糖尿病内科ってどんなところ?

糖尿病内科ってどんなところ?

本記事について

特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、「あなたの数値なら糖尿病です」という判断をする記事でもありません。 糖尿病内科・内分泌内科という診療科名が制度上どう位置づけられ、どんな病気を扱い、ほかの科とどう分担しているのかという、受診行動のしくみの説明にとどめています。

診療科名の根拠は医療法施行令と厚生労働省の通知、診断の基準は日本糖尿病学会の診療ガイドライン、健診の判定値は厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」、合併症の説明は糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)、ホルモンの病気の説明は日本内分泌学会の資料を出典にしています(末尾に一覧)。

目次

はじめに

健診の結果票に「HbA1c 6.2%」「空腹時血糖 118」と並び、横に「要精密検査」や「要受診」と書かれていた。家族に糖尿病の人がいて、自分も気になっている。首のあたりが腫れていると言われ、「甲状腺を診てもらって」と勧められた——そんなとき、検索すると「糖尿病内科」「内分泌内科」「糖尿病・内分泌内科」といった科名が出てきます。

外来で話を聞いていると、「症状がないのに病院に行く必要があるのか」「一度行ったら一生通うことになるのでは」「糖尿病と甲状腺がなぜ同じ科なのか」といった声をよく耳にします。糖尿病はかなり進むまで自覚症状が出にくく、だからこそ数値を手がかりに、長い目で付き合っていく病気です。

糖尿病内科は、糖尿病を中心に、血糖の異常を長い目で診ていく内科です。ホルモンの病気を診る内分泌内科と並んで「糖尿病・内分泌内科」と掲げられることが多く、甲状腺の病気なども扱います。ただし、健診の数値だけで糖尿病と決まるわけではなく、診断は医療機関での検査で行います。病状が安定していれば一般のかかりつけ医で診ることも多く、合併症のために眼科などとの連携も欠かせません。

実際に探すときは

現在、以下のエリアで糖尿病・内分泌内科の記事を公開しています。

「糖尿病内科」「内分泌内科」は、内科との組み合わせで決まる科名

医療機関が看板やウェブサイトに掲げられる診療科名は、医療法施行令第3条の2で決められています。「内科又は外科と次に定める事項とを組み合わせた名称」という枠があり、組み合わせられる事項のうち、臓器や機能の側に「内分泌」「代謝」、病気の側に「糖尿病」が挙げられています。「内科」+「糖尿病」=「糖尿病内科」、「内科」+「内分泌」=「内分泌内科」という組み立てです。

厚生労働省の通知(平成20年)は、科名の具体例として「糖尿病内科」「代謝内科」「内分泌内科」を挙げ、2つの事項をつなげた表示例として「糖尿病・代謝内科」も示しています。街で「糖尿病・内分泌内科」「糖尿病・代謝内科」といった看板が多いのはこのためです。

一方、同じ通知は、法令に根拠のない名称の例として「糖尿病科」を挙げ、診療科名としては広告できないとしています。「糖尿病」は、あくまで「内科」と組み合わせて使う事項という位置づけです。

なお、科名は医療機関が自分で掲げるものです。施行令が決めているのは「この名前なら広告してよい」という枠であって、その院の医師がどこまで糖尿病や内分泌の病気を専門に診てきたかまでは、科名からは分かりません(後述)。

糖尿病内科・内分泌内科ではどんな病気を診る?

糖尿病

糖尿病内科の中心は、もちろん糖尿病です。糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)は、糖尿病をインスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気と説明しています。インスリンは膵臓から出るホルモンで、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。

同センターは、多くの場合、糖尿病はある日突然血糖値が高くなるのではないと説明し、健康診断が糖尿病を見つける一番身近な方法だとしています。予備群の段階で気づいて食事療法や運動療法を行えば、発症を防ぐことができるとも書いています。

糖尿病の治療が長い付き合いになるのは、高い血糖が続くことで、時間をかけて体のさまざまなところに病気(慢性合併症)が起きるからです。同センターは、慢性合併症を次の2つに分けて説明しています。

  • 細小血管症……糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症など
  • 大血管症……心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患、足病変(足壊疽など)

そのうえで、慢性合併症は数年から数十年の経過でゆっくり生じ、かなり進行するまで症状が出ないこともあると注意を促しています。

内分泌(ホルモン)の病気

内分泌とは、体の中でホルモンを作って血液中に送り出すはたらきのことです。日本内分泌学会は、ホルモンは脳下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎・膵臓などで作られ、ホルモンが多すぎても少なすぎても病気になると説明しています。同学会が一般向けに解説している病気の領域には、間脳下垂体・副腎・甲状腺・骨代謝・副甲状腺・肥満・糖尿病などが並んでいます。先に見たとおり糖尿病もインスリンというホルモンが十分に働かない病気なので、内分泌の病気と同じ並びで扱われています。

