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仮面高血圧とは?家庭でだけ血圧が高くなる原因と見つけ方

2026 8/28
基礎医学
2026年8月28日
仮面高血圧とは?家庭でだけ血圧が高くなる原因と見つけ方

健康診断でも、かかりつけの医療機関でも、血圧はいつも正常。それなのに、血管や心臓には高血圧と同じような負担がかかっている——そうした状態があることをご存じでしょうか。それが「仮面高血圧(かめんこうけつあつ)」です。診察室という場面でだけ血圧が正常に見えてしまうため、通常の健診や外来では見逃されやすい状態として知られています。この記事では、仮面高血圧がどのような状態なのか、なぜ見つけにくく、なぜ注意が必要なのか、そしてどうすれば見つけられるのかを、順を追って整理します。

目次

仮面高血圧とは?診察室では見つからない高血圧

仮面高血圧は、診察室で測った血圧が140/90mmHg未満に収まっているにもかかわらず、診察室の外で測った血圧——具体的には家庭血圧や日中の24時間血圧——が135/85mmHg以上になっている状態を指します(出典:Kario K「Masked Hypertension: A Review」Hypertension Research 2007)。医療機関という場面でだけ血圧が「仮面」をかぶって正常に見える、というイメージからこの名前がつけられました。

やっかいなのは、健診や外来での血圧測定という、多くの人が血圧を知るいちばん一般的な入り口では、この状態がまったく引っかからないという点です。同じ総説では、仮面高血圧は一般の人のうち最大で10%程度に見られる可能性があると報告されています。決してまれな状態ではありません。

日本の状況も見ておきましょう。日本高血圧学会の報告によれば、日本には推計4,300万人の高血圧の人がいるとされますが、血圧が良好にコントロールされているのはそのうち27%にとどまり、さらに高血圧の人の約3分の1は自分が高血圧であることに気づいていないとされています(出典:Kario K, Ohya Y「Synchronizing science and society: JSH2025 Guidelines × Asakatsu BP action」Hypertension Research 2025)。この「気づかれていない高血圧」の一部を占めているのが、仮面高血圧です。

なお、仮面高血圧とちょうど反対の関係にあるのが、診察室でだけ血圧が上がる「白衣高血圧」です。この2つの違いについては、高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方でも触れていますので、あわせてご覧ください。

「診断の基準」と「治療の目標」を混同しない

仮面高血圧を理解するうえで、いま特に整理しておきたいのが、血圧の数字には性質の異なる2種類があるという点です。ひとつは「高血圧かどうかを判断する基準」、もうひとつは「治療でどこまで下げることを目指すかという目標」です。この2つは同じ数字ではありません。

日本高血圧学会は2025年8月29日に『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(JSH2025)を発刊しました。6年ぶりの改訂となる今回、降圧目標は年齢や合併症にかかわらず原則として統一され、診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満とされています。一方で、高血圧かどうかを判断する基準そのもの(診察室血圧140/90mmHg以上)は、従来どおり据え置かれました(出典:ケアネット「全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会」)。

つまり、仮面高血圧の定義に出てくる「診察室140/90mmHg未満」「家庭135/85mmHg以上」という数字は、あくまで高血圧の診断に用いる基準線です。これと、治療中の方が目指す130/80mmHg(家庭125/75mmHg)という目標値は別のものとして受け止めてください。血圧の分類や基準値の全体像を確認したい方は、正常血圧の範囲は?高血圧の基準値と分類もあわせてお読みいただくと整理しやすくなります。

また、すでに降圧薬による治療を受けている方の場合、診察室では目標を達成しているように見えても、家庭で測ると目標に届いていないことがあります。こうした状態は治療中の仮面高血圧として扱われ、診察室の血圧から予測されるよりも経過が良くないことが報告されています(出典:Kario K「Masked Hypertension: A Review」Hypertension Research 2007)。治療を始めたあとも、家庭血圧の記録を続ける意味はここにあります。

仮面高血圧の3つのタイプ

仮面高血圧は、一日のうちどの時間帯に血圧が高くなるかによって、早朝高血圧・夜間高血圧・昼間高血圧の3つに整理して考えられています(出典:済生会「ホントは怖い『仮面高血圧』」)。どのタイプかによって、見つけ方も気をつけるポイントも変わってきます。

