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糖尿病と歯周病|歯ぐきの炎症と血糖が互いに影響し合う仕組みと、歯科での確かめ方

2026 10/23
臨床医学
2026年10月23日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

糖尿病と歯周病|歯ぐきの炎症と血糖が互いに影響し合う仕組みと、歯科での確かめ方

糖尿病があると歯周病が進みやすく、歯周病は糖尿病の合併症のひとつとして扱われています。反対に、歯ぐきの炎症が続くとインスリンが効きにくくなり、血糖のコントロールにも響くと考えられています。糖尿病と言われたら、症状がなくても歯科で歯周病の検査を受け、治療と定期的な管理を続けることが、歯と血糖の両方を守ることにつながります。

「歯みがきのときに少し血が出るけれど、痛くないから放っておいた」——歯周病は、多くの人がこの状態で何年も過ごしてしまう病気です。糖尿病の外来で歯ぐきの話が出ることは少ないかもしれませんが、網膜症や腎症と同じように、早めに見つけて手を打つ価値のある合併症です。

目次

歯周病は、歯ぐきと歯を支える骨の病気です

歯と歯ぐきの境目には、もともと浅い溝があります。歯みがきが行き届かないとここにプラーク(歯垢)がたまり、細菌が出す毒素で歯ぐきに炎症が起きます。これが歯肉炎です。さらに進むと溝が深い「歯周ポケット」になり、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けて歯がぐらつく歯周炎になります。歯肉炎と歯周炎をあわせて歯周病と呼びます。

歯周病はむし歯と違い、かなり進むまで痛みが出にくいのが特徴です。腫れや出血はあっても日常生活には困らないため、気づいたときには歯がぐらついている、ということも珍しくありません。プラークは時間がたつと歯石に変わり、歯みがきでは落とせなくなります。歯石は細菌の足場になるため、歯科で取り除いてもらう必要があります。

糖尿病があると、歯周病が進みやすい理由

血糖が高い状態が続くと、体の中で細菌と戦う働き(免疫)が弱まり、歯ぐきの炎症が治まりにくくなります。傷の治りが遅くなることや、口の中が乾きやすくなることも、歯周病を進める方向に働きます。

多くの疫学調査で、糖尿病のある人は歯周病が進行していることが示されており、厚生労働省の健康情報サイト(e-ヘルスネット)でも、歯周病は糖尿病の合併症として認識されていると説明されています。喫煙も歯周病の大きな危険因子なので、糖尿病と喫煙が重なると、歯ぐきへの負担はさらに大きくなります。

歯周病が、血糖のコントロールを乱す仕組み

関係は一方通行ではありません。歯周ポケットの奥で炎症が続くと、炎症を起こす物質が血液を通って全身に広がります。こうした物質にはインスリンの働きを弱める作用があり、同じ食事・同じ薬でも血糖が下がりにくくなると考えられています。

方向起きていること
糖尿病 → 歯周病高血糖で免疫が弱まり、歯ぐきの炎症が進みやすく治りにくい
歯周病 → 糖尿病歯ぐきの慢性的な炎症が全身に及び、インスリンが効きにくくなる
共通する要因喫煙、食生活、口の手入れの習慣

このように両者が互いに影響し合うことを「双方向の関係」と呼びます。片方だけを治療しても、もう片方が足を引っぱることがあるわけです。

歯周病を治療すると、HbA1cは下がるのか

歯周病のある糖尿病の人が歯周治療を受けると、HbA1cが改善することが複数の研究で報告されています。30の臨床試験(解析対象2,443人)をまとめた2022年のコクラン・レビューでは、歯周治療を受けた人は、受けなかった人と比べて3〜4か月後のHbA1cが平均で約0.4%低かったと報告されています(根拠の確かさは「中程度」)。

こうした結果を受けて、日本歯周病学会の「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2023」は糖尿病のある歯周病患者への歯周治療を推奨しており、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」でも、2型糖尿病の人への歯周治療は血糖コントロールに有効とされています。

ただし、歯周治療は血糖の治療の代わりにはなりません。食事・運動・薬による治療に、歯ぐきの治療を「上乗せする」ものと考えてください。

こんなサインがあれば、歯周病を疑います

歯周病は痛みが少ないぶん、小さな変化に気づくことが大切です。次のようなサインがひとつでもあれば、歯科で確かめてもらいましょう。

サイン気づく場面
歯みがきで血が出る歯ブラシやすすいだ水に血が混じる
歯ぐきが赤く腫れている鏡で見ると、歯ぐきの縁が赤く丸みを帯びている
口臭が気になる、朝口の中がねばつく起床時や家族からの指摘
歯ぐきが下がって歯が長く見える歯と歯の間のすき間が広がり、食べ物が挟まる
歯がぐらつく、噛むと違和感がある硬いものが噛みにくい

