既存のクリニックを引き継いで院長になる「承継開業」について、案件を探す前の準備から、価格の考え方、行政手続き、引き継ぎ後の実務までを順番に整理しました。個別のテーマは各コラムに分けて書いていますが、このページだけでも全体の流れがつかめるようにしています。譲る側(後継者不在の院長)の選択肢は§9にまとめました。
クリニックの承継とは、すでに診療を続けている既存のクリニックを、建物・設備・患者・スタッフごと引き継いで院長になる開業のしかたです。物件探しから設備導入、集患までをゼロから立ち上げる新規開業に対して、すでに動いているものを引き継ぐ、という違いがあります。
承継先によって、大きく3つに分かれます。中小企業庁の「事業承継ガイドライン(第3版)」は、承継の類型を親族内承継・従業員承継・第三者承継(M&A)に整理しています。このうち、親族や院内の勤務医に適任者がいない場合に選ばれるのが第三者承継で、血縁関係のない医師が引き継ぐ形です。中小企業庁の定義では、この第三者承継だけが「中小M&A」に当たり、親族や院内スタッフへの承継は含まれません。
院長の高齢化と「子どもが継がない」流れが重なり、診療所の後継者不在は深刻化しています。数字で見ると、状況ははっきりしています。
一方、日本企業全体の後継者不在率は7年連続で改善しています。改善の主因は、親族以外への承継やM&Aといった「脱ファミリー」の選択肢が広く使われるようになったこととされています。クリニックも例外ではなく、第三者承継はすでに特殊な選択肢ではありません。
閉院すれば、地域から医療機関がひとつ失われます。承継であれば、患者・スタッフ・地域医療を残したまま引き継げる——これが、承継が選ばれる最大の理由です。買い手にとっては、すでに患者がついている状態から始められることを意味します。
承継で最初に確認すべきは、対象のクリニックが個人開設か医療法人かです。ここで手続きの重さも、引き継げるものも、税金も変わります。同じ「承継」という言葉でも中身が別物になるため、案件を見るときは必ず最初に確認してください。
| 引き継ぐ対象 | 個人開設の事業譲渡 | 医療法人の持分譲渡・役員交代 |
|---|---|---|
| 保険医療機関の指定 | 承継できず新規申請(遡及指定の運用あり) | 指定は継続 |
| 従業員の労働契約 | 自動では承継されない。個別同意による再締結が原則 | 雇用主体が変わらず継続 |
| カルテ(患者情報) | 事業承継としてカルテを移管(原則、本人同意は不要) | 法人が存続しカルテを保持(承継例外の適用可否は要検討) |
| 開設者・管理者 | 廃止届+新規開設届など行政手続きが必要 | 管理者(院長)変更等の届出 |
| のれんの評価水準 | 営業利益の0〜1年分が目安 | 営業利益の3〜5年分が目安 |
医療法人にはさらに「出資持分あり/なし」という区別があります。持分ありの法人では出資持分に相続税・贈与税が課され、評価額が高額になると納税負担そのものが承継の障害になり得ます。これは主に譲る側の論点ですが、買い手も案件の性格を理解するうえで押さえておく価値があります(詳細は§9)。
結論から言えば、どちらが優れているかではなく、向き・不向きです。費用・期間・リスクの構造が根本的に違うため、自己資金の額、急ぎ度、地域、やりたい診療スタイルによって答えが変わります。
| 観点 | 新規開業 | 承継開業 |
|---|---|---|
| お金の重心 | モノ(内装・医療機器) | コト(引き継ぐ収益力=のれん) |
| 初期費用の目安 | 5,000万〜1億円超 | 案件による(譲渡価額が前段に来る) |
| 支払いのタイミング | 数か月かけて段階的に発生 | クロージング前後に集中しやすい |
| 収益の立ち上がり | 患者がつくまで時間がかかる | 初月から患者がいる |
| 設計の自由度 | 理想どおりに作れる | 既存の設備・動線を引き継ぐ |
| 主なリスク | 集患が想定を下回る | 前任者の経営状態も引き継ぐ |
第三者承継の流れは、次の6段階が基本です。全体で半年から1年半が目安になります。
名前を伏せた案件情報(ノンネーム・シート)を受け取り、関心があるかを返す段階。ここではまだ実名は分かりません。
秘密保持契約を結び、実名と財務の中身が入った企業概要書を見たうえで、条件の希望を示します。
価格やスキームの大枠を合意。買い手の独占的交渉権が発生することが多く、他案件と並行しにくくなります。