早朝高血圧

診察室血圧が140/90mmHg未満であるのに、早朝に測った家庭血圧の平均が135/85mmHg以上になる場合を早朝高血圧といいます。血圧は夜間から早朝にかけて上がっていく性質があり、夜間の高い血圧がそのまま朝まで続くタイプと、起床前後に急激に上がるモーニングサージと呼ばれるタイプがあります。早朝は交感神経やレニン・アンギオテンシン系といった神経内分泌系のはたらきが高まり、血液が固まりやすい状態にもなるため、この時間帯の血圧の高さは一日の平均値とは別に注意が向けられています。血圧が急に上がる場面については血圧の急上昇を防ぐには?危険な瞬間と対策でも解説しています。

夜間高血圧

24時間血圧計(ABPM)や、夜間測定に対応した家庭血圧計で測った睡眠中の血圧の平均が120/70mmHg以上の場合を夜間高血圧といいます。夜間の血圧は昼間に比べて変動の幅が小さく、その平均値が高いことは心血管疾患のリスクや認知機能・身体機能の低下と関連が指摘されています。朝と就寝前の家庭血圧が正常でも、夜間だけ血圧が高いというケースがある点が見落とされやすいところです。夜間の血圧が下がりにくい背景には睡眠時無呼吸が隠れていることもあり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の関係もあわせて確認しておくとよいでしょう。

昼間高血圧

診察室血圧も家庭血圧も正常な範囲なのに、日中のABPMの平均が135/85mmHg以上になる状態です。職場でのストレス下に血圧が高くなる「職場高血圧」もこのタイプに含まれます。朝晩の家庭血圧測定だけでは検出しにくいため、見つけるには24時間血圧測定や、職場など日中の環境での測定が必要になります。夜勤や交代勤務のある方は、睡眠と覚醒のリズムそのものが不規則になるため、一日の血圧変動に乱れが生じやすいことも知られています。

どんな人に多い?疑われるサイン

仮面高血圧は、誰にでも同じ確率で起こるわけではありません。前述の総説では、比較的若い年代、男性、日中のストレスや身体活動が多いこと、喫煙や飲酒の習慣といった特徴が挙げられています(出典:Kario K「Masked Hypertension: A Review」Hypertension Research 2007)。喫煙が血圧に与える影響については高血圧と喫煙の関係でも詳しく扱っています。

また、健診での血圧は正常でも、血圧がやや高めの範囲(正常域高血圧)にある人の約16%が24時間の測定で仮面高血圧を示し、治療中で診察室血圧が良好にコントロールされている患者さんでも約30%に仮面高血圧の疑いがあると報告されています(出典:済生会「ホントは怖い『仮面高血圧』」)。同じ資料では、次のような方が仮面高血圧の高リスク群として挙げられています。

  • 高血圧の治療を受けている
  • 臓器障害(とくに左室肥大)を指摘されたことがある
  • 喫煙している
  • 日常生活でほとんど体を動かさない
  • アルコールを多く摂取している
  • 心拍数が多い
  • 職場や家庭で精神的ストレスが高い
  • 心血管疾患を合併している
  • 肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病がある

当てはまる項目がある方は、健診の血圧が正常だったからといって安心せず、家庭での測定を習慣にしておくとよいでしょう。

なぜ注意が必要なのか

仮面高血圧が問題視される理由は、見つかりにくいわりに、体への影響が小さくないと考えられているためです。臓器障害や心血管イベントの発生リスクは、血圧がやや高めの人や白衣高血圧の人と比べて高く、通常の高血圧と同程度かそれ以上といわれています。実際、これまでの臨床研究では、仮面高血圧の方は治療中かどうかにかかわらず、左室肥大、頸動脈の壁の肥厚、無症候性の脳血管障害といった高血圧性の臓器障害が進んでいることが示されています(出典:済生会「ホントは怖い『仮面高血圧』」)。

高血圧そのものに自覚症状が乏しいことは広く知られていますが、仮面高血圧はそこに「検査でも引っかからない」という条件が重なります。血圧が高い状態が長く続いていても、本人にも医療者にも気づく機会がないまま時間が経ってしまう——この点が、仮面高血圧のもっとも大きな課題といえます。

見つけるには|家庭血圧測定が出発点

仮面高血圧を見つける方法は、まず家庭で血圧を測ることから始まります。JSH2025は家庭血圧測定を高血圧管理の中心に位置づけ、血圧の変動性や早朝高血圧への対応を重視する構成になっています(出典:Kario K「Implementation hypertension」Hypertension Research 2026)。診察室で年に数回測る血圧よりも、自宅で日々積み重ねた記録のほうが、その人の血圧の実像に近づけるという考え方です。

