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冬に血圧が上がるのはなぜ?室温・ヒートショックと朝の血圧対策

2026 9/17
生活習慣
2026年9月17日
冬に血圧が上がるのはなぜ?室温・ヒートショックと朝の血圧対策

朝、布団から出た瞬間に体がこわばる。脱衣所に入って思わず身をすくめる。冬にはよくある光景ですが、そのとき体の中では血圧が大きく動いています。血圧には季節による変動があり、気温が下がる冬は一年のうちでもっとも血圧が高くなりやすい季節です。そして日本では、この時期に心筋梗塞や脳卒中といった循環器の病気による死亡が増えることが、統計からも繰り返し確かめられています。

冬の血圧対策というと「厚着をする」「温かいものを食べる」といった話になりがちですが、近年の研究が示しているのは、もっと具体的で手を打ちやすい要因です。それが家の中の温度と朝の過ごし方です。この記事では、冬に血圧が上がる仕組み、室温と血圧の関係、ヒートショックを防ぐ住まいと入浴の工夫、そして冬の家庭血圧の測り方と受診の目安を整理します。

目次

冬に血圧が上がるのはなぜ?

血圧は、心臓が送り出す血液の量と、血管の通りにくさ(血管抵抗)によって決まります。体は寒さを感じると、体温を外へ逃がさないように皮膚のすぐ下の血管を細くします。血管が細くなれば血液は流れにくくなり、血管抵抗が上がるため、血圧は上がる方向に働きます。これは体温を守るための正常な反応ですが、もともと血圧が高めの方では、その上乗せ分が無視できない大きさになります。

寒さはもう一つ、自律神経を通じても血圧を押し上げます。冷たい空気に触れると自律神経のうち交感神経が活発になり、心拍数が上がり、血管が縮みます。冷えた空気を吸い込んだ瞬間や、素足で冷たい床を踏んだ瞬間に体がぎゅっと縮むような感覚があるとすれば、それは血管にも同じことが起きていると考えてよい場面です。

さらに冬は、汗をかく量が減るため体の中の水分と塩分が保たれやすく、血液の量が減りにくい季節でもあります。外に出る機会や体を動かす機会が減って体重が増えやすいこと、鍋物や汁物など塩分の多い食事が増えやすいことも、冬の血圧を底上げする方向に働きます。つまり冬の血圧上昇は、血管の収縮という短時間の反応と、生活全体の変化というゆっくりした要因が重なって起きているわけです。

血圧の季節変動をまとめた総説では、冬は日中の血圧が上がり、夏は逆に夜間の血圧が上がるという、季節によって上がる時間帯が違うパターンが整理されています。このうち冬の日中の血圧上昇は主に寒さによるもので、冬に循環器疾患のイベントが増えることと関係していると考えられています(出典:Narita K ほか「Seasonal variation in blood pressure: current evidence and recommendations for hypertension management」Hypertension Research, 2021)。夏側の変化については夏に血圧が下がるのはなぜ?脱水・熱中症と降圧薬の注意点もあわせてご覧ください。

冬の血圧を左右するのは外の気温より「室温」

冬の血圧というと屋外の寒さを思い浮かべますが、実際に血圧を大きく左右しているのは、私たちが一日の大半を過ごす家の中の温度です。日本では全国規模でこの点を調べた調査が行われています。冬季に住宅の居間・脱衣所・寝室の温度を自動計測しながら、住民に家庭血圧を測ってもらうという大規模調査(スマートウェルネス住宅等推進事業の調査)です。

この調査の結果をまとめた総説によると、住宅2,190戸の在宅時の平均室温は、居間で16.8度、脱衣所で13.0度、就寝時の寝室で12.8度でした。そして最低室温が世界保健機関(WHO)の推奨する18度を下回った住宅は、全体の約9割にのぼりました。地域差も大きく、居間の平均室温がもっとも高かったのは北海道の19.8度、もっとも低かったのは香川県の13.1度で、その差は6.7度ありました。寒い地域ほど家の中が寒いわけではなく、むしろ冬の寒さが厳しくない地域ほど住宅が冬に備えていない、という傾向がうかがえます(出典:Umishio W ほか「Role of housing in blood pressure control: a review of evidence from the Smart Wellness Housing survey in Japan」Hypertension Research, 2023)。

