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マウステーピングは本当に効果があるのか|研究でわかっていること

2026 9/29
臨床
2026年9月29日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

マウステーピングは本当に効果があるのか|研究でわかっていること

寝る前に口にテープを貼り、鼻呼吸を促す「マウステーピング」。SNSでは「いびきが止まる」「朝の口の乾きがなくなる」「睡眠の質が上がる」といった体験談が広まり、ドラッグストアでも専用テープが手に入るようになりました。

手軽で安価なのは確かです。では、医学研究ではどこまで効果が確かめられているのでしょうか。結論からいえば、効果を示す研究はごく小規模なものに限られ、人によってはかえって危険になりうることもわかってきました。この記事では、現時点でわかっていることと、試す前に知っておきたい注意点を整理します。

目次

マウステーピングとは|口を閉じて鼻呼吸に誘導するセルフケア

マウステーピングは、就寝中に唇を閉じた状態に保つため、口の上に医療用テープや専用のシールを貼る方法です。唇の中央だけを縦に留めるタイプ、口全体を覆うタイプ、小さな通気孔のあるタイプなど、製品の形はさまざまです。

目的は、眠っている間の口呼吸を減らし、鼻呼吸に切り替えることです。似た発想の道具として、あごを下から支えて口が開かないようにする「チンストラップ」もあり、研究ではこれらをまとめて「口を閉じる介入」として扱うことが多くなっています。

なぜ口呼吸が問題になるのか|鼻呼吸と上気道の関係

人は本来、眠っている間は主に鼻で呼吸しています。睡眠中の気道抵抗を測定した研究では、口呼吸のほうが鼻呼吸よりも上気道の抵抗が高く、閉塞性の無呼吸や低呼吸が増えやすいことが示されています。

口が開くと下あごが後ろに下がり、舌の付け根が喉の奥へ落ち込みやすくなります。口呼吸で喉の粘膜が乾くと、粘膜表面の張力が高まり気道がつぶれやすくなるとも考えられています。実際に、薬で眠った状態の気道を内視鏡で観察した研究では、口呼吸の人ほど喉の側壁や舌の付け根の虚脱(つぶれ)が強い傾向がありました。

「口を閉じれば気道が保たれ、いびきや無呼吸が減るのではないか」という発想には、こうした生理学的な裏付けがあります。睡眠中の呼吸や体の働きについては睡眠生理学:夜の休息の背後にある科学でも解説しています。

研究でわかっていること|効果が示されたのは軽症・少人数の研究だけ

2025年に発表されたシステマティックレビューは、1999年から2024年までの研究を検索し、条件を満たした10件(合計213人)を分析しました。そのうち、無呼吸低呼吸指数(AHI)や酸素飽和度の低下といった睡眠時無呼吸の客観的な指標が統計的に改善したのは2件だけでした。

その2件はいずれも、口呼吸のある軽症の睡眠時無呼吸(AHI 15未満)の人を対象にした小規模な研究です。台湾の研究ではテープを貼るとAHIの中央値が8.3から4.7へ、別の研究では通気孔つきの口用パッチでAHIの中央値が12から7.8へ下がり、いびきも減りました。ただし、どちらも対照群のない予備的な研究で、軽症の範囲内での変化です。

一方、ほかの研究では明らかな差が出ていません。軽症〜中等症の人を対象に口腔内装置(マウスピース)と組み合わせて検証した研究では、テープ単独ではAHIに有意な変化がなく、口腔内装置と併用した場合に効果が上乗せされました。レビューの著者らは、研究の数が少なく質も低いため、効果について確かな結論は出せないとまとめています。

口を閉じるとかえって狭くなる人もいる|内視鏡研究が示した注意点

2024年には、さまざまな重症度の睡眠時無呼吸患者54人を対象に、薬で眠った状態の気道を内視鏡で観察しながら、口を開けた状態と閉じた状態で空気の流れを比べた研究が発表されました。全体としては、口を閉じたほうが吸気の流れは増えていました。

ところが、約2割(22%)の人では、口を閉じるとかえって空気の流れが減っていました。原因は、軟口蓋(のどちんこの周辺)の部分で気道がふさがることでした。こうした人が自宅でテープを貼って眠れば、無呼吸を悪化させるおそれがあります。

どの人がこのタイプに当たるかは、外から見ただけではわかりません。「口を閉じれば誰でも気道が広がる」とは限らない点は、マウステーピングを考えるうえで最も重要なポイントです。

CPAPの口漏れ対策としては有望な結果も

別の文脈で、マウステーピングが役立つ可能性も示されています。CPAP(持続陽圧呼吸療法)を鼻マスクで使っている人が口を開けると、送った空気が口から漏れてしまい、治療効果が落ちたり口が乾いたりします。

タイで行われたランダム化クロスオーバー試験では、口呼吸のあるCPAP使用者62人(平均AHI 45.8)が、低刺激のシリコン製テープを使う期間と使わない期間をそれぞれ30日ずつ経験しました。テープを使った期間は、1日あたりのCPAP使用時間が平均で約52分長くなり、4時間以上使えた日の割合も約18%増えました。日中の眠気、いびき、口やのどの乾き、夜中の目覚めも改善しています。

ここで大切なのは、これが「CPAPで気道を開いたうえで口を閉じる」使い方だという点です。無呼吸そのものをテープで治療しているわけではありません。CPAP使用中の口漏れには、チンストラップやマスクの種類の変更といった選択肢もあるため、主治医と相談して選ぶのが安全です。CPAPが続けにくいときの選択肢はCPAPが合わない人へ|口腔内装置・手術・舌下神経刺激療法という選択肢で詳しく解説しています。

