薬局の調剤業務の一部を他の薬局に委託できる制度が、2027年5月までに施行される。委託できる業務の範囲、委託先の距離、患者への説明の方法という運用の骨格は、2026年4月15日の第19回「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で事務局案が示され、構成員の賛同を得て決着した。議事録は2026年8月6日に公表されている。本記事は一次情報にもとづき、確定した内容と検討段階の内容を分けて整理する。
調剤業務の一部外部委託とは、何を認める制度か?
薬局開設者が、調剤業務のうち「定型的な業務」を他の薬局の開設者に委託できるようにする制度である。根拠は改正薬機法第9条の5で、委託する薬局・受託する薬局のいずれも都道府県知事等(保健所設置市・特別区では市長・区長)の許可を受ける必要がある。改正法(令和7年法律第37号)は2025年5月21日に公布され、この規定は公布後2年以内に政令で定める日から施行される。
条文上の位置づけは重要である。第9条の5は「薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の質の向上を図るために調剤の業務の効率化を行う必要がある場合」に委託を認めている。つまり外部委託は、それ自体が目的ではなく、対人業務の質を上げるための手段として法令上位置づけられている。
外部委託できる業務はどこまでか?
「一包化」と、「一包化した薬剤と同じ時点に服用する他の薬剤を組み合わせる作業」までである。それ以外の薬剤の取揃えは、今回の範囲に含まれない。検討会の事務局案は次の3分類で整理されている。
| 区分 | 内容 | 外部委託 |
|---|---|---|
| ①一包化 | 計量による調製を含むものを除く | 含める |
| ②同一時点服用の薬剤の組み合わせ | 一包化した被包に、散剤・顆粒剤の分包品や吸湿性等の理由で一包化できない錠剤・カプセル剤をテープ等でとめる作業 | 含める |
| ③その他の取揃え | 湿布・軟膏・点眼剤・注射剤などの経口投与以外のもの、頓服剤など②に当たらない錠剤・カプセル剤 | 含めない |
②を含めた理由は2つ示されている。テープ等でとめる作業は機械化が前提ではないものの服用時点が一定間隔であるなど定型的であり、委託薬局の負担軽減が見込まれること。そして、一包化された薬剤とまとめることが患者の飲み忘れ・飲み誤りの防止につながり、医療上の有用性が認められることである。
なぜ「その他の取揃え」は外部委託できないのか?
定型化できるかどうかが実証されておらず、対物業務の効率化につながるかが現時点で不明だからである。剤形が多様で、必要量を取り揃える程度の作業では薬剤師の時間を生み出すとは考えにくいという意見や、注射薬には保管管理の問題があるという指摘も出ている。
ただし恒久的な除外ではない。特区での実証やその他のエビデンスが得られた場合には、その結果を踏まえて外部委託の是非を改めて検討するとされている。検討会では、一包化だけでは「まとまった時間」が生まれる場面が限られるとして範囲拡大を求める意見も出ており、論点として残っている。
受託薬局から患者への直接配送(いわゆる直送)はできるのか?
施行時点ではできない。事務局案は「現時点では、いわゆる直送を実施可能とすることは適切ではない」と明記している。理由は、①国家戦略特区でデータ送信フォーマットや連携インフラの整備、薬袋作成のルール整備といった技術的課題を検証中であること、②最終鑑査は取揃えの正確性だけでなく処方内容の妥当性や薬歴との整合性の確認も含むため、薬剤師の手元に薬剤がない状態で鑑査の一部を分離することには技術的蓄積がなく調剤過誤のリスクが払拭できていないこと、の2点である。
検討会では、直送によって薬剤師が説明する機会が失われることは「対物から対人へ」という大原則に逆行するという指摘もあった。今後エビデンスが得られた場合には取扱いを再検討し、認める場合には委託・受託の両薬局に必要な技術的基準をガイドライン等で規定する必要があるとされている。
患者への説明に署名は必要か?
署名は必須ではない。文書または電子ファイル等を用いて外部委託を実施することを患者または家族に丁寧に説明し、患者が理解した上で実施する。そして、理解を得た旨を調剤録等に記録する運用となる。
現行のガイドライン(暫定版)は文書による説明と署名の取得を求めていたが、特区の実証事業で、患者が署名に抵抗を示す、家族が遠方にいる要介護者では署名の取得が非現実的といった課題が指摘された。実証事業で説明・署名等に要した時間は74件で平均4分50秒・中央値5分00秒、5分以上が48件と報告されている。説明に時間を取られて本来の服薬指導が圧迫されることは本末転倒である、という意見が検討会で複数出ていた。
なお、患者がいつでも撤回できる前提で2回目以降の外部委託も認める包括的な説明と理解の取得は引き続き可能である。また検討会では、患者が外部委託を拒否できることも事務局から明言されている。薬局側には、拒否された場合に自局で対応できる体制が求められる。
委託先はどこまで離れていてよいのか?
同一の都道府県内である。当初のワーキンググループ案は「同一の三次医療圏内」だったが、事務局案では都道府県内に変更され、改正法の施行時点では都道府県をまたぐ委受託の例外規定を設けないこととされた。
理由は薬事監視の実効性である。自治体ごとに独自のシステムで許可台帳・監視情報を管理しており、都道府県をまたいだリアルタイムの情報共有の仕組みが存在しない。同日に施行される予定の「遠隔管理による販売制度」でも同じ課題があり、まず同一都道府県内で導入することとされている。三次医療圏が6つある北海道についても、同一都道府県内とした場合でも適切に監視指導が可能との回答が得られている。
地理的制限は固定ではない。遠隔管理による販売制度で「法施行後2年以内に結論、結論を得次第速やかに措置」とされていることに合わせ、調剤業務の一部外部委託についても一体的に見直しを検討するとされている。
特区の実証事業から何がわかっているのか?
