厚生労働省の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」は、2026年10月19日の第6回で、看護職員の資質向上と確保策を議題にしました。本記事は、そのうち確保策を扱う資料2「看護職員確保策について」を読み、すでに公表されている実績と令和9年度の概算要求など検討段階のものを分けて整理します。

第6回検討会は看護職員の確保で何を示したのか?

資料2は、地域の看護職員の確保策に関するこれまでの意見の整理、地域偏在の状況、基金事業と予算事業、ナースセンターとハローワークによる就職支援の4つで構成されています。資料は現状と取組事例、概算要求の提示であり、新しい制度の決定ではありません。議事録は本記事の作成時点で公開されていないため、会議での発言内容は扱いません。(出典:厚生労働省「第6回2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」資料ページ(令和8年10月19日開催))

前回(第5回)の勤務環境の論点はこちらの記事、検討会全体の位置づけは看護職員確保策の記事で扱っています。

看護職員の地域偏在は資料でどう示されたのか?

資料2は、65歳以上人口千人当たりの看護職員就業者数を2023年の全国平均48.61人として示し、都道府県間に差があるとしています。二次医療圏別(病院・有床診療所)では、25・50・75パーセンタイルにあたる21.3人、26.5人、32.2人で色分けした地図が載っています。訪問看護ステーションと介護施設等についても、同様の区分値が示されています。(出典:厚生労働省「看護職員確保策について」第6回検討会資料2、令和8年10月19日)

地図は分布の見方を示すもので、医療圏ごとの充足を判定する基準ではありません。自院の所在地がどの区分に入るかは、原資料の地図で確認できます。

ナースセンターの就職支援実績はどうなっているのか?

資料2は、2024年度と2025年度の全国値を比べています。求職者数は前年度比5.0%減、就職件数は9,128件から9,579件へと4.9%増でした。あわせて、都道府県ナースセンターの職員は2026年度時点で実人数420人、常勤換算の合計が315.7人と示されています。

表1 ナースセンターの実績と体制(資料2の記載)
項目 資料2の記載
求職者数(2025年度) 前年度比5.0%減
就職件数 2024年度9,128件→2025年度9,579件(4.9%増)
職員(2026年度) 実人数420人/常勤換算315.7人
看護職キャリアデータベース 令和8年10月より順次運用開始(准看護師は調整中)

(出典:厚生労働省 第6回検討会資料2、令和8年10月19日)

求職者が減る中で就職件数が増えている点は、資料の数値どおりです。ただし理由は資料から読み取れないため、本記事では推測しません。なお、求人数の前年度比は、資料を読み取った結果が一致しなかったため、本記事では取り上げません。

有料職業紹介はなぜ使われているのか?

資料2には、病院の求人者に有料職業紹介事業者を利用した理由を尋ねた結果が載っています(有効回答694)。最も多いのは「ハローワークなどの他の採用経路では人材が確保できなかったため」で70.9%、次いで「迅速に求職者を確保できるため」が36.3%です。調査の実施主体と調査年は、資料2の当該ページでは確認できませんでした。(出典:厚生労働省 第6回検討会資料2、令和8年10月19日)

紹介手数料の水準と診療報酬の関係は、医療機関の採用コストを整理した記事で扱っています。

ハローワークとの連携はどこまで進んでいるのか?

資料2は、令和8年度の「医療・福祉ささえる求人充足プロジェクト」の実績(令和8年4月~8月)として、事業所訪問26,395回、開拓求人121,827人、充足数(就職者数)11,803人を挙げています。人材確保対策コーナーは令和7年度末時点で全国124か所に設置されています。

ナースセンターとハローワークの連携強化では、実施所数が令和7年度第1四半期の151から令和8年度第1四半期の283へ、巡回相談回数が613回から961回へ増えました。資料は新規求職者数と就職件数の変化を、取組開始直後のため引き続き評価するとしています。連携の効果は、現時点では確定していません。(出典:厚生労働省 第6回検討会資料2、令和8年10月19日)

地域の独自事業や訪問看護・離島への支援には何があるのか?

資料2は、都道府県が令和8年度に独自に行う事業の例も載せています。地域看護職員確保・定着促進事業では、勤務年数に応じて1年経過時に30万円、2年経過時に50万円、3年経過時に70万円(最大150万円/人)が示されています。京都府の人材交流プログラムでは、およそ2割の病院が出向事業を実施しており、出向元の看護管理者の63.8%が「自院の看護職員のスキルアップにつながった」と挙げています。この数値は2025年の病院看護実態調査(日本看護協会)によるもので、原報告書は参照していません。

令和9年度の概算要求としては、訪問看護DX実証事業が1.6億円(医療保険の訪問看護ステーション45か所が対象、1事業所あたり約350万円)、離島・へき地看護師特定行為研修の受講支援等事業が1.2億円です。いずれも要求段階であり、決定した予算ではありません。(出典:厚生労働省 第6回検討会資料2、令和8年10月19日)

令和9年度概算要求には何が載っているのか?

資料2は、令和9年度の概算要求を複数示しています。概算要求は予算の確定ではなく、今後の編成で変わりえます。

表2 資料2に載る令和9年度概算要求(検討段階)
事業 資料2の記載
医療従事者の安定的な養成・確保支援事業 29億円。都道府県に協議の場を設け、需給把握と人材確保策の計画を策定するモデル事業(最大15か所)
中央ナースセンター事業 3.9億円(括弧内に2.6億円の記載あり)

(出典:厚生労働省 第6回検討会資料2、令和8年10月19日)

括弧内の2.6億円が何を指すかは、資料の表記だけでは断定できません。内訳や他の要求額の数値は、原資料で確認してください。

医療機関の管理者は何を確認しておくとよいのか?

資料は制度の変更を決めていないため、すぐに対応が必要な事項は示されていません。確認しやすい点は次の3つです。第一に、自院の所在地が二次医療圏の区分のどこに入るかを原資料の地図で確かめること。第二に、都道府県ナースセンターの無料職業紹介と、令和8年10月から順次始まる看護職キャリアデータベースの案内を、自治体の窓口で確認すること。第三に、現在の採用経路ごとの採用数と費用を、自院の記録で集計しておくことです。

資料2に載る数値は、実績(2025年度の就職件数など)、概算要求(令和9年度)、他の調査からの引用(有料職業紹介の利用理由など)の3種類が混在しています。実績は過去の事実、概算要求は今後の予算編成で変わりうる希望額、引用調査は調査の対象と時点が資料2の中では十分に示されていない場合がある、という違いがあります。院内で共有するときは、どの種類の数字かを分けて伝えると、誤解が起きにくくなります。

よくある質問(FAQ)

第6回検討会で看護職員の確保策は決まったのですか?

いいえ。公表された資料2は現状、取組事例、令和9年度の概算要求を示すものです。決定事項かどうかを明示した記載は見当たりませんでした。

ナースセンターの就職件数は増えているのですか?

資料2では、2024年度の9,128件から2025年度の9,579件へ4.9%増と示されています。一方、求職者数は前年度比5.0%減です。

看護職キャリアデータベースはいつ始まりますか?

資料2には「令和8年10月より順次運用開始」とあり、准看護師は調整中と記載されています。

この検討会の議事録はありますか?

開催回一覧では、第6回の議事録は本記事の作成時点(2026年10月23日)で掲載されていません。

参考資料

注記:資料2のPDFは要約取得ツールを介して2回、別の質問で読み、数値の一致を確認した項目だけを記載しています。資料2が引用する各調査・統計(有料職業紹介の利用理由調査、就業者数の統計など)の原報告書は参照していません。

参考・一次出典