お酒を飲むと血圧が上がりやすくなることは知られていますが、「どのくらいなら安全か」「なぜ上がるのか」を正しく理解している方は意外と多くありません。飲酒と血圧の関係、日本高血圧学会が示す適量の考え方、そして高血圧の人が飲酒と付き合ううえで知っておきたいポイントを整理します。
お酒を飲んだ直後と、習慣として続いた場合の違い
飲酒直後は血管がゆるみ、血圧が一時的に下がることがあります。ただしこの作用は数時間程度で消え、その後は交感神経が刺激されて血管が収縮し、心拍数も上がるため、かえって血圧が上がりやすくなります。さらに日常的に多量の飲酒を続けていると、血管の壁が硬くなる変化が進み、慢性的な高血圧につながることが分かっています。「寝る前の一杯でリラックスできているはず」という感覚と、体の中で実際に起きている変化は必ずしも一致しません。
節酒で血圧はどのくらい下がるのか
飲酒量を減らすことの効果は、複数の臨床試験を統合した解析でも確認されています。1日に3杯以上飲んでいた人を対象とした15件のランダム化比較試験(参加者2,234人)をまとめた解析では、飲酒量を平均で67%程度減らしたグループで、収縮期血圧が平均3.31mmHg、拡張期血圧が平均2.04mmHg低下したと報告されています。減らした量が多い人ほど血圧の低下幅も大きくなる、量に応じた反応も確認されました(出典:NCBI Bookshelf「Effects of alcohol reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials」)。もともと血圧が高めだった人ほど、節酒による低下幅も大きくなる傾向が示されている点も参考になります。
日本高血圧学会が示す飲酒量の目安
高血圧の管理において、節酒は減塩や運動と並ぶ生活習慣改善の柱の一つに位置づけられています。目安となるアルコール量は、男性で1日20〜30mL以下、女性で10〜20mL以下とされ、これはおおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎なら半合、ウイスキーやブランデーならダブルで1杯程度に相当します(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」の要点を解説したHypertension Research誌の論文、および同学会の一般向け解説冊子)。多量の飲酒は高血圧だけでなく、不整脈の一種である心房細動や、いびき・睡眠時無呼吸を悪化させる要因にもなるとされています。
飲酒量が多い人は「隠れ高血圧」にも注意
診察室では正常なのに、家庭や職場では血圧が高くなる「仮面高血圧」は、診察のときだけでは見つけにくいタイプの高血圧です。日本高血圧学会は、喫煙者や精神的ストレスの多い人と並んで、アルコールを多く飲む人を仮面高血圧になりやすい特徴の一つに挙げています。診察室での数値だけで安心せず、家庭血圧の正しい測り方を参考に、普段の血圧も定期的に確認しておくと安心です。
お酒の種類による違いとの付き合い方
ビールは炭酸とともに飲みやすく、量が増えやすい傾向があります。日本酒やワイン、蒸留酒は度数が高い分、「コップ1杯だから」という感覚が実際の純アルコール量とずれやすくなります。銘柄や杯数で判断するのではなく、度数から純アルコール量を計算する習慣をつけると、目安量を超えにくくなります。
高血圧の人が飲酒と付き合ううえで気をつけたいこと
日々の付き合い方の中では、次のような点に注意が必要です。
- 降圧薬を服用中にまとめて多量に飲むと、血圧が不安定になったり薬の効き方に影響したりすることがある
- 入浴直後やサウナ後の飲酒は、血管が広がった状態と重なって立ちくらみのリスクが高まる
- 薬を飲み忘れた分を「今日は飲酒を控えるから大丈夫」と自己判断で調整しない
- 節酒を続けても血圧が下がりにくい場合は、飲酒量も含めて医師に相談する
まとめ
飲酒は少量であれば必ずしも禁止されるものではありませんが、「毎日の習慣」として続くと血圧に確実に影響します。血圧を下げる飲み物を上手に取り入れながら休肝日をつくる、高血圧と生活習慣の関係も踏まえて減塩や運動とあわせて見直すなど、無理のない範囲で節酒に取り組んでいきましょう。日々の家庭血圧を記録しておくと、飲酒量と血圧の関係も自分自身で把握しやすくなります。
飲酒で血圧測定値が乱れることも
飲酒直後は血圧が一時的に下がる作用があるため、お酒を飲んだ状態で家庭血圧を測定すると、普段より低い値が出て安心してしまうことがあります。逆に、翌朝など飲酒の影響が抜けたタイミングでは、交感神経の反動で血圧が高めに出ることもあります。家庭血圧を正確に把握するためには、飲酒した日の測定値をそのまま日々の記録として扱うのではなく、できるだけ飲酒の影響がない状態(起床後、排尿後、朝食前など)で測定する習慣を優先することが勧められます。
休肝日をつくることの意味
節酒の効果を得るためには、1回あたりの飲酒量を減らすことに加えて、飲まない日(休肝日)を週に何日か設けることも有効とされています。毎日少量ずつ飲み続けるよりも、飲酒しない日を挟むことで、肝臓や血管にかかる負担が回復する時間を確保できます。休肝日をつくることに抵抗がある場合は、まず週に1〜2日から始め、徐々に増やしていくといった無理のない進め方が長続きのコツです。すでに高血圧の治療を受けている方は、降圧薬の種類によってはアルコールとの相互作用(血圧が下がりすぎる、副作用が出やすくなるなど)が問題になることもあるため、飲酒の習慣について一度主治医や薬剤師に相談しておくと安心です。
多量飲酒がもたらすリスク
適量を大きく超える多量飲酒は、血圧上昇だけでなく、不整脈(特に心房細動)、脳出血、肝機能障害、がんなど、さまざまな健康リスクと関連することが知られています。「たくさん飲んでも自分は大丈夫」と感じていても、飲酒量が増えるほど血圧への悪影響は積み重なっていきます。特に、短時間に大量に飲む「一気飲み」のような飲み方は、急激な血圧変動を引き起こしやすく、心臓や血管への負担も大きくなります。適量を守ることに加えて、飲み方そのものを見直すことも、血圧管理の観点から意味があります。
血圧の相談ができるクリニック
本サイトを運営する株式会社ENの関連法人・医療法人社団季邦会では、首都圏5拠点で高血圧をはじめとする生活習慣病の外来を行っています。健診で血圧を指摘された方、家庭血圧が高めで迷っている段階の方もご相談いただけます。
- いびき・睡眠時無呼吸「高血圧といびきの」神保町駅前内科クリニック高血圧・いびき・睡眠時無呼吸。神保町駅A3出口 徒歩1分。オンライン診療対応。予約・詳細を見る
- 甲状腺・睡眠時無呼吸巣鴨クリニック内科・糖尿病内科・甲状腺内科。睡眠時無呼吸にも対応。Web予約・Web問診。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科街のクリニック 大島駅前内科・糖尿病甲状腺内科・呼吸器内科。予約・詳細を見る
- 甲状腺内科・土日診療街のクリニック 立川・村山内科・糖尿病内科・甲状腺内科・呼吸器内科。土日診療、在宅医療・オンライン診療。予約・詳細を見る
- 内科・呼吸器内科街のクリニック 日野・八王子内科・呼吸器内科・糖尿病内科など。予約・詳細を見る
※ 本サイトは株式会社ENが運営しています。掲載のクリニックは当社の関連法人である医療法人社団季邦会が運営する診療所です。
お近くの医療機関を地域や診療科から探したい方へ他のクリニックを探す
この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