財務・法務・労務・医療特有の項目を精査。ここで見つかった事実が価格や契約条件に反映されます。
譲渡契約を締結。表明保証など、後から問題が出たときの責任の所在もここで決まります。
対価の支払いと引き渡し。並行して保険医療機関の指定など行政手続きを進めます。
上の6ステップは「取引としての流れ」です。ここでは買い手が実際に何をするかを、順番に整理します。各項目の下に、詳しく書いたコラムを置いています。
診療科・エリア・検討時期・資金の上限・承継後の体制。この5つを先に決めます。
つまずきやすい点:条件が決まっていない相談者には、そもそも案件が回ってきません。「良い案件があれば」という状態では、窓口も何を紹介してよいか判断できないためです。
承継案件の情報は1か所に集約されていません。中小M&Aガイドラインが挙げる支援機関は、M&A専門業者・金融機関・商工団体・士業等専門家・M&Aプラットフォーマー・公的機関の6種類。買い手が実際に使える窓口としては、国の事業承継・引継ぎ支援センター(全国47都道府県48か所・相談無料)、日本政策金融公庫のマッチング、M&A仲介、買い手FA、プラットフォームに分かれます。
つまずきやすい点:「案件が見つからない」の実態は、多くの場合まだどの窓口にも自分の希望条件が登録されていないという状態です。公的窓口と公庫のマッチングは相談無料なので、ここから始められます。
最初に届くのは、売り手が特定されないよう要約された数行の情報です。年商・譲渡希望額・開設形態(個人立か医療法人か)の3つを、正しく読み分けます。
つまずきやすい点:年商は利益ではありません。規模の目安以上には使えません。また、建物の賃貸借契約・施設基準・保険医療機関の指定・スタッフの雇用条件は案件情報に載りませんが、承継の可否を左右します。
秘密保持契約を結ぶと、企業概要書とあわせて決算書が出てきます。3期分そろえて、単年ではなく推移で読みます。医療法人は決算に関する書類を毎会計年度終了後3か月以内に都道府県へ届け出る義務があるため、届出が期限どおりかも確認材料になります。
つまずきやすい点:個人立の決算書には院長報酬が費用計上されていません。「所得」が大きく見えても、自分が受け取る報酬を人件費に置き直すと収益力の見え方が変わります。減価償却費が小さい診療所も、儲かっているのではなく設備を償却し終えているだけの場合があります。
譲渡価格は「時価純資産+のれん(営業権)」で考えるのが基本です。のれんは将来の稼ぐ力を金銭に置き換えたもので、総額を大きく動かすのはこちらです(算定方法は§6)。
つまずきやすい点:相場の数字は目安にすぎません。同じ売上でも、院長個人への依存度が高いほどのれんは評価されにくくなります。承継後に院長が代わっても患者が残るのか、という観点で見ます。
仲介者は売り手と買い手の双方と契約し、FAは一方とだけ契約します。誰と契約しているかが、誰の利益のために動くかを決めます。国のガイドラインは仲介(両手)を禁じてはおらず、利益相反のリスクを前提に禁止事項と説明義務を課す立て方をしています。
つまずきやすい点:確認すべきは手数料の総額だけではありません。相手方がいくら払うか、専任やテールの条項、セカンドオピニオンを取れるかを契約前に見ます。中小企業庁のM&A支援機関登録制度への登録は、事業承継・M&A補助金の利用条件にもなっています。
基本合意の後、最終契約の前に行う精査です。財務・法務・労務・税務に加えて、診療所では医療特有の項目が重視されます(詳細は§8)。
つまずきやすい点:DDは買い手のためだけの手続きではありません。売り手が負う責任の範囲(表明保証)を確定させる工程でもあります。期間や責任の上限が不明確なままだと、売り手が過大な責任を負うおそれがあるとガイドラインも指摘しています。費用は原則として買い手負担です。
承継開業の資金は「譲渡価額(のれん含む)+運転資金+リニューアル費用+諸費用」で構成されます。日本政策金融公庫の事業承継向け融資と民間融資の組み合わせが一般的です(詳細は§6)。
つまずきやすい点:自己資金は総額の1〜2割が一つの目安。譲渡価額に自己資金を使い切って運転資金が薄くなるのが典型的な失敗です。引き継ぎ直後は患者やスタッフの動きが読みにくく、支出がぶれやすい時期にあたります。
最大のヤマ場です。保険医療機関の指定は原則「申請の翌月1日」。厚生局の締切から逆算しないと、保険診療ができない空白期間が生まれます。
