睡眠時無呼吸症候群の検査には、自宅で受けられる「簡易検査」と、脳波まで記録する「終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)」の2種類があります。持病が少なく、中等症以上が疑われる成人なら、どちらも診断に使える検査です。ただし簡易検査で異常がなくても疑いが残る場合は、PSGで調べ直すのが基本です。
この記事では、検査を考えるサイン、2つの検査の違い、結果の見方、日本での検査の流れと保険の考え方を順に説明します。
この記事の要点
- 診断には、問診や質問票だけでなく、簡易検査かPSGによる測定が必要です。
- 簡易検査は手軽ですが測る項目が少なく、PSGは項目が多く精密です。
- 結果は「AHI」という1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数で重症度が分かれます。
- 2026年6月から、CPAPの保険適用の基準が緩和されました。
検査を考えるサイン|こんな症状があるとき
検査は「いびきがうるさい」というだけでなく、次のようなサインが重なるときに検討します。家族から指摘されて気づく方が多く、本人は無自覚なことも珍しくありません。
夜間のサイン
大きないびきが続く、眠っている間に呼吸が止まっていると言われる、息苦しさで目が覚める、夜中に何度もトイレに起きる、といったものです。
日中のサイン
十分に寝たはずなのに日中に強い眠気がある、起床時に頭痛がする、集中力が続かない、運転中に眠くなる、などがあります。眠気の強さを点数化する質問票に、エプワース眠気尺度(0〜24点)があります[3]。
ただし、質問票や問診だけで睡眠時無呼吸症候群と診断することはできません。米国睡眠医学会(AASM)のガイドラインも、臨床所見や予測ツールだけに頼らず、簡易検査かPSGで測定して診断するよう強く推奨しています[1]。
いびきと睡眠時無呼吸の違いについては、いびきと睡眠時無呼吸症候群の違いで詳しく説明しています。
簡易検査とPSGの違い
2つの検査の違いを、先に表で整理します。
| 簡易検査(携帯型モニター) | 終夜睡眠ポリグラフィー(PSG) | |
|---|---|---|
| 測るもの | 気流(鼻の呼吸)、血中酸素、いびき、胸腹部の動きなど。装置により異なる | 簡易検査の項目に加え、脳波・眼球運動・あごの筋電図などを記録 |
| 場所 | 主に自宅 | 医療機関での一泊が一般的。施設によっては自宅で行う方法もある |
| 負担 | 小さい(指や鼻にセンサーをつけて眠る) | 簡易検査より大きい(電極の数が多い) |
| 得意なこと | 中等症〜重症の睡眠時無呼吸の見つけ出し | 睡眠の深さや分断まで分かる。他の睡眠障害の鑑別にも使える |
| 弱点 | 脳波を測らないため、睡眠段階が分からない。軽症は見逃しやすい | 費用・時間・体制の面で、簡易検査より受けにくい |
簡易検査が向いている人
日本呼吸器学会の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」は、はっきりした併存疾患がなく、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸が疑われる場合に、PSGの代わりとして簡易検査を使うことを提案しています[2]。AASMのガイドラインも、合併症の少ない成人では、性能の足りた簡易検査で診断してよいとしています[1]。
PSGが勧められる人
AASMのガイドラインは、次のような方ではPSGを優先するよう示しています[1]。
- 心臓や肺に大きな病気がある
- 神経・筋肉の病気で呼吸の筋力が弱い
- 日中も呼吸が浅くなる(覚醒時低換気)
- 医療用麻薬(オピオイド)を長く使っている
- 脳卒中の既往がある
- 強い不眠がある
また、簡易検査の結果が「異常なし」「判定不能」「技術的に不十分」だったときも、PSGで調べ直すことが推奨されています[1]。簡易検査は測る項目が少なく、中枢性無呼吸の判定精度も低いため、日本のガイドラインでは中枢性無呼吸の診断に簡易検査を使わないよう勧めています[2]。
結果の読み方|AHIで重症度が分かれる
検査の結果は、睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数「AHI(無呼吸低呼吸指数)」で表されます。日本のガイドラインでは、AHIが5以上で閉塞性睡眠時無呼吸などと診断し、次のように重症度を分けています[2]。
| 重症度 | AHI(1時間あたりの回数) |
|---|---|
| 軽症 | 5以上 15未満 |
| 中等症 | 15以上 30未満 |
| 重症 | 30以上 |
数字だけで治療が決まるわけではありません。日中の眠気などの症状、血圧や心臓の状態、体型、のどの形などを合わせて、治療方針を決めます。治療の選択肢は、睡眠時無呼吸症候群の治療法にまとめています。
検査の流れ|受診から結果まで
検査は、おおむね次の順で進みます。施設によって細部は異なります。
1. 問診と診察
症状、飲酒や服薬、持病、家族の指摘などを聞き、のどや鼻の状態、体型、血圧を確認します。質問票を使うこともあります。
2. 簡易検査(自宅)
装置を借りて自宅で一晩眠り、翌日に返却します。普段どおりの寝室、寝具、就寝時刻で受けるのがコツです。飲酒は控えめにし、睡眠薬を使っている方は事前に医師へ伝えてください。
3. 必要に応じてPSG
簡易検査で判断がつかないとき、他の睡眠障害や併存疾患が疑われるとき、治療方針を決めるために睡眠の深さや分断を確認したいときに行います。
4. 結果の説明と治療の相談
AHIと症状から重症度を判断し、CPAPなどの治療を検討します。軽症や、CPAPが合わない場合の選択肢もあります。
日本での検査と保険|2026年6月からの変更点
日本では、睡眠時無呼吸症候群が疑われて行う簡易検査やPSGは、医師が必要と判断すれば医療保険で受けられます。その結果に応じて、CPAP(持続陽圧呼吸療法)も保険で受けられます。
