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CPAPが合わない人へ|口腔内装置・手術・舌下神経刺激療法という選択肢

2026 9/29
臨床
2026年9月29日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

CPAPが合わない人へ|口腔内装置・手術・舌下神経刺激療法という選択肢

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の標準治療はCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)です。効果は確立していますが、「マスクが苦しくて外してしまう」「朝まで着けていられない」という声は決して少なくありません。

CPAPを続けられない状態が続けば、日中の眠気や高血圧、心血管疾患のリスクは治療前のまま残ります。一方で代替手段は年々増えています。口腔内装置、上気道の手術、舌下神経電気刺激療法、そして減量や体位療法。どれも「CPAPの完全な代わり」ではありませんが、条件が合えば十分に現実的な選択肢です。なお、OSA治療全体の流れは閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療とマネジメントでも解説しています。

目次

まず切り分ける|「合わない」の正体は調整不足かもしれない

CPAPで目標に届かない場合、原因は大きく3つに分かれます。使用時間そのものが足りない(アドヒアランス不良)、眠気の原因がOSA以外にある、そして治療設定が不十分──この3つです。

3つめは見落とされやすい原因です。体重増加、初回タイトレーションの不足、新しく始めた薬、機器の不具合、マスクの不適合とエアリーク、治療開始後に現れる中枢性無呼吸などが背景にあり、いずれも設定変更や機器交換で解決しうるものです。マスクの種類も効果を左右します。29研究6,378例のネットワークメタ解析では、鼻マスクや鼻ピロータイプは口鼻マスクと比べて残存AHI(無呼吸低呼吸指数)が低く、必要圧も低く、アドヒアランスも良好でした(Journal of Sleep Research 2022;31:e13686)。

そのほか、呼気時に圧を下げる圧リリーフ機能、自動調整式のAPAP、二相式のBPAP、検査室での脱感作トレーニングといった手段もあります。CPAPに忍容性がない患者を対象に自動調整式BPAPの有効性を示した研究もあります(Journal of Clinical Sleep Medicine 2015;11:981)。使用開始後2週間の1晩あたり使用時間が4時間未満であることは、その後の中断を予測する因子として知られています。「合わない」と結論する前に、最初の1〜2か月で主治医とこまめに調整することが長期的な成功につながります。

口腔内装置(OA)|AHIはCPAPに劣るが、続けやすさで挽回する

口腔内装置は、下顎を前方に保持することで上気道を広げるマウスピース型の装置です。日本では「スリープスプリント」とも呼ばれます。

効果の位置づけははっきりしています。80件のランダム化比較試験を統合したネットワークメタ解析では、AHIを下げる力はCPAPが最も強く、口腔内装置・運動療法・減量療法を上回りました(Sleep Medicine 2017;30:7)。

ところが健康アウトカムで見ると差は縮まります。中等症〜重症OSA患者126例のランダム化比較試験では、CPAPのほうがAHIを下げたにもかかわらず、日中の眠気、運転シミュレータ成績、生活の質では両者に差がありませんでした(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2013;187:879)。眠気を指標としたネットワークメタ解析でもエプワース眠気尺度の差は認められておらず(Lancet Respiratory Medicine 2015;3:869)、重症OSAに限った個別患者データメタ解析でも健康アウトカムは同等でした(Sleep 2021;44)。患者が口腔内装置のほうを好み、装着時間が長くなるためです。

効きやすいとされるのは、若年、女性、BMIが低い、首まわりが細い、OSAが軽度、仰臥位で悪化するタイプ、歯が健康で下顎を前に出せる範囲が広い、といった条件を備えた方です。逆に歯が少ない方や顎関節に問題がある方は適応になりにくくなります。

副作用も知っておく必要があります。日本睡眠歯科学会の診療ガイドライン(2017年改訂版)は、約3%が顎関節痛や唾液過多といった装置特有の副作用で治療を中断していたとまとめています。より重視されているのは長期使用による不可逆的な咬合変化で、なかでも奥歯が噛み合わなくなる後方開咬(posterior open bite)が問題として認識されつつあります。咬合変化を本人が自覚している割合は28.6%との報告もあり、装置を作ったあとも歯科での定期的な調整と経過観察が欠かせません。