家庭血圧を測るときの基本的な手順は次のとおりです。

  • 上腕にカフを巻くタイプの血圧計を用意する
  • 朝は起床後1時間以内、排尿を済ませ、朝食と服薬の前に測る
  • 晩は就寝前に測る
  • 背もたれのある椅子に座り、1〜2分静かに過ごしてから測定する
  • カフの位置が心臓の高さになるようにする
  • 朝・晩それぞれ2回ずつ測り、平均値を記録する

測り方の細かい注意点は高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方で詳しく解説しています。また、朝晩の測定だけでは昼間高血圧や夜間高血圧は捉えきれないため、必要に応じて24時間血圧測定(ABPM)や、日中・夜間の測定に対応した機器を用いることが望ましいとされています(出典:済生会「ホントは怖い『仮面高血圧』」)。どの検査が必要かは状況によって異なりますので、医師にご相談ください。

朝の血圧に注目が集まっています

日本高血圧学会は2025年、JSH2025の発刊と同時に「早朝高血圧撲滅宣言」を出し、朝の血圧に焦点をあてた「朝活(あさかつ)BP」——朝の血圧130キャンペーンを開始しました。「朝の血圧130mmHg以上はリスクのある血圧」というスローガンのもと、家庭だけでなく職場や薬局、公共施設なども含めたさまざまな場面での血圧測定を呼びかけています(出典:Kario K, Ohya Y「Synchronizing science and society: JSH2025 Guidelines × Asakatsu BP action」Hypertension Research 2025)。

背景には、朝の時間帯が脳卒中や心筋梗塞といった心血管イベントの起こりやすい時間帯であること、そして朝の血圧上昇がリスクに影響しているにもかかわらず、実際にはもっともコントロールがついていない時間帯だという問題意識があります(出典:ケアネット「全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会」)。朝の血圧を測る習慣は、仮面高血圧のうち少なくとも早朝高血圧のタイプを見つける、もっとも身近な手段だといえます。

家庭で高い値が続いたら

家庭で測った血圧の平均が135/85mmHg以上の日が続く場合や、診察室では正常なのに自宅では高い日が目立つ場合は、記録を持って医療機関に相談してください。1日だけの値ではなく、数日から1週間程度の記録があると、医師が状況を判断する助けになります。血圧手帳やアプリで、測定した日時と値、体調のメモを残しておくとよいでしょう。

受診時には、家庭血圧の記録に加えて、喫煙や飲酒の習慣、睡眠の状況、いびきの有無、勤務形態(夜勤や交代勤務の有無)、服用中の薬などを伝えると、原因の見当をつけやすくなります。血圧が高い背景にホルモンの異常や腎臓の病気などが隠れている場合もあるため、本態性高血圧と二次性高血圧の違いについても知っておくと、検査の意味が理解しやすくなります。

まとめ

仮面高血圧は、診察室では正常に見えるのに、診察室の外では血圧が高くなっている状態です。健診や外来だけでは見つからないという性質があり、だからこそ家庭での測定が重要になります。この記事の要点を整理します。

  • 仮面高血圧は、診察室血圧140/90mmHg未満・診察室外血圧135/85mmHg以上の状態を指す
  • 早朝高血圧・夜間高血圧・昼間高血圧の3つのタイプがある
  • 臓器障害や心血管イベントのリスクは、通常の高血圧と同程度かそれ以上と報告されている
  • 喫煙・多量飲酒・運動不足・ストレス・肥満・糖尿病などがある方はリスクが高いとされる
  • JSH2025は家庭血圧測定を管理の中心に位置づけ、降圧目標は診察室130/80mmHg未満・家庭125/75mmHg未満に統一された
  • 見つける第一歩は、朝と晩の家庭血圧を測って記録すること

健診の結果が正常だったとしても、それは「診察室で測った一時点の血圧が正常だった」ということを意味するにすぎません。ご自身の血圧の全体像を知るために、まずは1週間、朝と晩に測って記録することから始めてみてください。

参考文献

  • Kario K「Masked Hypertension: A Review」Hypertension Research 2007
  • Kario K, Ohya Y「Synchronizing science and society: JSH2025 Guidelines × Asakatsu BP action」Hypertension Research 2025
  • Kario K「Implementation hypertension」Hypertension Research 2026
  • ケアネット「全年齢で130/80mmHg未満を目標に、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』発刊/日本高血圧学会」
  • 済生会「ホントは怖い『仮面高血圧』」

監修

監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNSメディア

  • Youtube Dr.鎌形の正しい医療ナビ https://www.youtube.com/@Dr.kamagata
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血圧の学校編集部は、医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務によって構成されています。すべての記事は鎌形博展医師(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)の監修のもとに制作しています。

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