「塩分を控えましょう」と言われる一方で、「カリウムをとると血圧が下がるらしい」「マグネシウムも血圧によいと聞いた」という話を耳にして、サプリメントや特定の食品を試そうか迷っている方は少なくありません。ところが、カリウムは腎臓の働きや服用している薬によって、とりすぎが問題になることもあるミネラルです。
この記事では、カリウムとマグネシウムについて、これまでの研究でわかっていること、日本での摂取の目安、食事での取り入れ方、そして注意が必要な方を整理します。血圧管理全体の考え方は、日本高血圧学会の最新版である「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」にまとめられています。
なぜ高血圧でカリウムが話題になるのか?ナトリウムとのバランス
私たちの体の中で、ナトリウム(食塩の成分)とカリウムは、対になって働いています。ナトリウムが多くなると体内に水分がたまりやすくなり、血圧が上がる方向に働きます。一方、カリウムには腎臓からナトリウムの排出を促す作用があり、血圧を下げる方向に働くことが知られています(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」)。つまり、血圧を考えるうえでは、ナトリウムを減らすだけでなく、ナトリウムとカリウムのバランスも大切だという見方です。
日本高血圧学会のガイドラインでも、この考え方が反映されています。2025年版のガイドラインの要点をまとめた論文では、食塩摂取量を1日6g未満にすることが血圧を下げるうえで有効とされ、あわせて野菜・果物・低脂肪乳製品など、カリウムを多く含む食品を増やすことが勧められています。さらに、尿に含まれるナトリウムとカリウムの比(Na/K比)について、日本高血圧学会のワーキンググループが「2未満」を血圧管理のうえで望ましい目安として提案したことも紹介されています(出典:Ohya Y, et al. Hypertension Research 2025;48:2500-2511「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)」)。減塩そのものについては、高血圧の食事と減塩の進め方の記事も参考にしてください。
カリウムを増やすと血圧はどう変わる?メタ解析からわかること
カリウム摂取と血圧の関係は、多くの研究で調べられてきました。代表的なものが、2013年に医学誌BMJに掲載されたシステマティックレビューとメタ解析です。この研究は、カリウム摂取量を増やした22件のランダム化比較試験(参加者1,606人)と、11件のコホート研究(参加者127,038人)をまとめて解析したものです(出典:Aburto NJ, et al. BMJ 2013「Effect of increased potassium intake on cardiovascular risk factors and disease: systematic review and meta-analyses」)。
結果として、成人全体ではカリウムの摂取を増やすことで、収縮期血圧(上の血圧)が平均3.49mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が平均1.96mmHg低下していました。さらに、この血圧の低下は高血圧のある人で認められ、高血圧のない人では認められなかったと報告されています。また、カリウムの摂取量が多いグループでは脳卒中のリスクが24%低かった(リスク比0.76)という解析結果も示されています。ただし、これは観察研究を含む解析の結果であり、カリウムをとれば脳卒中が防げると断定できるものではありません。
この論文では、1日のカリウム摂取量が90〜120ミリモル(重さにして約3.5〜4.7g)の場合に、収縮期血圧が平均7.16mmHg低下したという結果も示されていますが、推定の幅が広く、摂取量を増やすほど効果が大きくなるという関係は認められていません。この量は後述する日本の目標量よりも多く、試験で使われた摂取量を日常の食事でそのまま再現できるとは限りません。研究結果は「平均すると数mmHgの低下がみられた」という程度のものであり、降圧薬の代わりになる、あるいは薬をやめられるという意味ではないことに注意が必要です。
日本人の摂取目安は?食事摂取基準とガイドラインの考え方
日本では、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で、生活習慣病の予防のために目標とする摂取量(目標量)が定められています。カリウムの目標量は、18歳以上で男性が1日3,000mg以上、女性が1日2,600mg以上です(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」栄養素基準表)。「以上」とあるとおり、これは上限ではなく、普段の食事でこのくらいを目指しましょうという数字です。
大切なのは、この目安を食事から達成することです。後で述べるように、腎臓の機能が低下している方などは、カリウムを制限する必要があることがあり、一律に「たくさんとればよい」というものではありません。
カリウムを食事でとるコツ
カリウムは、野菜、果物、豆類、いも類、海藻、乳製品など、さまざまな食品に含まれています。特定の食品だけに頼るのではなく、毎日の食事の中で野菜や果物の量を少しずつ増やしていくのが現実的です。ガイドラインが「カリウムの豊富な食品」として野菜・果物・低脂肪乳製品を挙げているのも、こうした食品全体を増やすという考え方によるものです。
ただし、カリウムをとろうとして塩分が増えてしまっては本末転倒です。漬物や塩分の多い汁物、加工食品が多い食事では、カリウムを増やしてもナトリウムも一緒に増えてしまいます。また、果物は糖分も含むため、糖尿病の治療中の方や体重管理が必要な方は、量について主治医や管理栄養士に相談しながら取り入れましょう。取り入れ方の例は次のとおりです。
- 毎食に野菜を一品足す(サラダ、おひたし、具だくさんの副菜など)
- 間食や朝食に果物を少量加える(量は糖分や体重との兼ね合いで調整する)
- 汁物は具を多くして、汁は残すようにする
- 大豆製品や海藻類、いも類を日々の献立に組み込む
マグネシウムと血圧|34件の試験をまとめた研究