同じ調査の約2,900人・約33,000件の測定データを解析したところ、室温が10度低いごとに、朝の収縮期血圧(上の血圧)は8.2 mmHg、晩の収縮期血圧は6.5 mmHg高くなるという関係が示されました。注目すべきは、朝のほうが晩よりも室温の影響を受けやすかったことです。また室温と血圧の関係は一直線ではなく、極端に寒い範囲や暖かい範囲よりも、その中間の温度帯で血圧がもっとも急に動くことも報告されています。

室温の「低さ」だけでなく「ばらつき」も血圧に影響します。同じ調査では、朝と晩の室温差が4度以上ある住宅の住民は、室温差が1度未満の住宅の住民に比べて、朝と晩の収縮期血圧の差が2倍を超えていました。一方、屋外の気温の変動しやすさは家庭血圧の変動と関連していませんでした。冷え込む夜から朝にかけて室温が下がりきってしまう家では、血圧そのものだけでなく血圧の振れ幅も大きくなる、ということです。

一日のうちで最も危ないのは冬の朝

冬の血圧のなかでも、とりわけ注意が必要なのが起床前後の時間帯です。日本高血圧学会は日本循環器学会とともに、冬の血圧上昇と循環器疾患リスクの高まりを受けて緊急声明「冬こそ血圧朝活!」を発表しています。この声明では、日本の循環器疾患による死亡数(心不全・脳梗塞・脳出血・急性心筋梗塞など)が気温の下がる12月から2月に明確に増え、しかも3年連続で同じ季節パターンを示していることが示されています(出典:日本高血圧学会「緊急声明『冬こそ血圧朝活! -冷えとヒートショックから命を守るために-』」)。

なぜ朝なのでしょうか。声明は、冬の朝には交感神経の急激な活性化、室温の低下、活動開始にともなう血圧上昇、手足など体の末端の冷えによる血管収縮という複数の要素が重なると説明しています。もともと血圧は起床前後に自然に上がる日内リズムをもっていますが、そこに寒さが加わることで、一日のうちで最も血圧が上がりやすい時間帯ができあがります。冬の朝に起こりやすい急な血圧上昇については、血圧の急上昇を防ぐには?危険な瞬間と対策でも扱っています。

この声明のなかで、日本高血圧学会は具体的な目安として起床前後の室温を18〜22度以上に保つことを挙げ、その根拠として「室温10度低下で朝の血圧が約8 mmHg上昇」というデータを示しています。あわせて、起きてすぐに深呼吸やゆっくりしたストレッチをする、温かい飲み物をとる、室内を軽く歩くといった穏やかな立ち上がり方をすることで、交感神経の急上昇を抑えられるとしています。目覚まし時計とほぼ同時に暖房が入るようタイマーを設定しておくのは、今日からできる現実的な工夫です。

ヒートショックとは?家の中の温度差が起こすこと

冬の家庭内でとくに起こりやすいのが、いわゆるヒートショックです。暖かい居間から寒い廊下や脱衣所へ移動すると、体は熱を逃がすまいと血管を縮め、血圧が急に上がります。そこから衣服を脱いで裸になればさらに冷え、血圧はもう一段上がります。ところが熱い湯に入ると今度は血管が一気に広がり、血圧は急激に下がります。短時間のうちに血圧が大きく上下するこの動きが、失神、不整脈、心筋梗塞、脳卒中といった事態につながることがあります。

湯につかっている間に血圧が下がって意識が遠のけば、そのまま浴槽内で溺れる危険があります。消費者庁は、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数が高い水準で推移し、近年では交通事故による死亡者数よりも多くなっていること、発生場所としては家や居住施設の浴槽が多く、11月から4月の冬季を中心に多く発生していることを示して注意を呼びかけています(出典:消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」)。

ヒートショックは持病のある方だけの問題ではありませんが、血圧が高い方、動脈硬化が進んでいる方、高齢の方では、血圧の変動に血管が対応しきれない場面が増えます。高齢の方で気をつけたい血圧の特徴は高齢者の高血圧|上の血圧だけ高くなる理由と降圧目標で詳しく説明しています。大切なのは、本人だけでなく家族など周りの人も一緒に入浴の習慣を見直すことです。

