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糖尿病神経障害|足のしびれ・感覚の低下は、どこから始まり何を確かめるか

2026 10/09
臨床医学
2026年10月9日

監修:鎌形 博展(医師・医療法人社団季邦会 理事長)

糖尿病神経障害|足のしびれ・感覚の低下は、どこから始まり何を確かめるか

糖尿病神経障害は、高血糖が続くことで手足の神経や自律神経が傷む合併症で、多くは両足の指先・足の裏のしびれや感覚の低下から始まります。痛みのないまま進む人も少なくないため、症状を待たずに、アキレス腱反射や振動の感じ方を定期的に診察で確かめることが大切です。進み方を抑える土台は血糖のコントロールで、感覚が落ちた足はけがに気づきにくいため、毎日足を見る習慣が足を守ります。

「靴下を一枚はいているような感じがする」「夜、布団に入ると足の裏がジンジンする」——糖尿病の外来では、こうした言葉で神経の変化に気づくことがあります。ただ、本人は「年のせい」「冷えのせい」と思って、わざわざ口にしないことも多いのです。

目次

糖尿病神経障害とは

神経には、触った・痛いといった感覚を伝える神経、筋肉を動かす神経、そして血圧や胃腸の動き・汗などを自動で調整する自律神経があります。血糖が高い状態が続くと、神経そのものの代謝が乱れたり、神経に栄養を送る細い血管が傷んだりして、これらの働きが落ちていきます。

日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024は、神経障害を頻度の高い合併症のひとつとして挙げ、糖尿病の方を診察するときには定期的に評価すべきだとしています。網膜症・腎症と並ぶ「三大合併症」のひとつです。

症状は「両足の先」から始まり、上へ広がります

糖尿病神経障害の多くは、左右対称に、体の中心から遠いところ(足先)から始まります。神経は長いほど傷みやすく、足の指先は長い神経の末端にあたるからです。

進むと症状はひざに向かって上がっていき、そのころには手の指先にも出てきます。靴下と手袋をはめる範囲に症状が出るため、「手袋・靴下型」と呼ばれます。

よくある症状

種類感じ方の例
しびれ・異常な感覚ジンジンする、ピリピリする、足の裏に紙が貼りついている感じ
痛みチクチク・ヒリヒリする、刺すような痛み、夜に強くなる
感覚の低下触られても鈍い、熱さや痛みを感じにくい
冷え・こむら返り足が冷たく感じる、ふくらはぎがつりやすい

注意したいのは、しびれや痛みのない人が半数ほどいることです。ガイドラインも、神経障害のある方の半数程度は痛みなどの症状がないまま進むと記しています。痛みがないからといって、神経が無事とは限りません。

また、片側だけの症状、手だけの症状、急に悪くなる症状は、糖尿病以外の原因(頸椎や腰椎の病気、ビタミンB12不足、甲状腺の病気、アルコールなど)も考えて調べます。

自律神経の障害は、思いがけない形で現れます

自律神経が傷むと、体のさまざまな自動調整がうまくいかなくなります。神経障害と結びつけて考えにくい症状が多いのが特徴です。

起こりうること具体的には
立ちくらみ立ち上がったときに血圧が下がる(起立性低血圧)
胃腸の動きの低下胃もたれ・食後の膨満感、便秘と下痢をくり返す
汗の異常足に汗をかかず乾燥する、上半身だけ汗が多い
排尿の障害尿が出にくい、残っている感じがする
勃起障害男性の性機能の低下
低血糖に気づきにくい冷や汗や動悸といった前触れが出にくくなる
痛みの乏しい心筋梗塞胸の痛みがはっきりしないまま起こることがある

最後の2つは命にかかわります。神経障害が進んだ方では、低血糖の前触れが出にくくなる(無自覚性低血糖)ことや、強い胸痛のない心筋梗塞が起こりうることを、本人と家族が知っておくことが大切です。

診察室では何を確かめるか

神経障害は、血液検査の数値だけでは分かりません。症状を聞き、足を実際に診て判断します。日本で広く使われているのが、「糖尿病性神経障害を考える会」の簡易診断基準です。

簡易診断基準の考え方

糖尿病があり、ほかの原因による神経障害が否定できることを前提に、次の3つのうち2つ以上があれば「神経障害あり」と判断します。

  1. 両足の指先・足の裏の、しびれ・痛み・異常な感覚(手だけの症状は数えない)
  2. 両側のアキレス腱反射が弱い、または出ない
  3. 両側の内くるぶしで、音叉の振動を感じる時間が短い(10秒以下)

