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高血圧と起立性低血圧|立ちくらみの原因と降圧薬との関係、受診の目安

2026 10/06
臨床医学
2026年10月6日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

高血圧と起立性低血圧|立ちくらみの原因と降圧薬との関係、受診の目安

血圧が高いと言われているのに、朝トイレに立ったときや、お風呂から上がったときに、ふらっとすることがある。「高血圧なのに立ちくらみがするのは、血圧が下がりすぎているのでは」と不安になる方は少なくありません。

立ち上がったときに血圧が下がって症状が出る状態は、起立性低血圧と呼ばれます。実は高血圧のある方にも起こることがあり、降圧薬との関係を心配される方も多い話題です。この記事では、起立性低血圧とは何か、高血圧の方でなぜ起こりうるのか、薬との関係、日常生活での工夫、そして受診の目安を整理します。血圧管理全体の考え方は、日本高血圧学会の最新版である「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」にまとめられています。

目次

起立性低血圧とは?立ち上がると血圧が下がるしくみ

私たちの体は、横になっているときと立っているときで、血液のたまり方が変わります。立ち上がると、重力の影響で血液が足やお腹の血管のほうへ移動し、心臓に戻ってくる血液の量が一時的に減ります。通常は、自律神経が血管を縮めたり脈拍を速めたりして、すばやく血圧を保ちます。この調整が追いつかないと、脳へ届く血液が一時的に不足して、立ちくらみやふらつきが起こります。

起立性低血圧は、一般に「立ち上がってから3分以内に、上の血圧(収縮期血圧)が20mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が10mmHg以上、持続的に下がる状態」と定義されています(出典:Juraschek SP, et al. Hypertension 2024「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association」)。たとえば、横になって測った血圧が150/90mmHgだった方が、立ち上がって2分後に128/80mmHgになった場合、上の血圧が22mmHg下がっているので、この基準に当てはまります。

大切なのは、診断が「立ったときの血圧の変化」で決まる点です。普段の血圧の数字が低いかどうかとは別の話で、もともと血圧が高めの方でも当てはまります。症状としては、立ちくらみ、目の前が暗くなる感じ、ふらつき、だるさなどがあり、ひどい場合には失神につながることもあります。一方で、血圧が下がっていても症状が目立たない方もいるため、「ふらつかないから大丈夫」とも言い切れません。

高血圧の方にも起こる?どんな人に多いのか

「高血圧なら、立っても血圧は高いままのはず」と思われがちですが、起立性低血圧は高血圧のある方にも珍しくありません。米国心臓協会(AHA)の科学的声明では、高血圧のある成人のおよそ10%にみられるとされています。年齢とともに増え、60歳以上では約10%、65歳を超えると16〜30%程度に上るとされ、血圧が十分にコントロールされていない方に多いこと、糖尿病・心不全・慢性腎臓病のある方でも多いことが示されています(出典:Juraschek SP, et al. Hypertension 2024「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association」)。

高齢になると増える背景には、加齢にともなって、立ち上がったときに血圧を保つ体の反応が鈍くなることがあると考えられています。高齢の方の血圧の考え方については、高齢者の高血圧|上の血圧だけ高くなる理由と降圧目標でもまとめています。

また、年齢や病気だけでなく、そのときの体の状態も影響します。たとえば、汗をたくさんかいた日や下痢のあと、水分が足りていないとき、食事の直後、お酒を飲んだあと、入浴のあとなどは、血圧が下がりやすいタイミングです。暑い季節の脱水と降圧薬の関係は、夏に血圧が下がるのはなぜ?脱水・熱中症と降圧薬の注意点で解説しています。

降圧薬が関係することはある?薬との関係

降圧薬は血圧を下げる薬ですから、立ったときの血圧がさらに下がりやすくなる場合があります。AHAの科学的声明では、起立性低血圧がある方への対応として、まず症状の特徴や原因を丁寧に確かめたうえで、服用中の薬を見直すことが挙げられています。特に、α遮断薬、β遮断薬、交感神経の働きを抑える薬などが問題になりやすい薬として示されています(出典:Juraschek SP, et al. Hypertension 2024「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association」)。

ただし、薬の種類や量、飲む時間帯、高血圧以外の薬との組み合わせによっても立ちくらみは変わります。「どの薬が原因か」は、症状の出方や血圧の記録をもとに医師が判断するもので、ご自身で決めることはできません。

