消化器内科ってどんなところ?

消化器内科ってどんなところ?

本記事について

特定の医療機関を推薦する記事ではありません。また、「あなたの症状なら消化器内科です」という判断をする記事でもありません。 消化器内科という診療科名が制度上どう位置づけられ、どんな病気や検査を扱い、ほかの科や病院とどう分担しているのかという、受診行動のしくみの説明にとどめています。

診療科名の根拠は医療法施行令と厚生労働省の通知、扱う範囲と検査の説明は日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会の資料、がん検診の内容は厚生労働省の指針、救急の目安は総務省消防庁の資料を出典にしています(末尾に一覧)。

目次

はじめに

胃のあたりが重い日が続く。健診の便の検査で「要精検」と書かれていた。バリウム検査で「胃に所見あり」と言われた——そんなとき、検索すると「消化器内科」という科名が出てきます。

外来で話を聞いていると、「胃腸科と消化器内科は別の科なのか」「胃カメラはつらいと聞くので先延ばしにしている」「便の検査をもう一度やり直せば済むのでは」といった声をよく耳にします。消化器内科は胃腸だけでなく、肝臓・胆のう・膵臓まで受け持つ科だということも、意外に知られていません。

消化器内科は、食道・胃・腸の消化管と、肝臓・胆のう・膵臓の病気を、薬や検査を中心とした内科の方法で診る科です。胃カメラ・大腸カメラ(内視鏡検査)を担うことが多く、がん検診で「要精検」となったあとの精密検査の受け皿にもなります。ただし、内視鏡の設備や鎮静の有無、ポリープ切除の対応は医療機関ごとに違い、手術は消化器外科、大きな治療は病院の役割になります。

実際に探すときは

現在、以下のエリアで消化器内科の記事を公開しています。

「消化器内科」と「胃腸科」はどういう関係?

医療機関が看板やウェブサイトに掲げられる診療科名は、医療法施行令第3条の2で決められています。消化器内科は、単独の科名としては出てきません。 「内科又は外科と次に定める事項とを組み合わせた名称」という枠があり、その組み合わせられる事項のひとつに「消化器」が挙げられています。「内科」+「消化器」=「消化器内科」という組み立てで、循環器内科・呼吸器内科・腎臓内科も同じ並びにあります。厚生労働省の通知(平成20年)が示す科名の具体例には、「消化器内科」と並んで「胃腸内科」も載っています。

一方、昔からある「胃腸科」「消化器科」「こう門科」という科名は、この改正で平成20年4月1日以降は新たに広告できなくなりました。 ただし経過措置として、それより前から掲げていた医療機関は、看板の書き換えなどをしない限り引き続き使ってよいことになっています。街で「胃腸科」の看板を見かけるのはこのためで、「胃腸科」と「消化器内科」で診るものが大きく違うわけではありません。

外科の側には、同じ枠組みで消化器外科や肛門外科があります。名前が似ていても、消化器内科は薬・検査・内視鏡などの内科的な方法を、消化器外科は手術を主に担うという分担があります。

なお、科名は医療機関が自分で掲げるものです。施行令が決めているのは「この名前なら広告してよい」という枠であって、その院の医師がどこまで消化器を専門に診てきたか、どんな内視鏡検査を行っているかまでは、科名からは分かりません(後述)。

消化器内科が扱う臓器と病気

日本消化器病学会は、専門医の制度規則のなかで、消化器病の専門医を「食道・胃・腸、肝・胆・膵など」の臓器の病気を系統的に理解し、消化器の病気全般に適切な医療を行える医師と位置づけています。つまり消化器内科の守備範囲は、口から肛門までつながる消化管と、消化を助ける肝臓・胆のう(胆道)・膵臓の2つのまとまりです。

  • 食道・胃・十二指腸……胸焼け・腹痛・食欲低下などの原因を調べ、潰瘍・炎症・腫瘍・ポリープなどを診断する
  • 小腸・大腸……ポリープ・がん・炎症などを診断する。潰瘍性大腸炎・クローン病といった炎症性腸疾患も、日本消化器内視鏡学会が一般向けの解説で取り上げている病気です
  • 肝臓・胆のう(胆道)・膵臓……消化管とあわせて、消化器病の専門医の守備範囲に含まれる臓器

この並びを見ると、胸焼けや腹痛といった身近な症状から、がんの診断、長く付き合う慢性の病気まで、幅の広い科だということが分かります。

消化器内科と内視鏡検査

消化器内科の大きな特徴は、内視鏡(いわゆる胃カメラ・大腸カメラ)を使って、臓器の中を直接見る検査を担うことです。日本消化器内視鏡学会の一般向け解説をもとに整理します。

