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高血圧と心房細動|脈が乱れるしくみと脳梗塞を防ぐ血圧管理

2026 9/15
臨床医学
2026年9月15日
高血圧と心房細動|脈が乱れるしくみと脳梗塞を防ぐ血圧管理
目次

「脈が乱れる」と「血圧が高い」は、別の話ではありません

健康診断で「血圧が高いですね」と言われたことがある方は多いと思います。一方で「脈が不規則です」と言われた経験がある方もいらっしゃるでしょう。この二つは一見別々の問題のように見えますが、実際には深く結びついています。血圧が高い状態が続くと心臓の上側の部屋(心房)に負担がかかり、脈がバラバラになる「心房細動(しんぼうさいどう)」という不整脈が起こりやすくなることが、多くの研究で報告されているのです。

心房細動は、それ自体で命に直結する不整脈ではありません。しかし放置すると脳梗塞の原因になりうるため、早めに気づいて対応することが大切だと考えられています。この記事では、高血圧と心房細動のつながりと、家庭で脈の乱れに気づく方法を、公的なガイドラインと研究報告に沿って整理します。

心房細動とは? 心房が細かく震えて脈がバラバラになる不整脈

心臓は、上側の左右の「心房」と、下側の左右の「心室」という四つの部屋でできています。通常は心房にある洞結節から規則正しく電気信号が出て、それが心室へ順番に伝わることで一定のリズムの拍動が生まれます。心房細動は、この心房の中で電気の乱れが起き、心房が細かく不規則に震えてしまう状態です。心室へ伝わる信号も不規則になるため、手首で脈をとると打ち方がバラバラになり、速さも一定になりません。

心房細動はもっとも多くみられる不整脈のひとつで、一般人口の約1〜2%にみられ、80歳前後では10%程度にまで増えると報告されています(出典:Aune D, et al. Blood pressure, hypertension and the risk of atrial fibrillation. European Journal of Epidemiology 2023)。年齢とともに増える不整脈であり、日本では健診で診断される方だけでも約80万人、実際には100万人を超えると推計されています(出典:日本脳卒中協会「心房細動週間・脈の日」)。

症状が出ない人も少なくありません

心房細動が起きているとき、動悸(どうき)や胸の違和感、息切れ、めまい、疲れやすさといった症状を感じる方がいます。一方で、日本脳卒中協会は、心房細動の患者さんの約半数は無症状であると説明しています。つまり、症状がないからといって心房細動がないとは言い切れません。とくに発作的に起きて自然に治まるタイプ(発作性心房細動)は、たまたま受けた健診の心電図では捉えられないことも珍しくありません。だからこそ、症状の有無だけに頼らず、脈そのものを確認する習慣が役に立ちます。

高血圧があると、心房細動はどのくらい増えるのでしょうか

この点については、大規模な研究をまとめた解析があります。68の追跡研究(コホート研究)を統合したメタ解析では、高血圧のある人は高血圧のない人と比べて、その後に心房細動を発症するリスクが約1.5倍(相対リスク1.50、95%信頼区間1.42〜1.58)と報告されました。この部分の解析には、およそ3,050万人の参加者と約108万件の心房細動の発症が含まれています(出典:Aune D, et al. European Journal of Epidemiology 2023)。

同じ解析では、血圧の高さと心房細動の関係が段階的であることも示されています。収縮期血圧(上の血圧)が20mmHg高くなるごとにリスクは約1.2倍になり、この関係はほぼ直線的でした。さらに、180/110mmHg前後の人は90/60mmHg程度の人と比べてリスクが1.8〜2.3倍高いと推定されています。注目したいのは、研究者たちが「いわゆる正常範囲の中でも、血圧が高いほうがリスクは高くなる」と述べている点です。140/90mmHgという線を越えていなければ安心、という単純な話ではないことになります。

この解析には日本人を対象にした研究も複数含まれており、たとえば大阪の吹田研究では、血圧140/90mmHg以上の群で120/80mmHg未満の群より心房細動の発症が多かったと報告されています。生活習慣や体格が違っても、血圧と心房細動の結びつきは共通してみられる傾向だと考えられます。

