日中の強い眠気は、まず睡眠不足と睡眠時無呼吸症候群を疑い、それでも説明できないときにナルコレプシーなどの過眠症を考える、という順に整理されます。十分に寝ているのに眠気が続く、会議や運転中に眠ってしまうといった場合は、体質や気合いの問題とせず、医療機関に相談することが大切です。
この記事では、眠気の測り方、主な原因の見分け方、過眠症の特徴、受診の目安、日本での検査と治療の制度を順に説明します。
眠気は「エプワース眠気尺度」で目安をつけられる
眠気は主観的な感覚なので、まず質問票で程度を確かめます。世界で広く使われているのが、1991年にJohnsが発表したエプワース眠気尺度(ESS)です。座って読書をしているとき、テレビを見ているとき、車の助手席に1時間乗っているときなど8つの場面で、うとうとする可能性を0〜3点で答え、合計は0〜24点になります[1]。
原著では、健康な人の平均は約6点、睡眠時無呼吸症候群の人は約12点、ナルコレプシーと特発性過眠症の人は約18点でした[1]。日本睡眠学会は、11点以上を病的な眠気を疑う目安としています[2]。日本語版(JESS)も作られ、信頼性と妥当性が確かめられています[3]。
ただし、点数だけで病気は決まりません。睡眠不足でも点数は高くなるため、結果は医師が睡眠時間や生活の状況とあわせて判断します。
原因として最も多いのは睡眠不足と睡眠時無呼吸
日中の眠気の原因は、大きく3つに分けると整理しやすくなります。
1つ目は、睡眠不足や睡眠リズムの乱れです。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人では6時間以上の睡眠時間を確保することを勧め、平日の睡眠不足を休日の「寝だめ」で補っているなら不足のサインと説明しています[4]。睡眠不足の影響は睡眠不足が体に与える影響の記事も参考になります。
2つ目は、睡眠時無呼吸症候群など、睡眠中の病気で眠りが分断されているケースです。睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすると、本人が気づかないまま眠りが細切れになり、日中の眠気につながります。米国の約600人の調査では、睡眠中の呼吸の異常に日中の眠気を伴う人が、中年の男性の約4%、女性の約2%と報告されています[5]。いびきや無呼吸を指摘されている人は、いびきと睡眠時無呼吸症候群の違いの記事も確認してください。
3つ目は、薬の影響、うつ病などの心の不調、甲状腺機能低下などの体の病気です。抗ヒスタミン薬など眠気を起こしやすい薬もあります。服用中の薬は、受診時に必ず伝えましょう。
ナルコレプシーと特発性過眠症の特徴
上の原因を除いても強い眠気が続くときに考えるのが、脳の覚醒を保つしくみの異常による中枢性過眠症です。代表がナルコレプシーと特発性過眠症です。
ナルコレプシーは、日中の強い眠気や居眠りの発作が3か月以上続く病気です。笑う、驚くなど強い感情で体の力が急に抜ける「情動脱力発作」、寝入りばなの鮮明な幻覚などを伴うことがあります。思春期から若年成人に始まることが多く、日本では約600人に1人(0.16%)とされています[2]。一方、診療報酬の請求データでは推定される患者数がこれより少なく、診断を受けていない人も多い可能性があります[6]。
特発性過眠症は、十分な夜間睡眠をとっても強い眠気が続き、昼寝をしてもすっきりしにくいことが特徴とされます。診断には、睡眠の記録や検査が必要です。
検査と診断の流れ
眠気の原因を調べるときは、まず問診で睡眠時間、いびきや無呼吸の有無、服用中の薬、気分の状態を確認します。受診前に、就寝・起床時刻と眠気の強い時間帯を1〜2週間メモしておくと、診察がスムーズです。
睡眠時無呼吸が疑われる場合は、簡易検査や終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)で調べます。検査の違いは睡眠時無呼吸の検査の受け方で説明しています。
過眠症が疑われる場合は、PSGに続いて日中に昼寝の入りやすさを測る反復睡眠潜時検査(MSLT)を行います。日本睡眠学会は、入眠までが8分以内で、入眠直後にレム睡眠が現れる回が2回以上あると診断の価値が高まる、としています[2]。髄液のオレキシン値などを補助的に調べることもありますが、正常でも否定はできません[2]。
国内の治療と制度
原因によって治療は大きく異なります。睡眠不足には睡眠時間の確保が基本です。睡眠時無呼吸症候群には、CPAP(持続陽圧呼吸療法)などの治療があり、2026年度の診療報酬改定でCPAPの保険適用の基準が見直されました(詳細は最新の告示・通知で確認してください)[7]。治療を続けるコツはCPAPを続けるコツにまとめています。
ナルコレプシーでは、日中の眠気にモダフィニルやメチルフェニデートなどの中枢神経刺激薬を使い、情動脱力発作には三環系抗うつ薬などを使います[2]。刺激薬は朝から昼の早い時間に飲むのが基本で、夜の不眠を避けるためとされています[2]。メチルフェニデートには依存のおそれがあるため、専門医の管理のもとで使います。
