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糖尿病と心筋梗塞・脳卒中|血管の合併症を防ぐ、血糖・血圧・脂質の3本立て

2026 10/13
臨床医学
2026年10月13日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

糖尿病と心筋梗塞・脳卒中|血管の合併症を防ぐ、血糖・血圧・脂質の3本立て

糖尿病があると全身の太い血管で動脈硬化が進み、心筋梗塞・狭心症、脳梗塞、足の血管が詰まる病気(末梢動脈疾患)が起こりやすくなります。これを防ぐには血糖だけでなく、血圧(130/80 mmHg未満)とLDLコレステロール、禁煙をまとめて管理することが大切です。糖尿病の方の心筋梗塞は胸の痛みがはっきりしないことがあるため、症状がなくても定期的に心電図などで確かめます。

健診の結果票で、血糖の欄と並んで「血圧」「LDLコレステロール」にも印がついている——そんな方は少なくありません。それぞれは「少し高め」でも、重なると血管への負担は足し算ではなく掛け算のように大きくなります。糖尿病の治療で血圧やコレステロールの話が繰り返し出てくるのは、このためです。

目次

「太い血管の合併症」とは

糖尿病の合併症は、傷む血管の太さで2つに分けて考えます。目・腎臓・神経の細い血管に起こるのが「細小血管症」(いわゆる三大合併症)、心臓・脳・足の太い血管に起こるのが「大血管症」です。

日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024は、大血管症を「糖尿病に伴う動脈硬化症で、脳卒中、虚血性心疾患、末梢動脈疾患」と定義しています。

起こる場所主な病気典型的な症状
心臓の血管(冠動脈)狭心症・心筋梗塞胸の痛み・圧迫感、息切れ
脳の血管脳梗塞(糖尿病では脳出血より多い)片側の手足のまひ、ろれつが回らない
足の血管末梢動脈疾患(PAD)歩くと足が痛くなり、休むと治まる

細小血管症が「血糖の高さと期間」に強く左右されるのに対し、大血管症は血糖に加えて、高血圧・脂質異常・喫煙・肥満が重なることで進みます。糖尿病になる前の「境界型」の段階から、心臓や血管の病気のリスクは上がり始めることも分かっています。

糖尿病の心筋梗塞は「痛みが出にくい」ことがあります

糖尿病情報センターは、糖尿病の方に起こる冠動脈の病気の特徴として、次の点を挙げています。

  • 狭心症や心筋梗塞を起こしても、胸の痛みが出ないことがある
  • 心臓の血管が同時に何本も、広い範囲で傷んでいることが多い
  • 心臓のポンプの力が落ちやすく、心筋梗塞後の経過も重くなりやすい

痛みが出にくい背景には、神経障害で痛みを伝える神経が鈍くなっていることがあります。「なんとなく息苦しい」「胃のあたりが重い」「急に疲れやすくなった」といった、心臓とは結びつけにくい症状だけのこともあります。

また、ガイドラインは糖尿病そのものが心不全の独立した危険因子であり、糖尿病のある人は心不全を起こすリスクが男性で2倍、女性で5倍以上高いとしています。足のむくみや、階段・坂道での息切れが増えてきたときも、主治医に伝えてください。

症状がなくても受けておきたい検査

ガイドラインは、狭心症の症状や、歩くと足が痛む症状(間欠性跛行)、脳の血流が一時的に悪くなる症状がないかを丁寧に聞き取ることに加え、症状がない方でも定期的に安静時心電図をとることが重要だとしています。日本循環器学会と日本糖尿病学会の合同のコンセンサスステートメント(2020年)では、40歳以上、または糖尿病と分かってから10年以上の方は、症状がなくても年1回の安静時心電図とあわせて、次のような検査を検討するとされています。

検査分かること
安静時心電図心筋の血流不足や、過去の心筋梗塞の跡
頸動脈エコー首の血管の壁の厚さ、プラーク(動脈硬化のかたまり)の有無
ABI(足関節・上腕血圧比)手と足の血圧の比から、足の血管の詰まりを推定
PWV・CAVI血管の硬さ
冠動脈CT心臓の血管の狭さや石灰化
胸部X線・BNP(血液検査)心不全の手がかり