実際の検査

  • アキレス腱反射:ひざをついた姿勢で、かかとの上の腱をハンマーで軽くたたきます
  • 振動覚:振動させた音叉(C128)を内くるぶしに当て、振動が消えたと感じるまでの時間を測ります
  • 触覚・痛覚:細いナイロンの糸(モノフィラメント)や先のとがったもので、足の裏の感じ方を確かめます
  • 自律神経の検査:心電図で、呼吸に合わせた脈の変動の大きさ(CVR-R)を測ります

確定診断には、手足に弱い電気刺激を当てて神経の伝わり方を調べる神経伝導検査が使われます。ガイドラインは、症状が軽い方で半年〜1年に1回、進んでいる方ではそれより短い間隔で評価することを勧めています。

進みやすくする要因と、抑える方法

ガイドラインは、神経障害の発症・進行にかかわる要因として、血糖コントロールの不良、糖尿病の罹病期間の長さ、高血圧、脂質異常、喫煙、肥満を挙げています。

血糖

土台になるのは血糖のコントロールです。ガイドラインは、神経障害の発症・進行を抑えるために厳格な血糖コントロールを推奨しています(推奨グレードA)。1型糖尿病を対象にした米国のDCCT研究では、HbA1cを平均約7%に保った群は約9%の群に比べ、神経障害の発症が約60%少なくなりました。

合併症を防ぐための目安は HbA1c 7.0%未満です。ただし年齢や低血糖の起こりやすさによって目標は変わるので、主治医と決めた値を目指します。

血圧・脂質・たばこ

血圧や脂質を整えること、禁煙することは、神経に栄養を送る細い血管を守ることにつながります。神経障害がある方は網膜症や腎症も進みやすいことが報告されており、目と腎臓の検査もあわせて受けておくと安心です。

しびれや痛みの治療

神経そのものの進行を抑える薬として、日本ではエパルレスタット(アルドース還元酵素阻害薬)が使われています。比較的早い段階の方で効果が期待できるとされます。

しびれや痛みで眠れない、日常生活に支障がある場合は、症状をやわらげる薬を使います。

状態主な選択肢(保険診療)
痛みが軽い血糖コントロールと生活習慣の見直し。必要に応じて一般的な鎮痛薬
中等度以上プレガバリン、ミロガバリン、デュロキセチン、三環系抗うつ薬など
それでも不十分他の薬の組み合わせを、主治医が副作用とのバランスで検討

これらの薬は痛みをやわらげるためのもので、神経を元に戻す薬ではありません。眠気・ふらつき・むくみなどの副作用があり、腎機能に応じて量を調整する薬もあるため、自己判断で増減せず主治医と相談してください。痛みが長く続くと不眠や気分の落ち込みにつながるため、「我慢できるから」と放っておかないことも大切です。

感覚が落ちた足を、けがから守る

神経障害で本当に怖いのは、しびれよりも感覚が落ちることで、けがや傷に気づかないことです。ガイドラインでも、足の潰瘍の多くに神経障害がかかわっているとされます。小さな靴ずれや低温やけどが、気づかないうちに感染して治りにくい傷になることがあります。

  • 毎日、足の裏・指の間・かかとを見る(見えにくければ鏡や家族の手を借りる)
  • 湯船に入る前に、手で湯の温度を確かめる
  • 湯たんぽ・電気あんか・カイロを直接肌に当てない、寝るときは使わない
  • 素足で歩かず、足に合った靴と靴下をはく
  • 爪はまっすぐ切り、深爪をしない。たこ・うおのめを自分で削らない

糖尿病情報センターも、感覚が鈍くなった足は低温やけどを起こしやすいとして、暖房器具の使い方に注意を促しています。足の手入れの方法は、通院先の医療機関で看護師などから教わることもできます。

受診の目安

  • 両足の指先や足の裏に、しびれ・ジンジンする感じ・感覚の鈍さがある
  • 糖尿病と言われてから、アキレス腱反射や足の感覚を診てもらったことがない
  • 立ちくらみ、胃もたれ、便秘と下痢のくり返し、排尿のしにくさが続いている
  • 低血糖の前触れ(冷や汗・動悸)を感じにくくなった
  • 足に傷・靴ずれ・水ぶくれ・色の変化があり、治りが遅い(早めの受診が必要です)
  • 片側だけのしびれや、急に強くなったしびれ・筋力の低下がある(糖尿病以外の原因も調べます)