つまずきやすい点:一定の場合は指定日を旧医療機関の廃止日に遡らせる遡及指定が使えます。2026年9月1日から取扱いが全国統一のルールに一本化され、3類型に整理されました。類型2(至近距離移転・開設者のみ変更)は事前相談不要、類型3(それ以外)は希望日の3か月前までの予定届出と事前相談が必要です。法人成りでは開設者を除く全職員の継続雇用が原則になります。
契約が終わってからが本番です。誰に、いつ、何を伝えるかで、承継後の患者数とスタッフの定着が変わります。
つまずきやすい点:スタッフへの説明のタイミングが軽視されがちです。公表が早すぎれば動揺による離職を招き、遅すぎれば不信感につながります。誰に・いつ・どう伝えるかを、譲渡側と譲受側で事前にすり合わせておきます。患者への周知は医療広告に関わるため、事実に即した案内にとどめます。
クリニックの価格は「時価純資産+のれん(営業権)」で考えるのが基本です。土地建物や医療機器といった純資産部分は比較的評価しやすい一方、のれんは将来の稼ぐ力を見込んで算定されるため、同じ売上でも評価が大きく変わります。仲介各社の公開情報では、クリニックの事業承継価格はおおむね2,000万〜4,000万円程度が一つの目安として示されていますが、診療科・立地・利益水準・院長への依存度によって上下します。
企業価値評価には3つのアプローチがあり、中小企業のM&Aではこれらを組み合わせて落としどころを探るのが一般的です。
| アプローチ | 代表的な手法 | クリニックでの位置づけ |
|---|---|---|
| コスト | 時価純資産法・年買法 | 実務で最も広く使われる。時価純資産に営業利益の数年分を上乗せする |
| マーケット | EBITDA倍率法 | 相場観をつかむのに有用。ただし案件ごとの個別性が高く単純比較は難しい |
| インカム | DCF法 | 理論的だが事業計画の前提次第で動くため、中小クリニックでは補助的 |
承継開業の資金は4つの費目に分かれます。新規開業がモノ(内装・設備)に、承継がコト(引き継ぐ収益力=のれん)にお金の重心が置かれる、という違いがあります。
| 費目 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | クリニックを引き継ぐ対価(のれん含む) | 案件ごとに幅が大きい。新規開業にはない費用 |
| 運転資金 | 開業後の人件費・家賃・仕入れなど | 収益が安定するまでの数か月分を厚めに |
| リニューアル費用 | 内装の手直し、設備の更新 | 「どこまで手を入れるか」で総額が変動 |
| 諸費用 | 行政手続き、専門家への相談費用など | 見落とされやすいが必ず発生する |
支出のタイミングにも違いがあります。新規開業は物件契約から内装、設備へと段階的に支払いが発生しますが、承継開業はクロージング前後に譲渡価額というまとまった支払いが集中しやすいため、そのタイミングに合わせて融資の実行時期を設計する必要があります。総額だけでなく「いつ、いくら必要か」を時系列で描くことが、資金ショートを防ぎます。
調達の柱は日本政策金融公庫と民間金融機関です。公庫には事業の引き継ぎを対象とした「事業承継・集約・活性化支援資金」があり、融資限度額は7,200万円以内(うち運転資金4,800万円以内)、返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)と長期で借りやすい設計です(2026年時点)。
| 調達先 | 特徴 | 向く使い方 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 長期・固定的な条件で借りやすい。事業承継向けの専用資金がある | 譲渡価額・設備資金など大口・長期の資金 |
| 民間金融機関 | 地域密着で柔軟。取引関係を築ける | 運転資金、開業後の追加融資や当座の資金繰り |
据置期間(元金の返済を一定期間猶予する仕組み)を使えば立ち上がり期の返済負担を軽くできますが、据置期間中も利息は発生し、据置後の返済額は大きくなります。開業後の収支見通しと照らして無理のない範囲で使うことが前提です。設備更新には融資だけでなくリースや補助金という選択肢もあります。
ここまでの流れは一般企業のM&Aとおおむね共通です。診療所の承継が難しいのは、次の4つが加わるからです。一般的なM&Aの知識だけで進めると、ここで想定が狂います。