診療所の外来でよく出会う内分泌の病気としては、甲状腺の病気があります。日本内分泌学会の一般向け解説から2つ挙げます。

  • バセドウ病……甲状腺ホルモンが作られすぎる病気(甲状腺機能亢進症)の代表です。動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどの症状が起き、20〜30代の若い女性に多いとされています
  • 橋本病(慢性甲状腺炎)……甲状腺ホルモンが少なくなる病気の代表です。成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられるとされる頻度の高い病気で、甲状腺の機能が正常であれば、原則として治療は必要ないと同学会は説明しています

ほかにも、副腎からアルドステロンというホルモンが出すぎる原発性アルドステロン症は、高血圧の原因になる病気です。日本内分泌学会は、高血圧の患者さんに占める割合を5%程度と考えられるとしています。

健診の「HbA1c」と、糖尿病の診断は別のもの

健診の結果票で糖尿病に関係する主な項目は、空腹時血糖(または随時血糖)とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。

健診の判定値

厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」は、特定健診の判定値を次のように定めています。

判定空腹時血糖HbA1c
保健指導判定値100 mg/dL以上5.6%以上
受診勧奨判定値126 mg/dL以上6.5%以上

同じプログラムのフィードバック文例集は、受診勧奨判定値を超えていて、糖尿病の治療を受けていない人には、すぐに医療機関を受診するよう伝えることにしています。受診勧奨判定値の手前(空腹時血糖110〜125、HbA1c 6.0〜6.4%)でも、生活習慣の改善とあわせて精密検査を勧める区分が設けられています。

診断は、医療機関での検査で行う

一方、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」は、次のいずれかにあてはまる値を「糖尿病型」と呼んでいます。

  • 空腹時血糖 126 mg/dL以上
  • 75gブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値 200 mg/dL以上
  • 随時血糖 200 mg/dL以上
  • HbA1c 6.5%以上

そのうえで、別の日に行った検査で糖尿病型が2回以上確認されれば糖尿病と診断すること、ただしHbA1cだけをくり返し測っての診断はできず、2回のうち1回は必ず血糖値で確認することを定めています。同じ採血で血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型なら、1回の検査でも診断するとしています。また、血糖値とHbA1cの一方だけが一度糖尿病型で診断に至らない場合は、3〜6か月の間隔で検査をくり返して経過をみるとしています。

つまり、健診の数値は「医療機関で調べてください」という合図であって、それだけで糖尿病と決まるわけではありません。要精密検査という結果全般の受け止め方や、結果票の持っていき方は健診で「要再検査」と言われたら、どこへ行けばいい?で整理しています。

一般内科とは何が違い、ほかの科とどう連携する?

糖尿病は患者さんの多い病気で、一般内科のかかりつけ医が日常的に診ている病気でもあります。日本糖尿病学会は、糖尿病専門医が「糖尿病内科」「内分泌代謝内科」などを掲げて診療していることを紹介したうえで、病状が安定していれば、糖尿病の診療は一般のかかりつけ医のもとで受けられることも多いと説明しています。

そのため、糖尿病内科を掲げる診療所には、次のような役割を担っているところがあります(どこまで担うかは医療機関によって違います)。

  • 診断がついたばかりの時期に、治療の方針を立てる
  • 血糖がなかなか落ち着かない、薬の調整が難しいといった場面で相談を受ける
  • インスリンなどの注射薬を使う治療や、血糖を測る機器の使い方を支える
  • 食事や運動について、管理栄養士などと一緒に支える体制を持つ

また、糖尿病の合併症は全身に及ぶため、ほかの科との連携が欠かせません。

  • 眼科……糖尿病情報センターは、網膜症は重症になるまで視力低下などの自覚症状が出ないことがあるため、見え方が正常と思っても1年に1回は眼科を受診するよう勧めています
  • 腎臓内科……糖尿病腎症は、腎臓の働きが落ちていく慢性腎臓病の原因のひとつです。腎臓内科の役割は腎臓内科ってどんなところ?で解説しています
  • 循環器内科……大血管症として心筋梗塞などが挙げられており、心臓や血管の検査で循環器内科とつながることがあります。循環器内科ってどんなところ?もあわせてご覧ください

よくある誤解

誤解1:「症状がないから、まだ受診しなくていい」

糖尿病情報センターは、慢性合併症はかなり進行するまで症状が出ないこともあると説明しています。網膜症についても、視力低下などの自覚症状は重症になるまで出てこないとしています。症状の有無ではなく、健診の数値を受診のきっかけにするのが、この病気との付き合い方です。

誤解2:「健診のHbA1cが6.5%を超えたら、もう糖尿病と決まり」

日本糖尿病学会のガイドラインは、HbA1cだけをくり返し測っての診断はできず、血糖値でも確認することを求めています。健診の値は、医療機関で改めて調べるための合図です。反対に、「受診勧奨判定値の手前だから何もしなくてよい」というわけでもなく、厚生労働省のプログラムは6.0〜6.4%の区分でも精密検査を勧めています。

