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糖尿病と腎臓|尿アルブミンとeGFRで、早い段階の変化をつかむ

2026 9/28
臨床医学
2026年9月28日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

糖尿病と腎臓|尿アルブミンとeGFRで、早い段階の変化をつかむ

健診の結果票で「尿蛋白(−)」の欄を見て、腎臓は大丈夫だと受け取った——という方は少なくありません。ただ、糖尿病で腎臓が傷み始めた最初の時期は、健診の尿蛋白には出てきません。出てくる頃には、数年分の変化が積み重なっていることが多いのです。

目次

健診の「尿蛋白(−)」では、腎臓の最初の変化は見えません

腎臓には、糸球体(しきゅうたい)という細い血管の集まりが左右合わせて200万個ほどあります。血液がここを通るとき、老廃物と余分な水分は尿へ、必要なたんぱく質や血球は血液側に残ります。これが腎臓の仕事です。

血糖が高い状態が続くと、この細い血管が少しずつ傷んで目が粗くなり、本来は通さないはずのたんぱく質が尿へ漏れ始めます。最初に漏れてくるのが、比較的小さいたんぱく質であるアルブミンです。

健診の尿検査で使う試験紙は、ある程度まとまった量のたんぱく質が出て初めて「+」になります。アルブミンがわずかに漏れている段階では反応しません。つまり「尿蛋白(−)」は「たんぱく質が大量には出ていない」という意味であって、「腎臓に変化がない」という意味ではないのです。この拾えないわずかな漏れを見つけるのが、尿アルブミン検査です。

見る数字は二つ——尿アルブミンとeGFR

腎臓の状態は、「漏れているか(尿アルブミン)」と「こし分ける力が落ちていないか(eGFR)」の二つを組み合わせて見ます。片方だけでは判断できません。

尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)

尿の中のアルブミン量を測ります。尿は薄いときも濃いときもあるので、同じ尿の中のクレアチニンで割って補正した「尿アルブミン/クレアチニン比(単位:mg/gCr)」として報告されます。糖尿病で早期の腎臓の変化が疑われるときは、保険診療の中で定期的に測れます。

尿アルブミン/Cr比区分意味
30 mg/gCr 未満正常アルブミン尿漏れは確認されていない
30〜299 mg/gCr微量アルブミン尿試験紙では出ないが、漏れ始めている
300 mg/gCr 以上顕性アルブミン尿健診の尿蛋白でも「+」になってくる段階

eGFR(推算糸球体濾過量)

血液検査のクレアチニン値と、年齢・性別から計算します。腎臓が1分間にどれくらいの血液をこし分けているかの推定値で、単位は mL/分/1.73m²。健診の結果票にも小さく印字されていることが多い項目です。

eGFR区分
90 以上G1(正常または高値)
60〜89G2(正常または軽度低下)
45〜59G3a(軽度〜中等度低下)
30〜44G3b(中等度〜高度低下)
15〜29G4(高度低下)
15 未満G5(末期腎不全)

なお、eGFR 60未満、または尿アルブミンなどの腎障害の所見が3か月以上続く状態を、まとめて慢性腎臓病(CKD)と呼びます。糖尿病はその原因のひとつです。

二つを組み合わせて、いまの段階を確かめます

日本では、この二つの数字から段階を決める「糖尿病性腎症病期分類」が使われています。2023年に名称が見直され、各期の呼び方がアルブミン尿の程度を表す形になりました(数値の区切りは2014年版のままです)。

病期名称尿アルブミン/Cr比eGFR
第1期正常アルブミン尿期30 未満30 以上
第2期微量アルブミン尿期30〜29930 以上
第3期顕性アルブミン尿期300 以上30 以上
第4期GFR高度低下・末期腎不全期問わない30 未満
第5期腎代替療法期透析療法中、または腎移植後—

知っておいていただきたいのは、第2期(微量アルブミン尿期)は、条件がそろえば第1期に戻ることがある段階だという点です。血糖と血圧を整えることで、漏れが減って正常アルブミン尿の範囲に戻る方がいます。一方、第3期まで進むと元の段階に戻ることは難しくなり、目標は「進み方をゆるやかにすること」に移ります。

第2期には自覚症状がありません。むくみやだるさが出るのは、もっと後の段階です。症状を待っていると戻せる時期を通り過ぎてしまうため、症状ではなく数字で見つけるという考え方をとります。

進み方をゆるやかにするために、外来でしていること

やることは4つあり、どれか一つではなく重ねて効いてきます。

血糖

合併症を防ぐための目安は HbA1c 7.0%未満です。ただし年齢、薬の種類、低血糖の起こしやすさ、ほかの持病によって一人ひとり調整されます。腎臓のはたらきが落ちると使える薬も変わるため、目標値は主治医と確認してください。

血圧

腎臓を守るうえで、血糖と同じくらい効いてくるのが血圧です。糖尿病がある方の降圧目標は、診察室で測った血圧で 130/80 mmHg未満 とされています。

アルブミン尿が出ている場合、降圧薬はACE阻害薬またはARBが最初に選ばれます。血圧を下げるだけでなく、糸球体にかかる圧を下げてアルブミンの漏れを減らす働きがあるためです。家庭血圧の記録を持参すると調整がしやすくなります。