血圧が高いと、心房に何が起きているのでしょうか

血圧が高い状態は、心臓が血液を押し出すときの抵抗が大きい状態です。心室はその抵抗に打ち勝つために強く収縮し続け、やがて筋肉が厚くなります。壁が厚く硬くなった心室は、拡張して血液を受け入れる力が落ちていきます。すると、心室に血液を送り込む側にあたる心房の内圧が上がり、心房は引き伸ばされて拡大していきます。

引き伸ばされた心房では、筋肉のあいだに線維(コラーゲン)が増え、電気信号の通り道が不均一になっていきます。均一な組織なら信号はきれいに一方向へ流れますが、通りにくい場所と通りやすい場所が入り混じると、信号が同じところを回り続けたり、あちこちで小さな渦をつくったりしやすくなります。これが心房細動の土台と考えられています。高血圧が長く続くほどこの変化が進むため、心房細動は「ある日突然できた病気」というより、血圧の負担が積み重なった結果として現れることが多いのです。

心房細動が起きると心房が十分に収縮できず、心室へ送り込まれる血液量が減ります。もともと心臓の余力が乏しい方では、これがきっかけで息切れや浮腫みが表に出てくることもあります。逆に心不全があると心房にかかる圧が上がるため心房細動が起こりやすくなる、という双方向の関係も知られています。

心房細動でもっとも注意したいのは脳梗塞です

心房細動が起きているあいだ、心房はきちんと収縮できず、細かく震えているだけの状態になります。すると心房の中の血液の流れがよどみ、血の塊(血栓)ができやすくなります。この血栓が心房から流れ出て脳の動脈に詰まると、心原性脳塞栓症と呼ばれるタイプの脳梗塞が起こります。

日本脳卒中協会は、脳卒中の約6割が脳梗塞であり、そのうち心原性脳塞栓症が2〜3割を占め、その原因の約4分の3が心房細動だと説明しています。このタイプの脳梗塞は詰まる血管が太く梗塞が大きくなりやすいため、死亡率が約2割、歩行に介助を要するなどの重い後遺症が残る方が約4割と報告されており、脳梗塞のなかでも重症になりやすいことが知られています(出典:日本脳卒中協会「心房細動週間・脈の日」)。

一方で、予防の手立てははっきりしています。同協会は、心房細動のある方が適切な抗凝固療法(血液を固まりにくくする治療)を受けると約6割の脳梗塞を予防できることが分かっていると説明しています。ただし現状では約半数しか抗凝固療法を受けていないとも指摘されており、心房細動そのものに気づかれていないケースが少なくないことが背景のひとつと考えられます。

ここで血圧管理が二重に意味を持ってきます。高血圧は心房細動そのものを起こしやすくする要因であり、同時に脳卒中の最大の危険因子でもあります。日本高血圧学会は、上の血圧を10mmHg下げると脳卒中・心臓病が約2割減少すると説明しています(出典:日本高血圧学会「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」)。詳しくは高血圧と脳卒中の関係|脳梗塞・脳出血を防ぐ血圧管理もあわせてご覧ください。

血圧を下げることで、心房細動は防げるのでしょうか

「高血圧だと心房細動が増える」ことと「血圧を下げれば心房細動が減る」ことは、厳密には別の問題です。前者は観察研究で分かりますが、後者を確かめるにはランダム化比較試験(くじ引きで治療方針を割り振る試験)が必要になります。

この点を検討したメタ解析があります。血圧をより低い目標まで下げる「厳格な降圧」と、従来どおりの降圧(収縮期140mmHg未満)を比べた3つのランダム化比較試験(Cardio-Sis、ACCORD-BP、SPRINT)、合計12,219人の高血圧の方のデータを統合した解析です。厳格な降圧を行った群では、新たに心房細動を発症した人の割合が2.2%、従来の降圧を行った群では3.0%で、統合したハザード比は0.74(95%信頼区間0.59〜0.93)でした。つまり、より低い血圧を目標にした群のほうが、心房細動の発症が少ないという結果です(出典:Singleton MJ, et al. Effect of Intensive Blood Pressure Lowering on Incident Atrial Fibrillation. Journal of Atrial Fibrillation 2020)。なお、厳格な降圧の目標は3試験のうち2試験で収縮期120mmHg未満、1試験で130mmHg未満でした。