外科治療|「直せる解剖学的原因」があるかで決まる

手術が有効なのは、OSAの原因に外科的に矯正できる閉塞や解剖学的特徴がある一部の患者です。具体的には口蓋扁桃の肥大や下顎後退などが該当します。

実施される手術には、口蓋扁桃摘出術、上下顎前方移動術、口蓋咽頭形成術などがあります。鼻の手術(鼻茸切除など)は、それ単独でOSAを治すというより、鼻閉を解消してCPAPの効率と装着感を改善する補助手術として行われることが多いです。CPAPが苦しい原因が鼻詰まりなら、手術で「CPAPを続けられる体」にするアプローチもありうるわけです。気管切開はOSAを確実に解消しますが、治療抵抗性の極端な症例に限られます。

注意点として、外科治療の比較データは限定的です。手術の臨床試験はCPAPに失敗した患者を組み入れるのが通例なので、CPAPと手術を同じ条件で直接比較した試験はほとんど存在しません。耳鼻咽喉科で薬物睡眠下内視鏡検査(DISE)などを用い、閉塞部位を確かめてから判断することになります。

舌下神経電気刺激療法|中等症〜重症でCPAPが使えない人の選択肢

舌下神経電気刺激療法は、胸部に植込んだ装置が呼吸に同期して舌下神経を刺激し、舌の筋肉(オトガイ舌筋)を前に出して気道の閉塞を防ぐ治療です。ペースメーカーに近いイメージの植込み型デバイスと考えるとわかりやすいでしょう。根拠となったSTAR試験では、CPAPを受け入れられない、または続けられない中等症〜重症OSA患者を対象に植込みが行われ、12か月後のAHI中央値は29.3回/時から9.0回/時へ68%減少、酸素飽和度低下指数(ODI)は25.4回/時から7.4回/時へ70%減少しました(New England Journal of Medicine 2014;370:139)。5年を超える追跡でも、眠気、睡眠関連QOL、ベッドパートナーが報告するいびきの改善が持続することが示されています。

副作用は、刺激による不快感、舌の痛みや脱力感、歯に当たることによる舌の擦過傷、植込み部位の痛み・腫れ・感染などです。外科手術を伴う治療なので、全身麻酔に耐えられることが前提になります。またCPAPと直接比較したデータはありません。「CPAPより優れた治療」ではなく「CPAPが使えない人のための治療」という位置づけを押さえておくことが大切です。

減量・体位療法・薬物療法|補助ではなく前提として考える

代替治療を検討するとき、減量は最も見落とされやすく、かつ最も効果量が大きい介入です。減量介入27研究のメタ解析では、BMIが20%減少するとAHIは57%減少しました(Sleep Medicine 2024;121:26)。

もっと具体的な数字もあります。CPAPを使用中の中等症〜重症OSAの男性89例を対象に、8週間の栄養・運動・睡眠衛生・禁酒禁煙の集学的介入を行ったランダム化比較試験(INTERAPNEA)では、6か月後にAHIが57%減少(−23.8回/時)し、介入群の45%がCPAPを必要としなくなり、15%は完全寛解に至りました(JAMA Network Open 2022;5:e228212)。血圧や生活の質も改善しています。

体重が落ちなくても運動そのものに効果があり、12件のランダム化比較試験526例のメタ解析では有酸素運動とレジスタンストレーニングによりAHIが平均7回/時低下しました(Journal of Clinical Sleep Medicine 2024;20:1839)。ただし恩恵を受けやすいのは軽症〜中等症で、重症例で完全寛解に至るのはまれです。減量と睡眠の関係は睡眠不足の影響とは?健康リスクと改善方法を徹底解説でも触れています。

肥満治療薬も選択肢に入ってきました。肥満とOSAを併存する469例の第3相試験(SURMOUNT-OSA)では、チルゼパチドにより16〜17%の体重減少とともにAHIがおよそ半減し、CPAPを使えない患者を対象にした試験群でも同様でした(New England Journal of Medicine 2024;391:1193)。ただし国内でOSAを適応症として承認された薬剤ではありません。減量以外の薬物療法についても、標準治療を置き換えるだけの有効性が示された薬剤は現時点でありません。