冬の血圧対策は「住まい」から

日本の住宅では、居間だけを必要なときに暖める間欠的な暖房が一般的で、廊下・脱衣所・トイレ・寝室は暖房されないまま放置されがちです。先ほどの調査で脱衣所の平均室温が13.0度、就寝時の寝室が12.8度だったのは、この習慣を映した数字です。居間を暖めるほど、暖房していない部屋との温度差は大きくなり、部屋を移動するたびに血圧が動くことになります。血圧という観点からは、どこか一部屋を強く暖めるより、家全体の温度差を小さくするほうが理にかなっています。

住まいを変えることで本当に血圧が下がるのかを調べた研究もあります。同じ調査事業のなかで行われた断熱改修の介入研究では、断熱改修を行った住宅の住民は、行わなかった住民に比べて朝の収縮期血圧が平均3.1 mmHg低下しました。自己申告で高血圧があると答えた方に限ると、その低下幅は7.7 mmHgでした。さらに、室温が上がった分だけ血圧が下がるという量的な関係も確認されています。総説はこの効果について、食事の見直しや運動、節酒、減塩といった生活習慣改善で得られる血圧低下と比べても遜色のない大きさだと述べ、高血圧を「生活習慣の病気」であると同時に「生活環境の病気」としてとらえる視点を提案しています。

とはいえ、住宅の断熱改修はすぐにできることではありません。当面は、脱衣所に小型の暖房器具を置く、入浴前にシャワーを浴室へ流して浴室全体を温めておく、浴槽のふたを開けて湯気で温める、トイレに暖房便座や小型ヒーターを使う、廊下側のドアを開けて温度差をならすといった方法で、家の中の「寒い場所」を減らすことができます。寝室については、就寝中ずっと暖房を入れることに抵抗がある場合でも、起床時刻に合わせて暖房が入るよう設定しておくと、布団から出る瞬間の温度差を小さくできます。

安全な入浴のために確認したい5つのポイント

入浴そのものを避ける必要はありません。消費者庁は、冬季の入浴事故を防ぐために次の点を確認するよう呼びかけています。順番に見直すだけでも、血圧の急な上下を減らすことができます。

  • ✔ 入浴前に脱衣所や浴室を暖める
  • ✔ 湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にする
  • ✔ 浴槽から急に立ち上がらない
  • ✔ 食後すぐの入浴、飲酒後や医薬品服用後の入浴は避ける
  • ✔ 入浴する前に同居者に一声掛けて、意識してもらう

熱い湯に肩までつかると、入った直後は血圧が上がり、その後は血管が広がって血圧が下がります。湯温を41度以下に抑えるのは、この上下の振れ幅を小さくするためです。長湯を避けるのも同じ理由で、体が温まりすぎると血管が広がったままになり、立ち上がったときに血圧が保てなくなります。浴槽から出るときに手すりや浴槽のふちに手をかけ、ゆっくり立ち上がるだけでも、立ちくらみは起こりにくくなります。飲酒後の入浴を避けるべきなのは、アルコール自体に血管を広げて血圧を下げる作用があり、判断力も鈍るためです。お酒と血圧の関係もあわせて確認しておくと、冬の晩酌の位置づけが整理しやすくなります。

冬の朝こそ、家庭で血圧を測る

冬の血圧の変化は、季節の平均としては数mmHgでも、人によって、また時間帯によって差があります。自分の血圧が冬にどれくらい動くのかは、測ってみなければ分かりません。とくに冬は、診察室では問題なくても朝の家庭血圧だけが高い「隠れ早朝高血圧」が増えるため、日本高血圧学会の声明でも朝の家庭血圧測定は必須とされています。診察は日中に行われることが多く、朝の血圧はそこには映りません。

測定は、起床後1時間以内、トイレを済ませた後、朝の薬を飲む前、座って1〜2分静かにしてから行います。冬に気をつけたいのは、測る部屋そのものが寒いと、それだけで血圧が高く出るということです。暖房の効いていない部屋で厚着のまま測る、腕まくりで腕を締めつけながら測るといった条件では、正確な値になりません。測定手順の詳細は血圧の正しい測り方|診断基準と家庭血圧のポイントで解説しています。

