本記事について
特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、「あなたの症状なら耳鼻いんこう科です」という判断をする記事でもありません。 耳鼻いんこう科という診療科名が制度上どう位置づけられ、どんな病気を扱い、ほかの科とどう分担しているのかという、受診行動のしくみの説明にとどめています。
診療科名の根拠は医療法施行令、扱う範囲は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の一般向け解説、補聴器と医療費控除は国税庁の文書、救急の目安は総務省消防庁の資料を出典にしています(末尾に一覧・確認日を記載)。
はじめに
子どもが夜中に耳を痛がる。鼻水が何週間も止まらない。最近、テレビの音が大きいと家族に言われる。朝起きたら片方の耳が聞こえにくい——こうした場面で思い浮かぶのが耳鼻いんこう科です。
ところが外来で話を聞くと、「耳鼻いんこう科は耳そうじや鼻水の吸引をしてもらうところ」というイメージで止まっている方が少なくありません。実際には、めまい・においの低下・飲み込みにくさ・声のかすれ・首のしこりまで、扱う範囲はかなり広い科です。逆に、「子どもの中耳炎は小児科と耳鼻いんこう科のどちらへ」「補聴器はお店に直接行けばいいのでは」といった、科の分担の分かりにくさも残っています。
耳鼻いんこう科は、耳・鼻・のどを中心に、聞こえ・めまい・におい・味・飲み込み・声、首のしこりまでを診る科です。耳の奥やのどの奥を専用の器具で直接見て調べられるのが特徴で、補聴器の相談の入口にもなります。ただし、手術やがんの治療は設備のある病院の役割になり、急な片耳の聞こえの低下や顔のまひは早めの受診が勧められています。
実際に探すときは
現在、以下のエリアで耳鼻いんこう科の記事を公開しています。
- 立川市 / 日野市 / 府中市 / 調布市 / 三鷹市 / 西東京市 / 小平市 / 国分寺市 / 多摩市 / 小金井市 / 国立市 / 狛江市 / 昭島市 / 東大和市 / 稲城市
- 豊島区 / 江東区 / 千代田区
- 鎌倉市
「耳鼻いんこう科」は、法令に名前が書かれている科名
医療機関が看板やウェブサイトに掲げられる診療科名は、医療法施行令第3条の2で決められています。循環器内科や消化器内科が「内科+循環器」のような組み合わせで作られる科名なのに対し、耳鼻いんこう科は、眼科・皮膚科・小児科などと並んで、それ自体がひとつの科名として条文に書かれています。 法令の表記がひらがな交じりの「耳鼻いんこう科」なので、看板でもこの書き方をよく見かけます。
一方で、病院では「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」という名前もよく使われます。施行令では「頭頸部」が外科と組み合わせられる事項のひとつに挙げられており、「頭頸部外科」はこの枠で作られる科名です。学会の名前も、現在は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会です。
ここで押さえておきたいのは、科名は医療機関が自分で掲げるものだという点です。施行令が決めているのは「この名前なら広告してよい」という枠であって、その院の医師がどの分野を中心に診てきたかまでは、科名からは分かりません(後述)。
耳鼻いんこう科ではどんな病気を診る?
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、耳鼻咽喉科専門医が診る範囲として、耳、鼻・副鼻腔、口腔、咽頭、喉頭、気管、食道、唾液腺・甲状腺など頭頸部領域の病気をはじめ、アレルギー、めまい、顔面まひ、いびき、声とことば、飲み込みの異常を挙げています。学会の一般向け解説を部位ごとに整理すると、次のようになります。
- 耳・聞こえ……外耳炎・中耳炎、難聴(突発性難聴・加齢による難聴など)、耳鳴り
- めまい・顔のまひ……耳の奥(内耳)にはバランスを保つ器官があり、聞こえの器官と隣り合っているため、めまいと難聴は同時に起こりがちだと学会は説明しています。顔面神経は耳の奥の骨の中を通るため、顔面神経まひも扱います
- 鼻・におい……副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎(花粉症など)、鼻血、においが分かりにくい(嗅覚障害)
- 口・のど・味……扁桃炎、味が分かりにくい(味覚障害)、いびき・睡眠中の呼吸の異常(子どもの扁桃・アデノイドの肥大を含む)
- 声・飲み込み……声のかすれ、物を飲み込みにくい(嚥下障害)
- 首……唾液腺や甲状腺のしこり、頭頸部のがん
この並びを見ると、耳・鼻・のどという「穴」だけでなく、聞こえ・におい・味・バランスといった感覚と、呼吸・飲み込み・声という働きを受け持つ科だということが分かります。
診療所でできることと、病院の役割は?
