厚生労働省の「薬剤師のキャリアパスに関する懇談会」は、令和8年9月30日の第2回で、薬学教育協議会の就職動向調査結果報告書を参考資料1として配布しました。この報告書には、2025年3月に薬学部(6年制)を卒業した9,233人の進路が、勤務先の区分ごとに載っています(出典:厚生労働省「第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 参考資料1 薬学教育協議会 就職動向調査結果報告書」令和8年9月30日開催)。
この懇談会の資料は、第1回を別の記事で、第2回の資料2・3を別の記事で扱いました。本記事は参考資料1だけを、表の行ごとに読み直します。読むのは第1表(6年制の進路)、第2表(6年制の勤務先)、第7表(4年制の進路)の3表です。同じ報告書の大学院に関する表や、4年制の勤務先を細かく分けた表は確認していません。
薬学部6年制を卒業した人は、どこへ進んだのか?
9,233人のうち、「就職した者」は7,646人で82.8%です。進学は212人(2.3%)、就職せずは281人(3.0%)、未定(未報告を含む)は1,089人(11.8%)でした。就職した者は、報告書の第1表で「給与の判明した者」と「給与の判明しない者」に分かれており、本記事の7,646人はその合計です(出典:厚生労働省「第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 参考資料1」第1表 令和8年9月30日開催)。
| 区分(2025年3月・6年制) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 給与の判明した者 | 4,724 | 51.2% |
| 給与の判明しない者 | 2,922 | 31.6% |
| 無給研究生 | 5 | 0.1% |
| 進学 | 212 | 2.3% |
| 就職せず | 281 | 3.0% |
| 未定(未報告を含む) | 1,089 | 11.8% |
| 計 | 9,233 | 100.0% |
表の下には、2024年に卒業延期となって2025年3月までに卒業した学生1,176人を含むと注記されています。この人数は9,233人の内訳に入っています。「未定」の1割強には未報告の人も含まれるため、就職先が決まっていない人の割合と読むことはできません。
就職した人の勤務先は、薬局と病院にどれだけ偏っているのか?
保険薬局とドラッグストアの調剤部門を合わせると4,221人で、卒業生全体の約46%です。病院・診療所の薬剤部は1,944人で約21%でした。第2表の行は、保険薬局が2,549人(27.6%)、ドラッグストアの調剤部門が1,672人(18.1%)、病院・診療所の薬剤部が3区分(国立大学法人付属病院・独立行政法人病院が316人、公立大学法人付属病院・自治体病院・自治体診療所が381人、私立大学付属病院・一般病院・一般診療所が1,247人)です(出典:厚生労働省「第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 参考資料1」第2表 令和8年9月30日開催)。
次の表は、第2表の細かい行を、筆者が大きな区分にまとめ直したものです。人数は原表の行を足し合わせた値で、割合は9,233人に対して計算し直しました。原表の割合は行ごとの値なので、この表の割合と一致しない場合があります。
| 勤務先の区分 | 人数 | 卒業生全体に対する割合 |
|---|---|---|
| 保険薬局 | 2,549 | 27.6% |
| ドラッグストアの調剤部門 | 1,672 | 18.1% |
| 病院・診療所の薬剤部(薬剤科) | 1,944 | 21.1% |
| 企業(医薬品関連・化学系・その他) | 894 | 9.7% |
| 行政(衛生行政の国・地方公務員、その他) | 188 | 2.0% |
| 医薬品販売業(一般販売業・卸売) | 149 | 1.6% |
| 試験・研究機関、大学、研究生 | 138 | 1.5% |
| 病院・診療所の臨床検査・その他 | 61 | 0.7% |
| その他の職業 | 56 | 0.6% |
企業の894人は、医薬品関連企業が739人(開発・学術295、医薬情報担当者164、研究・試験・製造184、その他の職種96)、化学系企業が59人、その他の企業が96人という内訳です。医薬情報担当者は卒業生全体の1.8%でした。行政は、国家公務員37人、地方公務員131人、その他20人です。
この表の「その他」には、薬剤師の資格を使う仕事かどうかが分からない行も入っています。資格を使う職種に絞った数字としては読めません。
勤務先の選び方に、男女差はあるのか?
第2表で見る限り、病院・診療所の薬剤部は女性の割合が高く、企業の医薬情報担当者は男性の割合が高い傾向です。卒業生は男性3,300人、女性5,933人です。病院・診療所の薬剤部は、男性が552人(16.7%)、女性が1,392人(23.5%)でした。保険薬局は男性26.1%、女性28.4%と差が小さく、医薬情報担当者は男性2.4%、女性1.4%です(出典:厚生労働省「第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 参考資料1」第2表 令和8年9月30日開催)。
病院薬剤部の男女別の割合は、原表の3行(男性90・122・340人、女性226・259・907人)を筆者が足して、男女それぞれの卒業生数で割った値です。1年分のデータなので、傾向が毎年続くかどうかは、この資料だけでは分かりません。
4年制の卒業生は、6年制と進路がどう違うのか?
