動脈硬化と高血圧は、互いに影響を与え合いながら進行する関係にあります。血管が硬くなることで血圧が上がりやすくなり、血圧が高い状態が続くことで、さらに血管の老化が進むという悪循環です。このメカニズムと、血管の健康を保つためにできることを整理します。
動脈硬化と高血圧はどちらが先か
動脈硬化とは、血管の壁が弾力を失って硬くなる状態を指します。高血圧が動脈硬化を進める要因であることはよく知られていますが、実は血管の内側を覆う内皮細胞の働きの異常(内皮機能障害)や血管壁の構造変化(血管リモデリング)が、血圧の上昇よりも先に始まっていることが指摘されています。血管の内皮は、血管を広げたり収縮させたりする物質を分泌して血圧を調整する役割を担っていますが、この働きが乱れて血管の壁が厚く硬くなると、同じ程度の血管の収縮でもより大きな血圧上昇が起こるようになります。こうして血管の変化と血圧の上昇が互いを強め合う悪循環が生まれます(出典:下澤達雄・上竹勇三郎「血管内皮障害・血管リモデリング(動脈硬化)・酸化ストレス―高血圧発症との関連」医学のあゆみ233巻3号)。
血管の老化を進める要因
血管の老化は加齢だけで進むわけではなく、日常の生活習慣の積み重ねが大きく影響します。慢性的な高血圧に加えて、喫煙、脂質異常症、糖尿病、高コレステロールの食事などが、血管内皮への負担や炎症を通じて動脈硬化を進める要因として知られています。これらの要因は単独よりも重なるほど影響が大きくなるため、高血圧だけを見るのではなく、他の生活習慣病もあわせて管理することが血管の健康を守るうえで重要です。
動脈硬化が進むとどうなるか
動脈硬化が進行すると、血管の内側が狭くなったり詰まったりして、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気につながる可能性があります。心臓の血管で起これば心筋梗塞のリスクが、脳の血管で起これば脳卒中のリスクが高まります。自覚症状がないまま進行することが多いため、血圧の数値だけでなく、健康診断でのコレステロール値や血糖値もあわせて確認しておくことが大切です。
血管の健康を守るためにできること
動脈硬化の進行を抑えるためには、血圧管理とあわせて次のような生活習慣の見直しが役立ちます。
動脈硬化の進み具合を調べる検査もある
動脈硬化は自覚症状に乏しいため、健康診断や外来で行われる検査で進み具合を確認することもできます。脈波が血管を伝わる速さを測る脈波伝播速度(PWV)、足首と上腕の血圧比を調べる足関節上腕血圧比(ABI)、頸動脈を超音波で観察する検査などが代表的で、いずれも血管の硬さや詰まりの程度を調べる目的で用いられます。数値の意味は自己判断せず、結果は必ず医師の説明を受けて確認しましょう。
まとめ
動脈硬化と高血圧は、どちらか一方だけを見ていては本質的な対策になりません。血管の内側で起きている変化を意識しながら、生活習慣全体を見直していくことが、心筋梗塞や脳卒中の予防につながります。
「血管年齢」はどうやって調べるのか
動脈硬化の進み具合は、自覚症状だけでは把握できません。医療機関では、脈波の伝わる速さを測定するPWV(脈波伝播速度)や、血管の硬さと詰まり具合を同時に評価するCAVI(心臓足首血管指数)といった検査で、いわゆる「血管年齢」を数値として確認することができます。これらの検査は痛みを伴わず短時間で終わるため、人間ドックや健診のオプションとして提供している医療機関も増えています。実年齢よりも血管年齢が高いと判定された場合は、血圧・コレステロール・血糖のいずれか、あるいは複数に管理が必要な状態が隠れている可能性があるため、詳しい検査を受けることが勧められます。
動脈硬化はどこまで元に戻せるのか
一度硬くなった血管が完全に若い状態に戻るわけではありませんが、血圧・コレステロール・血糖の管理や禁煙、運動習慣によって、動脈硬化の進行を遅らせたり、血管内皮の機能をある程度改善したりできることが分かっています。特に禁煙は、血管内皮への刺激を減らすという観点で、動脈硬化対策として効果の大きい生活習慣の見直しのひとつです。「もう年だから仕方ない」と諦めるのではなく、今からできる対策に取り組むことで、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げることにつながります。
動脈硬化とコレステロールの関係
動脈硬化のプラーク形成には、血管壁へのLDLコレステロールの蓄積が深く関わっています。血圧管理だけでなく、健診でのLDLコレステロール値・中性脂肪値・HDLコレステロール値にも注意を払うことが、動脈硬化対策の両輪になります。特に高血圧と脂質異常症を併せ持つ方は、どちらか一方だけを管理するのではなく、両方に同時に働きかけることで、血管への負担を効率よく減らすことができます。健診結果でコレステロール値に異常を指摘された場合は、血圧の管理と同様に放置せず、食事内容の見直しや、必要に応じた薬物治療について医療機関に相談することが勧められます。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
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研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
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- メディカルジャパン など多数



