CPAPを続けるコツは、「最初の1〜2か月に困りごとを我慢せず、早めに調整してもらうこと」です。マスクの合わなさ、鼻や喉の乾燥、圧への違和感といった多くの悩みは、マスクの種類、加湿、圧の設定を見直すことで軽くなることがあります。使用時間の目安は、少なくとも1晩4時間以上とされています。
この記事では、続けることがなぜ大切か、困りごと別の対処、医療機関が行う支援、日本の保険診療での決まりを順に説明します。
CPAPは「使った分だけ」効く治療です
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、鼻や口に付けたマスクから空気を送り、眠っている間の気道が狭くなるのを防ぐ治療です。CPAPを外した夜には、無呼吸は元に戻ります。治療をやめると睡眠時無呼吸症候群は再発することが、日本呼吸器学会のガイドラインにも記されています。
効果は使用時間に左右されます。同ガイドラインは、日中の眠気を改善するには少なくとも1晩4時間以上、高血圧や心血管イベントへの効果をねらう場合も1晩4時間以上の治療を行うとしています。効果を保つには毎日の使用が望ましいとされています。
4時間は「最低ライン」であって、短い夜があっても治療が無意味になるわけではありません。短い夜が続いても、まずは使える時間を少しずつ延ばすことを目標にします。
治療の全体像や、他の選択肢との位置づけは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療とマネジメントで解説しています。
最初の1〜2か月が山場になる理由
CPAPは、慣れるまでに時間がかかる治療です。睡眠中に顔にマスクを付けて空気を送られる状態は、はじめは多くの人にとって不自然に感じられます。この時期に外してしまう習慣がつくと、そのまま使わなくなってしまうことがあります。
アメリカ睡眠医学会(AASM)の臨床ガイドラインは、導入の時期に次のような支援を行うことを勧めています。
- 治療開始時に教育的な介入(装置の使い方、治療の目的の説明など)を行うことを推奨(強い推奨)
- 導入初期に、行動面の支援や困りごとへの対処(トラブルシューティング)を行うことを提案(条件付きの推奨)
- 導入初期に、使用状況のデータを医療者が確認して支援する遠隔モニタリングを活用することを提案(条件付きの推奨)
つまり、「慣れるまでは医療者の手を借りながら進める」のが標準的な考え方です。自分だけで頑張って我慢するよりも、早めに相談したほうが続けやすくなります。
困りごと別の対処
マスクが合わない・息苦しい
マスクの形と大きさは、続けやすさに直結します。日本呼吸器学会のガイドラインは、患者さんごとに合うマスクを選ぶことで使用状況が改善する場合があるとしています。AASMのガイドラインの図表でも、口や口鼻を覆うタイプより鼻を覆うタイプ(鼻マスク、鼻ピロー)を使うことが挙げられています。ただし口呼吸が強い人など、鼻だけでは合わない人もいるため、機種の変更は医療者と相談して決めます。
締め付けが強すぎる、あるいは空気が漏れる場合も、ベルトの調整やサイズ変更で解決することが少なくありません。
鼻や喉が乾く・鼻づまりがある
乾燥や鼻づまりは、よくある副作用です。加熱式の加湿器の使用は、AASMのガイドラインで副作用を避ける方法として挙げられています。日本呼吸器学会のガイドラインも、鼻づまりを訴える人では加湿器や点鼻薬で使用状況が良くなる場合があるとしています。鼻づまりの背景に鼻炎などがあれば、その治療が必要なこともあります。
圧が強くて吐き出しにくい
固定圧のCPAPと、圧が自動で変わるオートCPAPは、適切な圧設定であれば、使用状況に大きな差はないとされています。一方、息を吐くときに圧を下げる「圧リリーフ機能」は、使用状況を改善する効果が統計学的には示されていません。それでも本人が楽に感じることはあるため、機能の設定は医療機関で個別に相談します。
どうしても合わない場合
調整を重ねても使えない場合は、口腔内装置、手術、舌下神経電気刺激療法など別の方法があります。選択肢はCPAPが合わない人へ|口腔内装置・手術・舌下神経刺激療法という選択肢にまとめています。やめる前に、まず調整の相談をしてみることが大切です。
医療機関が行う支援:データを見ながら調整する
最近のCPAP装置は、使用時間、マスクの漏れ、残っている無呼吸・低呼吸の指標などを記録しています。通院のときにこのデータを見れば、「どの時期に何時間使えているか」「漏れが多い夜はないか」を具体的に確認できます。
AASMのガイドラインが提案する遠隔モニタリングは、このデータを通信で医療者が確認し、必要に応じて連絡や助言につなげる方法です。導入初期のCPAP使用者を対象にした無作為化比較試験(Hwangら、2018年)では、遠隔モニタリングと自動メッセージを組み合わせた群で、90日時点のCPAP使用時間が通常の診療より長くなりました。目標とした使用状況(70%以上の日で4時間以上)を達成するオッズも、通常の診療より高くなりました。一方、ウェブ上の教育だけの群では、通院の出席率は上がったものの、CPAPの使用時間は増えませんでした。知識を得るだけでなく、使った結果を見ながら調整することが大切だと分かります。
日本呼吸器学会のガイドラインも、遠隔モニタリング指導によってCPAPの使用状況の改善が期待できるとしています。