4年制学科の卒業生1,133人のうち、進学は871人(76.9%)で、就職した者は221人(19.5%)でした。就職した者の内訳は、給与の判明した者が99人(8.7%)、給与の判明しない者が122人(10.8%)です。就職せずは15人(1.3%)、未定は26人(2.3%)でした(出典:厚生労働省「第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 参考資料1」第7表 令和8年9月30日開催)。
6年制で進学が2.3%だったのと比べると、4年制は進学が大半を占めています。4年制の就職先の内訳を示す第8表は、本記事では読んでいません。就職した221人の勤務先については、この記事では述べません。
この数字は、懇談会の議論にどうつながるのか?
懇談会は、薬剤師のキャリアの全体像を整理する検討段階にあり、この就職動向調査から何かが決まったわけではありません。開催要綱は、薬剤師のキャリアパスの全体像が十分に整理・共有されておらず、人材の偏在やミスマッチが指摘されていることを、会議の趣旨として挙げています。検討事項は、キャリアパスの全体像の整理、卒前・卒後・生涯研鑽を通じた一体的な養成体系、教育・研修プログラムのあり方などです(出典:厚生労働省「薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 開催要綱」(第2回 参考資料2)令和8年9月30日開催)。
確定していることと、検討段階のことは何か?
資料から確認できることと、まだ議論の途中のことを、次の表で分けます。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 資料に数字として載っている事実 | 2025年3月の6年制卒業生9,233人の進路と勤務先、4年制1,133人の進路 | 参考資料1(第1・2・7表) |
| 懇談会の目的・検討事項 | キャリアの全体像の整理、一体的な養成体系の検討 | 開催要綱 |
| 検討段階のこと | キャリア形成と評価・処遇(第1回の主な意見の6番目。次回以降に議論予定と資料に記載) | 第2回 資料1 |
| この資料に無いこと | 勤務先ごとの処遇、離職、卒業後の転職、調査の回答校数・回収率 | 確認できず |
第1回の主な意見をまとめた資料1は、「キャリア形成と評価・処遇」を6番目の論点に置いています。研修や資格を整えるだけでなく、取得後の評価や処遇まで見る必要があるという意見、専門性が適切に評価される仕組みがなければ優秀な人材の確保は難しいという意見が載っています。この論点は、冒頭で次回以降に議論する予定と書かれています(出典:厚生労働省「第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 資料1 第1回 主なご意見」令和8年9月30日開催)。就職先の偏りを是正する施策は、資料に出てきていません。
この資料の数字を読むときの注意点は何か?
参考資料1は表だけで構成され、調査の対象校数、回答数、回収率、「給与の判明した者」の定義は、読んだ範囲に書かれていません。そのため、全国の薬学部の卒業生をすべて数えた値なのか、回答のあった大学の集計なのかは、この資料からは判断できません。9,233人という総数を、国家試験の合格者数などと照らし合わせて確認することも、本記事ではしていません。
2025年3月卒の1年分だけの表であり、年度による推移は載っていません。「増えた」「減った」という書き方は、この資料からはできません。また、勤務先の大分類は筆者が行を足して作ったもので、報告書にある区分そのものではありません。
よくある質問(FAQ)
6年制卒業生の就職先で、いちばん多いのは何ですか?
保険薬局が2,549人(27.6%)で最多で、次いでドラッグストアの調剤部門が1,672人(18.1%)です。病院・診療所の薬剤部は3区分に分かれており、最も多い私立大学付属病院・一般病院・一般診療所でも1,247人(13.5%)です。
製薬企業に就職した人は、どれくらいですか?
第2表の「企業」は合計で894人(約9.7%)です。そのうち医薬品関連企業は739人で、開発・学術が295人、医薬情報担当者が164人、研究・試験・製造が184人でした。
この調査は、全国の薬学部卒業生をすべて含んでいますか?
資料からは確認できません。調査の対象校数や回収率は、読んだ範囲に書かれていません。
この数字は、薬剤師の需給や偏在の議論と関係がありますか?
懇談会は、人材の偏在やミスマッチを課題として挙げています。ただし、この表は新卒の就職先の分布で、地域別の薬剤師数や需給推計ではありません。偏在指標は別の記事で扱いました。
参考資料
- 厚生労働省 / 第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 参考資料1 薬学教育協議会 就職動向調査結果報告書(第1・2・7表を確認) / 令和8年9月30日開催 / https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001754312.pdf / 確認日:2026年10月30日
- 厚生労働省 / 第2回 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 資料1 第1回 主なご意見 / 令和8年9月30日開催 / https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001753063.pdf / 確認日:2026年10月30日
- 厚生労働省 / 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 開催要綱(第2回 参考資料2) / 令和8年9月30日開催 / https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001753065.pdf / 確認日:2026年10月30日
- 厚生労働省 / 第2回薬剤師のキャリアパスに関する懇談会 資料(掲載ページ) / 令和8年9月30日開催 / https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76399.html / 確認日:2026年10月30日
- 厚生労働省 / 薬剤師のキャリアパスに関する懇談会(開催回一覧) / 第2回が最新(確認時点) / https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku_470779_00026.html / 確認日:2026年10月30日
※本記事は、参考資料1の第1表・第2表・第7表を、PDFの画像で行と数値の対応を目視して確認した値に基づきます。調査の対象校数・回答数・回収率・各区分の定義は資料に記載がなく、確認できていません。大分類の人数と割合は、原表の行を筆者が合算・再計算した値です。薬学教育協議会の原本そのものは、懇談会の資料に掲載された範囲でのみ参照しています。





