「健診で血糖値が高かった。もう糖尿病なのだろうか」。この不安に対する答えは、「1回の値だけでは決まらない」です。糖尿病の診断には明確なルールがあり、複数の検査値と、必要なら別の日の再検査を組み合わせて判断します。ここでは、日本糖尿病学会の診断基準に沿って、その手順を説明します。
診断に使う4つの検査値
糖尿病の診断には、次の4つの検査値が使われます。いずれかが基準を超えると「糖尿病型」と判定されます。
| 検査 | 糖尿病型の基準 | 補足 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖 | 126 mg/dL 以上 | 10時間以上絶食した状態で測る |
| 随時血糖 | 200 mg/dL 以上 | 食事の時間に関係なく測った値 |
| 75gブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値 | 200 mg/dL 以上 | ブドウ糖を飲んで2時間後に測る |
| HbA1c | 6.5% 以上 | 過去1〜2か月の血糖の平均 |
「糖尿病型」は、あくまで「糖尿病の可能性が高い値」という意味で、この時点ではまだ診断ではありません。
診断が確定する組み合わせ
日本糖尿病学会の基準では、次のいずれかで糖尿病と診断されます。
1. 同じ日に「血糖値」と「HbA1c」の両方が糖尿病型
たとえば、健診で空腹時血糖が130 mg/dL、HbA1cが6.8%だった場合、この1回で診断が確定します。血糖値(3つのうちどれか)とHbA1cが、同じ採血で両方とも基準を超えているケースです。
2. 血糖値が糖尿病型で、糖尿病の典型的な症状がある
口渇・多飲・多尿・体重減少といった典型症状があるか、糖尿病網膜症が確認されている場合は、血糖値だけで診断できます。
3. 別の日に再検査して、再び糖尿病型
初回に血糖値かHbA1cのどちらか一方だけが糖尿病型だった場合は、別の日に再検査をします。2回目も糖尿病型(血糖値かHbA1cのいずれか)であれば診断が確定します。ただし、HbA1cだけが2回続けて糖尿病型でも、それだけでは診断されません。少なくとも1回は血糖値が糖尿病型である必要があります。
この「血糖値が必ず1回は必要」というルールは、HbA1cが貧血や妊娠などで実態とずれることがあるためです。
健診で「糖尿病型」が出たときに実際に起こること
健診でHbA1cが6.5%以上、または空腹時血糖が126 mg/dL以上だった場合、結果票には「要医療」「要精密検査」といった判定がつきます。医療機関を受診すると、多くの場合はもう一度採血をして血糖値とHbA1cを測り、上の組み合わせに当てはめて診断します。
健診の結果票を持参すれば、それが「1回目」の検査として使えることがあります。健診から日が経ちすぎていなければ、受診当日の採血が「2回目」になり、その日のうちに診断がつくこともあります。健診結果は必ず持って行ってください。
境界型(予備群)はどう判定されるのか
糖尿病型でも正常型でもない状態が「境界型」です。正常型の基準は次のとおりです。
- 空腹時血糖 110 mg/dL 未満
- 75gOGTT 2時間値 140 mg/dL 未満
つまり、空腹時血糖が110〜125 mg/dL、または75gOGTTの2時間値が140〜199 mg/dLの人が境界型にあたります。HbA1cには境界型の正式な基準はありませんが、5.6〜6.4%は糖尿病の可能性を否定できない範囲として扱われます。
境界型は病気ではありませんが、放置すると年に数%が糖尿病へ進行し、また糖尿病型に至らなくても心筋梗塞などのリスクが正常型より高いことが分かっています。境界型と言われたら、糖尿病になってから対処するのではなく、その段階で生活を見直すことが推奨されます。
75gブドウ糖負荷試験(OGTT)とは
75gのブドウ糖を溶かした液を飲み、30分・60分・120分後に採血して血糖の推移を見る検査です。空腹時血糖やHbA1cでは分からない「食後の血糖の上がり方」が分かるため、境界型かどうかを詳しく調べたいとき、あるいは空腹時血糖は正常なのにHbA1cがやや高いといった食い違いがあるときに行います。
朝食を抜いて受ける必要があり、2時間ほどかかります。すべての人に行う検査ではなく、健診の結果と診察の内容から必要と判断された場合に実施します。
「1型か2型か」の判断
糖尿病と診断されたあと、どの型かを判断するために、追加の検査を行うことがあります。
- 血中Cペプチド、尿中Cペプチド:自分のインスリンがどのくらい出ているか
- 抗GAD抗体などの自己抗体:1型糖尿病に特徴的な免疫の異常があるか
急な体重減少や強い口渇で発症した場合、若い方の場合、痩せている方の場合などは1型の可能性も考えて、これらを確認します。型によって治療が根本的に変わるため、この判断は重要です。
診断の基準は「治療の目標」とは別です
診断の基準(HbA1c 6.5%)と、治療中の目標(HbA1c 7.0%未満など)は別の数字です。「6.5%で糖尿病なのに、目標が7.0%なのはなぜ」という質問をよく受けますが、診断は「この病気があるかどうか」の線引き、目標は「合併症を防ぐためにどこまで下げるか」の線引きで、目的が違います。
まとめ
- 診断に使うのは、空腹時血糖126・随時血糖200・OGTT2時間値200・HbA1c6.5%の4つ
- 同じ日に血糖値とHbA1cの両方が基準を超えれば、1回で診断が確定します
- 一方だけなら別の日に再検査。HbA1cだけが2回続いても、血糖値の確認が必要です
- 境界型は空腹時110〜125、OGTT2時間値140〜199。病気ではありませんが、見直しの好機です
- 健診結果は「1回目の検査」として使えることがあります。必ず持参を
健診で糖尿病型の値が出たら、診断を確定させるためにも、症状がなくても受診してください。
参考文献
- 日本糖尿病学会 糖尿病診断基準に関する調査検討委員会「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版)」糖尿病 55(7): 485-504, 2012 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/55/7/55_485/_article/-char/ja/
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」 https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2025. Diabetes Care. 2025;48(Suppl 1). https://diabetesjournals.org/care/issue/48/Supplement_1
- 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター https://dmic.ncgm.go.jp/
