「血圧は120/80が正常」というイメージを持っている方は多いと思いますが、実際の血圧分類はもう少し細かく段階分けされています。どの段階にいるかによって、生活習慣の見直しで十分なのか、治療を検討すべきなのかが変わってきます。
この記事では、日本高血圧学会の血圧分類表をもとに、正常血圧から高血圧まで各段階の基準値と、それぞれの段階で気をつけたいことを解説します。
血圧値の分類|正常血圧から III度高血圧まで
日本高血圧学会は、診察室血圧・家庭血圧それぞれについて、血圧を7段階に分類しています。この分類はJSH2019で整理されたもので、2025年8月発行の最新ガイドライン(JSH2025)でも区分自体は維持されています(出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019に関する解説冊子」表1)。
| 分類 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) |
| 正常血圧 | <120 かつ <80 | <115 かつ <75 |
| 正常高値血圧 | 120-129 かつ <80 | 115-124 かつ <75 |
| 高値血圧 | 130-139 かつ/または 80-89 | 125-134 かつ/または 75-84 |
| Ⅰ度高血圧 | 140-159 かつ/または 90-99 | 135-144 かつ/または 85-89 |
| Ⅱ度高血圧 | 160-179 かつ/または 100-109 | 145-159 かつ/または 90-99 |
| Ⅲ度高血圧 | ≧180 かつ/または ≧110 | ≧160 かつ/または ≧100 |
| (孤立性)収縮期高血圧 | ≧140 かつ <90 | ≧135 かつ <85 |
表の「かつ/または」は、上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)のどちらか一方でもその範囲に入れば、その分類に該当することを意味します。たとえば上が145、下が85でも、上の数値だけでⅡ度高血圧に分類されます。
「正常高値血圧」「高値血圧」は放置してよい段階ではない
120/80mmHg以上は、まだ高血圧と診断される段階ではなくても、生活習慣の修正が推奨される段階に入ります。日本高血圧学会の解説資料では、正常高値血圧(120-129/80mmHg未満)以上のすべての人に生活習慣の修正を行うこと、高値血圧(130-139/80-89mmHg)の段階で加齢や喫煙、脂質異常症などのリスク因子を複数持つ人は「高リスク」と判定され、必要に応じて薬物治療の開始が検討されることが示されています(出典:前掲 日本高血圧学会解説冊子 表4・図1)。
「まだ140を超えていないから大丈夫」ではなく、130前後から少しずつ生活習慣を見直しておくことが、将来の治療の負担を減らすことにつながります。
孤立性収縮期高血圧とは?
上の血圧(収縮期血圧)だけが高く、下の血圧(拡張期血圧)は正常という状態を「(孤立性)収縮期高血圧」と呼びます。血管の弾力性が加齢とともに低下することで起こりやすく、高齢者に多いタイプです。下の血圧が正常だからと安心せず、上の血圧が140(家庭では135)を超えていれば高血圧として扱われます。年齢による血圧の変化については高血圧と年齢の関係|若年性高血圧と加齢による変化で詳しく解説しています。
2025年ガイドラインでの降圧目標の変更
血圧の「分類」は段階を示すものですが、実際に治療でどこまで下げるかという「降圧目標」は別に定められています。JSH2019では、75歳未満の成人や糖尿病・CKDなどの合併症がある人は診察室130/80mmHg未満、75歳以上の高齢者は原則140/90mmHg未満が目標とされていました(出典:前掲 日本高血圧学会解説冊子 表2)。
2025年8月発行のJSH2025では、この目標が年齢や合併症の有無によらず、診察室130/80mmHg未満・家庭125/75mmHg未満に統一されたと報告されています(出典:公益社団法人日本栄養士会「【日本高血圧学会】高血圧管理・治療ガイドライン2025を発表」2025年9月2日、日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。ただし、やみくもに下げるのではなく、副作用や生活の質に配慮しながら個別に判断するとされているため、目標値は主治医と相談しながら決めるものと理解してください。
血圧を正常範囲に保つための生活習慣
- 減塩 1日6g未満を目安に。加工食品や外食の隠れ塩分にも注意
- 適度な運動 有酸素運動を週150分程度を目安に
- 体重管理 BMI 25未満を目安に
- 飲酒量の見直し 日本酒1合・ビール中瓶1本程度までを目安に
- 禁煙 喫煙は血管を収縮させ血圧を上げる要因になる
生活習慣の見直し方については高血圧と生活習慣の関係|どの要因が影響する?、減塩の具体的な工夫は高血圧と食事の関係|減塩のコツとおすすめレシピで詳しく解説しています。血圧を正しく把握するには、まず家庭血圧の測定が基本になります。測り方は正しい血圧の測り方をご覧ください。
まとめ
- 血圧は正常血圧・正常高値血圧・高値血圧・Ⅰ〜Ⅲ度高血圧・(孤立性)収縮期高血圧の7段階に分類されます
- 120/80mmHg以上は、高血圧の診断前でも生活習慣の修正が推奨される段階です
- 上の血圧だけが高い「孤立性収縮期高血圧」は高齢者に多く、見逃されやすいタイプです
- 2025年のガイドラインでは、治療目標が年齢によらず診察室130/80mmHg未満・家庭125/75mmHg未満に統一されました
- 分類上の数値はあくまで目安であり、実際の治療方針は他のリスク因子とあわせて主治医が判断します
診察室血圧と家庭血圧で分類が食い違うとき
この分類表を実際に使う際に迷いやすいのが、診察室で測った血圧と、自宅で測った家庭血圧とで、分類がずれている場合です。たとえば診察室では130/85mmHgで「高値血圧」に該当するのに、家庭では120/78mmHgと「正常高値血圧」の範囲にとどまるようなケースは珍しくありません。このような場合、日本高血圧学会は基本的に家庭血圧の値を優先して判断することを推奨しています。診察室での測定は、緊張などによる一時的な上昇(白衣現象)の影響を受けやすいためです。逆に、診察室では正常範囲でも家庭血圧が高い「仮面高血圧」のパターンもあり、こちらは自覚されにくく見逃されやすいため、特に注意が必要とされています。
分類が一段階変わったら、何をすればよいか
自分の血圧がこの分類表のどこに位置するかを把握したら、次に大切なのは、段階に応じた行動につなげることです。「正常高値血圧」の段階であれば、生活習慣の見直しを始める良いタイミングであり、まだ薬物治療が必要になるとは限りません。「高値血圧」まで進み、加齢・喫煙・脂質異常症・糖尿病といった危険因子を複数持っている場合は、生活習慣の改善と並行して、医療機関での相談を検討する目安になります。「Ⅰ度高血圧」以上に該当する場合は、高血圧の基本で解説している通り、生活習慣の改善だけでなく降圧薬による治療が必要になることも多く、自己判断で経過を見続けるのではなく、早めに受診することが推奨されます。分類はあくまで目安であり、実際の治療方針は血圧の値だけでなく、年齢や合併症の有無など総合的な判断で決まります。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- 日本高血圧学会. 「高血圧治療ガイドライン2019に関する解説冊子」(血圧値の分類・降圧目標). PDF
- 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(2025年8月29日発行). https://www.jpnsh.jp/guideline.html
- 公益社団法人日本栄養士会. 「【日本高血圧学会】高血圧管理・治療ガイドライン2025を発表」2025年9月2日. https://www.dietitian.or.jp/trends/2025/447.html