誤解3:「糖尿病は、糖尿病内科でなければ診てもらえない」

日本糖尿病学会自身が、病状が安定していれば一般のかかりつけ医のもとで診療を受けられることも多いと説明しています。通いやすいかかりつけで続け、必要な場面で糖尿病内科と連携するという形もあります。

誤解4:「糖尿病内科は、糖尿病だけを診る科」

内分泌と組み合わせて「糖尿病・内分泌内科」と掲げることが多く、甲状腺などホルモンの病気を診ている院も少なくありません。ただし、甲状腺の病気をどこまで院内で診ているか(超音波検査を行うかなど)は医療機関によって違うので、公式サイトの診療内容で確かめてください。

こう考えて選ぶとよい

糖尿病内科・内分泌内科の医療機関を探すときに、手がかりになる軸を挙げます。

  • 今の目的が、まず調べてもらうことなのか、長く続く管理なのか——健診で数値を指摘されたばかりなら、血糖値とHbA1cを測って診断をつけてもらうことが最初の目的です。すでに治療中で血糖が落ち着かないなら、薬の調整や注射薬の扱いに慣れているかどうかが大事になります
  • 通い続けられるかどうか——糖尿病の管理は、多くの場合、何年にもわたる定期的な通院になります。職場や自宅からの距離、診療時間、予約の取りやすさは、続けるための現実的な条件です
  • 内分泌の病気をどこまで診ているか——甲状腺などの相談をしたい場合は、公式サイトに甲状腺の病気の診療や検査について書かれているかを確かめます
  • 医師がどんな分野を診てきたか——日本糖尿病学会は専門医を検索できるページを公開しています。資格表記の読み方は「専門医」「指導医」「認定医」の違いって?で解説しています
  • 眼科や病院とどうつながっているか——眼科の定期受診や、合併症が見つかったときの紹介先がはっきりしているかどうかも、判断材料になります。紹介のしくみは紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?で解説しています

いずれの場合も、最終的にどの医療機関を選ぶかは、お住まいのエリアの記事を参考にご自身で判断してください。 本記事はその前段階の、制度と役割分担の説明にとどまります。

監修者からのひとこと

健診でHbA1cの高さを指摘されたのに、「症状がないから」と数年そのままにして、受診したときには合併症が始まっていた——外来では、そうした方に今もお会いします。糖尿病は、早く分かった人ほど、生活の工夫で付き合える幅が広い病気です。

「一度行ったら一生通うことになる」と身構える必要はありません。まずは数値の意味を確かめに来てください。どこで、どのくらいの間隔で通うかは、その方の暮らしに合わせて一緒に決めていけばよいと考えています。

よくある質問

Q. 糖尿病内科は、何を診る科ですか。

A. 糖尿病を中心に、血糖の異常を長い目で診ていく内科です。ホルモンの病気を診る内分泌内科と並んで「糖尿病・内分泌内科」と掲げられることが多く、甲状腺の病気なども扱う院があります。どこまで診ているかは各院の公式サイトで確認してください。

Q. 「糖尿病内科」と「内分泌内科」は何が違うのですか。

A. どちらも医療法施行令にもとづき、「内科」に「糖尿病」または「内分泌」を組み合わせた科名です。糖尿病はインスリンというホルモンが十分に働かない病気でもあるため、両方をあわせて「糖尿病・内分泌内科」と掲げる医療機関が多くあります。

Q. 健診でHbA1cが高いと言われました。それだけで糖尿病ですか。

A. 日本糖尿病学会のガイドラインは、HbA1cだけをくり返し測っての診断はできず、血糖値でも確認することを求めています。健診の値だけで糖尿病と決まるわけではないので、結果票を持って、かかりつけか糖尿病内科で相談してください。

Q. 健診のHbA1cは、いくつから受診を考えればいいですか。

A. 厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」は、HbA1c 6.5%以上(空腹時血糖126 mg/dL以上)を受診勧奨判定値としています。その手前の6.0〜6.4%でも精密検査を勧める区分があります。結果票に書かれた判定と指示に従ってください。

Q. 糖尿病は、一般の内科でも診てもらえますか。

A. 日本糖尿病学会は、病状が安定していれば一般のかかりつけ医のもとで診療を受けられることも多いと説明しています。治療の方針を立てる時期や、血糖が落ち着かない場面では、糖尿病内科と連携することがあります。

Q. 糖尿病と言われたら、なぜ眼科にも行くのですか。

A. 糖尿病の合併症のひとつである網膜症は、重症になるまで視力低下などの自覚症状が出ないことがあるためです。糖尿病情報センターは、見え方が正常と思っても1年に1回は眼科を受診するよう勧めています。

Q. 具体的にどの医療機関に行けばいいですか。

A. 本記事では特定の医療機関をおすすめしていません。上記の「実際に探すときは」から、お住まいのエリアの記事をご覧のうえ、ご自身で判断してください。

出典・参考文献

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