耳鼻いんこう科の外来の特徴は、耳の奥やのどの奥を、専用の器具で直接見て調べられることです。学会の解説でも、副鼻腔炎は鼻の内視鏡やレントゲン、CTなどの検査をしないと詳しい診断ができないとされています。診療所では、耳・鼻・のどの観察や処置、聴力検査、鼻の吸引や点鼻・吸入(ネブライザー)などが外来の中心になります。
どの検査を院内で行えるかは、医療機関によって違います。 鼻やのどの内視鏡(ファイバースコープ)、CT、めまいの検査、飲み込みの検査などは、院内で行う診療所もあれば、連携する病院に依頼する診療所もあります。各医療機関の公式サイトで確認する必要があります。
一方、手術や、頭頸部のがんの治療は病院の役割です。学会は、頭頸部の悪性腫瘍について、専門的治療を行っている施設では手術・薬物療法・放射線療法などを組み合わせた治療を行っていると説明しています。診療所はその入口として、気になる所見があれば病院へ紹介し、治療後に再び経過をみる——こうした連携の流れは、紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?で解説しています。
小児科や内科とは、どう分担している?
耳鼻いんこう科は、子どもから高齢の方まで年齢を問わず診る科です。このため、ほかの科と守備範囲が重なる場面がいくつかあります。
- 子どもの中耳炎・鼻水……かぜの延長として小児科で診てもらうことも、鼓膜や鼻の奥を直接見るために耳鼻いんこう科へかかることも、どちらの選択肢もあります。学会は子ども向けの解説で、繰り返す中耳炎や鼻副鼻腔炎、扁桃やアデノイドの肥大による睡眠中の呼吸の異常なども耳鼻いんこう科の扱う病気として挙げています。年齢ごとの小児科の考え方は子どもは何歳まで小児科?で整理しています
- 長引くせき……呼吸器内科と耳鼻いんこう科のどちらに相談されることが多いかは、症状の特徴によって分かれます。せきが長引いたら呼吸器内科?耳鼻いんこう科?で詳しく扱っています
- のどの痛み・発熱……かぜとして一般内科で診てもらうことも多い症状です。のどの奥の状態を直接見る必要があるときや、痛みが強い・長引くといったときに、耳鼻いんこう科を紹介されることもあります
どちらが正しいということではありません。 まずかかりつけで相談し、必要に応じて耳鼻いんこう科を紹介してもらう、という進め方もあります。かかりつけの役割については「かかりつけ医」を持つと何がいいの?で説明しています。
聞こえの相談と補聴器は、どこから始める?
聞こえにくさを感じたとき、補聴器の販売店に直接行く方もいます。ただ、学会は、治せる難聴なら治療を行い、治せない難聴について補聴器が本当に必要かどうかを診断することを、耳鼻いんこう科の役割として説明しています。耳あかが詰まっている、中耳炎が続いているなど、補聴器より先に治療すべき原因が見つかることもあるためです。
この役割を担う資格として、学会は補聴器相談医を委嘱しています。補聴器相談医は、耳の状態を診察して聴力検査を行い、難聴の種類を診断したうえで、必要があれば専門の販売店を紹介して連携し、購入後も聴力の経過をみると説明されています。
制度上の実利もあります。国税庁は2018年(平成30年)の文書で、補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」で、補聴器が診療等のために直接必要だと証明している場合、その購入費用(一般的に支出される水準を著しく超えない部分)は医療費控除の対象になると回答しています。学会の案内では、流れは次のとおりです。
- 補聴器相談医のいる耳鼻いんこう科を受診し、問診・検査を受ける
- 補聴器が必要と判断されたら、補聴器相談医が診療情報提供書を作成する
- それを持って認定補聴器専門店で購入し、提供書の写しと領収書を受け取る(学会は、認定補聴器専門店・認定補聴器技能者以外から購入した場合は控除を受けられないと案内しています)
- 確定申告で医療費控除として申告する(書類は保管しておく)
控除が受けられるかどうかの最終的な判断は税務署によります。また、自治体によっては高齢者向けの補聴器購入の助成を設けている場合があり、その条件は自治体ごとに異なります。お住まいの自治体の窓口で確認してください。
早めの受診が勧められるのは、どんな場面?
