呼吸器内科ってどんなところ?

呼吸器内科ってどんなところ?

本記事について

特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、「あなたの症状なら呼吸器内科です」という判断をする記事でもありません。 呼吸器内科という診療科名が制度上どう位置づけられ、どんな病気を扱い、ほかの科とどう分担しているのかという、受診行動のしくみの説明にとどめています。

診療科名の根拠は医療法施行令、扱う病気は日本呼吸器学会の一般向け解説、肺がん検診は厚生労働省の指針、禁煙治療は関係4学会の標準手順書、在宅酸素療法の火気の注意は医薬品医療機器総合機構(PMDA)、救急の目安は総務省消防庁の資料を出典にしています(末尾に一覧・確認日を記載)。

目次

はじめに

かぜは治ったのに、せきだけが何週間も続く。階段で息が切れるようになった。健診の胸部X線で「所見あり」と書かれていた。子どものころのぜんそくが、大人になって戻ってきた気がする——こうした場面で名前が挙がるのが呼吸器内科です。

ところが外来で話を聞くと、「呼吸器内科は肺炎や肺がんのような重い病気の人が行くところ」「たばこをやめたいだけで行ってもいいのか分からない」という声を聞きます。実際には、ぜんそくやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のように長く付き合う病気の管理、睡眠時無呼吸、禁煙治療まで、日常に近い相談も多い科です。看板に「アレルギー科」が並んでいる理由や、耳鼻いんこう科との分担も分かりにくいところです。

呼吸器内科は、気管支と肺の病気を、薬や吸入、検査といった内科の方法で診る科です。ぜんそく・COPD・肺炎のほか、睡眠時無呼吸や禁煙治療の窓口になることもあります。ただし、気管支鏡などの精密検査や肺がんの治療は設備のある病院の役割になり、急な息苦しさは119番を考える場面です。

実際に探すときは

現在、以下のエリアで呼吸器内科の記事を公開しています。

「呼吸器内科」と「アレルギー科」は、どんな科名?

医療機関が看板やウェブサイトに掲げられる診療科名は、医療法施行令第3条の2で決められています。呼吸器内科は、「内科」に「呼吸器」という事項を組み合わせて作られる科名です。循環器内科や消化器内科と同じ作り方です。

一方、アレルギー科は、精神科・小児科・皮膚科・耳鼻いんこう科などと並んで、それ自体がひとつの科名として条文に書かれています。 このほか、「内科」と「アレルギー疾患」を組み合わせた科名も施行令の枠の中で作れます。

ここで押さえておきたいのは2点です。

  • アレルギー科という科名は、どの臓器を診るかまでは示していません。 ぜんそくのような気道のアレルギーを中心にしている院もあれば、皮膚や鼻のアレルギーを中心にしている院もあります。「呼吸器内科・アレルギー科」と並べて掲げている院でも、アレルギーのうち何を中心に診ているかは、各院の説明で確かめる必要があります
  • 科名は医療機関が自分で掲げるものです。施行令が決めているのは「この名前なら広告してよい」という枠であって、その院の医師が呼吸器の分野をどれだけ診てきたかまでは、科名からは分かりません(後述)

呼吸器内科ではどんな病気を診る?

日本呼吸器学会は、一般向けの解説で呼吸器の病気を次のように分類しています。

  • 感染症……かぜ症候群、インフルエンザ、急性気管支炎、肺炎(誤嚥性肺炎を含む)、肺結核、肺非結核性抗酸菌症、COVID-19 など
  • 気道が狭くなる病気……COPD(慢性閉塞性肺疾患)など
  • アレルギーが関わる肺の病気……気管支ぜんそく、過敏性肺炎など
  • 間質性肺疾患……特発性間質性肺炎、サルコイドーシスなど
  • 腫瘍……肺がん、縦隔腫瘍など
  • 肺の血管の病気・胸膜の病気……肺血栓塞栓症、肺高血圧症、胸膜炎、気胸など
  • 呼吸不全……急性呼吸不全、慢性呼吸不全
  • その他……気管支拡張症、職業性肺疾患、過換気症候群、睡眠時無呼吸症候群など