診療報酬は2026年度(令和8年度)に改定され、2026年6月に施行されました[4][5]。CPAPの保険適用の基準は、これまでより緩和されました。主な内容は次のとおりです。
- 睡眠ポリグラフィーでAHI 15以上(従来は20以上)で、日中の傾眠や起床時頭痛などの自覚症状が強く、日常生活に支障をきたしている
- AHIがより高い場合(30以上)は、自覚症状の要件を中心に判断される
基準の細かい点(どの検査で何を満たす必要があるか)は、改定後の通知で定められています[4]。実際にどの条件に当てはまるかは、検査結果を踏まえて、受診した医療機関の医師が判断します。CPAPを始めたあとは、使用時間などの記録をもとに、定期的に通院して管理を受けます。
自宅で行う簡易検査で足りるのか、PSGが必要なのかは、症状と持病によって変わります。気になるときは、睡眠時無呼吸の検査ができる医療機関に相談してください。
検査についてのよくある疑問
入院しなければなりませんか
簡易検査は自宅で行うため、入院は要りません。PSGは医療機関で一泊する方法が一般的ですが、施設によっては自宅で行う方法もあります。どちらが可能かは医療機関によって異なります。
簡易検査で「異常なし」と言われたら安心ですか
簡易検査で異常がなくても、症状が強く疑いが残る場合は、PSGでの再検査が推奨されています[1]。簡易検査は睡眠時間を脳波で確認できないため、軽症や特殊なタイプは見逃されることがあります。
検査の前に何かやめておくことはありますか
多くの場合、普段どおりに過ごして構いません。ただし、夜の飲酒、睡眠薬や鎮静薬の使用は結果に影響することがあるため、医師の指示に従ってください。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群の診断には、問診や質問票だけでなく、簡易検査かPSGでの測定が欠かせません。持病が少なく中等症以上が疑われる成人では簡易検査から始め、判断がつかない場合や持病がある場合は、PSGで精密に調べるのが基本です。
結果はAHIで重症度が分かれ、症状や全身の状態と合わせて治療が決まります。2026年6月からはCPAPの保険基準が緩和されました。いびきや日中の眠気が気になるときは、睡眠時無呼吸の検査ができる医療機関への相談をご検討ください。
睡眠の相談ができるクリニック
監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、いびき・睡眠時無呼吸・不眠の診療を行っています。睡眠時無呼吸の検査はご自宅で受けられます。
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この記事の監修者
鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長
救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は「街のクリニック」グループ(首都圏7拠点)の理事長として、高血圧・いびき・睡眠時無呼吸症候群など生活習慣病の診療にあたっています。特に「神保町駅前内科クリニック」では、いびきや睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング・治療に日常的に取り組んでおり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。
専門科目
所属・資格
- 日本救急医学会
- 日本災害医学会所属
- 社会医学系専門医指導医
- 日本医師会認定健康スポーツ医
- 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
- ICLSプロバイダー(救命救急対応)
- ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
- Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
- FCCSプロバイダー(集中治療対応)
- MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)
研究実績
- 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
- 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016
メディア出演
- フジテレビ 『イット』『めざまし8』
- 共同通信
- メディカルジャパン など多数
参考文献
- Kapur VK, Auckley DH, Chowdhuri S, et al. Clinical practice guideline for diagnostic testing for adult obstructive sleep apnea: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13(3):479-504. https://jcsm.aasm.org/doi/10.5664/jcsm.6506
- 日本呼吸器学会. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
- Johns MW. A new method for measuring daytime sleepiness: the Epworth sleepiness scale. Sleep. 1991;14(6):540-545.
- 厚生労働省. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666951.pdf
- 厚生労働省保険局医療課. 令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001685766.pdf