  • 上部消化管内視鏡(胃カメラ)……口または鼻から内視鏡を入れ、食道・胃・十二指腸を一連の検査で観察します。胸焼け、腹痛、食欲低下、貧血などの原因を調べ、潰瘍・炎症・腫瘍・ポリープなどを診断するために行います。必要に応じて病変の一部をつまみ取り、組織を調べる(生検)こともあります
  • 鼻からの内視鏡(経鼻内視鏡)……細い内視鏡を使う方法で、検査中の嘔吐反射が少ないとされています。ただし、ポリープ切除などの治療は原則として行いません
  • 大腸内視鏡(大腸カメラ)……肛門から内視鏡を入れ、大腸(結腸と直腸)と小腸の一部を観察します。ポリープ・がん・炎症などを診断し、必要に応じて組織を取ったり、ポリープを切除したりします。検査の前に下剤で大腸の中を空にする準備が要ります

バリウムを飲むX線検査との違いについて、同学会は、内視鏡は組織を取って調べることができ、治療にも応用できる点で有利だと説明しています。バリウム検査で所見を指摘されたあとの精密検査として内視鏡が使われるのはこのためです。

医療機関によって違うところ

「消化器内科」を掲げる診療所のすべてが、同じ内視鏡検査を行っているわけではありません。 公式サイトで次のような点を確かめる必要があります。

  • 胃カメラ・大腸カメラのどちらを院内で行っているか(片方だけ、あるいは内視鏡を行わない院もあります)
  • 口から・鼻からのどちらに対応しているか
  • 鎮静薬(いわゆる「眠った状態」の検査)を使えるか
  • 大腸ポリープを見つけたとき、その場で切除まで行うか、別の日や病院で行うか
  • 下剤を院内で飲めるか、自宅で飲んでから来院するか

健診・がん検診で「要精検」と言われたら?

厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」は、市町村が行うがん検診について、次のように定めています。

  • 胃がん検診……50歳以上が対象で、原則2年に1回。問診に加え、胃部X線検査(バリウム)か胃内視鏡検査のどちらかを行います(X線検査は当分の間、40歳以上・年1回でもよいとされています)
  • 大腸がん検診……40歳以上が対象で、年1回。問診と便潜血検査(免疫法・2日法)を行います

大腸がん検診で「要精検」となったときの精密検査の第一選択は、全大腸内視鏡検査だと同じ指針は定めています。さらに、便潜血検査だけで精密検査をすることは、大腸がんの見落としの増加につながるので行わない、とはっきり書かれています。同じ指針は、大腸がん検診の精密検査の受診率がほかのがん検診に比べて低いことも課題として挙げています。

要精検という結果の受け止め方、結果票の持っていき方、費用の扱いなど、精密検査全般のことは健診で「要再検査」と言われたら、どこへ行けばいい?で整理しています。

鎮静薬を使う検査の日に気をつけること

内視鏡検査では、苦痛や不安を和らげるために鎮静薬を使うことがあります。日本消化器内視鏡学会は、鎮静薬のよい点として検査の苦痛や精神的な不安の軽減、次の検査への抵抗感が下がることを挙げる一方、意識が予想以上に下がる、呼吸が弱くなる、血圧が下がる、検査前後の記憶があいまいになるといった面もあると説明しています。

そのうえで同学会は、薬の効果が完全になくなるまで、検査の当日は1日、自動車・バイク・自転車の運転を控えるよう求めています。鎮静薬を使う予定の日は、公共交通機関や送迎で通えるかどうかも、医療機関を選ぶときの現実的な条件になります。

吐血・黒い便・激しい腹痛は、診療所の受診を待たない

ここまでは、外来で計画的に受診する場面の話です。総務省消防庁の「救急車を上手に使いましょう」は、大人で救急車を呼ぶべき症状として、おなかについて次のようなものを挙げています。

  • 突然の激しい腹痛
  • 激しい腹痛が持続する
  • 血を吐く
  • 便に血が混ざる、または真っ黒い便が出る

こうした症状が急に出たときは、診療所の診療時間を待たずに119番を考える場面です。迷ったときの相談窓口(#7119)や、夜間・休日の医療のしくみについては、夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?で整理しています。

よくある誤解

誤解1:「胃腸科と消化器内科は別の科」

「胃腸科」は、平成20年4月より前から使われていた科名で、それ以降は新たに掲げることができなくなりました。以前から掲げていた医療機関は、看板を変えない限り使い続けられます。看板の名前の違いで扱う範囲が決まるわけではないので、何を診ているか・どんな検査ができるかは、各院の公式サイトで確かめるのが確実です。

誤解2:「便潜血が陽性でも、もう一度便の検査をして陰性なら大丈夫」

厚生労働省の指針は、大腸がん検診の精密検査の第一選択を全大腸内視鏡検査とし、便潜血検査だけで精密検査をすることは見落としの増加につながるので行わないとしています。要精検となった人の多くは精密検査でがんが見つからないこともまた事実ですが、それを確かめる方法が内視鏡です。

