厚生労働省の「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」は、令和8年10月19日の第6回で、福島県からの提供資料を資料3として取り上げました。福島県の資料は、県内の看護職員の需給見通し、新卒者の県内就業率、修学資金の貸与額、そして「若者向けの取組だけでは足りない」という課題認識を、数字と制度名で示しています(出典:厚生労働省「第6回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会 資料3 福島県からの提供資料」令和8年10月19日)。

この検討会の第6回については、資料2の確保策と養成所の専任教員の配置基準を別の記事で扱いました。本記事は資料3だけを読みます。読むのは、需給見通しの図表(スライド3)、入学状況(スライド4)、県内就業率(スライド5)、課題(スライド10)、修学資金(スライド18)です。年齢構成の図や、18歳人口との比率の図は、数値を確認できなかったため扱いません。

福島県の資料は、検討会で何を示したのか?

県内の看護職員の需給を「計画上の数字」で示し、若者の確保だけでは足りないため、潜在看護師の復職支援と社会人のリスキリング支援が必要だと結んでいます。これは県の取組の紹介であり、全国の制度の決定ではありません。検討会の場に自治体の事例として提出された資料で、国が今後の施策をここで決めたわけではありません。

確定している事実と、検討・計画の段階にあるものを分けると、次のとおりです。県の修学資金の貸与額は、県の制度として資料に書かれた現行の内容です。需給見通しは、県が策定した計画の見込みであり、実績ではありません。「必要だ」とされた潜在看護師の復職支援の強化は、県の課題認識であり、新しい制度の決定ではありません。

福島県の看護職員の需給見通しは、どう読むのか?

計画上の需要見込は、令和11年にかけて少しずつ増える一方、供給見込は令和6年に一度下がり、令和11年に需要見込を上回る形で描かれています。スライド3の図表には「福島県看護職員需給計画(H30〜R5、R6〜R11)」という注記があります。つまり、平成30年度〜令和5年度の計画と、令和6年度〜令和11年度の計画という、2つの計画の数字が1本の線で並んでいます。令和5年度から令和6年度への段差は、計画が切り替わった影響を含む可能性があり、単純に比べることはできません。資料はこの点を説明していません。

主な年度を抜き出し、需要見込から供給見込を引いた差を筆者が計算したのが、次の表です(単位は人)。実績は、図の注記にある衛生行政報告例の数字で、図表の実績行にあるのは平成30年度・令和2年度・令和4年度・令和6年度の4年分だけです。

表1 福島県の看護職員数の需給見通し(スライド3)
年度 供給見込 需要見込 需要−供給(筆者計算) 実績
平成30年度 23,931 24,298 367 23,913
令和2年度 24,370 24,720 350 24,046
令和4年度 24,895 24,892 −3 24,105
令和5年度 25,146 25,147 1 -
令和6年度 24,154 25,360 1,206 24,080
令和7年度 24,303 25,586 1,283 -
令和8年度 24,590 25,712 1,122 -
令和9年度 24,958 25,786 828 -
令和10年度 25,427 25,861 434 -
令和11年度 26,000 25,935 −65 -

表から読めるのは、次の点です。令和6年度の実績は24,080人で、同じ年度の供給見込24,154人より74人少なくなっています。令和6年度以降の計画上の差は、令和7年度の1,283人をピークに縮み、令和11年度には供給見込が需要見込を65人上回る形になります。ただし、この供給見込は「県が計画で見込んだ数字」であり、後の年度の実績で確かめられたものではありません。

需要見込の内訳(資料の表)も確認できます。訪問看護ステーションの需要見込は令和5年度の686人から令和6年度の895人へ、介護・福祉は3,646人から4,009人へと、計画が切り替わった年度に増えています。内訳の伸びが実際の需要増なのか、計画の算定方法の違いなのかは、資料からは分かりません。訪問看護の人材需要は別の記事で、求人倍率から読みました。

新卒の看護師は、どれくらい県内に就職しているのか?

県内の看護師等養成施設の新卒就業者のうち、県内に就業した人の割合は、平成28年度から令和7年度までの10年間、おおむね75〜84%の範囲に収まっています。スライド5の上の図は、県内就業者数、県外就業者数、そして「県内就業者÷就業者」の割合を示しています。下の表は、その図から筆者が数値を読み取って並べたものです(単位は人)。

表2 県内養成施設の新卒就業者の県内就業率(スライド5の上の図)
年度 県内就業者 県外就業者 県内就業率(図の表記)
平成28年度 630 169 78.8%
平成29年度 640 126 83.6%
平成30年度 589 164 78.2%
平成31年度(令和元年度) 560 192 74.5%
令和2年度 577 143 80.1%
令和3年度 671 157 81.0%
令和4年度 636 122 81.2%
令和5年度 591 152 79.5%
令和6年度 563 135 80.7%
令和7年度 513 166 75.6%

表の年度は、図の横軸の「28、29、30、31、R2〜R7」に、平成と令和を補ったものです。令和4年度だけは、図の数字が食い違っています。636人と122人から計算すると約83.9%ですが、図の割合の表記は81.2%です。どちらが誤記なのかは資料から分からないため、表では図の表記をそのまま載せ、計算した値は本文でだけ示します。ほかの9年度は、筆者の計算が図の表記と一致しました。

読み取れる傾向は、県内就業者の人数が令和3年度の671人から令和7年度の513人へ減っている点です。割合は大きく動いていないため、人数の減少は、卒業して就業する人の総数が減ったことを反映していると考えられます。入学状況のスライド4の図でも、入学者数は令和元年度の1,000人強から令和8年度の600人台半ばへ下がっています。数値の目盛りが細かくないため、この入学者数は図から読み取った概数です。

県の修学資金は、どのような仕組みなのか?