個人開業の事業譲渡では、指定は引き継げず新規申請になります。原則は申請の翌月1日付。この手続きを怠ると承継直後に保険診療ができず、経営に直接影響します。条件を満たせば遡及指定が使えますが、要件や運用は地方厚生局・都道府県で異なるため事前相談が欠かせません。
個人立の診療所は法人ではないため、渡されるのは所得税の確定申告書一式です。損益差額には開設者の報酬になる部分が含まれます。そのまま「利益」として読むと、承継後の手取りを大きく見誤ります。
個人情報保護法27条5項2号の「事業の承継」に該当すれば、患者本人の同意なく引き継げます。ただし後継者は取得時の利用目的の範囲内で使う必要があります。診療録は医師法24条で5年間の保存義務があり、承継後も体制を途切れさせないことが求められます。
どの施設基準を届け出ているかで、承継後の診療報酬が変わります。移転を伴う承継ではおおむね2km以内なら引き続き適用できる一方、これを超えると新規届出が必要とされる運用があり、算定できる点数が変わり得ます。届出が期限どおりかは管理体制を見る手がかりにもなります。
買い手が確認する領域は、大きく財務・税務・法務・労務・事業の5つに分かれます。診療所M&Aでは、規模の大小にかかわらず次の観点が点検されます。
| DDの種類 | 主に見られる内容 |
|---|---|
| 財務DD | 過去数期の決算書、レセプト請求と入金の整合、リース残債、未払金、簿外・偶発債務の有無 |
| 税務DD | 申告内容と納税状況、消費税・源泉の処理、過大な役員報酬や交際費などの否認リスク |
| 法務DD | 開設者の種別、行政への届出、賃貸借契約の承継可否、係争や行政指導の履歴 |
| 労務DD | 雇用契約と就業規則、未払残業代の有無、退職金規程、社会保険の加入状況 |
| 事業DD | 患者数・診療圏・レセプト単価の推移、主要スタッフの定着、設備の老朽度、集患チャネル |
期間は診療所の規模や資料の整い方によりますが、資料開示から数週間程度が一つの目安です。書類が事前に整理されているほど短縮されます。費用は買い手が自らのリスク確認のために行うため原則として買い手負担で、専門家への調査依頼費用は国の事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用枠)の対象となる場合があります。
ここまでは引き継ぐ側の話でした。譲る側の選択肢は、「引き継ぐ4つ」と「畳む1つ」に分けて考えると整理しやすくなります。
| 選択肢 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 親族内承継 | 子など親族の医師へ引き継ぐ | 継ぐ意思のある医師の親族がいる |
| 院内承継 | 勤務医・分院長など内部の医師へ引き継ぐ | 信頼できる勤務医が在籍している |
| 第三者承継(M&A) | 外部の医師・医療法人へ譲渡する | 親族・院内に後継者がいない |
| 認定医療法人化 | 持分あり法人を持分なしへ移行し税負担を抑える | 出資持分のある医療法人 |
| 閉院(廃業) | 診療を終了し施設を清算する | 承継の見込みがなく資産価値も低い |
譲渡は「畳む」より手取りが大きくなりやすい点も見逃せません。閉院では退職金・原状回復・リース残債の清算など支出が先に立ちますが、承継なら院長は譲渡対価を受け取り、患者は通院先を、スタッフは雇用を維持できる可能性が高まります。第三者承継が広く使われるようになった背景には、こうした性質があります。
持分ありの医療法人では出資持分に相続税・贈与税が課され、評価額が高額になると納税負担そのものが承継の障害になり得ます。これを抑える仕組みが認定医療法人制度で、持分なしへの移行にともなう相続税・みなし贈与税が100%猶予され、要件を満たせば最終的に免除されます。出資持分の払い戻し請求などで医業継続が難しくなる事態を避ける目的で、2014年の医療法改正で創設されました。
移行計画の認定申請期限は、令和8年度税制改正により令和11年(2029年)12月31日まで3年間延長されました。ただし延長されても、同族役員3分の1以下などの要件充足と移行完了までには年単位の時間がかかります。適用可否や要件は個別事情で異なるため、税理士など専門家に早めに相談してください。
案件情報や契約書で出てくる用語を、承継の文脈に絞ってまとめました。
案件の検討から開業まで、おおむね6か月〜1年半が目安です。最も読みにくいのは行政手続きで、保険医療機関の指定は原則として申請の翌月1日付になります。厚生局の締切に間に合わないと開始が1か月ずれるため、逆算して動く必要があります。
