高血圧は自覚症状がほとんどないまま進行することが多く、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれることもあります。しかし血圧が高い状態を放置すると、脳・心臓・腎臓・血管など全身の臓器に少しずつダメージが蓄積し、深刻な合併症につながることがあります。この記事では、高血圧を放置した場合にどのようなリスクがあるのか、日本人を対象にした研究データをもとに解説します。
「少し高い」だけでもリスクは大きく上がる
高血圧というと重症のイメージを持たれがちですが、実際には軽度の血圧上昇の段階からリスクは着実に高まっています。日本の就労世代8万2千人以上を最大9年間追跡した研究では、正常血圧の人と比較した脳・心血管疾患(脳卒中、虚血性心疾患、心不全、大動脈瘤などの複合)の発症リスクは、正常高値血圧の人で1.98倍、高値血圧の人で2.10倍、Ⅰ度高血圧で3.48倍、Ⅱ度高血圧で4.12倍、Ⅲ度高血圧では7.81倍にものぼることが示されています。つまり「まだⅠ度だから大丈夫」ではなく、正常高値の段階からすでにリスクが約2倍に高まっている点が重要です(出典:横浜市立大学 J-ECOHスタディ, Hypertension Research)。
脳卒中・心血管疾患への影響
国立がん研究センターが日本人男女約3万人を11年間追跡したJPHC研究では、脳卒中の発症に対する血圧区分ごとの寄与度を分析しており、正常血圧から重症高血圧までの血圧区分全体で、脳卒中発症の男性64%・女性50%に関与していたと報告されています。特に軽症高血圧(収縮期140〜159/拡張期90〜99mmHg)は、対象者数が多いために集団全体への影響(寄与危険度割合)が最も大きく、男性で29%、女性で17%を占めていました。全循環器疾患による死亡についても、血圧区分全体が男性38%・女性36%に寄与していたとされています(出典:国立がん研究センター JPHC研究)。
認知症リスクとの関係
高血圧は脳卒中や心臓病だけでなく、将来の認知症リスクにも関わっています。福岡県久山町で長年続けられている疫学研究(久山町研究)によると、血管性認知症の発症リスクは、正常血圧を1とした場合、高血圧前症の段階で中年期2.4倍・老年期3.2倍、Ⅰ度高血圧相当で中年期5.9倍・老年期4.7倍、Ⅱ度高血圧相当では中年期10.1倍・老年期7.3倍にのぼります。さらに、中年期に高血圧だった人は、老年期になって血圧が下がっていたとしても、血管性認知症のリスクが5.3倍と高いままであることも示されており、中年期からの血圧管理が将来の脳の健康にも関わることがうかがえます(出典:健康長寿ネット、久山町研究)。
腎臓・血管へのダメージ
高血圧は腎臓の細い血管にも負担をかけ続け、慢性腎臓病(CKD)の重要な原因のひとつになっています。また、血管の壁が高い圧力にさらされ続けることで動脈硬化が進行し、大動脈にこぶ(大動脈瘤)ができたり、動脈硬化を通じて全身の血流障害につながったりすることもあります。こうした変化は自覚症状がないまま進行することが多く、健診での血圧測定や定期的な検査が早期発見の鍵になります。
放置しないためにできること
- 健診で「要再検査・要治療」と指摘されたら放置せず医療機関を受診する
- 自宅で朝晩の血圧を記録し、変化を把握する
- 軽度の血圧上昇でもリスクは高まることを理解し、生活習慣の見直しを早めに始める
- 症状がなくても、指示された通院・服薬を継続する
高血圧のリスクは「症状が出てから」ではなく、数値の上昇そのものから静かに積み重なっていきます。生活習慣の見直しや適切な治療によって血圧をコントロールすることは、将来の脳卒中・心疾患・認知症・腎臓病といった重い合併症を防ぐことに直結します。
「サイレントキラー」と呼ばれる理由
高血圧が恐れられる最大の理由は、血圧が非常に高くなるまで自覚症状がほとんど現れないことにあります。頭痛やめまい、動悸といった症状が出るのは、多くの場合すでにかなり血圧が高くなってからで、日常的な血圧の上昇そのものは自分では気づきにくいのが実情です。健診で「血圧が高め」と指摘されても、体調に変化を感じないために放置してしまう人が少なくありませんが、血管や臓器へのダメージは自覚症状の有無にかかわらず静かに進行していきます。だからこそ、症状のあるなしにかかわらず、定期的に血圧を測定し、指摘された数値を軽視しないことが重要です。
心不全との関係
高血圧が続くと、心臓は高い血管抵抗に逆らって血液を送り出し続けるため、次第に心筋が厚くなる「心肥大」という変化が起こります。心肥大が進行すると、心臓のポンプ機能が徐々に低下し、息切れやむくみ、倦怠感といった症状を伴う心不全に至ることがあります。心不全は、一度発症すると入退院を繰り返しやすく、生活の質やその後の生命予後にも大きく影響する病気であり、高血圧の管理は将来の心不全予防という観点からも重要です。
東アジア人に多い脳出血のリスク
高血圧の合併症というと欧米では心筋梗塞のイメージが強いですが、日本を含む東アジア人では、欧米人と比較して脳出血(脳の血管が破れて出血するタイプの脳卒中)の発生頻度が高い傾向があることが知られています。脳出血は血圧の急激な上昇と関連が深く、特にコントロール不良の高血圧が長期間続いた場合に起こりやすいとされています。脳梗塞に比べて重症化しやすく、後遺症が残る割合も高いことから、日本人にとって血圧管理は脳出血の予防という観点からも特に重要な意味を持っています。
血圧の相談ができるクリニック
本サイトを運営する株式会社ENの関連法人・医療法人社団季邦会では、首都圏5拠点で高血圧をはじめとする生活習慣病の外来を行っています。健診で血圧を指摘された方、家庭血圧が高めで迷っている段階の方もご相談いただけます。
- いびき・睡眠時無呼吸「高血圧といびきの」神保町駅前内科クリニック高血圧・いびき・睡眠時無呼吸。神保町駅A3出口 徒歩1分。オンライン診療対応。予約・詳細を見る
- 甲状腺・睡眠時無呼吸巣鴨クリニック内科・糖尿病内科・甲状腺内科。睡眠時無呼吸にも対応。Web予約・Web問診。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科街のクリニック 大島駅前内科・糖尿病甲状腺内科・呼吸器内科。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科・土日診療街のクリニック 立川・村山内科・糖尿病内科・甲状腺内科・呼吸器内科。土日診療、在宅医療・オンライン診療。予約・詳細を見る
- 内科・呼吸器内科街のクリニック 日野・八王子内科・呼吸器内科・糖尿病内科など。予約・詳細を見る
※ 本サイトは株式会社ENが運営しています。掲載のクリニックは当社の関連法人である医療法人社団季邦会が運営する診療所です。
お近くの医療機関を地域や診療科から探したい方へ他のクリニックを探す
この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