マグネシウムも、血圧との関係が研究されてきたミネラルです。2016年に医学誌Hypertensionに掲載されたメタ解析では、マグネシウムのサプリメントを摂取した群と偽薬(プラセボ)の群を比較した、34件のランダム化二重盲検試験が対象になりました。参加者は合計2,028人、マグネシウムの摂取量の中央値は1日368mg、試験期間の中央値は3か月でした(出典:Zhang X, et al. Hypertension 2016「Effects of Magnesium Supplementation on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trials」)。
解析の結果、マグネシウムを摂取した群では、収縮期血圧が平均2.00mmHg、拡張期血圧が平均1.78mmHg低下していました。カリウムと同様に、「平均すると小さな低下がみられた」という結果であり、試験の質や対象者によってばらつきもあります。この研究は「サプリメントで補った場合」の結果であるため、食事でマグネシウムを多めにとれば同じだけ血圧が下がるとは言えない点にも注意が必要です。
マグネシウムの目安と、とり方の注意点
マグネシウムは、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」で成人の推奨量が年代・性別ごとに定められています。たとえば30〜49歳では男性が1日370mg、女性が1日290mgです(出典:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」栄養素基準表)。ナッツなどの種実類、海藻、大豆製品、玄米などの全粒穀物、緑の濃い野菜に多く含まれるため、まずは普段の食事でこうした食品を意識して取り入れるのが基本です。
一方、サプリメントなど通常の食品以外から摂取する場合については、食事摂取基準でも食品からの摂取とは別の扱いになっています。とりすぎるとおなかがゆるくなるなどの不調につながることがあるため、血圧のためにとサプリメントを自己判断で始めることは勧められません。腎臓の機能が低下している方も、一般に体にミネラルがたまりやすいため、使用前に主治医へ相談してください。
注意が必要な方|腎機能が低下している方、一部の降圧薬を飲んでいる方
カリウムについては、とくに注意が必要な方がいます。1つ目は腎臓の機能が低下している方です。腎臓はカリウムを尿として排出する役割を担っているため、機能が低下するとカリウムが体にたまりやすくなります。e-ヘルスネットでも、腎臓機能が低下している方はカリウムの摂取制限が必要な場合があるため、医師の指示に従うよう記載されています。腎臓と血圧の関係については高血圧と腎臓病の記事もご覧ください。
2つ目は、血液中のカリウムが増えやすい降圧薬を服用している方です。たとえば、スピロノラクトンという薬では、血液中のカリウムが増えすぎることが特に注意すべき副作用とされています。増えすぎても最初は自覚症状がほとんどないため、定期的な血液検査で確認することが重要です。カリウムのサプリメントや、塩化カリウムを使った減塩用の塩を自己判断で使い始めないようにすることも勧められています(参考:グレースメディカルクリニック「スピロノラクトンの効果・副作用・注意点」)。降圧薬全般の種類や特徴は、降圧薬の種類と選び方の記事で解説しています。
いずれの場合も、「カリウムをとったほうがよい」「控えたほうがよい」は、腎機能や服薬状況によって変わります。持病や服薬がある方は、食事を大きく変える前にかかりつけ医に確認しましょう。
ミネラルだけに頼らず、血圧管理の土台を整える
カリウムやマグネシウムの効果は、研究ではいずれも「平均数mmHg」の範囲です。血圧を下げるための土台は、やはり減塩、適正体重の維持、運動、節酒、禁煙といった生活習慣の見直しです。ミネラルは、その中の食事の質を整える要素の1つと考えるのがよいでしょう。
また、食事を見直した効果を確かめるには、家庭での血圧測定が役立ちます。測り方は血圧の正しい測り方の記事を参考に、朝と夜に記録しておくと、受診時に医師へ伝えやすくなります。家庭血圧が続けて高めの方、すでに降圧薬を飲んでいる方、腎臓の病気を指摘されたことがある方は、食事やサプリメントを変える前に、一度医療機関で相談してください。
まとめ
- カリウムは、ナトリウムの排出を助けて血圧を下げる方向に働くミネラルで、ガイドラインでも野菜・果物などカリウムを含む食品を増やすことが勧められています。
- メタ解析では、カリウムの増加で収縮期血圧が平均3.49mmHg低下し、その低下は高血圧のある人で認められました。
- 日本の目標量は、カリウムが男性3,000mg以上・女性2,600mg以上(1日)です。まずは食事から目指します。
- マグネシウムのサプリメントでは、34件の試験で収縮期血圧が平均2.00mmHg低下しましたが、効果は小さく、サプリメントの自己判断での使用は勧められません。
- 腎機能が低下している方や、血液中のカリウムが増えやすい薬を飲んでいる方は、必ず主治医に相談してから食事やサプリメントを変えましょう。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(Mindsガイドラインライブラリ掲載情報)
- Ohya Y, et al. Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertens Res. 2025;48:2500-2511
- Aburto NJ, et al. Effect of increased potassium intake on cardiovascular risk factors and disease: systematic review and meta-analyses. BMJ. 2013;346:f1378
- Zhang X, et al. Effects of Magnesium Supplementation on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trials. Hypertension. 2016
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「カリウム」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」栄養素基準表
- グレースメディカルクリニック「スピロノラクトンの効果・副作用・注意点」