薬

血糖を下げる以外に腎臓を守る働きが確かめられた薬も、保険診療の中で使えるようになっています。

薬の種類腎臓に対する位置づけ
SGLT2阻害薬アルブミン尿がある2型糖尿病で、腎症の進行を抑えることがすすめられている
GLP-1受容体作動薬2型糖尿病で、腎症の進行を抑えるうえで有効とされている
ACE阻害薬・ARBアルブミン尿がある場合の降圧薬の第一選択
フィネレノン(MR拮抗薬)ACE阻害薬・ARBを使ってもアルブミン尿が残る場合の選択肢のひとつ

どれを使うかは、腎臓のはたらき、心臓の状態、ほかの薬との兼ね合いで決まります。自己判断で足したり、やめたりはしないでください。

食事と生活

食塩は控えめにします。血圧が下がりやすくなり、降圧薬も効きやすくなります。

たんぱく質の制限は、顕性アルブミン尿期(第3期)以降で検討することがありますが、自己判断で始めるものではありません。制限しすぎると筋肉が落ちて体力を損なうため、高齢の方や筋肉量が少ない方では緩めます。管理栄養士を交えて量を決めてから始めてください。

喫煙はアルブミン尿を増やし、腎臓のはたらきの低下を速めます。禁煙は腎臓の面でも価値があります。

一度の数値で決めないのが原則です

尿アルブミンは、ちょっとしたことで一時的に増えます。

  • 検査前の激しい運動
  • 発熱、感染症(膀胱炎など)
  • 月経中

このため、微量アルブミン尿という判断は、おおむね3か月以内に3回測って2回以上が該当した場合に下します。1回の値で一喜一憂しなくて大丈夫です。

eGFR のもとになるクレアチニンは筋肉から出てくる物質なので、筋肉量が少ない高齢の方では、eGFR が実際より良く見えることがあります。

見るべきは1回の値ではなく、何年分かの並びがどちらを向いているかです。結果票はとっておき、受診のときに並べて見せてください。

透析になる人は、実際どれくらいいるのか

日本透析医学会の集計では、2024年末時点で透析を受けている方は337,414人。その年に新しく透析を始めた方は36,404人で、原因となった病気は糖尿病性腎症が37.6%、腎硬化症が19.1%、慢性糸球体腎炎が13.5%でした。糖尿病性腎症が第1位という状況は続いています。

ただし、新しく透析を始める方の総数は前年より2,360人減っており、その中で糖尿病性腎症が占める割合も近年は下がり続けています。早い段階で見つけて手を打つ流れが広がってきたことが、数字にも表れていると考えられます。

透析は、腎臓のはたらきが大きく落ちたときに命を支える治療です。第2期・第3期の段階で血糖と血圧を整えることは、そこまでの距離を延ばす現実的な方法です。

受診の目安

  • 健診で尿蛋白が「±」「+」と出た、または eGFR が60を下回っていた
  • 糖尿病と言われてから、尿アルブミンを一度も測ったことがない
  • 足のすねやまぶたのむくみ、尿の泡立ちが続く
  • 血圧が家庭で測って130/80 mmHgを超える日が続いている

糖尿病で通院中の方は、次の受診のときに「尿アルブミンは測っていますか」と聞いてみてください。測っていなければ、そこが出発点になります。

CLINIC

糖尿病の相談ができるクリニック

監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、糖尿病を含む内科診療に対応しています。健診で血糖値や HbA1c を指摘された方、予備群と言われた方もご相談ください。

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  • 栄養指導・土日診療街のクリニック 立川・村山立川市/玉川上水駅 徒歩1分糖尿病内科・甲状腺内科。管理栄養士による栄養指導あり。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る
  • 生活習慣病・いびき神保町駅前内科クリニック千代田区/神保町駅A3出口 徒歩1分生活習慣病の外来として糖尿病を診療。平日19時30分まで。原則予約制。予約・詳細を見る
  • 糖尿病内科街のクリニック 大島駅前江東区/大島駅A5出口 徒歩1分糖尿病内科・循環器内科など。土日は午前診療。予約・詳細を見る
  • 土日診療・オンライン街のクリニック 日野・八王子日野市/北八王子駅 徒歩15分糖尿病内科・呼吸器内科など。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る

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この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。法人内には糖尿病専門医が院長を務める巣鴨クリニックがあり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNS・関連リンク

  • YouTube Dr.鎌形の正しい医療ナビ
  • X(Twitter)
  • 株式会社EN
  • 医療法人社団季邦会

参考文献

  • 糖尿病性腎症合同委員会「糖尿病性腎症病期分類2023の策定」糖尿病 66(11): 797-805, 2023 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/66/11/66_797/_article/-char/ja/
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第9章 糖尿病性腎症 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/09.pdf
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第14章 糖尿病に合併した高血圧 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/14_1.pdf
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
  • 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」第4章 糖尿病性腎臓病 https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch04.pdf
  • 日本腎臓学会「糖尿病性腎症病期分類の改訂について」 https://jsn.or.jp/academicinfo/ckd/dm_nephro.pdf
  • 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」日本透析医学会雑誌 58(12): 524-590, 2025 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/58/12/58_524/_article/-char/ja/
  • 糖尿病情報センター「腎症」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/070/01.html
  • 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)「糖尿病性腎症」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-038.html
  • 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)「CKD / 慢性腎臓病」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-073.html
臨床医学
eGFR 尿アルブミン 慢性腎臓病 糖尿病性腎症 透析
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