高血圧というと中高年の病気というイメージがあるかもしれませんが、40歳未満で高血圧を指摘される「若年性高血圧」も少なくありません。年齢によって血圧はどう変化していくのか、そして若い年代での高血圧にはどんな特徴があるのかを整理します。
加齢とともに血圧はどう変わるのか
国内の大規模な調査によると、40〜70歳の高血圧有病率(診察室血圧140/90mmHg以上、または降圧薬服用中)は男性で60%、女性で40%にのぼり、75歳以上では男性74%、女性70%と、男女とも高齢になるほど高血圧の割合が増えていきます。男性では30代でもすでに5人に1人が、40代では3人に1人が高血圧に該当するとされ、女性でも50代から高血圧が増え始め、60代以降では半数を超えます(出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」に基づく集計)。年齢を重ねるにつれて高血圧が「珍しいことではなくなる」というのが、統計から見える実態です。
血圧が上がっていく仕組み
加齢に伴う血圧上昇の背景には、血管そのものの変化があります。血管の壁は年齢とともに弾力を失って硬くなり(動脈硬化)、若いころは血管がしなやかにふくらむことで吸収できていた圧力が、そのまま血圧の上昇として表れやすくなります。とくに上の血圧(収縮期血圧)が上がりやすいのはこのためです。加えて、加齢によって腎臓がナトリウムを排出する能力が徐々に低下することや、交感神経の働きが活発になりやすいことも、血圧を押し上げる方向に働きます。日本高血圧学会の学会誌に掲載された30年間の追跡調査では、若い時期から血圧が上昇し続けている人ほど、中年期になった時点で頸動脈の動脈硬化や心臓の肥大、腎機能低下といった臓器への影響が強くみられたと報告されています(出典:日本高血圧学会「Associations of blood pressure trajectories in early life with target organ damage in midlife: a 30-year cohort study」Hypertension Research誌)。加齢による血圧上昇の仕組みについては低血圧から高血圧へ?血圧の変化と注意点でも詳しく解説しています。興味深いのは、こうした変化が「特別な病気」ではなく、多くの人にゆるやかに起こる自然な老化現象の一部だという点です。だからこそ、多くの人が「気づいたら高血圧になっていた」という経過をたどりやすく、若いころから血圧を意識する習慣がないまま年齢を重ねると、変化に気づきにくいという側面もあります。
若年性高血圧とは何か
40歳未満で高血圧を指摘された場合、一般に「若年性高血圧」と呼ばれます。多くの中高年の高血圧と同じく、遺伝的な体質や生活習慣(食塩の摂りすぎ、肥満、運動不足、ストレス)が絡み合う本態性高血圧であることが大半ですが、若い年代での発症は、二次性高血圧(原因となる病気がはっきりしているタイプ)の可能性も本態性高血圧より相対的に高くなる点が特徴です。本態性高血圧と二次性高血圧の違いでも触れているように、腎臓の病気、副腎などのホルモンの異常、睡眠時無呼吸症候群などが背景にあることがあり、若いからといって様子を見すぎず、一度はきちんと評価を受けておくことが望ましいとされています。日本高血圧学会のガイドラインでも、40歳未満での発症は二次性高血圧のスクリーニングを検討すべき目安の一つとして明記されており、若年発症であること自体が、原因をきちんと調べる意味のあるサインだと位置づけられています。原因となる病気が見つかれば、その治療によって血圧が正常化する可能性がある点も、中高年に多い本態性高血圧との大きな違いです。
女性は閉経を境に血圧が上がりやすくなる
血圧の加齢変化には、男女差もみられます。女性ホルモン(エストロゲン)には血管を広げて血圧を安定させる働きがあるとされ、閉経前の女性は同年代の男性に比べて高血圧の割合が低い傾向があります。ところが閉経を迎えるとエストロゲンの分泌が急激に減少し、これに伴って血圧が上昇しやすくなります。先に紹介した調査でも、50代から女性の高血圧が増え始め、60代以降では男性との差が縮まっていく様子がうかがえます。更年期の時期に血圧が上がってきたと感じる場合は、ホルモンバランスの変化も一因として考えられます。この時期は、のぼせやほてり、気分の変動といった更年期症状と、血圧の変化が同時に起こることも多く、どちらの影響か分かりにくいこともあります。気になる症状がある場合は、婦人科や内科で相談しながら、血圧の記録もあわせて確認していくとよいでしょう。