多くの場合、まだどの窓口にも希望条件が登録されていないことが原因です。承継案件の情報は1か所に集約されておらず、公的窓口・金融機関・M&A仲介・プラットフォームに分散しています。診療科・エリア・検討時期・資金の上限を決めたうえで、複数の窓口に条件を伝えるところから始めます。国の事業承継・引継ぎ支援センターと日本政策金融公庫のマッチングは相談無料です。
隠しているのではなく、手順がそう決まっているためです。中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、名前を伏せた要約(ノンネーム・シート)で関心を打診し、秘密保持契約を結んだ後に実名や財務が入った企業概要書を開示する、という順序を示しています。
「時価純資産+のれん(営業権)」で考えるのが基本です。純資産は土地建物や医療機器など評価しやすい部分、のれんは将来の稼ぐ力を金銭に置き換えたものです。実務では時価純資産に営業利益の数年分を上乗せする年買法が広く使われ、上乗せ年数の目安は医療法人で3〜5年分、個人クリニックで0〜1年分とされます。
承継後に収益が続くかどうかの読みが違うためです。医療法人は組織・体制で診療が回るため承継後も収益が続きやすいと見られます。一方、個人クリニックは院長個人に患者が紐づいているぶん、承継後の患者離れのリスクが価格に織り込まれます。
院長報酬が費用として計上されていない点です。損益差額には開設者の報酬になる部分が含まれるため、自分が受け取る報酬を人件費に置き直したうえで収益力を見る必要があります。あわせて、減価償却費が小さい場合は設備を償却し終えているだけの可能性があるため、承継直後の再投資額を決算書の外で見積もります。
スキームによって変わります。個人事業の事業譲渡では労働契約が自動的には移らないため、個別の同意と再締結が必要です。医療法人の出資持分譲渡・役員交代であれば雇用主体が変わらないため、そのまま継続します。再締結する場合は社会保険・雇用保険の資格得喪の手続きが発生します。
個人開業の事業譲渡では引き継げず、新規申請が原則です。指定日は通常「申請の翌月1日」ですが、一定の要件を満たせば旧医療機関の廃止日に遡らせる遡及指定が使えます。2026年9月1日から取扱いが全国統一のルールに一本化されました。医療法人の持分譲渡では指定は継続します。
買い手が自らのリスク確認のために行うため、原則として買い手負担です。専門家への調査依頼費用は、国の事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用枠)で補助対象となる場合があります。金額・要件は年度により変わるため、申請時に一次情報で確認してください。
必ずしもそうとは限りません。内装・設備を流用できるため設備投資は抑えやすい一方、のれんを含む譲渡価額の支払いが加わります。総額は案件次第で新規開業より高くも安くもなり得るため、費目ごとに比較することが大切です。
開業総額の1〜2割が一つの目安です。承継開業で特に意識したいのは、譲渡価額だけに自己資金を使い切らないことです。開業直後は想定外の設備更新やスタッフの入れ替え、患者の一時的な減少などで支出がぶれやすいため、運転資金の余力を残しておくと立ち上がりが安定します。
使えます。公庫には「事業承継・集約・活性化支援資金」があり、融資限度額は7,200万円以内(うち運転資金4,800万円以内)です。返済期間は設備資金20年以内・運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)です。利用には要件があるため、最新の条件を公庫で確認してください(2026年時点)。
診療科・エリア・年間売上・引き継ぎ希望時期の4つが決まっていれば十分です。決まっていない段階のご相談でも構いません。相談とセカンドオピニオンは無料です。
条件を伝えて相談する本ページは一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法務・税務・医療上の助言ではありません。制度の適用は個別の事情により異なります。実際の判断にあたっては、医師・税理士・弁護士・社会保険労務士・M&A専門家など有資格者にご確認ください。統計・制度は各コラムの公開時点の情報にもとづきます。各制度の詳細と出典は、リンク先の各コラムに記載しています。