外来でよく話題になる病気について、学会の説明を要約するとこうなります。

  • 気管支ぜんそく……気道(空気の通り道)に炎症が続いて敏感になり、発作的に狭くなる病気です。治療の中心は吸入ステロイド薬で、症状がなくても気道の炎症は続いているため、炎症を抑える薬を続けることが大切だと学会は説明しています
  • COPD……有害な物質、主にたばこの煙を長く吸い込むことで気道が狭くなり、息切れ・せき・たんが続く病気です。学会は喫煙を最大の原因とし、禁煙が治療の基本としています。坂道や階段での息切れが代表的な症状です
  • 睡眠時無呼吸症候群……睡眠中に呼吸が止まることを繰り返す病気で、いびきや日中の眠気が代表的な症状です。携帯型の機器による簡易検査や、一晩かけて調べる検査(終夜睡眠ポリグラフ)で評価します

長引くせきそのものについては、せきが長引いたら呼吸器内科?耳鼻いんこう科?で、日本呼吸器学会のガイドラインに基づく期間の目安とあわせて詳しく扱っています。

診療所でできることと、病院の役割は?

呼吸器内科の外来でよく行われるのは、問診と聴診に加えて、胸部X線、呼吸機能検査(スパイロメトリー)などです。学会の解説では、COPDの診断には呼吸機能検査で息が十分に吐き出せていないこと(閉塞性換気障害)を確かめること、ぜんそくでは気管支を広げる薬を吸ったあとの改善や、吐いた息の一酸化窒素濃度(呼気NO)で気道の炎症を調べることが紹介されています。

どの検査を院内で行えるかは、医療機関によって違います。 CT、呼気NOの測定、睡眠時無呼吸の検査などは、院内で行う診療所もあれば、連携する病院に依頼する診療所もあります。各医療機関の公式サイトで確認する必要があります。

一方、気管支鏡を使った組織や細胞の検査、肺がんの治療、重い肺炎や呼吸不全の入院治療は、設備のある病院の役割です。学会は肺がんの診断について、CT、たんの検査、気管支鏡を使った組織・細胞の検査などを挙げています。診療所はその入口として、気になる所見があれば病院へ紹介し、治療が落ち着いたあとは再び経過をみる——こうした連携の流れは、紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?で解説しています。

ほかの科とは、どう分担している?

呼吸器の症状は、ほかの臓器の病気でも起こります。このため、いくつかの科と守備範囲が重なります。

  • 耳鼻いんこう科……鼻やのどの病気(副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など)が長引くせきの原因になっていることがあります。睡眠時無呼吸も、学会は原因として首まわりの脂肪や扁桃の肥大、鼻の病気などを挙げており、鼻やのどの問題が関わる場合は耳鼻いんこう科も相談先になります。耳鼻いんこう科の守備範囲は耳鼻いんこう科ってどんなところ?で整理しています
  • 循環器内科……息苦しさは、肺だけでなく心臓に原因があって起こることもあります。学会も、肺に水がたまる肺水腫の原因のひとつに心臓の働きの低下を挙げています。循環器内科については循環器内科ってどんなところ?で解説しています
  • 一般内科・かかりつけ……かぜや急性気管支炎は一般内科で診てもらうことも多い病気です。まずかかりつけで相談し、必要に応じて呼吸器内科を紹介してもらう進め方もあります。かかりつけの役割については「かかりつけ医」を持つと何がいいの?で説明しています

どちらが正しいということではありません。 診察や検査の結果、別の科を紹介されるのはよくある流れです。

健診で胸部X線の所見を指摘されたら?

市区町村が行う肺がん検診は、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に沿って行われています。現行の指針では、対象は40歳以上(受診を特に推奨するのは40歳以上69歳以下)、原則として年1回、検査項目は質問(問診)と胸部X線検査です。

この検査項目は、2025年(令和7年)12月の指針改正で変わりました。それまでは、質問の結果、喫煙量の多い方などにたんの細胞を調べる検査(喀痰細胞診)を加えていましたが、改正で検診の項目から外れています。あわせて質問では、喫煙歴や職歴、血痰の有無に加えて、たんが続いているかどうかも聞くことになり、健康教育の項目にも「たんが続く場合は医療機関への早期受診を指導する」ことが加わりました。たんが続く方は、検診を待たずに医療機関で相談するという考え方です。

検診で「要精密検査」となった場合は、CTなどの精密検査に進むことになります。学会は、日本人の肺がんでは無症状のうちに、検診やほかの病気で撮った胸部X線・CTで見つかる例が最も多いと説明しています。判定区分の読み方や結果票の持っていき先は、健診で「要再検査」と言われたら、どこへ行けばいい?で整理しています。

禁煙治療は、保険でどう受けられる?

