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TOP コラム 「新たな地域医療構想」で開業環境はどう変わる?医療機関機能4区分と在宅・外来シフトを解説【2026年】
新たな地域医療構想で導入される医療機関機能の4区分と、在宅・外来を含む提供体制の見直しを表したアイキャッチ画像
開業準備 2026.08.11

「新たな地域医療構想」で開業環境はどう変わる?医療機関機能4区分と在宅・外来シフトを解説【2026年】

2040年を見据えた「新たな地域医療構想」の策定ガイドラインが厚生労働省から示され、各地域で議論が本格化しています。従来の病床機能の再編中心の枠組みから、外来・在宅医療や介護連携まで含めた提供体制全体の再設計へと対象が広がった点が大きな変化です。新設される「医療機関機能報告制度」では、各医療機関が2040年に担う役割を決めて報告することになり、病院の機能集約が地域単位で進みます。これから開業を検討する医師にとっては、立地選定や外来・在宅の機能設計を考えるうえで前提となる制度動向です。

この記事の要点

  • 新たな地域医療構想は2040年を見据えた提供体制の再設計で、2026年度に都道府県が策定し2027年度から運用が始まる。
  • 病院には「医療機関機能」の4区分の報告が求められ、地域のなかでの役割が明確になる。
  • 病床区分の見直しで「包括期」が新設される。診療所にとっては在宅・外来へのシフトとして開業判断に効いてくる。

新たな地域医療構想とは——2040年を見据えた提供体制の再設計

現行の地域医療構想は、2025年(令和7年)を目標年として病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)の分化・連携を進めてきた枠組みです。これに対し「新たな地域医療構想」は、高齢者人口がピークに近づく2040年頃を見据え、病床だけでなく外来医療・在宅医療・介護との連携、人材確保まで含めた医療提供体制全体を対象とします。

制度の根拠は、2025年(令和7年)に成立した改正医療法です。厚生労働省の検討会は令和8年(2026年)3月に「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」を示し、これを踏まえて医政局が策定ガイドラインを公表しました。スケジュールとしては、現行の地域医療構想の取組を2026年度も継続しつつ、新たな地域医療構想については2027年度から順次取組を開始し、各都道府県は2028年度までに新たな構想を策定することとされています(出典:厚生労働省)。開業を計画する側から見ると、2026〜2028年度が各地域で提供体制の姿が固まっていく集中的な検討期間にあたります。

「医療機関機能」の4区分と報告制度——病院の役割が明確になる

新たな地域医療構想の柱の一つが、「医療機関機能報告制度」の新設です。従来の病床機能報告(病棟単位で高度急性期などの機能を報告する仕組み)に加え、医療機関そのものが地域で担う役割を、次の4つの機能から選んで都道府県へ報告します。

区分は「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つです(大学病院本院については別途「医育及び広域診療機能」が設けられます)。遅くとも2028年度までに各医療機関が2040年に担う医療機関機能を決定し、以降は決定した機能と診療実績などを都道府県へ報告する仕組みとされています。制度設計では、「急性期拠点機能」と「高齢者救急・地域急性期機能」は同時に報告できないことが明確化され、地域内で役割を分け合う方向が示されています(出典:厚生労働省、GemMed)。

このうち「在宅医療等連携機能」は、在宅医療の提供や、在宅を支える連携の中心を担う役割として位置づけられます。在宅医療の需要が今後も増える見通しのなかで、在宅を軸にした診療所の役割が制度上も明確に扱われる点は、開業の機能設計を考えるうえで押さえておきたいポイントです。

病床区分の見直しと機能集約——「包括期」の新設と数値の目安

病床機能の区分にも見直しが入ります。現行の「回復期」を「包括期」に改め、高度急性期・急性期・包括期・慢性期の4区分に整理する方向が示されています。急性期の医療については集約化が進み、「急性期拠点機能」は人口20万〜30万人あたりに1カ所を確保する目安が示されています(出典:日経メディカル、全日本病院協会)。

病床の必要量については、2040年の必要量が合計106.9万床と試算されており、2025年度の病床機能報告の116.4万床から、15年間で約9.5万床減る見込みとされています(出典:GemMed)。全体として、急性期を担う病院を地域の拠点に集約し、高齢者救急や在宅・外来を地域で支える体制へと組み替えていく流れです。数値・施行時期はいずれも検討・策定の段階を含むため、地域ごとの具体像は今後の都道府県の議論で固まっていきます。