看護職員向けは、保健師・助産師・看護師が国公立で月額39,000円、民間立で月額56,000円、准看護師が国公立で19,000円、民間立で32,000円です。県内の対象施設で、貸与を受けた期間の1.5倍(最低3年)の期間勤務すると、返還が免除されます。スライド18の内容を表にまとめます。

表3 福島県の医療従事者修学資金のうち看護職員向け(スライド18)
区分 貸与月額 備考
保健師・助産師・看護師(国公立) 39,000円 南相馬市・双葉郡の病院・診療所への就業意思がある学生は月額30,000円を加算
保健師・助産師・看護師(民間立) 56,000円 同上
准看護師(国公立) 19,000円 同上
准看護師(民間立) 32,000円 同上

返還免除の条件は、資料では「理学療法士等として修学資金の貸与を受けた期間の1.5倍の期間(最低3年間)業務に従事した場合」という文言で書かれており、看護職員の欄にも同じ文言が使われています。看護職員に同じ条件が適用されると読めますが、資料の文言のままでは職種が合っていません。条件の正確な適用は、福島県の制度を直接確認する必要があります。

福島県は、今後の課題を何だと整理したのか?

少子化で養成所の入学者が計画の見込を超えて減っていることから、若者向けの取組だけでは今後の需要に応えられないとし、潜在看護師の復職支援の強化と、社会人のリスキリングの支援が必要だとしています。復職支援には、スポットナース等の多様な働き方を含める、と書かれています。あわせて、看護協会(ナースセンター)、ハローワークとの連携・協力を強めるとしています。ナースセンターとハローワークの連携は、第6回の資料2を扱った記事でも出てきた論点です。

これは、福島県が検討会の場で示した認識と今後の方向性です。法令や診療報酬の改定ではなく、検討会としてもまだ結論を出していません。第6回の議事録は、確認した時点で厚生労働省のページに掲載されていませんでした。発言の中身を確かめる場合は、議事録が掲載されてから確認する必要があります。

医療機関の採用担当者は、何を確認しておくとよいか?

この資料は福島県の事例ですが、読み方は他の地域にも使えます。確認したい点は3つあります。1つ目は、自院の地域の需給計画がどの計画期間の数字か、実績で確かめられているかです。2つ目は、地域の養成施設の新卒者が県内に就業する割合と、その人数の推移です。3つ目は、地域で貸与されている修学資金の制度と、勤務先として対象施設に自院が含まれるかどうかです。

職場環境の面では、第5回の検討会で議論された夜勤・超過勤務の論点を別の記事で整理しています。復職支援を考えるときの、勤務環境の論点として併せて確認できます。

よくある質問

福島県の需給見通しは、全国の傾向を示していますか?

示していません。福島県の看護職員需給計画の数字であり、他の都道府県や全国の状況は、この資料からは分かりません。

令和6年度に供給見込が下がったのは、人が減ったからですか?

資料からは分かりません。図表の注記から、平成30年度〜令和5年度と令和6年度〜令和11年度の2つの計画が並んでいることは確認できます。計画の切り替わりが影響している可能性がありますが、資料は理由を説明していません。

修学資金は、看護学生なら誰でも受けられますか?

資料の範囲では分かりません。貸与額と返還免除の条件は書かれていますが、貸与を受けられる要件や選考の方法は、確認した資料には載っていません。福島県の担当窓口で確認する必要があります。

この資料は、国の新しい制度を示していますか?

示していません。自治体が検討会に提供した事例資料で、国の制度の決定ではありません。

参考資料

  • 厚生労働省 / 第6回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会 資料3 福島県からの提供資料(スライド3・4・5・10・18を確認) / 令和8年10月19日開催 / https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001760410.pdf / 確認日:2026年11月2日
  • 厚生労働省 / 第6回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会 資料掲載ページ / 令和8年10月19日開催 / https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76494.html / 確認日:2026年11月2日
  • 厚生労働省 / 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会(開催回一覧。第6回の議事録が未掲載であることを確認) / 第6回が最新(確認時点) / https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/youseikakuho_72181.html / 確認日:2026年11月2日

※本記事は、資料3のスライド3・5・10・18をPDFの画像で目視して確認した値に基づきます。スライド4の入学者数は目盛りから読み取った概数です。需要−供給の差、県内就業率の再計算は筆者によるものです。資料の中で引かれている「福島県看護職員需給計画」「衛生行政報告例」の原本そのものは参照していません。

参考・一次出典