ただし含まれた試験は3つのみで、心房細動の見つけ方も試験ごとに異なるなど限界が指摘されています。「血圧を下げれば心房細動にならない」と言い切れるものではありませんが、降圧が心房細動の発症を抑える方向に働く可能性を示す材料と受け取ることはできます。

日本の目標値については、2025年8月に日本高血圧学会から「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が発行されました(出典:日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。同学会はこのガイドラインに基づき、年齢に関わらず上の血圧130mmHg未満・下の血圧80mmHg未満を降圧目標としたことを公表しています。ただし実際の目標値は、年齢や併存する病気、ふらつきなどの状態によって主治医が個別に判断します。自己判断で薬を増減せず、必ず相談してください。

家庭で脈の乱れに気づくために

心房細動の確定診断は心電図で行います。家庭で診断をつけることはできませんが、「心電図をとってもらったほうがよいかもしれない」というきっかけをつかむことは可能です。その代表的な方法が、自分で脈をとる「検脈」です。日本脳卒中協会は、脈のチェックや心電図検査による早期発見・受診が心房細動からの脳梗塞予防に不可欠だとして、語呂合わせで3月9日を「脈の日」と定め、脈の自己チェックを呼びかけています。

  • 椅子に座って1〜2分ほど安静にします
  • 手のひらを上に向け、反対の手の人差し指・中指・薬指を手首の親指側に軽く添えます
  • 拍動を感じたら15〜30秒ほど数え、リズムが一定かどうかに注意します
  • 強さがまちまち、間隔が飛んだり詰まったりしてバラバラに感じる場合はメモします
  • いつ・どのくらい続いたかを記録し、受診時に持参します

もうひとつの手がかりが、家庭用血圧計です。最近の血圧計の多くには、測定中に脈の不整を検出すると表示が出る機能(脈間隔変動や不規則な脈のマーク)が備わっています。日本で行われた研究では、ある自動血圧計に搭載された不整脈検出アルゴリズムの性能を、心電図の判読と比べて検証しています。239人の患者さん(うち心房細動31人)を対象に3回ずつ測定し、3回すべてで表示が出た場合を陽性とすると、心房細動を見つける感度は96.8%、特異度は95.7%だったと報告されました(出典:Ishihara Y, et al. Diagnostic Performance of an Automated Blood Pressure Monitor With an Irregular Heartbeat Algorithm Designed to Detect Atrial Fibrillation. Circulation Reports 2024)。

ただしこの研究は医療機関を受診した方を対象にしたもので、家庭でのスクリーニングにそのまま当てはまるとは限りません。また、この表示は心房細動以外の不整脈や、測定中の体の動き・会話・腕の緊張などでも出ることがあります。表示が出たからといって心房細動と決まるわけではなく、逆に出ないから心房細動がないとも言えません。マークが繰り返し出るようであれば、その記録を持って受診し心電図で確認してもらう、という使い方が現実的です。

もう一点、実務的に役立つことがあります。心房細動があると一拍ごとに心臓から送り出される血液量が変わるため、血圧そのものが拍ごとに大きくばらつきます。自動血圧計は規則的な脈を前提に設計されているため、測定値のばらつきも大きくなりやすいのです。このため不整脈がある場合は、精度を高めるために測定を繰り返すことが推奨されています(出典:Myers MG, Stergiou GS. Should Oscillometric Blood Pressure Monitors Be Used in Patients With Atrial Fibrillation? The Journal of Clinical Hypertension 2015)。1回の値に一喜一憂せず複数回測って平均をみる、という基本がより大切になります(高血圧の診断基準と測定方法|正しい血圧の測り方)。

心房細動と高血圧に共通する生活習慣

心房細動の危険因子としては、年齢、性別、糖尿病、心臓の病気、心不全、喫煙、飲酒、肥満、運動不足などが挙げられています。ここに並ぶ要因の多くが高血圧の危険因子とも重なっており、血圧と脈の乱れは共通の土壌から育つ問題でもあります。とくに飲酒は、血圧を上げる要因であると同時に心房細動の発症にも関わる要因として挙げられています。宴席のあとに動悸を感じるという方は、その量と頻度を振り返ってみる価値があるでしょう(高血圧とアルコールの関係|お酒の飲み方と注意点)。

