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夏に血圧が下がるのはなぜ?脱水・熱中症と降圧薬の注意点

2026 8/27
生活習慣
2026年8月26日2026年8月27日
夏に血圧が下がるのはなぜ?脱水・熱中症と降圧薬の注意点

夏になると「血圧がいつもより低い」「薬が効きすぎている気がする」と感じる方は少なくありません。血圧には季節による変動があり、気温が高い時期には下がりやすいことが国内外の研究で繰り返し示されています。一方で夏は汗による脱水が起こりやすく、降圧薬を服用している方では思わぬ体調の変化につながることもあります。

この記事では、夏に血圧が下がる仕組みと低下の程度、「下がりすぎ」のサイン、脱水・熱中症との関係、受診の目安を整理します。

目次

夏になると血圧が下がるのはなぜ?

血圧は、心臓が押し出す血液の量と、血管の通りにくさ(血管抵抗)によって決まります。気温が上がると、体は熱を外へ逃がすために皮膚のすぐ下の血管を広げます。血管が広がれば血液は流れやすくなり、血管抵抗が下がるため、血圧は下がる方向に働きます。

さらに夏は汗を多くかきます。汗として水分と塩分(ナトリウム)が失われると、血液の量そのものが減ります。血管を流れる血液の量が減ることも、血圧を下げる方向に働きます。

  • 皮膚に近い血管が広がり、血管抵抗が下がる
  • 発汗で水分・塩分が失われ、血液量が減る
  • 冬に比べて体を動かす機会が増えやすい

この3つが重なることで、夏は一年のなかでも血圧が低くなりやすい季節になります。逆に冬は寒さで血管が縮み、血圧が上がりやすくなります。急な温度差で血圧が動く場面については、血圧の急上昇を防ぐには?危険な瞬間と対策もあわせてご覧ください。

夏の血圧はどのくらい下がる?研究でわかっていること

47件の研究・85万6千人以上を対象とした系統的レビューとメタ解析では、夏の血圧は冬に比べて診察室血圧で約5.6/3.3 mmHg、家庭血圧で約6.1/3.1 mmHg低いという結果でした。この論文は、暑い季節の血圧低下は平均しておおよそ5/3 mmHg程度で、降圧薬を服用している人や高齢の人ではより大きくなる傾向がある、とまとめています(出典:Kollias A ほか, J Hypertens. 2020)。

日本人でも同じ傾向がみられます。全国71施設・4,267人が参加したJ-HOP研究では、朝と晩の家庭血圧はいずれも夏がほかの季節より低く、診察室では正常でも家庭で高い「仮面高血圧」の割合も夏がもっとも低いという結果でした(出典:Narita K ほか(J-HOP研究), Am J Hypertens. 2020)。

ただし下がり方には個人差があります。ご自身の家庭血圧の記録で確かめることが大切です。測り方の基本は高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方で解説しています。

季節の変動は「大きすぎても小さすぎても」注意

季節変動そのものは自然な現象ですが、その幅には注目する価値があると考えられています。日本の高血圧患者2,787人を追跡したHOMED-BP研究では、夏と冬の家庭血圧の差の大きさで4群に分けたところ、心血管の病気の起こりやすさはU字型の関係を示しました。差が小さめの群と比べ、夏のほうが高くなる「逆転」群ではハザード比3.07、差が収縮期9.1 mmHg以上の「変動が大きい」群では2.02でした。研究チームは、夏と冬の差が小〜中程度(収縮期0〜9.1 mmHg、拡張期0〜4.5 mmHg)に収まっている人でより良好な経過がみられたと報告しています(出典:Hanazawa T ほか(HOMED-BP研究), J Am Heart Assoc. 2018)。

「夏は下がって当たり前だから何もしない」でも「自分の判断で薬をやめる」でもなく、記録を医師に見せて相談することが、季節をまたいだ血圧管理では重要になります。

夏の「下がりすぎ(過降圧)」のサイン

血圧が必要以上に下がっている状態を過降圧といいます。ヨーロッパ高血圧学会の血圧測定・心血管変動ワーキンググループがまとめたコンセンサス・ステートメントでは、気温の上昇とともに次のような症状が出た場合、季節性の血圧低下による過降圧の可能性を調べるべきだとされています。

  • 立ち上がったときのふらつき、立ちくらみ
  • めまい、目の前が暗くなる感じ
  • 強い倦怠感、力が入らない感じ
  • 頭がぼんやりする
  • ふらついて転倒した、転びそうになった

同ステートメントは、季節による変化は診察室での繰り返し測定に加えて家庭血圧や24時間血圧計で確認すること、目標より低い値が続く場合、とくに過降圧を思わせる症状があるときには薬の減量を検討すること、収縮期血圧が110 mmHg未満の場合は症状がなくても減量の検討対象になること、を挙げています(出典:欧州高血圧学会コンセンサス・ステートメント, J Hypertens. 2020)。

これらはあくまで医師が判断するための目安です。血圧の薬を自己判断で減らしたり中止したりすると、血圧が急に上がることがあります。薬の種類や役割については降圧剤の種類と効果|あなたに合った薬の選び方をご覧ください。