ここまでは、外来で計画的に受診する場面の話です。学会の一般向け解説では、次のような場面についてできるだけ早く耳鼻いんこう科を受診するよう呼びかけています。
- 突然、片方の耳が聞こえにくくなった……原因の分からない急な難聴(突発性難聴)は、治療法の有効性が必ずしも確立していないものの、発症早期に治療を始めたほうが聴力の経過が良いと報告されていると学会は説明しています
- 顔の片側が動かしにくくなった(顔面神経まひ)……学会は、いずれの治療も早く始めるとよりよい効果が得られるとしています
- 鼻血が止まらない……学会の子ども向け解説では、小鼻を中心に約10分間しっかり押さえるのが止血の基本で、30分くらい押さえても止まらない、ふらふらする、顔色が悪い、出血の勢いが強い、顔のけがを伴うといった場合は、早めに耳鼻いんこう科か救急病院を受診するよう案内しています
一方、次のような症状が急に出たときは、診療所の診療時間を待たずに119番を考える場面です。総務省消防庁の「救急車を上手に使いましょう」は、大人で救急車を呼ぶべき症状として、次のようなものを挙げています。
- 顔半分が動きにくい、しびれる/笑うと口や顔の片方がゆがむ/ろれつがまわりにくい
- 支えなしで立てないぐらい急にふらつく
- 物をのどにつまらせた
学会も、難聴やめまいに加えて、ろれつが回らない・顔の感覚が鈍い・飲み込みにくいといった症状が重なる場合は、脳梗塞など別の病気を考える必要があると説明しています。迷ったときの相談窓口(#7119)や、夜間・休日の医療のしくみについては、夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?で整理しています。
よくある誤解
誤解1:「耳鼻いんこう科は、耳そうじや鼻水の吸引をしてもらうところ」
処置は外来の大事な役割ですが、それだけではありません。学会は、めまい、顔面まひ、においや味の障害、いびき、声、飲み込みの異常、首のしこりまでを耳鼻いんこう科の扱う範囲として挙げています。
誤解2:「補聴器は、お店に直接行けば十分」
購入自体は販売店でできます。ただ、学会は、治せる難聴かどうかをまず診断することを耳鼻いんこう科の役割としており、耳あかや中耳炎など先に治療すべき原因が見つかることもあります。また、国税庁の文書では、医療費控除の対象になるのは補聴器相談医が診療情報提供書で必要性を証明した場合とされています。
誤解3:「耳鼻いんこう科と書いてあれば、どこでも同じ検査ができる」
診療科名は医療機関が施行令の枠の中で掲げるもので、内視鏡やCT、めまいの検査などを院内で行えるかどうかは院によって違います。医師の専門資格も科名とは別の話です。耳鼻咽喉科専門医は、学会の説明では、初期臨床研修のあと4年以上の専門研修を経て試験に合格した医師です。資格表記の読み方は「専門医」「指導医」「認定医」の違いって?で解説しています。
こう考えて選ぶとよい
耳鼻いんこう科の医療機関を探すときに、手がかりになる軸を挙げます。
- 今の目的が、急な症状の治療なのか、長く続く悩みの相談なのか——中耳炎や副鼻腔炎のように通院を重ねることが多い場合は通いやすさが、めまいや聞こえの低下の原因を調べたい場合は院内でできる検査が大事になります
- 院内でできる検査——鼻やのどの内視鏡、聴力検査の種類、CTなどを院内で行っているかは、公式サイトで確認します
- 聞こえの相談をしたいなら、補聴器相談医がいるか——補聴器を考えている場合は、補聴器相談医の在籍が手がかりになります。学会のウェブサイトでも相談医を探せます
- 医師がどんな分野を診てきたか——同じ耳鼻いんこう科でも、耳、鼻、のど・声、飲み込み、頭頸部のがんなど、病院時代に中心にしてきた分野は医師によって違います。経歴の欄が手がかりになります
- 子どもを診てもらうなら、子どもの診療に慣れているか——中耳炎やアレルギー性鼻炎は子どもに多い病気です。小児の診療について公式サイトでどう説明しているかも参考になります
いずれの場合も、最終的にどの医療機関を選ぶかは、お住まいのエリアの記事を参考にご自身で判断してください。 本記事はその前段階の、制度と役割分担の説明にとどまります。
監修者からのひとこと
内科の外来でも、のどの痛みや鼻水、耳の詰まった感じを相談されることはよくあります。ただ、鼓膜の様子や鼻・のどの奥は、耳鼻いんこう科の器具でなければ十分に見えないことが多く、症状が長引くときや繰り返すときは、早めに耳鼻いんこう科へおつなぎするようにしています。
もうひとつお伝えしたいのは、聞こえの低下を「年のせい」とそのままにしないことです。聞こえにくさは会話や外出のおっくうさにつながりやすいものです。急に片耳が聞こえにくくなったときは様子を見ずに、ゆっくり進む聞こえにくさも一度相談してみてください。
よくある質問
Q. 耳鼻いんこう科は、何を診る科ですか。
A. 耳・鼻・のどを中心に、聞こえ、めまい、におい、味、飲み込み、声の異常、首のしこりなどを診る科です。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、唾液腺・甲状腺など頭頸部領域の病気や、アレルギー、顔面まひ、いびきなども扱う範囲として挙げています。