若年性高血圧が見つかるきっかけ
若い世代は健康診断以外で血圧を測る機会が少なく、症状もほとんど出ないため、たまたま受けた健康診断や、就職・入学時の健康診断、妊娠を機にした検査などで初めて指摘されるケースが多く見られます。日頃から血圧を測る習慣がない分、「いつから高かったのか」がはっきりしないまま発見されることも少なくありません。とくに、もともと血圧が低めだった人が急に高くなった、複数の降圧薬を使っても下がりにくい、といった変化がある場合は、二次性高血圧の可能性も含めて詳しい検査が検討されることがあります。
若いうちに高血圧を放置するとどうなるか
高血圧そのものに自覚症状がないことが多いため、「まだ若いから大丈夫」と治療や生活習慣の見直しを先延ばしにしてしまう人もいます。しかし、血圧が高い状態が長く続くほど、血管や心臓、腎臓への負担は年月とともに蓄積していきます。若いうちから高血圧を放置すると、中高年になってから治療を始めた場合に比べて、動脈硬化や心肥大が進んだ状態で発見される可能性が高くなるとされています。30代・40代で心筋梗塞や脳卒中を経験する人の中には、若いころからの高血圧が背景にあるケースも報告されており、早期発見・早期対応の重要性は年齢にかかわらず変わりません。「高血圧=高齢者の病気」というイメージにとらわれず、健康診断で血圧の異常を指摘されたら、年齢に関係なくきちんと向き合うことが、将来の選択肢を広げることにつながります。
中高年になってから気をつけたいこと
40代・50代以降は、健康診断で血圧の異常を指摘される機会も増えてきます。この年代は、若いころに比べて動脈硬化がある程度進んでいる可能性もあるため、血圧の値だけでなく、コレステロール値や血糖値、体重の変化もあわせて確認しておくことが大切です。糖尿病を合併している場合や、脂質異常症を合併している場合は、血圧単体よりもさらに脳心血管病のリスクが高まるため、複数の生活習慣病を総合的に管理していく視点が必要になります。また、60代以降になると、血圧を下げすぎることによる立ちくらみやふらつきのリスクにも注意が必要で、若い世代とはやや異なる配慮が求められる場面も出てきます。
何歳であっても降圧目標の考え方は共通
2025年に改訂された日本高血圧学会のガイドライン(JSH2025)では、降圧目標は年齢によらず、診察室血圧130/80mmHg未満を目指す方向に統一されました。以前は年代や合併症の有無によって目標値が細かく分かれていましたが、若い世代であっても油断せず、中高年と同じ基準で血圧管理に取り組むことが推奨される形になっています(出典:日本高血圧学会「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025(JSH2025)」Hypertension Research誌)。
年代を問わず今からできること
若いうちから血圧を意識することは、将来の健康を左右する投資といえます。
- 20〜30代のうちから健康診断の血圧値を記録し、経年変化を把握しておく
- 減塩を中心とした食事を若いうちから習慣にする
- 家族に高血圧の人が多い場合は、若いうちから定期的に血圧を測る習慣をつける
- 40歳未満での高血圧発症は、自己判断せず一度医療機関で原因を確認する
まとめ
血圧は加齢とともに自然に上がりやすくなる一方で、40歳未満での高血圧にも一定の頻度でみられ、二次性高血圧の可能性も含めて早期の評価が大切です。年齢にかかわらず降圧目標の考え方は共通しており、若いうちからの生活習慣の見直しと定期的な血圧測定が、将来の血管の健康を守ることにつながります。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- オムロン ヘルスケア「日本の高血圧患者数や割合を紹介」(厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」に基づく)
- Hypertension Research「Associations of blood pressure trajectories in early life with target organ damage in midlife: a 30-year cohort study」(2023)
- Hypertension Research「Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025(JSH2025)」(2025)