降圧薬を飲んでいる方が注意したい脱水と熱中症

夏のもう一つの注意点が脱水です。降圧薬のうち利尿薬は、尿として体の水分と塩分を出すことで血圧を下げる薬です。汗で失われる分に利尿薬の作用が加わると、体は脱水に傾きやすくなります。

薬の開始と、脱水・熱中症による入院との関係を調べた研究(6,700人を対象とした解析)では、入院リスクは薬の種類によって1.17倍から2.79倍まで幅があり、もっとも高かったのはACE阻害薬と利尿薬を組み合わせた配合剤でした(出典:Kalisch Ellett LM ほか, J Clin Pharm Ther. 2016)。

これは「薬をやめたほうがよい」という意味ではありません。降圧薬は脳卒中や心筋梗塞などを防ぐために続ける治療です。暑い時期は意識して水分をとり、体の変化に早めに気づくことが大切です。

こんな変化に気づいたら脱水を疑います

  • 尿の回数や量が減った、色が濃くなった
  • 体重が数日で急に減った
  • 立ちくらみ、頭痛、吐き気がある
  • 手足がつる(こむら返り)
  • 食欲が落ちて水分がとれていない

なお、心臓や腎臓の病気があり水分・塩分の量に指示を受けている方は、自己判断で増やさず「夏はどのくらいとればよいか」を主治医に確認してください。

夏の血圧管理で心がけたいこと

  • 家庭血圧を測り続ける 「夏で低いから測らない」ではなく朝晩の記録を残します。
  • 測るタイミングをそろえる 朝は起床後1時間以内・排尿後・朝食と服薬の前、夜は就寝前。
  • 体調のメモを添える ふらつき、睡眠、飲酒、運動などを一言添えると診察で役立ちます。
  • こまめに水分をとる のどの渇きを感じる前に少量ずつ。大量に汗をかいたときは塩分の補給も検討します。
  • 立ち上がりはゆっくり 入浴後や飲酒後は血管が広がっており、立ちくらみが起こりやすくなります。
  • 普段の減塩はやめない 大量発汗時の一時的な塩分補給と、日常の食事の減塩は分けて考えます。

医師に相談したほうがよい目安

  • 家庭血圧の収縮期(上)が110 mmHg未満の日が続いている
  • 立ちくらみ、めまい、強い倦怠感がある
  • ふらついて転倒した、転びそうになった
  • 食欲が落ちて水分が十分にとれていない
  • 逆に、夏なのに血圧が高い状態が続いている

暑い時期でも血圧が下がらない場合は、ホルモンや腎臓、睡眠時無呼吸などが背景にある二次性高血圧の可能性を含めた確認が必要になることがあります。詳しくは本態性高血圧と二次性高血圧の違いとは?診断と治療法を徹底解説をご覧ください。

受診の際は、朝晩の家庭血圧を数日〜2週間分記録して持参していただくと、医師が経過を判断しやすくなります。

秋から冬へ|血圧が戻る時期こそ油断しない

夏に下がった血圧は、気温の低下とともに再び上がっていきます。前述のHOMED-BP研究では、9〜11月と早い時期に薬を増やした群のほうが、12〜2月と遅い時期に増やした群よりも夏と冬の血圧差が小さいという結果が報告されています(3.9/1.2 mmHg 対 7.3/3.1 mmHg)。

9月から10月にかけては、まだ暑さが残る一方で朝晩は冷え込む日も出てきます。この時期こそ家庭血圧の記録を続け、上がり始めのサインを見逃さないようにしましょう。

参考文献

  1. Kollias A, Kyriakoulis KG, Stambolliu E, et al. Seasonal blood pressure variation assessed by different measurement methods: systematic review and meta-analysis. J Hypertens. 2020;38(5):791-798. PubMed
  2. Stergiou GS, Palatini P, Modesti PA, et al. Seasonal variation in blood pressure: Evidence, consensus and recommendations for clinical practice. Consensus statement by the European Society of Hypertension Working Group on Blood Pressure Monitoring and Cardiovascular Variability. J Hypertens. 2020;38(7):1235-1243. PubMed
  3. Hanazawa T, Asayama K, Watabe D, et al. Association Between Amplitude of Seasonal Variation in Self-Measured Home Blood Pressure and Cardiovascular Outcomes: HOMED-BP Study. J Am Heart Assoc. 2018;7(10):e008509. PubMed
  4. Narita K, Hoshide S, Fujiwara T, et al. Seasonal Variation of Home Blood Pressure and Its Association With Target Organ Damage: The J-HOP Study. Am J Hypertens. 2020;33(7):620-628. PubMed
  5. Kalisch Ellett LM, Pratt NL, Le Blanc VT, et al. Increased risk of hospital admission for dehydration or heat-related illness after initiation of medicines: a sequence symmetry analysis. J Clin Pharm Ther. 2016;41(5):503-507. PubMed
  6. 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(2025年8月29日発行). https://www.jpnsh.jp/guideline.html

執筆・監修

執筆:血圧の学校編集部(医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務で構成)

監修:鎌形博展(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)

監修

監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNSメディア

  • Youtube Dr.鎌形の正しい医療ナビ https://www.youtube.com/@Dr.kamagata
  • X(twitter) https://x.com/Hiro_MD_MBA

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血圧の学校編集部は、医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務によって構成されています。すべての記事は鎌形博展医師(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)の監修のもとに制作しています。

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