睡眠時無呼吸も、高血圧と心房細動の両方に関わる要因として知られています。夜間に呼吸が止まるたびに胸の中の圧力と交感神経の活動が大きく揺れるため、心房にも負担がかかると考えられています。大きないびきや日中の強い眠気がある方は、血圧と脈の両面から検討する価値があります(睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧の関係|治療で血圧は下がる?)。日本高血圧学会は、減塩・運動・肥満の是正・節酒といった生活習慣の改善で血圧は下がると説明しています。これらは心房細動の危険因子への対策とも重なるため、血圧のために取り組んだことが脈の健康にもつながる可能性があります。

こんなときは受診を検討してください

心房細動は無症状のことも多いため、「症状が出たら受診」という考え方だけでは見つけにくい面があります。次のような状況に心当たりがある場合は、一度かかりつけの医療機関で相談し、心電図を含めた評価を受けることを検討してください。

  • 脈をとったとき、リズムがバラバラで一定でない
  • 家庭用血圧計の脈の不整を示すマークが、繰り返し表示される
  • 動悸や胸の違和感、息切れ、めまい、極端な疲れやすさがある
  • 血圧が高い状態が続いている、または治療中でも目標まで下がっていない
  • 健診の心電図で不整脈を指摘されたが、その後確認していない
  • 強いいびきや睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気を指摘されたことがある

なお、突然の手足の力の入らなさ、顔のゆがみ、言葉が出にくい・ろれつが回らない、片方の目が見えにくいといった症状が急に現れた場合は、脳卒中の可能性があります。時間との勝負になるため、様子を見ずにすぐ救急受診してください。

まとめ

高血圧と心房細動は、心房にかかる負担という共通の道筋でつながっています。血圧が高い状態が続くと心房が拡大し、電気の通り道が乱れて心房細動が起こりやすくなる。そして心房細動は、重症化しやすいタイプの脳梗塞の主な原因になる——この流れを知っておくと、血圧の数字を見る目も、脈に触れる習慣の意味も変わってくるはずです。

  • ✔ 高血圧のある人は、心房細動の発症リスクが約1.5倍と報告されています
  • ✔ リスクは血圧が高いほど段階的に上がり、正常範囲の中でも差がみられます
  • ✔ 心房細動は心原性脳塞栓症の主な原因で、この脳梗塞は重症になりやすいことが知られています
  • ✔ 心房細動の患者さんの約半数は無症状で、症状の有無だけでは判断できません
  • ✔ 厳格な降圧を行った群で心房細動の発症が少なかったとするメタ解析があります
  • ✔ 脈の自己チェックと家庭用血圧計の不整脈表示は、受診のきっかけとして役立ちます
  • ✔ 確定診断は心電図で行うため、気になる記録は持参して医療機関で確認してもらいましょう

血圧を測る習慣がある方は、その数十秒のあいだに脈のリズムにも意識を向けてみてください。気づきの入口は、案外身近なところにあります。

参考文献

  • 日本高血圧学会「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」
  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(2025年8月29日発行)
  • Aune D, Mahamat-Saleh Y, Kobeissi E, et al. Blood pressure, hypertension and the risk of atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. European Journal of Epidemiology. 2023;38(2):145-178.
  • Singleton MJ, Chen LY, Whalen SP, et al. Effect of Intensive Blood Pressure Lowering on Incident Atrial Fibrillation: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Atrial Fibrillation. 2020;13(4):2401.
  • 日本脳卒中協会「心房細動週間・脈の日」(日本脳卒中協会・日本不整脈心電学会 心房細動週間事業合同委員会)
  • Ishihara Y, Ishizawa M, Noma T, et al. Diagnostic Performance of an Automated Blood Pressure Monitor With an Irregular Heartbeat Algorithm Designed to Detect Atrial Fibrillation. Circulation Reports. 2024;6(4):110-117.
  • Myers MG, Stergiou GS. Should Oscillometric Blood Pressure Monitors Be Used in Patients With Atrial Fibrillation? The Journal of Clinical Hypertension. 2015;17(7):565-566.

監修

監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

専門科目 救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

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