体位療法は、仰臥位でだけ無呼吸が起きるタイプに限って有効です。仰臥位限定OSA患者66例のランダム化クロスオーバー試験では、仰臥位回避デバイスによる眠気の改善はCPAPと同程度(エプワース眠気尺度−1.9対−2.4点)で、AHIの低下はCPAPが優位、アドヒアランスはデバイスのほうが良好でした(Annals of the American Thoracic Society 2024;21:308)。単独治療として頼りきるべきものではありません。

日本で受けられる治療と保険の枠組み|2026年時点の整理

日本では、代替治療のほとんどが保険診療の対象です。ただしそれぞれに算定条件があります。

CPAPの保険適用基準は2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定で緩和されました。在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の算定に必要なAHIの基準が、従来の20以上(簡易検査では40以上)から15以上(簡易検査では30以上)に引き下げられています。同改定では持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算が新設され、使用時間や無呼吸低呼吸指数を遠隔モニタリングする体制が評価されるようになりました。「以前は基準を満たさずCPAPを使えなかった」という方は、再評価の対象になる可能性があります。

口腔内装置は、医科の保険医療機関(または医科歯科併設施設)の医師が睡眠時無呼吸症候群と診断し、診療情報提供書をもって歯科に治療を依頼した場合に限り保険算定できます。歯科に直接行って作ってもらう流れでは自費になるため、順番が重要です。歯科診療報酬点数表では口腔内装置1が3,000点、口腔内装置2が2,000点と定められています。国内の実際の適応は、軽症〜中等症、およびCPAPを継続できなかった方が中心です。

舌下神経電気刺激療法は2021年6月に保険適用となりました。舌下神経電気刺激装置植込術が28,030点、在宅舌下神経電気刺激療法指導管理料が810点で、関係学会が定める適正使用指針に基づいて実施した場合に限り算定できます。国内の主な適応基準は、18歳以上、AHIが20以上、BMIが30未満、中枢性・混合性無呼吸が全イベントの25%以下、薬物睡眠下内視鏡検査で軟口蓋の完全な同心性虚脱がないこと、扁桃肥大などの重度の解剖学的異常がないこと、そしてCPAPが不適または不忍容であることです。所定の講習を受けた医師が行う治療のため実施施設は限られており、耳鼻咽喉科・頭頸部外科のある大学病院などが中心になります。

治療選択の順序としては、外科的に矯正できる病態があるかを確認し、あればその治療を、なければ口腔内装置か舌下神経電気刺激療法を検討する流れになります。どちらを選ぶかは併存疾患、手術への適性、本人の価値観、費用、通える施設があるかで決まります。

まとめ

CPAPが合わないと感じたとき、いきなり治療をやめるのは最も避けたい選択です。まずはマスクの種類、圧設定、モードの変更といった調整の余地を使い切ることから始めます。

それでも続けられない場合、口腔内装置はAHIの改善幅ではCPAPに劣るものの、装着しやすさによって健康アウトカムでは肩を並べうる治療です。解剖学的に直せる原因があれば手術が、中等症〜重症でCPAPが使えないなら舌下神経電気刺激療法が選択肢になります。どの治療を選ぶにしても、減量はCPAPからの離脱に最も近づける介入です。

代替治療のエビデンスはCPAPほど強固ではなく、直接比較のデータも限られています。だからこそ、自分の重症度・体型・気道の形・生活を踏まえた個別の判断が必要です。睡眠専門医や耳鼻咽喉科への早めの相談をおすすめします。治療法の最新動向については【2025年最新】睡眠医学の進展:研究成果と治療法の最新動向もあわせてご覧ください。

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SUPERVISOR

この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は「街のクリニック」グループ(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・いびき・睡眠時無呼吸症候群など生活習慣病の診療にあたっています。特に「神保町駅前内科クリニック」では、いびきや睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング・治療に日常的に取り組んでおり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医・指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

参考文献

  1. Chen LY, Chen YH, Hu SW, et al. In search of a better CPAP interface: A network meta-analysis comparing nasal masks, nasal pillows and oronasal masks. J Sleep Res 2022;31:e13686.
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  20. 日本呼吸器学会ほか監修. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂, 2020.
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