
令和8年6月1日から適用された診療報酬改定(厚生労働省告示第69号)で、看護師等が患者宅に同席するオンライン診療に、新しい評価が入りました。訪問看護遠隔診療補助料は1日につき265点です。訪問看護と一体でない場面で、医師が看護師等を患家へ向かわせ、情報通信機器を用いた診療の補助を行ったときに算定します。医師が移動せずに在宅や夜間の対応を広げる選択肢になりますが、診療前相談、記録、連携先との費用精算など、守る条件も明確に定められています。
D to P with N は、医師(D)が情報通信機器で患者(P)を診察し、患者のそばに看護師等(N)がいる形のオンライン診療です。聴診や触診、バイタル測定といった「画面越しには届かない部分」を、現場の看護師等が補います。
厚生労働省の令和8年度診療報酬改定項目の概要(6ページ)は、この見直しを次のように説明しています。D to P with N を訪問看護と同時に実施できるようにするほか、訪問看護を同時に実施せずに患家へ看護師等が訪問する場合の評価を新設し、訪問した看護師等が検査・処置等を実施する場合の評価も新設する、というものです。新設された項目と点数は次のとおりです。
| 新設項目 | 点数 |
|---|---|
| 訪問看護遠隔診療補助料(1日につき) | 265点 |
| 看護師等遠隔診療検査実施料(イ/ロ) | 100点/150点 |
| 看護師等遠隔診療処置実施料(イ/ロ) | 100点/150点 |
| 看護師等遠隔診療注射実施料 | 100点 |
検査と処置のイ・ロの区分は、概要資料の記載だけでは確認できませんでした。実際に算定する際は、告示と留意事項通知で区分を確認してください。なお、患者が全額自己負担する自由診療で同じ形をとる事業もありますが、本稿の算定ルールは保険診療の話です。
留意事項通知(令和8年3月5日 保医発0305第6号)の訪問看護遠隔診療補助料の項は、算定できる場面を2つに分けています。いずれも「医療保険または介護保険の訪問看護と一体的に実施されない場合」が前提です。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 医療機関自身が訪問させる | 情報通信機器を用いた診療を行う保険医療機関が、診療時に自院の看護師等を患家に訪問させる場合 |
| 連携する訪問看護ステーションが訪問する | 保険医療機関と連携する訪問看護ステーションの訪問を併用して行う場合 |
対象の患者は、在宅で療養を行っている、または緊急に診療を要する患者のうち、通院が困難なものです。医師または看護師の配置が義務付けられている施設に入所している患者は、給付調整告示等で規定する場合を除き、算定の対象になりません。算定は月に1回が上限です。
緊急の場合には、さらに条件があります。患者またはその家族等が医療機関に緊急に直接診療を求め、医師が看護師等の同席が必要と判断し、可及的速やかに看護師等を訪問させたときに算定できます。通知は、定期的ないし計画的に情報通信機器を用いた診療を行った場合には算定できないと明記しています。
通知は、この点数を「オンライン診療の適切な実施に関する指針に沿って診療及び診療の補助を行った場合」に算定するとしています。そのうえで、初診からのオンライン診療には診療前相談が行われることを踏まえ、次のように求めています。情報通信機器で診療する医師が診療前相談を実施し、看護師等による患家訪問の必要性を認めた場合に限り算定でき、その必要性を診療録と摘要欄に記載すること、です。
診療前相談は、指針の概要では、医師が患者の症状や医学的情報を確認する行為とされ、診断や処方などの診療行為は含みません。指針に関するQ&Aは、診療前相談は映像を用いたリアルタイムのやりとりで行うよう求めています。
記録の義務は医師と看護師等の双方にあります。医師は指示内容を診療録に記載し、看護師等は医師の指示と、それに基づく診療の補助の日時・内容の要点・対応状況を看護記録等に記録します。算定の根拠は、記録に残る内容で決まります。
ステーションの看護師等が訪問して診療の補助を行う場合、通知は次の4点を示しています。
例外もあります。医療保険の訪問看護の対象患者で、ステーションに訪問看護指示書を交付し、その有効期間内に行う場合は、ステーションの訪問費用が訪問看護療養費として直接支払われます。この場合、この点数の対象にはなりません。