実務への示唆——これから開業する診療所が押さえるべき視点

第一に、立地選定の前提として、開業予定地が含まれる構想区域で「急性期拠点」がどこに集約されるのかを確認しておくと、周辺の患者の流れを見通しやすくなります。急性期病院が集約される地域では、軽症の外来や慢性疾患の継続管理、かかりつけ機能を地域の診療所が担う比重が高まることが想定されるため、外来の役割を具体的に描いておくことが役立ちます。

第二に、在宅医療を視野に入れる場合、「在宅医療等連携機能」を担う病院・診療所との連携関係が地域でどう構築されるかを把握しておくと、開業後の連携先の確保がスムーズになります。在宅を主軸にするのか、外来中心に据えて在宅は連携で補うのか、開業前の機能設計に直結する論点です。

第三に、既存の「外来医師過多区域」での開業手続き(不足医療機能への協力要請など)や、医療DX(オンライン資格確認・電子処方箋・電子カルテ情報共有)の準備とあわせて、地域医療構想の議論の進み具合を情報収集の対象に加えておくことが実務的です。都道府県の医療審議会・地域医療構想調整会議の資料は公開されるため、開業予定地の自治体の動きを早めに確認しておくとよいでしょう。

まとめ

新たな地域医療構想は、病床再編にとどまらず外来・在宅を含めた提供体制全体を2040年に向けて組み替える枠組みで、2027年度から順次動き出し、都道府県は2028年度までに構想を策定します。医療機関機能の4区分と報告制度により病院の役割分担が明確になり、急性期の集約と在宅・外来の地域分担が進みます。開業を検討する医師にとっては、立地と外来・在宅の機能設計を考えるうえで前提となる制度動向であり、開業予定地の地域単位の議論を早めに把握しておくことが、開業判断の精度を高めることにつながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 「新たな地域医療構想」は従来の地域医療構想と何が違いますか?

従来の構想は2025年を目標に病床機能の分化を進めるものでしたが、新たな構想は2040年を見据え、病床だけでなく外来・在宅医療・介護連携を含めた医療提供体制全体を対象に再設計するものです。

Q. 「医療機関機能」の4区分とは何ですか?

医療機関が地域で担う役割を報告する新しい仕組みで、急性期拠点機能・高齢者救急・地域急性期機能・在宅医療等連携機能・専門等機能の4つ(大学病院本院は別途「医育及び広域診療機能」)から選んで都道府県に報告します。

Q. 病床区分はどう変わりますか?

現行の「回復期」が「包括期」に改められ、高度急性期・急性期・包括期・慢性期の4区分に整理される方向が示されています。2040年の必要病床数は合計106.9万床で、2025年度の116.4万床から約9.5万床減る見込みです。

Q. いつから制度が動き始めますか?

都道府県が2026年度に構想を策定し、2027年度から運用が始まる予定です。都道府県は2028年度までに策定を完了することが目安とされています。

Q. 開業を考える診療所は何を確認すべきですか?

開業予定地の都道府県での構想策定状況、想定診療圏の在宅・外来需要の見通し、連携先となる病院の機能区分届出の動向、外来医師過多区域の指定状況と合わせた開業時期の検討が挙げられます。

今すべきこと(チェックリスト)

  • 開業予定地の都道府県で構想の策定状況を確認する
  • 想定する診療圏の在宅・外来の需要見通しを押さえる
  • 連携先となる病院の機能区分の届出動向を確認する
  • 外来医師過多区域の指定と併せて開業時期を検討する

出典

  • 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」(令和8年3月19日、地域医療構想及び医療計画等に関する検討会):https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001676424.pdf
  • 厚生労働省 医政局「地域医療構想策定ガイドライン」:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001718620.pdf
  • 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」(令和6年12月18日):https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001357306.pdf
  • GemMed「2028年度までに、全病院が『急性期拠点、高齢者救急等のどの機能を果たすか』を決定・明確化」:https://gemmed.ghc-j.com/?p=73082
  • 日経メディカル「高齢者救急や在宅医療など地域ごとの医療機関機能4区分を提示」:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202411/586560.html

本記事は公表済みの制度情報を解説するものであり、記載の数値・区分・施行時期は今後の検討や都道府県の議論により変更される場合があります。個別の開業判断・医業経営・医療上の判断にあたっては、最新の一次情報を確認のうえ、税理士・社会保険労務士・行政書士・金融機関などの専門家にご相談ください。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の開業判断を保証するものではありません。実際の開業地や診療機能の検討にあたっては、都道府県の担当窓口や開業支援の専門家に必ずご確認ください。数値・制度は2026年8月時点の情報に基づきます。

執筆者

鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身

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