家庭血圧は135/85 mmHg以上が高血圧とされます。冬に入って家庭血圧が上がってきたと感じたら、その日の値だけで判断せず、1〜2週間の記録を持って受診してください。「冬になるとこれくらい上がる」という自分の傾向が分かっていれば、医師も季節に合わせた判断がしやすくなります。記録は手書きのノートでも、血圧計のメモリー機能でもかまいません。

冬は薬を増やすべき?自己判断で変えないこと

血圧に季節変動があることは以前から知られており、季節に応じて降圧薬の量を調整することがあります。ただしこれは、家庭血圧の記録や合併症の有無、年齢などをふまえて医師が判断することです。冬の値が高いからといって自分の判断で薬を増やしたり、逆に春になって下がってきたからと自己判断で中断したりすることは避けてください。降圧薬の種類や働き方については降圧薬の種類と作用で整理しています。

ここまで見てきたように、冬の血圧上昇には室温という調整可能な要因が大きく関わっています。薬の話に進む前に、朝の室温、脱衣所と浴室の温度、就寝中の寝室の冷え込みという3つの場所を見直すことには十分な意味があります。日本高血圧学会が2025年8月に発行した最新のガイドラインも、治療だけでなく予防と生活習慣の改善を含めた血圧管理を重視する方針を打ち出し、名称そのものを「高血圧管理・治療ガイドライン2025」へ改めています(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。

こんなときは早めに受診を

冬の血圧の変化の多くは、住まいと生活の工夫で対応できる範囲におさまります。一方で、次のような状況では医療機関で相談してください。

  • ✔ 家庭血圧の朝の値が135/85 mmHg以上の日が続いている
  • ✔ 冬に入ってから家庭血圧が明らかに高くなり、暖房を工夫しても戻らない
  • ✔ 入浴中や起床直後に立ちくらみ、動悸、胸の圧迫感、息切れを感じたことがある
  • ✔ 浴室や脱衣所で意識が遠のいた、実際に倒れたことがある
  • ✔ 降圧薬を飲んでいて、冬の値が目標から大きく外れている

なお、強い頭痛、急に生じたろれつの回りにくさや手足の力が入らない状態、我慢できない胸の痛みがある場合は、血圧の値にかかわらず救急の対応が必要です。迷ったときは、ためらわずに救急要請をしてください。

まとめ

冬の血圧を考えるときの要点を整理します。

  • ✔ 寒さは血管を縮め、交感神経を活発にするため、冬は日中の血圧が上がりやすい
  • ✔ 血圧を左右するのは屋外の気温よりも室温で、日本の住宅の約9割は最低室温が18度を下回っていた
  • ✔ 室温が10度低いごとに、朝の収縮期血圧は8.2 mmHg高くなるという関係が示されている
  • ✔ 日本高血圧学会は起床前後の室温を18〜22度以上に保つことをすすめている
  • ✔ 脱衣所・浴室を暖め、湯温41度以下・10分までを目安にすることで入浴時の血圧変動を抑えられる
  • ✔ 冬こそ朝の家庭血圧を測り、記録を持って受診する

冬の血圧対策は、我慢や根性の問題ではなく、家の温度という環境を整える問題です。暖房のタイマー設定を変える、脱衣所にヒーターを一つ置く、そうした小さな変更が、朝と入浴という一日で最も血圧が動く場面を穏やかにしてくれます。

参考文献

  • 日本高血圧学会・日本循環器学会「緊急声明『冬こそ血圧朝活! -冷えとヒートショックから命を守るために-』」
  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(2025年8月29日発行)
  • Narita K, Hoshide S, Kario K.「Seasonal variation in blood pressure: current evidence and recommendations for hypertension management」Hypertension Research 44, 1363-1372 (2021)
  • Umishio W ほか「Role of housing in blood pressure control: a review of evidence from the Smart Wellness Housing survey in Japan」Hypertension Research 46, 9-18 (2023)
  • 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! -自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-」

監修

監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNSメディア

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血圧の学校編集部は、医師・医学生・看護師・臨床工学技士・理学療法士・医療事務によって構成されています。すべての記事は鎌形博展医師(株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長)の監修のもとに制作しています。

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