ここで大切なのは、症状が出たからといって、自己判断で降圧薬をやめたり減らしたりしないことです。急にやめると血圧が大きく上がり、かえって体に負担がかかることがあります。減薬や中止を考えるときの条件や注意点は、降圧薬はやめられる?|減薬・中止を考えるときの条件と注意点で詳しく説明しています。立ちくらみが気になるときは、薬を飲み続けたまま、できるだけ早く主治医に伝えてください。

立ちくらみがあるなら降圧治療は弱めるべき?研究からわかること

降圧治療を強めると立ちくらみが増えるのでは、という心配は、医療者の間でも長く議論されてきました。この点を調べたのが、2021年にAnnals of Internal Medicine誌に報告された、無作為化比較試験のメタ解析です。血圧の目標値を比べた5つの試験(参加者1万8,466人、のべ12万7,882回の受診時データ)を含む計9試験について、参加者個々のデータをもとに解析しています。

その結果、より強く血圧を下げる治療を受けたグループのほうが、起立性低血圧の起こりやすさはむしろわずかに低い(オッズ比0.93、95%信頼区間0.86〜0.99)という結果でした。研究者らは、起立性低血圧があること、あるいは治療を強める場面でみられることは、降圧治療を避けたり弱めたりする理由として考えるべきではないと結論づけています(出典:Juraschek SP, et al. Annals of Internal Medicine 2021;174:75-83「Effects of Intensive Blood Pressure Treatment on Orthostatic Hypotension」)。

ただし、この結果は「立ちくらみがあっても、薬はそのまま続ければよい」という意味ではありません。臨床試験に参加できるのは一定の条件で選ばれた方で、強いふらつきや転倒をくり返す方への対応は、日常の診療では個別の判断が必要です。研究からわかるのは、治療を強めたからといって起立性低血圧が必ず増えるわけではないこと、そして、起立性低血圧がみられても、薬の種類・量・飲む時間などを調整しながら治療を続けていく道があるということです。

日本高血圧学会のガイドラインでも、一般的な降圧目標は130/80mmHg未満とされています。一方で、高齢の方などでは、症状のある低血圧や起立性低血圧、腎機能の悪化、電解質の異常といった有害事象に注意しながら降圧を進めることが示されています(出典:Ohya Y, et al. Hypertension Research 2025;48:2500-2511「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)」)。目標の数字だけを追うのではなく、体調を見ながら進めるという考え方です。

こんなときは早めに受診を

立ちくらみがときどきあるだけでも、受診時に伝える価値があります。特に、次のような場合は、早めに医療機関に相談してください。

  • ✔ 立ち上がるたびにふらつく、目の前が暗くなる状態が続いている
  • ✔ 意識が遠のいた、失神した、または立ちくらみで転倒したことがある
  • ✔ 新しい薬を始めた、または薬の量が変わってから、立ちくらみが出るようになった
  • ✔ 下痢や嘔吐、食欲低下などで、食事や水分がとれない日が続いている
  • ✔ 立ちくらみのたびに、動悸や、ふだんと違う強いだるさを感じる

なお、立ちくらみとともに、胸の痛み、強い息苦しさ、片側の手足の麻痺、ろれつが回らないといった症状がある場合は、立ちくらみの相談としてではなく、すぐに救急要請や救急受診を考えてください。

病院ではどう調べる?測り方のポイント

起立性低血圧の確認は、横になって5〜10分ほど休んだあとの血圧と、立ち上がってから3分以内の血圧を比べるのが基本です。AHAの声明では、ベッドを傾ける検査よりも、実際に立ってもらって測る方法が望ましいとされ、座った状態から立つ方法よりも、横になった状態から立つ方法のほうが変化をとらえやすいこと、朝の測定が最も感度が高いことも示されています(出典:Juraschek SP, et al. Hypertension 2024「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association」)。

受診のときには、立ちくらみが出る時間帯や場面(朝起きた直後、トイレのあと、入浴のあとなど)、服用中の薬(お薬手帳)、家庭で測った血圧の記録を持参すると、原因を探すのに役立ちます。家庭血圧の測り方の基本は、高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方を参考にしてください。立ちくらみを感じているときに、無理に立って血圧を測ろうとする必要はありません。転倒の危険があるため、座って安全な姿勢をとることを優先してください。