40歳未満で罹病期間が10年未満の方でも、喫煙している、腎臓の機能が落ちている、動脈硬化の病気をしたことがある、といった場合は、これらの検査が勧められます。異常が見つかれば、循環器内科で負荷心電図や心エコー、造影CTなどの詳しい検査を受けます。

尿アルブミンも大切な手がかりです。腎臓の検査として知られていますが、ガイドラインは尿に微量のアルブミンが出ていることが血管の内側の傷みを反映し、生命予後を予測する指標でもあるとして、定期的な測定を勧めています。

予防の柱は「血糖・血圧・脂質・たばこ」をまとめて整えること

血糖

ガイドラインは、大血管症を防ぐために糖尿病の早い時期からの良好な血糖コントロールを推奨しています(推奨グレードA)。英国のUKPDSでは、HbA1cが1%下がるごとに心筋梗塞の発症が14%減ったと報告されています。早い時期にしっかり血糖を整えた効果は、その後何年も続くことが分かっており、「レガシー効果」と呼ばれます。

一方で、血糖を下げすぎて低血糖を繰り返すことは、心臓や血管にとって負担になります。高齢の方や動脈硬化が進んでいる方では、目標を少しゆるめに設定することがあります。

血圧

血圧の目標は、診察室で130/80 mmHg未満です(推奨グレードA)。ガイドラインは、糖尿病の方で収縮期血圧が10 mmHg下がると、脳卒中が27%減ったという解析を紹介しています。血圧が140/90 mmHg以上なら降圧薬を始め、130〜139/80〜89 mmHgなら、生活習慣の見直しを1か月を超えない範囲で試み、それでも130/80 mmHg以上なら薬を始めます。

脂質(LDLコレステロール)

LDLコレステロールを下げる治療は、大血管症の予防・再発予防の両方に推奨されています(推奨グレードA)。目標値は、その人がどのくらい血管の病気を起こしやすいかで変わります。

状態LDLコレステロールの目標
心臓・脳の血管の病気をしたことがなく、下の合併症もない120 mg/dL未満
足の動脈の病気、細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)、喫煙のいずれかがある100 mg/dL未満
冠動脈疾患、またはアテローム血栓性脳梗塞をしたことがある70 mg/dL未満

中性脂肪は空腹時150 mg/dL未満(随時なら175 mg/dL未満)、HDLコレステロールは40 mg/dL以上が目安です。

たばこ・体重・運動

禁煙、減量、運動不足や塩分のとりすぎの見直しも、ガイドラインで推奨されています。たばこは本数を減らすだけでは足りず、やめることが基本です。

まとめて整えると、何が変わるか

血糖・血圧・脂質を同時に管理する効果は、臨床研究で確かめられています。デンマークのSteno-2研究では、微量アルブミン尿のある2型糖尿病の方に約8年間、これらをまとめて管理した結果、21年間の追跡で寿命が7.9年延びました。日本のJ-DOIT3研究では、通常の治療目標よりさらに厳しい目標を目指した群で、主要な評価項目では統計的な差がつかなかったものの、脳卒中などの脳血管イベントが約6割少なくなりました(事後の内訳解析)。

薬の選び方も変わってきています

血糖を下げる薬の中には、血糖とは別に心臓や血管を守る効果が確かめられたものがあります。ガイドラインは、SGLT2阻害薬を心筋梗塞などをすでに起こした方の再発予防や心不全の進行予防に、GLP-1受容体作動薬を大血管症の進行抑制に推奨しています(いずれも推奨グレードA)。どの薬が合うかは、心臓や腎臓の状態、体重、年齢、副作用の出やすさで変わるため、主治医と相談して決めます。

心筋梗塞や脳梗塞をすでに起こした方には、再発を防ぐためにアスピリンなどの血液を固まりにくくする薬が使われます。一方、血管の病気をしたことがない方が予防のためにアスピリンを飲む効果は、日本人を含む研究で示されていません。自己判断で市販薬を飲み始めないでください。

すぐに救急車を呼ぶべき症状

次のような症状が急に出たときは、様子を見ずに119番通報してください。治療は時間との勝負で、脳梗塞では発症から早いほど、詰まった血栓を溶かす治療などの選択肢が広がります。