新しい選択肢として、ヒスタミンH3受容体の薬ピトリサントが、2026年8月に国の審議会でナルコレプシーと、CPAPなどの治療中にも残る閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気への承認が了承されました[8]。使えるかどうかは、診断と症状に応じて医師が判断します。
受診の目安と、日常生活で気をつけたいこと
次のような場合は、睡眠の検査ができる医療機関や、内科で相談することをおすすめします。
十分に寝ても眠気が数週間以上続く場合、会議や運転中など危険な場面で眠ってしまう場合、いびきや無呼吸を指摘されている場合、笑ったときに力が抜ける・寝入りばなに幻覚を見るといった症状がある場合です。
日常の工夫としては、起床時刻をそろえる、日中の短い昼寝を計画的にとる、眠気が強いときは運転を控える、などがあります。強い眠気を放置したままの運転は事故につながるため、治療が始まるまでは特に注意が必要です。
まとめ
日中の強い眠気は、睡眠不足と睡眠時無呼吸が原因のことが多く、ナルコレプシーなどの過眠症はそのあとに考えます。エプワース眠気尺度で11点以上なら、眠気が強い目安になります。原因によって治療が異なるため、眠気が続くときは自己判断せず、睡眠の検査ができる医療機関に相談しましょう。
睡眠の相談ができるクリニック
監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、いびき・睡眠時無呼吸・不眠の診療を行っています。睡眠時無呼吸の検査はご自宅で受けられます。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は「街のクリニック」グループ(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・いびき・睡眠時無呼吸症候群など生活習慣病の診療にあたっています。特に「神保町駅前内科クリニック」では、いびきや睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング・治療に日常的に取り組んでおり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- Johns MW. A new method for measuring daytime sleepiness: the Epworth sleepiness scale. Sleep. 1991;14(6):540-545. https://ictp.uw.edu/sites/default/files/Johns%20Epworth%20Sleepiness%20Scale%201991.pdf
- 日本睡眠学会. ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン(一般向けQ&A, 2010年). https://www.jssr.jp/files/guideline/Narcolepsy_cq_ippan_20100726.pdf
- Takegami M, et al. Development of a Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (JESS) based on item response theory. Sleep Med. 2009;10(5):556-565. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18824408/
- 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023(2024年2月). https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- Young T, et al. The occurrence of sleep-disordered breathing among middle-aged adults. N Engl J Med. 1993;328(17):1230-1235. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8464434/
- 厚生労働省 医療部会 医療機関の診療科名標榜に関する資料(日本睡眠学会提出資料, 2026年1月15日). https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001631792.pdf
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). ピトリサント塩酸塩 審査報告書(2026年8月). https://www.pmda.go.jp/drugs/2026/P20261007001/671450000_30800AMX00338_A100_1.pdf



