「糖尿病の初期症状は?」と検索する方の多くは、自分や家族に何か気になることがあって調べています。先に結論を言うと、糖尿病の「初期」には症状がほとんどありません。この記事で挙げる症状は、血糖がかなり高くなって初めて現れるものです。それを知ったうえで、どの症状がどういう仕組みで出るのか、そして症状がなくても受診すべきサインは何かを説明します。
糖尿病の「初期」は無症状です
血糖が高いこと自体は、痛みも不快感も伴いません。2型糖尿病は数年から十数年かけてゆっくり進行し、その大半の期間、体は何も訴えません。健診で見つかる糖尿病のほとんどが、この無症状の期間に発見されています。
症状が出はじめるのは、血糖値がおおむね200 mg/dLを超えるあたりからです。この段階では、腎臓が処理しきれなくなったブドウ糖が尿に漏れ出しており、それが症状の直接の原因になります。「症状が出た」ということは、すでに初期ではないと考えたほうが正確です。
血糖が高くなると出る症状と、その仕組み
のどが渇く、水をよく飲む(口渇・多飲)
血糖が高いと血液の浸透圧が上がり、体は水分を求めます。同時に、後述する多尿で水分が失われるため、渇きが強くなります。「最近ペットボトルを手放せない」「夜中に何度も水を飲む」という変化があれば注意が必要です。
トイレが近い、夜中にトイレで起きる(多尿・夜間頻尿)
尿に糖が漏れ出すと、糖が水を引き連れて出ていくため尿量が増えます。回数だけでなく1回の量も多いのが特徴で、夜間に2回以上トイレで起きるようになった場合は、前立腺や膀胱の問題だけでなく血糖も疑う必要があります。
食べているのに体重が減る
インスリンが不足していると、食べたブドウ糖を細胞が使えません。体はエネルギー不足と判断して脂肪や筋肉を分解し始めるため、食事量が変わらないのに体重が減ります。「ダイエットしていないのに数か月で3〜5 kg減った」というのは、糖尿病では要注意の症状です。とくに1型糖尿病では、発症時に急激な体重減少がよく見られます。
疲れやすい、だるい
ブドウ糖が細胞に取り込まれず、エネルギーとして使えないために起こります。「年のせい」「忙しいから」と片付けられやすい症状ですが、口渇や多尿と重なっている場合は血糖を疑ってください。
目がかすむ
血糖の急な変動で水晶体の水分バランスが変わり、一時的にピントが合いにくくなることがあります。これは網膜症とは別の現象で、血糖が落ち着けば戻ります。ただし、糖尿病網膜症は進行しても自覚症状が乏しいため、「目がかすむ」をきっかけに眼科で網膜症が見つかることもあります。
傷が治りにくい、感染症にかかりやすい
高血糖は白血球の働きを鈍らせ、免疫の反応を弱めます。小さな傷が化膿する、膀胱炎や皮膚の感染症を繰り返す、歯周病が悪化する、といった形で表れます。
手足のしびれ、感覚の鈍り
これは神経障害という合併症の症状で、初期症状というより「かなり進んだ状態」の症状です。足の裏がジンジンする、砂利の上を歩いている感じがする、靴下を履いているような感覚がある、といった訴えが典型的です。両足の指先から左右対称に始まるのが特徴です。
症状がなくても受診すべきサイン
初期が無症状である以上、症状を待っていては遅くなります。次に当てはまる場合は、症状がなくても一度血糖とHbA1cを確認してください。
- 健診で血糖値やHbA1cに印がついた(再検査・要医療・要保健指導)
- 「予備群」「境界型」と言われたことがある
- 親や兄弟に糖尿病の人がいる
- 妊娠中に血糖が高いと言われたことがある(妊娠糖尿病)
- ここ数年で体重が大きく増えた
- 血圧や脂質(コレステロール・中性脂肪)も指摘されている
- 40歳を過ぎて、健康診断を数年受けていない
すぐに受診すべき症状
次の症状は、血糖が非常に高くなっているか、急激に悪化している可能性があります。様子を見ずに受診してください。
- 強い口渇と多尿に、急な体重減少や強い倦怠感が重なっている
- 吐き気・腹痛・息が深く速くなる(ケトアシドーシスの可能性)
- 意識がぼんやりする、ろれつが回らない
とくに1型糖尿病の発症時や、清涼飲料水を大量に飲む習慣がある方の急な悪化(いわゆる「ペットボトル症候群」)では、数日から数週間で重い状態になることがあります。
まとめ
- 糖尿病の初期には症状がありません。症状が出るのは血糖が200 mg/dLを超えるあたりから
- 口渇・多飲・多尿・体重減少・だるさは、尿に糖が漏れ出すことで起こります
- 手足のしびれは初期ではなく、神経障害が進んだ状態の症状です
- 健診の指摘、家族歴、妊娠糖尿病の既往、体重増加があれば、症状がなくても検査を
- 強い口渇に体重減少や吐き気が重なるときは、様子を見ずに受診を
「症状がないから大丈夫」は、糖尿病に関しては成り立ちません。手がかりは健診の数値です。
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
- 厚生労働省 健康づくりサポートネット(旧 e-ヘルスネット)「糖尿病」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-02-001
- 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター https://dmic.ncgm.go.jp/
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2025. Diabetes Care. 2025;48(Suppl 1). https://diabetesjournals.org/care/issue/48/Supplement_1