禁煙は、COPDや肺がんの予防・治療の土台です。学会は肺がんの原因の約70%がたばこだとしています。たばこをやめたいとき、一定の条件を満たせば、健康保険を使った禁煙治療を受けられます。

日本循環器学会・日本肺癌学会・日本癌学会・日本呼吸器学会の「禁煙治療のための標準手順書」が整理している保険診療の条件は、次のとおりです。

  • 直ちに禁煙したいと考えていること
  • ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と判定されること
  • 35歳以上の場合は、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上であること
  • 手順書に沿った禁煙治療の説明を受け、文書で同意していること

治療は、初回の診察から12週間にわたって計5回が標準で、加熱式たばこの方も対象です。また、同じ手順書では、保険で禁煙治療を行う医療機関は、あらかじめ地方厚生(支)局に届け出る必要があるとされています。禁煙治療の経験がある医師がいれば、診療科は問われません。 呼吸器内科に限らず、内科や循環器内科などで禁煙外来を設けている院もあります。

なお、初回の算定から1年を超えないと、保険での禁煙治療を再び受けることはできません。診療報酬のしくみは改定で変わることがあるため、受診する医療機関で確認してください。

在宅酸素療法を始めたら、何に気をつける?

COPDや間質性肺炎などが進んで、ふつうの空気を吸っていても血液中の酸素が足りなくなった状態を、学会は慢性呼吸不全と説明しています(血液中の酸素の圧力が一定の値を下回る状態が1か月以上続くもの)。この場合、自宅で酸素を吸う在宅酸素療法が行われることがあり、学会は、適応の基準を満たせば健康保険が使えるとしています。

学会の解説では、自宅では主に酸素濃縮装置を使い、外出用には携帯型の酸素ボンベや軽い携帯型の酸素濃縮装置があるとされています。

家族も含めて必ず知っておきたいのが、火気の注意です。PMDAの患者向けQ&Aでは、酸素吸入中は絶対にたばこを吸わないこと、装置の周囲2m以内には火気を置かないことを呼びかけています。家族の方も、装置の近くで火を扱わないようにしてください。

早めの受診が勧められるのは、どんな場面?

ここまでは、外来で計画的に受診する場面の話です。日本呼吸器学会の一般向け解説では、次のような場面について早めの受診を勧めています。

  • 血の混じったたん(血痰)が出る……学会は、血痰は肺がんの可能性もあるとして、速やかに専門の医療機関を受診するよう勧めています
  • ぜんそくの発作で、発作止めの吸入を繰り返しても良くならない……学会は、速やかに受診するよう説明しています

一方、次のような症状が急に出たときは、診療所の診療時間を待たずに119番を考える場面です。総務省消防庁の「救急車を上手に使いましょう」は、救急車を呼ぶべき症状として、次のようなものを挙げています。

  • 大人:急な息切れ、呼吸困難/胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが2〜3分続く/物をのどにつまらせて、呼吸が苦しい、意識がない
  • 子ども(15歳以下):激しいせきやゼーゼーして呼吸が苦しそう/呼吸が弱い/くちびるの色が紫色

迷ったときの相談窓口(#7119)や、夜間・休日の医療のしくみについては、夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?で整理しています。

よくある誤解

誤解1:「呼吸器内科は、肺炎や肺がんのような重い病気の人が行くところ」

重い病気も扱いますが、それだけではありません。日本呼吸器学会は、かぜ症候群や急性気管支炎、ぜんそく、COPD、睡眠時無呼吸症候群なども呼吸器の病気として挙げています。ぜんそくやCOPDのように、長く通院して管理する病気も多い科です。

誤解2:「ぜんそくの薬は、症状がなくなったらやめてよい」

日本呼吸器学会は、症状がなくても気道の炎症は続いているため、発作を防ぐために炎症を抑える薬を続けることが大切だと説明しています。薬の量を減らすかどうかは、自己判断ではなく主治医と相談して決めることです。

誤解3:「禁煙外来は呼吸器内科にしかない」

禁煙治療の標準手順書では、保険で禁煙治療を行う医療機関の条件として、禁煙治療の経験がある医師の勤務を挙げていますが、その医師の診療科は問わないとされています。内科や循環器内科などで禁煙外来を設けている院もあります。

誤解4:「呼吸器内科と書いてあれば、どこでも同じ検査ができる」

診療科名は医療機関が施行令の枠の中で掲げるもので、CTや呼気NO、睡眠時無呼吸の検査などを院内で行えるかどうかは院によって違います。医師の専門資格も科名とは別の話です。資格表記の読み方は「専門医」「指導医」「認定医」の違いって?で解説しています。