マウステーピングを避けるべき人|鼻づまりがある人は特に注意

これまでの研究の多くは、鼻づまりのある人をあらかじめ対象から外しています。つまり「鼻でしっかり呼吸できる人」でしか安全性が確かめられていません。レビューに含まれた研究のうち4件では、鼻がつまっている場合や嘔吐した場合に、口をふさぐことで窒息につながる危険が指摘されています。

次のような方は、自己判断でのマウステーピングを避けてください。

  • アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などで鼻がつまりやすい方、風邪をひいている方
  • 大きないびきや、家族から「呼吸が止まっている」と指摘されたことがある方(未診断の中等症以上の睡眠時無呼吸が隠れている可能性があります)
  • 飲酒後や睡眠薬を飲んだ日など、目が覚めにくい状態で眠る方
  • 子ども(安全性を確かめた研究はありません)
  • テープでかぶれやすい方

また、テープでいびきが軽くなったとしても、それは無呼吸が治ったことを意味しません。いびきの音だけが小さくなり、本来見つけるべき睡眠時無呼吸の発見が遅れることのほうが心配です。

日本で相談するなら|検査と保険診療の入り口

口呼吸やいびきが気になるときは、まず原因を確かめることが近道です。鼻づまりが原因であれば、耳鼻咽喉科での鼻炎の治療や、鼻の構造に対する治療で改善することがあります。

睡眠時無呼吸が疑われる場合は、自宅で行える簡易検査や、一晩入院して行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が保険診療で受けられます。日本呼吸器学会などが監修した「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」も、こうした検査による診断を治療の出発点としています。

治療の選択肢も保険の枠組みの中に用意されています。CPAPは2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定で保険適用の基準が緩和され、AHI 15以上(簡易検査では30以上)で対象となりました。口腔内装置は、医科の医師が睡眠時無呼吸症候群と診断し、紹介状をもって歯科に依頼した場合に保険で作製できます。治療法の全体像は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療とマネジメントをご覧ください。

まとめ|「試す前に調べる」が安全な順番

マウステーピングについて、現時点でわかっていることは次のとおりです。

  • 効果を示した研究は、口呼吸のある軽症の睡眠時無呼吸を対象にした少人数の研究に限られる
  • 口を閉じると、かえって喉の奥で気道がふさがる人が約2割いた
  • 鼻づまりがある人では窒息の危険が指摘されており、安全性は確かめられていない
  • CPAP使用中の口漏れ対策としては、使用時間を延ばす効果が報告されている

いびきや口呼吸の裏には、治療が必要な睡眠時無呼吸や鼻の病気が隠れていることがあります。テープで「音」を消す前に、一度検査で原因を確かめること。それが、睡眠の質を守るためのいちばん確かな方法です。

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監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、いびき・睡眠時無呼吸・不眠の診療を行っています。睡眠時無呼吸の検査はご自宅で受けられます。

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  • いびき・睡眠時無呼吸・不眠巣鴨クリニック豊島区/巣鴨駅 徒歩1分いびき・睡眠時無呼吸・不眠を診療。生活習慣病・内分泌内科も。平日夜19時30分まで、土曜も診療。予約・詳細を見る
  • いびき・睡眠時無呼吸・不眠街のクリニック 立川・村山立川市/玉川上水駅 徒歩1分いびき・睡眠時無呼吸・不眠を診療。内科・糖尿病内科・甲状腺内科・呼吸器内科。土日診療、オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る
  • いびき・睡眠時無呼吸・不眠街のクリニック 大島駅前江東区/大島駅A5出口 徒歩1分いびき・睡眠時無呼吸・不眠を診療。内科・糖尿病内科・循環器内科など。土日は午前診療。予約・詳細を見る
  • いびき・睡眠時無呼吸・不眠街のクリニック 日野・八王子日野市/北八王子駅 徒歩15分いびき・睡眠時無呼吸・不眠を診療。内科・呼吸器内科・糖尿病内科など。土日診療。予約・詳細を見る

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SUPERVISOR

この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は「街のクリニック」グループ(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・いびき・睡眠時無呼吸症候群など生活習慣病の診療にあたっています。特に「神保町駅前内科クリニック」では、いびきや睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング・治療に日常的に取り組んでおり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医・指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

参考文献

  1. Rhee J, Iansavitchene A, Mannala S, Graham ME, Rotenberg B. Breaking social media fads and uncovering the safety and efficacy of mouth taping in patients with mouth breathing, sleep disordered breathing, or obstructive sleep apnea: A systematic review. PLoS One 2025;20:e0323643.
  2. Lee YC, Lu CT, Cheng WN, Li HY. The impact of mouth-taping in mouth-breathers with mild obstructive sleep apnea: a preliminary study. Healthcare (Basel) 2022;10:1755.
  3. Huang TW, Young TH. Novel porous oral patches for patients with mild obstructive sleep apnea and mouth breathing: a pilot study. Otolaryngol Head Neck Surg 2015;152:369.
  4. Labarca G, Sands SA, Cohn V, et al. Mouth closing to improve the efficacy of mandibular advancement devices in sleep apnea. Ann Am Thorac Soc 2022;19:1185.
  5. Yang H, Huyett P, Wang TY, et al. Mouth Closure and Airflow in Patients With Obstructive Sleep Apnea: A Nonrandomized Clinical Trial. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2024;150:1012.
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  10. Bachour A, Hurmerinta K, Maasilta P. Mouth closing device (chinstrap) reduces mouth leak during nasal CPAP. Sleep Med 2004;5:261.
  11. 日本呼吸器学会ほか監修. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂, 2020.
  12. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定(C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料).
  13. 厚生労働省. 歯科診療報酬点数表 I017-1-2 睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置.
臨床
マウステーピング 睡眠時無呼吸症候群 研究
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