日本の保険診療での決まり
日本では、CPAPは保険診療の中で、医療機関が装置を管理しながら行うのが基本です。ここでは、続け方に関係する点だけを整理します。制度は改定で変わるため、実際の算定の条件は受診する医療機関に確認してください。
2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定で、CPAPの保険適用基準が見直されました。睡眠中の1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数(AHI)が15以上で、日中の強い眠気などの自覚症状があり日常生活に支障をきたしている場合が対象になり、AHIが30以上では自覚症状の要件のみで対象となります。
続け方に関わる決まりとして、次の点があります。
- 治療開始後の最初の1〜2か月(最長2か月)の治療状況を評価し、継続できる人に治療を続ける仕組みになっています。
- 直近3か月のすべての月で、1日の平均使用時間が1時間に満たない場合は、指導管理料が算定されません。
- 通院の合間に、使用状況のデータを医療機関が通信で確認する「遠隔モニタリング」の加算が設けられています。指導は医師が行う必要があります。
つまり、制度の面でも「使えているかどうかを確認しながら続ける」ことが前提になっています。使えていない時期があっても、通院を中断せず、使えない理由を医療機関に伝えることが、調整のきっかけになります。
続けるための小さな工夫
医療機関での調整のほかに、生活の中でできる工夫もあります。
- 起きている時間に、マスクを付けて装置を動かし、慣れる練習をする
- 毎晩、寝る前の同じ時間に装着する習慣をつくる
- 就寝中にマスクが外れていたら、いつ外れたか、何が気になったかをメモして受診時に伝える
- 旅行や出張の夜にも、できるだけ持参して使う
どれも効果が証明された方法とは限りませんが、使い始めの時期に「慣れる」ことを助ける工夫として、多くの医療機関で案内されています。
まとめ
CPAPは、使い続けることで効果が出る治療です。使用時間の目安は少なくとも1晩4時間以上で、最初の1〜2か月が定着の山場になります。マスクの合わなさ、乾燥、圧への違和感は、マスクの変更、加湿、設定の見直しで軽くなることがあります。導入初期には、教育、困りごとへの対応、使用データを見ながらの支援が勧められています。
使えない夜が続くときは、自己判断でやめず、睡眠時無呼吸の検査や治療ができる医療機関に早めに相談してください。調整を重ねても合わない場合には、他の治療法を検討することもできます。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は「街のクリニック」グループ(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・いびき・睡眠時無呼吸症候群など生活習慣病の診療にあたっています。特に「神保町駅前内科クリニック」では、いびきや睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング・治療に日常的に取り組んでおり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- 日本呼吸器学会 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会.睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン 2020.日本呼吸器学会,2020.https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
- Patil SP, Ayappa IA, Caples SM, et al. Treatment of adult obstructive sleep apnea with positive airway pressure: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2019;15(2):335-343. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30736887/
- Hwang D, Chang JW, Benjafield AV, et al. Effect of telemedicine education and telemonitoring on continuous positive airway pressure adherence: the Tele-OSA randomized trial. Am J Respir Crit Care Med. 2018;197(1):117-126.(試験の要約:Thorax. 2018;73(7):696. https://thorax.bmj.com/content/73/7/696)
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について(令和8年4月以降の改正分).https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00074.html