こう考えて選ぶとよい

呼吸器内科の医療機関を探すときに、手がかりになる軸を挙げます。

  • 今の目的が、急な症状の相談なのか、長く付き合う病気の管理なのか——ぜんそくやCOPDのように通院を重ねる場合は、通いやすさや予約の取りやすさが大事になります
  • 院内でできる検査——胸部X線、呼吸機能検査、CT、呼気NO、睡眠時無呼吸の検査などを院内で行っているかは、公式サイトで確認します
  • 「アレルギー科」を併せて掲げているなら、何のアレルギーを中心に診ているか——気道のアレルギーなのか、皮膚や鼻のアレルギーも含むのかは、院の説明で確かめます
  • 禁煙治療を考えているなら、保険の禁煙外来を行っているか——公式サイトや院内掲示で案内されていることが多い項目です
  • 医師がどんな分野を診てきたか——同じ呼吸器内科でも、ぜんそく・アレルギー、感染症、間質性肺炎、肺がんなど、病院時代に中心にしてきた分野は医師によって違います。経歴の欄が手がかりになります

いずれの場合も、最終的にどの医療機関を選ぶかは、お住まいのエリアの記事を参考にご自身で判断してください。 本記事はその前段階の、制度と役割分担の説明にとどまります。

監修者からのひとこと

内科の外来では、「息切れは年のせいだと思っていた」という方によくお会いします。坂道や階段で息が切れるのが当たり前になっていても、呼吸機能検査をしてみると肺の働きが落ちていた、ということは珍しくありません。

たばこを吸っている方、吸っていた方は、一度は呼吸機能の検査を受けてみてください。また、ぜんそくの吸入薬は、調子が良いときこそ続けることに意味があります。やめたい、減らしたいと感じたら、自己判断でやめる前に主治医に相談してください。

よくある質問

Q. 呼吸器内科は、何を診る科ですか。

A. 気管支と肺の病気を、薬や吸入、検査といった内科の方法で診る科です。日本呼吸器学会は、肺炎などの感染症、気管支ぜんそく、COPD、間質性肺疾患、肺がん、胸膜の病気、呼吸不全、睡眠時無呼吸症候群などを呼吸器の病気として挙げています。

Q. 「呼吸器内科」と「アレルギー科」は違う科ですか。

A. 医療法施行令上は別の科名です。呼吸器内科は「内科」と「呼吸器」を組み合わせた科名、アレルギー科はそれ自体がひとつの科名です。アレルギー科という科名だけでは、気道・皮膚・鼻など、どの臓器のアレルギーを中心に診るかまでは分からないため、各院の説明を確認してください。

Q. ぜんそくは、呼吸器内科で診てもらえますか。

A. はい。日本呼吸器学会は、気管支ぜんそくを呼吸器の病気のひとつとして解説しており、呼吸機能検査や呼気NOの測定などで評価し、吸入ステロイド薬を中心に治療するとしています。子どものぜんそくは小児科でも診療が行われており、年齢や状況によって相談先は変わります。

Q. 肺がん検診では、どんな検査をしますか。

A. 厚生労働省の指針では、市区町村の肺がん検診は40歳以上を対象に原則として年1回、質問(問診)と胸部X線検査で行うとされています。2025年12月の指針改正で、たんの細胞を調べる喀痰細胞診は検診の項目から外れました。たんが続く場合は、検診を待たずに医療機関で相談してください。

Q. 禁煙外来は、健康保険で受けられますか。

A. 条件を満たせば受けられます。禁煙治療の標準手順書では、ニコチン依存症のスクリーニングテストで依存症と判定されること、35歳以上は1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上であること、直ちに禁煙したいと考え文書で同意していることなどが条件とされ、治療は12週間で計5回が標準です。地方厚生(支)局に届け出た医療機関で受けられます。

Q. 在宅酸素療法をしている家族がいます。気をつけることはありますか。

A. 火気の扱いです。PMDAの患者向けQ&Aでは、酸素吸入中は絶対にたばこを吸わないこと、装置の周囲2m以内には火気を置かないことを呼びかけています。家族の方も、装置の近くで火を使わないようにしてください。

Q. 具体的にどの医療機関に行けばいいですか。

A. 本記事では特定の医療機関をおすすめしていません。上記の「実際に探すときは」から、お住まいのエリアの記事をご覧のうえ、ご自身で判断してください。

出典・参考文献

確認日:2026年10月12日

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