同じ日の算定にも制限があります。訪問看護遠隔診療補助料を算定する日は、在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料、訪問看護指示料、精神科訪問看護・指導料、訪問看護療養費を別に算定できません。一方、在宅患者訪問点滴注射管理指導料は算定できます。
看護師または准看護師といる患者にオンライン診療を行い、医療機関の保険医の指示に基づいて、医療機関またはステーションの看護師等が検査・処置・注射を実施した場合は、それぞれの所定点数に代えて、看護師等遠隔診療の検査実施料・処置実施料・注射実施料を算定します。通知の取扱いは3つに共通しています。
注射については注意点があります。看護師等遠隔診療注射実施料を算定した場合は、在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定できません。同じ日に訪問看護遠隔診療補助料と在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定できる関係とは、整理が異なります。
同一の患家、または有料老人ホーム等でホーム全体を同一の患家とみなすことが適当な場合に、看護師等が2人以上の診療の補助を行ったときは、2人目以降の患者については訪問看護遠隔診療補助料を算定しません。初診料または再診料・外来診療料と、第2章特掲診療料のみの算定になります。2人目以降の診療に要した時間が1時間を超えた場合は、その旨を摘要欄に記載して算定します。
別の仕組みとして、へき地の診療所を対象にした加算があります。再診料の注20および外来診療料の注11に規定する看護師等遠隔診療補助加算は、へき地保健医療対策事業で規定されるへき地診療所の医師、またはへき地医療拠点病院の医師が、看護師等といる患者に情報通信機器を用いた診療を行った場合に、前回の対面診療から3月以内に限り算定します。
在宅療養支援診療所の項にも関連する記述があります。24時間往診できる体制の要件から、基本診療料の施設基準等の別表第六の二に掲げる地域に所在し、看護師等といる患者に情報通信機器を用いた診療を24時間行える体制を持つ医療機関が除かれています。該当するかどうかは、自院の所在地と届出内容で確認が必要です。
この点数が使いやすいかどうかは、次の3点で決まります。いずれも通知の記載から読み取れる条件で、導入すれば採算が合うといった保証は、通知にはありません。
点数の制度を使うかどうかと、地域に合った在宅・オンライン診療の形を作ることは、別の話です。再診率や予約の運用との関係はオンライン診療の予約と再診率の記事、在宅・外来の機能の見え方はかかりつけ医機能報告とナビイの記事で整理しています。
できません。算定は月に1回までです。また、緊急に診療を要する患者として算定する場合は、定期的ないし計画的に情報通信機器を用いた診療を行った場合には算定できないと、通知が明記しています。
看護師等の同席だけでは足りません。通知は指針に沿って診療を行うことを求め、診療前相談で看護師等の訪問の必要性を認めた場合に限り算定できるとしています。初診からのオンライン診療の可否そのものは、指針の定めに従って医師が判断します。
この点数で訪問する場合、指示書の交付は不要です。訪問は医療機関の依頼と患者の同意に基づくためです。ただし、医療保険の訪問看護の対象患者に指示書を交付し、その有効期間内に行う場合は、訪問看護療養費として支払われるため、この点数の対象外になります。
訪問看護遠隔診療補助料を算定する日は、在宅患者訪問看護・指導料は別に算定できません。一方、訪問看護・指導の実施時に、医療機関の保険医が情報通信機器を用いた診療を実施した場合は、在宅患者訪問看護・指導料は算定できます。別の場面の取扱いなので、混同しないでください。
できません。医師または看護師の配置が義務付けられている施設の入所者は、原則として対象外です。対象になる場合でも、同一の患家とみなされる有料老人ホーム等で2人以上を診たときは、2人目以降は訪問看護遠隔診療補助料を算定しません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の算定の可否や請求の適否を保証するものではありません。実際の算定・届出にあたっては、管轄の地方厚生(支)局・都道府県の通知および疑義解釈を確認し、社会保険労務士・医事コンサルタント等の専門家に必ずご確認ください。数値・制度は2026年10月時点の情報に基づきます。
公開日:2026年10月8日/最終更新日:2026年10月14日
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身