糖尿病で通院中の方は、次の受診のときに靴下を脱いで、足を診てもらってください。しびれがなくても、それが神経障害を早く見つける近道になります。

CLINIC

糖尿病の相談ができるクリニック

監修医が理事長を務める医療法人社団季邦会の関連クリニックでは、糖尿病を含む内科診療に対応しています。健診で血糖値や HbA1c を指摘された方、予備群と言われた方もご相談ください。

  • 糖尿病専門医が院長巣鴨クリニック豊島区/巣鴨駅 徒歩1分糖尿病専門医が院長。糖尿病内科・甲状腺内科(内分泌内科)。女性医師が診療。平日夜19:30まで、土曜も診療。予約・詳細を見る
  • 栄養指導・土日診療街のクリニック 立川・村山立川市/玉川上水駅 徒歩1分糖尿病内科・甲状腺内科。管理栄養士による栄養指導あり。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る
  • 生活習慣病・いびき神保町駅前内科クリニック千代田区/神保町駅A3出口 徒歩1分生活習慣病の外来として糖尿病を診療。平日19時30分まで。原則予約制。予約・詳細を見る
  • 糖尿病内科街のクリニック 大島駅前江東区/大島駅A5出口 徒歩1分糖尿病内科・循環器内科など。土日は午前診療。予約・詳細を見る
  • 土日診療・オンライン街のクリニック 日野・八王子日野市/北八王子駅 徒歩15分糖尿病内科・呼吸器内科など。土日診療。オンライン診療にも対応。予約・詳細を見る

※ 本サイトは株式会社ENが運営しています。掲載のクリニックは当社の関連法人である医療法人社団季邦会が運営する診療所です。お近くにお住まいでない方は、立川・村山/日野・八王子でオンライン診療をご利用いただけます。

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SUPERVISOR

この記事の監修者

鎌形博展株式会社EN 代表取締役兼CEO、医療法人社団季邦会 理事長

救急医療の最前線で培った臨床経験をもとに、現在は医療法人社団季邦会(首都圏7拠点)の理事長として、糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病の診療にあたっています。法人内には糖尿病専門医が院長を務める巣鴨クリニックがあり、日々の診療で得た知見を本メディアの監修に活かしています。

専門科目

救急・地域医療

所属・資格

  • 日本救急医学会
  • 日本災害医学会所属
  • 社会医学系専門医指導医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 国際緊急援助隊・日本災害医学会コーディネーションサポートチーム
  • ICLSプロバイダー(救命救急対応)
  • ABLSプロバイダー(熱傷初期対応)
  • Emergo Train System シニアインストラクター(災害医療訓練企画・運営)
  • FCCSプロバイダー(集中治療対応)
  • MCLSプロバイダー(多数傷病者対応)

研究実績

  • 災害医療救護訓練の科学的解析に基づく都市減災コミュニティの創造に関する研究開発 佐々木 亮,武田 宗和,内田 康太郎,上杉 泰隆,鎌形 博展,川島 理恵,黒嶋 智美,江川 香奈,依田 育士,太田 祥一 救急医学 = The Japanese journal of acute medicine 41 (1), 107-112, 2017-01
  • 基礎自治体による互助を活用した災害時要援護者対策 : Edutainment・Medutainmentで創る地域コミュニティの力 鎌形博展, 中村洋 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 修士論文 2016

メディア出演

  • フジテレビ 『イット』『めざまし8』
  • 共同通信
  • メディカルジャパン など多数

SNS・関連リンク

  • YouTube Dr.鎌形の正しい医療ナビ
  • X(Twitter)
  • 株式会社EN
  • 医療法人社団季邦会

参考文献

  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第10章 糖尿病性神経障害 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/10.pdf
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第11章 糖尿病性足病変 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/11_1.pdf
  • 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
  • 糖尿病情報センター「糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html
  • 糖尿病情報センター「糖尿病足病変」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/040/01.html
  • Tesfaye S, et al. Diabetic neuropathies: update on definitions, diagnostic criteria, estimation of severity, and treatments. Diabetes Care 33: 2285-2293, 2010 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20876709/
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