Q. 「耳鼻いんこう科」と「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」は違う科ですか。
A. 扱う領域は重なっています。「耳鼻いんこう科」は医療法施行令に書かれた科名で、「頭頸部外科」は頭頸部と外科を組み合わせた科名です。病院では、両方を並べた「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」という名前を掲げていることがあります。
Q. 子どもの中耳炎は、小児科と耳鼻いんこう科のどちらに行けばいいですか。
A. どちらでも診療は行われており、本記事では一律にお答えできません。鼓膜や鼻の奥を直接見て処置をするのは耳鼻いんこう科の得意な分野で、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は繰り返す中耳炎なども耳鼻いんこう科の扱う病気として挙げています。迷うときは、ふだんかかっている医療機関に相談してください。
Q. 補聴器を買う前に、耳鼻いんこう科を受診したほうがいいですか。
A. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、治せる難聴かどうかをまず診断し、補聴器が本当に必要かを判断することを耳鼻いんこう科の役割としています。また国税庁の文書では、補聴器相談医が「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」で必要性を証明した場合に、購入費用が医療費控除の対象になるとされています。
Q. 朝起きたら片方の耳が聞こえにくくなっていました。様子を見てもいいですか。
A. 本記事では個別の判断はできません。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、突然起こる原因不明の難聴(突発性難聴)について、発症早期に治療を始めたほうが聴力の経過が良いと報告されているとして、早期の受診を勧めています。ろれつが回らない、顔の片側が動きにくいといった症状を伴う場合は、119番を考えてください。
Q. 耳鼻いんこう科の診療所なら、どこでも内視鏡やCTの検査ができますか。
A. いいえ。鼻やのどの内視鏡、CT、めまいや飲み込みの検査などを院内で行うかどうかは、医療機関によって異なります。手術や頭頸部のがんの治療は、設備のある病院で行われるのが一般的です。各医療機関の公式サイトで確認してください。
Q. 具体的にどの医療機関に行けばいいですか。
A. 本記事では特定の医療機関をおすすめしていません。上記の「実際に探すときは」から、お住まいのエリアの記事をご覧のうえ、ご自身で判断してください。
出典・参考文献
- 医療法施行令(e-Gov法令検索)——第3条の2(広告できる診療科名。耳鼻いんこう科は第1項第1号ニ(1)、頭頸部は同号ハ(1))
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳科・聴覚」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「めまい・平衡覚・顔面神経」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「口腔・咽頭・味覚」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「嚥下」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「頭頸部外科・頭頸部腫瘍」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳の病気」(突発性難聴ほか)
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻の病気」(副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・嗅覚障害ほか)
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「子どものみみ・はな・のどの病気:鼻出血」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「耳鼻咽喉科専門医とは?」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「補聴器相談医とは?」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「補聴器購入者が医療費控除を受けるために」
- 国税庁「補聴器の購入費用に係る医療費控除の取扱いについて(情報)」(個人課税課情報 第3号・平成30年4月16日)
- 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう〜救急車 必要なのはどんなとき?〜」
確認日:2026年10月8日