日常生活でできる工夫

起立性低血圧への対応では、薬以外の方法が、原因にかかわらず基本になるとされています(出典:AHA Professional Heart Daily「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: Top Things to Know」)。AHAの声明でも、足に力を入れる動作(身体的な対抗手技)や、お腹を締める腹帯などの圧迫が、薬以外の対策として紹介されています(出典:Juraschek SP, et al. Hypertension 2024「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association」)。日常生活では、まず「立ち上がり方」を見直すことが身近な工夫になります。

  1. 朝、目が覚めてもすぐに起き上がらず、布団の中で足首や足指をゆっくり動かしてから体を起こす
  2. まず上半身を起こし、ベッドの端に腰かけて、ふらつきがないか確かめてから立つ
  3. 立ち上がるときは、手すりや壁など、つかまれるものの近くで行う
  4. 立っていてふらつきを感じたら、足を交差させて太ももやお尻に力を入れる、または座る・しゃがむ

水分についても考え方が必要です。脱水は血圧が下がりやすい状態をつくるため、特に暑い時期や下痢のあとなどは、水分をこまめにとることが大切です。ただし、心臓や腎臓の病気などで医師から水分の制限を受けている方は、その指示を優先してください。

塩分についても注意があります。起立性低血圧の対策として塩分を増やす方法が紹介されることがありますが、高血圧のある方が自己判断で塩分を増やすのは避けてください。血圧の高さや心臓・腎臓の状態によって適切な対応が異なるため、必ず医師の判断のもとで行います。弾性ストッキングや腹帯を使う場合も、使い方や強さについて医師や看護師に確認してから始めましょう。

入浴では、熱い湯に長くつかったあとの急な立ち上がりが立ちくらみにつながりやすくなります。浴槽から出るときはゆっくり、手すりを使うなどの工夫が役立ちます。寒い時期の室温差と血圧の関係は、冬に血圧が上がるのはなぜ?室温・ヒートショックと朝の血圧対策も参考になります。

「年のせい」「低血圧」と決めつけないでください

立ちくらみの原因は、起立性低血圧だけではありません。脱水や貧血、不整脈、糖尿病などによる自律神経の障害、高血圧以外の病気で使っている薬の影響など、さまざまな可能性があります。「年齢のせい」「低血圧体質だから」と自分で決めてしまうと、治療が必要な原因を見逃すおそれがあります。高血圧で通院している方は、診察のたびに、立ちくらみの有無を主治医に伝えるようにしましょう。

まとめ

  • ✔ 起立性低血圧は、立ち上がって3分以内に上の血圧が20mmHg以上、または下の血圧が10mmHg以上下がる状態で、高血圧のある方にも起こる
  • ✔ 高齢の方や、血圧のコントロールが不十分な方、糖尿病・心不全・慢性腎臓病のある方に多い
  • ✔ 立ちくらみがあっても、自己判断で降圧薬をやめたり減らしたりせず、主治医に相談する
  • ✔ 研究では、降圧治療を強めても起立性低血圧が増えるとは限らないことが示されており、薬の調整で治療を続けられる場合が多い
  • ✔ 立ち上がり方の工夫や水分補給は役立つが、塩分を自己判断で増やすのは避ける
  • ✔ 失神・転倒、胸痛・麻痺・ろれつ障害などがあるときは、早めの受診や救急受診を

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この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

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  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

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参考文献

  • Juraschek SP, et al. Hypertension 2024「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: A Scientific Statement From the American Heart Association」
  • Juraschek SP, et al. Annals of Internal Medicine 2021;174:75-83「Effects of Intensive Blood Pressure Treatment on Orthostatic Hypotension」
  • AHA Professional Heart Daily「Orthostatic Hypotension in Adults With Hypertension: Top Things to Know」
  • Ohya Y, et al. Hypertension Research 2025;48:2500-2511「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)」
  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」
臨床医学
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この記事を書いた人

血圧の学校 編集部のアバター 血圧の学校 編集部

血圧の学校編集部は、医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務によって構成されています。日本高血圧学会のガイドラインや国内外の論文をもとに、血圧と上手に付き合うための情報をわかりやすくお届けします。すべての記事は鎌形博展医師(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)の監修のもとに制作しています。

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