実施規模はまだ小さく、一包化だけでは業務が完結しないケースが多数だった。大阪特区の実証事業では、2024年8月から2025年1月までの間に156件の外部委託(一包化)が実施され、内訳は同一法人内45件、別法人間111件である。
このうち、受託薬局での一包化のみで完結した処方箋は52例にとどまり、委託薬局側で追加業務が必要だったものが104例と約3分の2を占めた。追加業務の中身は、一包化した薬剤の被包に散剤等の分包品をテープ等でとめる作業と、一包化されない外用薬等の取揃えである。今回②を範囲に含めたのは、この実測を踏まえた対応にあたる。
責任はどちらの薬局が負うのか?
委託元の薬局である。検討会で疑義照会や再一包化の扱いを問われた事務局は、取揃えや一包化の機械を使う部分以外はもちろん委託元が行い、「トータルの責任に関しては委託元が行う」「どういった場合に再一包化が必要かといったことに関しての責任は、全て委託元にある」と回答している。
制度部会のとりまとめでも、患者の安全確保のため受託側・委託側の薬局における必要な基準を設定し、両薬局の開設者および管理薬剤師に係る義務や責任を法令上規定すべきとされている。管理薬剤師にとっては、自局で作業しない工程についても責任範囲が及ぶ点が実務上の要になる。
まだ決まっていないことは何か?
制度の骨格は決まったが、実務を縛る細部は未確定である。以下は検討段階であり、確定事項として扱うべきではない。
- 施行日:公布後2年以内に政令で定める日とされているが、本記事執筆時点で施行期日を定める政令は確認できていない。第18回検討会(2026年3月30日)の議論では「法施行まで残り1年」と言及されている
- 特定調剤業務の具体的な定義:政令で定められる
- 委託・受託の許可基準と遵守事項:省令等で規定される
- ガイドラインの改訂:機械を用いない取揃えを想定していない現行ガイドラインの改訂、説明と理解に関する記録の規定などが予定されている
- 「定型的な業務」の解釈:自動化できるものや非薬剤師が担えるものがすべて定型的な業務にあたるわけではない、という指摘が出ており、文言の扱いが検討課題として残っている
- 受託の集中:将来的に都道府県をまたぐ委受託を認めた場合、配送センターのある一部の県に受託が一極集中しうるという懸念が示されている
薬剤師のキャリアには何が影響するのか?
制度の目的が「対物業務の効率化によって対人業務のためのまとまった時間を生み出すこと」に置かれているため、生み出された時間の使い方が評価の対象になりやすくなる。法令上、外部委託は情報提供と指導の質の向上のための手段と位置づけられている。
また、改正法案の附帯決議(2025年4月16日 衆議院厚生労働委員会)では、薬剤師の専門性向上のため「養成課程における教育内容、生涯にわたるキャリア形成の在り方、ふさわしい処遇等について検討を行い、必要な措置を講ずること」が求められている。制度改正と並行して、薬剤師のキャリア形成そのものが政策の検討対象に挙がっている状況である。
転職や配置転換を検討する際に、一次情報から確認できる論点は次のとおりである。委託側になるのか受託側になるのか(受託には別途許可が必要)、対象が一包化中心である以上、在宅・高齢者施設対応の比重がどうなるか、そして管理薬剤師として委託工程の責任を負う立場になるかどうか。いずれも許可基準を定める省令とガイドラインの内容が固まってから具体化する。
よくある質問
調剤業務の一部外部委託はいつから始まるのか?
改正薬機法(令和7年法律第37号、2025年5月21日公布)のうち、この規定は公布後2年以内に政令で定める日から施行される。具体的な施行日は政令で定められる。
外部委託できる業務は一包化だけか?
一包化に加えて、一包化した薬剤と同じ時点に服用する他の薬剤を組み合わせる作業(一包化した被包に散剤の分包品などをテープ等でとめる作業)も範囲に含まれる。それ以外の薬剤の取揃えは含まれない。
受託薬局から患者の自宅へ薬を直接配送できるのか?
施行時点ではできない。技術的課題の検証中であること、薬剤師の手元に薬剤がない状態での最終鑑査に技術的蓄積がないことを理由に、現時点では実施可能としないとされている。
患者に文書で署名をもらう必要があるのか?
署名は必須ではない。文書または電子ファイル等で丁寧に説明し、患者が理解した上で実施し、理解を得た旨を調剤録等に記録する。患者が外部委託を拒否することも可能である。
県外の薬局に委託できるのか?
施行時点ではできない。委託先は同一の都道府県内に限られ、都道府県をまたぐ委受託の例外規定は施行時点では設けられない。遠隔管理による販売制度の地理的制限の見直しと歩調を合わせ、施行後の見直しが検討される。
出典
- 厚生労働省「資料1_調剤業務の一部外部委託について」第19回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会(令和8年4月15日、令和8年6月30日付け修正)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001714474.pdf
- 厚生労働省「第19回 薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会 議事録」(令和8年8月6日公表)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001734773.pdf
- 厚生労働省「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/iyaku_36865.html
- 厚生労働省医薬局「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の概要等について」厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料1(令和7年6月4日)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001498205.pdf
- 参議院「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」議案審議情報(第217回国会)https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217080217015.htm