どれも当てはまらなくても、歯周病がないとは言い切れません。糖尿病と言われたら、一度は歯科で歯周ポケットの深さを測る検査を受けておくと安心です。

歯科では何をするのか

歯科では、歯周ポケットの深さ、歯ぐきからの出血、歯のぐらつき、レントゲンでの骨の状態などを調べて、歯周病の程度を判断します。治療の中心は「歯周基本治療」と呼ばれるもので、歯みがきの指導と、歯石・プラークの除去が柱です。必要に応じて、ポケットの奥の歯石を取る処置や外科的な治療が加わります。

歯ぐきの状態が落ち着いたあとも、再発を防ぐための定期的な管理が続きます。日本歯周病学会のガイドラインでは、糖尿病のある人は糖尿病のない人より管理の間隔を短めにすることがすすめられています。

歯科で伝えておきたいこと

歯科と内科が情報を共有すると、治療が安全で効果的になります。受診のときは次のことを伝えましょう。

  • 糖尿病であること、最近のHbA1cと飲んでいる薬(お薬手帳を持参)
  • インスリンや低血糖を起こしやすい薬を使っているか
  • 血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を使っているか。自己判断で中止しないこと
  • 腎臓や心臓など、ほかの合併症の有無

日本糖尿病協会の「糖尿病連携手帳」には歯科の記録欄があるので、持っている方は歯科にも見せるとよいでしょう。治療が長引いて食事の時間がずれると、薬によっては低血糖が起きることがあります。食事の前後の予約になるときは、ブドウ糖を持っていくと安心です。

毎日の手入れで、歯ぐきを守る

歯周病の予防と治療の効果を保つには、歯科での管理と同じくらい毎日の手入れが大切です。

  • 歯ブラシは歯と歯ぐきの境目に当てる:力を入れすぎず、小刻みに動かします
  • 歯間ブラシやデンタルフロスを使う:歯と歯の間のプラークは、歯ブラシだけでは落としきれません
  • たばこをやめる:喫煙は歯周病を悪化させ、治療の効果も下げます。血管の合併症を防ぐ意味でも禁煙は大切です
  • 血糖を整える:血糖が落ち着くと、歯ぐきの炎症も治まりやすくなります
  • よく噛んで食べられる歯を保つ:歯を失うと噛む力が落ち、野菜や肉など噛みごたえのある食品を避けがちになり、食事の内容が偏ることがあります

受診の目安

次のような場合は、歯科で歯周病の検査を受けましょう。あわせて、かかりつけの内科で歯の状態を伝えておくと、治療の方針を立てやすくなります。

  • 糖尿病と診断されたが、この1年ほど歯科を受診していない
  • 歯みがきのときの出血や、歯ぐきの腫れが続いている
  • 歯のぐらつきや、噛んだときの違和感がある
  • HbA1cがなかなか下がらず、口の中にも気になる症状がある

歯ぐきが大きく腫れて痛む、膿が出る、顔まで腫れて熱があるといった場合は、早めに歯科を受診してください。糖尿病があると感染が広がりやすいため、様子を見すぎないことが大切です。

CLINIC

糖尿病の相談ができるクリニック

監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、糖尿病を含む内科診療に対応しています。健診で血糖値や HbA1c を指摘された方、予備群と言われた方もご相談ください。

  • 糖尿病専門医が院長巣鴨クリニック豊島区/巣鴨駅 徒歩1分糖尿病専門医が院長。糖尿病内科・甲状腺内科(内分泌内科)。女性医師が診療。平日夜19:30まで、土曜も診療。予約・詳細を見る
  • 栄養指導・土日診療街のクリニック 立川・村山立川市/玉川上水駅 徒歩1分糖尿病内科・甲状腺内科。管理栄養士による栄養指導あり。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る
  • 生活習慣病・いびき神保町駅前内科クリニック千代田区/神保町駅A3出口 徒歩1分生活習慣病の外来として糖尿病を診療。平日19時30分まで。原則予約制。予約・詳細を見る
  • 糖尿病内科街のクリニック 大島駅前江東区/大島駅A5出口 徒歩1分糖尿病内科・循環器内科など。土日は午前診療。予約・詳細を見る
  • 土日診療・オンライン街のクリニック 日野・八王子日野市/北八王子駅 徒歩15分糖尿病内科・呼吸器内科など。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る

※ 本サイトは株式会社ENが運営しています。掲載のクリニックは当社の関連法人である医療法人社団季邦会が運営する診療所です。お近くにお住まいでない方は、立川・村山/日野・八王子でオンライン診療をご利用いただけます。

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SUPERVISOR

この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。法人内には糖尿病専門医が院長を務める巣鴨クリニックがあり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNS・関連リンク

  • YouTube Dr.鎌形の正しい医療ナビ
  • X(Twitter)
  • 株式会社EN
  • 医療法人社団季邦会

参考文献

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-01-006.html
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病とは」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-001.html
  • 日本歯周病学会 編「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン2023 改訂第3版」(Minds ガイドラインライブラリ) https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00788/
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
  • Simpson TC, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35420698/
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