  • 胸の痛み・圧迫感・締めつけられる感じが続く、冷や汗を伴う
  • 急な強い息苦しさ
  • 片側の顔・手足に力が入らない、しびれる
  • ろれつが回らない、言葉が出ない、相手の言うことが理解できない
  • 片方の目が見えにくい、物が二重に見える、急なめまいで立てない

糖尿病の方は胸の痛みがはっきりしないことがあります。「いつもと違う息苦しさや強いだるさ」が急に出たときも、早めに医療機関に連絡してください。

受診の目安

  • 血糖に加えて、血圧やLDLコレステロールも健診で指摘されている
  • 糖尿病と言われてから、心電図や頸動脈エコー、ABIを受けたことがない
  • 坂道や階段で胸が苦しくなる、以前より息切れしやすい、足がむくむ
  • しばらく歩くとふくらはぎが痛くなり、休むと治まる
  • 一時的に片側の手足に力が入らなかった、言葉が出にくかったが、すぐ治まった(脳梗塞の前触れのことがあり、早めの受診が必要です)
  • たばこをやめられない

糖尿病で通院中の方は、次の受診のときに「心臓や血管の検査はいつ受けたか」「血圧とコレステロールの目標はいくつか」を確かめてみてください。健診で指摘されたばかりの方は、まず内科で血糖・血圧・脂質をまとめて相談するのが近道です。

CLINIC

糖尿病の相談ができるクリニック

監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、糖尿病を含む内科診療に対応しています。健診で血糖値や HbA1c を指摘された方、予備群と言われた方もご相談ください。

  • 糖尿病専門医が院長巣鴨クリニック豊島区/巣鴨駅 徒歩1分糖尿病専門医が院長。糖尿病内科・甲状腺内科(内分泌内科)。女性医師が診療。平日夜19:30まで、土曜も診療。予約・詳細を見る
  • 栄養指導・土日診療街のクリニック 立川・村山立川市/玉川上水駅 徒歩1分糖尿病内科・甲状腺内科。管理栄養士による栄養指導あり。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る
  • 生活習慣病・いびき神保町駅前内科クリニック千代田区/神保町駅A3出口 徒歩1分生活習慣病の外来として糖尿病を診療。平日19時30分まで。原則予約制。予約・詳細を見る
  • 糖尿病内科街のクリニック 大島駅前江東区/大島駅A5出口 徒歩1分糖尿病内科・循環器内科など。土日は午前診療。予約・詳細を見る
  • 土日診療・オンライン街のクリニック 日野・八王子日野市/北八王子駅 徒歩15分糖尿病内科・呼吸器内科など。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る

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SUPERVISOR

この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。法人内には糖尿病専門医が院長を務める巣鴨クリニックがあり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNS・関連リンク

  • YouTube Dr.鎌形の正しい医療ナビ
  • X(Twitter)
  • 株式会社EN
  • 医療法人社団季邦会

参考文献

  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第12章 糖尿病性大血管症 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/12.pdf
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第14章 糖尿病に合併した高血圧 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/14_1.pdf
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第15章 糖尿病に合併した脂質異常症 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/15_1.pdf
  • 糖尿病情報センター「大血管症」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/030/01.html
  • 糖尿病情報センター「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html
  • Araki E, et al. Diagnosis, Prevention, and Treatment of Cardiovascular Diseases in People With Type 2 Diabetes and Prediabetes: A Consensus Statement Jointly From the Japanese Circulation Society and the Japan Diabetes Society. Circ J 85: 82-125, 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33250455/
  • Ueki K, et al. Effect of an intensified multifactorial intervention on cardiovascular outcomes and mortality in type 2 diabetes (J-DOIT3). Lancet Diabetes Endocrinol 5: 951-964, 2017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29079252/
  • Gæde P, et al. Years of life gained by multifactorial intervention in patients with type 2 diabetes mellitus and microalbuminuria: 21 years follow-up on the Steno-2 randomised trial. Diabetologia 59: 2298-2307, 2016 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27531506/
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LDLコレステロール 動脈硬化 大血管症 心筋梗塞 脳卒中 血圧
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