイトを運営する株式会社ENの関連法人・医療法人社団季邦会では、首都圏5拠点で高血圧をはじめとする生活習慣病の外来を行っています。健診で血圧を指摘された方、家庭血圧が高めで迷っている段階の方もご相談いただけます。
- いびき・睡眠時無呼吸「高血圧といびきの」神保町駅前内科クリニック高血圧・いびき・睡眠時無呼吸。神保町駅A3出口 徒歩1分。オンライン診療対応。予約・詳細を見る
- 甲状腺・睡眠時無呼吸巣鴨クリニック内科・糖尿病内科・甲状腺内科。睡眠時無呼吸にも対応。Web予約・Web問診。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科街のクリニック 大島駅前内科・糖尿病甲状腺内科・呼吸器内科。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科・土日診療街のクリニック 立川・村山内科・糖尿病内科・甲状腺内科・呼吸器内科。土日診療、在宅医療・オンライン診療。予約・詳細を見る
- 内科・呼吸器内科街のクリニック 日野・八王子内科・呼吸器内科・糖尿病内科など。予約・詳細を見る
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数