誤解3:「消化器内科は胃と腸だけを診るところ」

日本消化器病学会が示す専門医の守備範囲は、食道・胃・腸に加えて肝臓・胆のう・膵臓を含みます。ただし、肝臓や膵臓の病気をどこまで院内で診ているかは医療機関によって違うので、公式サイトの診療内容で確かめてください。

誤解4:「『消化器内科』と書いてあれば、どこでも胃カメラと大腸カメラができる」

科名と、院内に内視鏡の設備があるかどうかは別の話です。胃カメラだけ行う院、両方行う院、内視鏡は病院に依頼する院があります。医師の専門資格について知りたい場合は、日本消化器内視鏡学会が都道府県別の専門医名簿を公開しています(本人が公開を選んだ医師のみ掲載)。資格表記の読み方は「専門医」「指導医」「認定医」の違いって?で解説しています。

こう考えて選ぶとよい

消化器内科の医療機関を探すときに、手がかりになる軸を挙げます。

  • 今の目的が、検査を一度受けることなのか、長く続く管理なのか——要精検の精密検査や、気になる症状の原因を調べたいなら、どの内視鏡検査を院内でできるかが大事になります。炎症性腸疾患や肝臓の病気などの継続的な管理なら、通いやすさや、病院との連携が大事になります
  • 院内でできる内視鏡検査と、そのやり方——胃カメラ・大腸カメラの有無、口から・鼻からの別、鎮静薬の使用、ポリープ切除の対応を、公式サイトで確認します
  • 検査日の段取り——鎮静薬を使う日は運転できないので、通う手段を考えておきます。大腸カメラは下剤の準備があるため、院内で下剤を飲めるかどうかも、人によっては大事な条件です
  • 医師がどんな分野を診てきたか——同じ消化器内科でも、内視鏡、肝臓、炎症性腸疾患など、病院時代に中心にしてきた分野は医師によって違います。経歴の欄が手がかりになります
  • どの病院とつながっているか——手術や大きな内視鏡治療が必要になったときの紹介先がはっきりしているかどうかも、診療所を選ぶ判断材料になります。連携のしくみは紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?で解説しています

いずれの場合も、最終的にどの医療機関を選ぶかは、お住まいのエリアの記事を参考にご自身で判断してください。 本記事はその前段階の、制度と役割分担の説明にとどまります。

監修者からのひとこと

便潜血検査で「要精検」と書かれていたのに、「痔があるから」「忙しいから」とそのままにしている方に、外来でよくお会いします。もちろん精密検査で何も見つからない方も多いのですが、それは調べてみて初めて言えることです。

胃カメラや大腸カメラは、以前に比べて受けやすくなる工夫が進んでいます。怖さやつらさが心配な方は、その気持ちをそのまま医師に伝えてください。どんな方法で受けるかを一緒に決めることも、検査の大事な一部だと考えています。

よくある質問

Q. 消化器内科は、何を診る科ですか。

A. 食道・胃・十二指腸・小腸・大腸といった消化管と、肝臓・胆のう・膵臓の病気を、薬や検査を中心とした内科の方法で診る科です。胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査を担うことが多い科です。

Q. 「胃腸科」と「消化器内科」は何が違うのですか。

A. 「胃腸科」は平成20年4月より前から使われていた科名で、それ以降は新たに広告できなくなりました。以前から掲げていた医療機関は、看板を変えない限り引き続き使えます。科名の違いで扱う範囲が大きく変わるわけではないので、診療内容は各院の公式サイトで確認してください。

Q. 消化器内科と消化器外科は何が違うのですか。

A. 消化器内科は内科の側の科で、薬物療法や内視鏡などの検査・治療を担います。消化器外科は外科の側の科で、手術を主に担います。必要に応じて両者が連携します。

Q. 健診の便潜血検査で「要精検」と言われました。もう一度便の検査を受ければいいですか。

A. 厚生労働省の指針は、大腸がん検診で要精検となった場合の精密検査の第一選択を全大腸内視鏡検査とし、便潜血検査だけで精密検査をすることは行わないとしています。結果票を持って、かかりつけか消化器内科に相談してください。

Q. 胃カメラは鼻からと口から、どちらがいいですか。

A. 日本消化器内視鏡学会は、鼻からの内視鏡は嘔吐反射が少ない一方、ポリープ切除などの治療は原則として行わないと説明しています。どちらが向いているかは検査の目的やその方の状態によるため、本記事では判断できません。医療機関で相談してください。

Q. 鎮静薬を使って内視鏡検査を受けた日は、車で帰れますか。

A. 日本消化器内視鏡学会は、薬の効果が完全になくなるまで、検査当日は1日、自動車・バイク・自転車の運転を控えるよう求めています。公共交通機関や送迎で通えるよう準備してください。

Q. 具体的にどの医療機関に行けばいいですか。

A. 本記事では特定の医療機関をおすすめしていません。上記の「実際に探すときは」から、お住まいのエリアの記事をご覧のうえ、ご自身で判断してください。

出典・参考文献

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次