「血圧を下げる飲み物」はインターネット上に数多く紹介されていますが、なかには誇張された効能をうたうものも少なくありません。この記事では、実際にランダム化比較試験やメタ解析で降圧効果が確認されている飲み物を中心に、期待できる効果の大きさと注意点を整理します。ただし、どの飲み物も降圧薬の代わりになるものではなく、あくまで食事療法の一部として捉えることが大切です。
ビートルート(赤ビーツ)ジュース
赤ビーツに多く含まれる硝酸塩は、体内で一酸化窒素に変換され、血管を拡張させる働きがあります。11件のランダム化比較試験・349人を対象としたメタ解析では、ビートルートジュースの摂取により収縮期血圧が平均5.31mmHg低下したことが報告されています。ただし拡張期血圧や24時間自由行動下血圧には有意な差が見られておらず、エビデンスの確実性は「低い」と評価されている点には注意が必要です(出典:Grönroos et al., Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases, 2024)。
紅茶・緑茶
紅茶については、11件のRCT・378人を対象にしたメタ解析で、1日4〜5杯程度の摂取により収縮期血圧が平均1.8mmHg、拡張期血圧が1.3mmHg低下したことが報告されています。効果はベースラインの血圧が高い人ほど大きい傾向がありました(出典:Greyling et al., PLOS ONE, 2014)。緑茶についても13件のRCTを対象としたメタ解析で、収縮期血圧を有意に低下させることが確認されています(出典:Peng et al., Scientific Reports, 2014)。いずれも効果はわずかであり、劇的な降圧を期待するものではありませんが、日常的な飲み物として取り入れやすい点が利点です。緑茶に含まれるカテキンや紅茶に含まれるテアフラビンといったポリフェノール成分が、血管の内側を覆う血管内皮の機能を改善し、血管を広げやすくすることが、こうした降圧効果の背景にあるメカニズムとして考えられています。
ハイビスカスティー
ハイビスカスティーも血圧との関係が研究されている飲み物のひとつです。2022年のメタ解析では、4週間を超える継続摂取で有意な降圧効果が確認された一方、1日1g以下の低用量では有意差が見られないという用量反応関係が示されています。また降圧薬と比較した場合には、収縮期血圧の差は2.13mmHg(95%信頼区間 -2.81〜7.06)にとどまり、統計学的に有意な差ではありませんでした(出典:Nutrition Reviews, 2022)。
注意したい飲み物:アルコールとカフェイン
血圧を下げる飲み物がある一方で、摂取量に注意が必要な飲み物もあります。米国メイヨークリニックのDASH食に関する解説では、少量〜中等量の飲酒であっても血圧を上昇させうるとされ、飲酒する場合は1日1杯程度までにとどめることが推奨されています。また、カフェインは一時的に血圧を上昇させる作用があるため、血圧測定の直前に多量摂取することは避け、日頃の摂取量にも配慮することが望ましいとされています(出典:Mayo Clinic「DASH diet」)。高血圧とアルコールの関係では、飲酒量と血圧の関係についてさらに詳しく解説しています。
飲み物選びで意識したいポイント
- 降圧効果は数mmHg程度のものが多く、飲み物だけで高血圧が改善するわけではない
- 無糖・低カロリーのものを選び、糖分の摂りすぎによる体重増加を避ける
- 腎機能に問題がある場合はカリウムを多く含む飲み物(野菜ジュース等)の摂取量に注意し主治医に相談する
- 降圧薬を服用中の方は、グレープフルーツジュースなど薬の効果に影響する飲み物がないか薬剤師に確認する
飲み物の工夫はあくまで補助的な位置づけであり、減塩を中心とした食事療法や適度な運動といった生活習慣全体の見直しと組み合わせることで、初めて意味のある効果が期待できます。
なぜ「数mmHg」の効果でも意味があるのか
ビートルートジュースの5.31mmHg、紅茶の1.8mmHgといった数値だけを見ると、「その程度か」と感じるかもしれません。しかし、集団全体で見た場合、収縮期血圧が平均で数mmHg下がるだけでも、脳卒中や心筋梗塞といった心血管イベントの発生率は無視できない程度に低下することが疫学研究で示されています。降圧薬のような大きな効果は期待できませんが、こうした飲み物の工夫を毎日の習慣として積み重ねることは、食事全体の改善や運動習慣と組み合わせることで、無理なく続けられる血圧管理の一部になり得ます。
低脂肪乳製品と血圧
DASH食(高血圧を防ぐための食事法)の研究では、野菜・果物に加えて低脂肪の乳製品を積極的に摂ることが、血圧管理に役立つ食事パターンの柱のひとつとして位置づけられています。低脂肪乳製品にはカルシウムやカリウムが含まれており、これらのミネラルはナトリウムの排出を促す働きがあるとされています。牛乳やヨーグルトを甘味料の少ない形で日常的に取り入れることは、ジュースなど糖分の多い飲み物を控える代わりの選択肢としても有用です。
続けやすい取り入れ方
血圧に良いとされる飲み物を無理に毎日大量に飲む必要はありません。市販のビートルートジュースや野菜ジュースは糖分や塩分が添加されているものもあるため、成分表示を確認し、無糖・減塩のものを選ぶことが大切です。紅茶や緑茶は、砂糖やミルクを加えすぎるとカロリーが増えてしまうため、できるだけそのまま楽しむのがおすすめです。こうした飲み物の工夫は、あくまで毎日の食事全体のバランスを整える一部として、無理なく長く続けられる範囲で取り入れるのが現実的です。
参考文献
- Grönroos W, et al. “Effect of beetroot juice on blood pressure.” Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases. 2024
- Greyling A, et al. “The Effect of Black Tea on Blood Pressure.” PLOS ONE. 2014
- Peng X, et al. “Effect of green tea consumption on blood pressure.” Scientific Reports. 2014
- Mayo Clinic「DASH diet: Healthy eating to lower your blood pressure」
監修
監修:鎌形博展 株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
専門科目 救急・地域医療
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
SNSメディア
- Youtube Dr.鎌形の正しい医療ナビ https://www.youtube.com/@Dr.kamagata
- X(twitter) https://x.com/Hiro_MD_MBA
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