
厚生労働省のリーフレットによると、民間企業の障害者の法定雇用率は令和8年7月から2.7%に引き上げられ、雇用義務の対象となる事業主の範囲も常用労働者37.5人以上に広がりました。看護師・医療事務・パートを含めて職員が40人前後になる医療法人やクリニックグループでは、これまで40人未満で対象外だった法人が新たに対象になる可能性があります。この記事では、厚生労働省と独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の資料で確認できた率、雇用義務数の計算、短時間職員の数え方、納付金、報告の流れを整理します(2026年10月時点)。
障害者雇用率制度は、事業主に対して、常時雇用している労働者に障害者雇用率を掛けた数以上の障害者を雇うことを義務づける制度です(JEED)。厚生労働省の労働局のページも、すべての事業主に法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があると案内しています。ただし、民間企業で実際に義務の対象となるのは、常用雇用労働者数が一定以上の事業主です。診療所や医療法人も、雇用する職員の数がこの基準に達すれば対象になります。
民間企業の法定雇用率と対象事業主の範囲は、厚生労働省のリーフレットで次のとおり示されています。
| 時期 | 民間企業の法定雇用率 | 対象事業主の範囲 |
|---|---|---|
| 令和5年度 | 2.3% | 43.5人以上 |
| 令和6年4月 | 2.5% | 40.0人以上 |
| 令和8年7月 | 2.7% | 37.5人以上 |
同じリーフレットによると、国・地方公共団体等は令和8年7月1日から3.0%、都道府県等の教育委員会は2.9%に引き上げられます。民間のクリニックや医療法人が見るのは、表の2.7%です。令和6年4月から令和8年6月までは40人以上が対象でしたので、職員が37.5人以上40人未満の法人は、令和8年7月から新たに対象になった可能性があります。
雇用義務数は「常時雇用労働者数×法定雇用率」で計算し、小数点以下は切り捨てます。JEEDは、120人の事業主なら「120人×2.7%=3.24人」で、小数点以下を切り捨てて3人になる例を示しています。まず、職員を週の所定労働時間で次のように分けて数えます。
クリニックの例で試算します。週30時間以上の職員が30人、週20時間以上30時間未満のパート職員が15人いる場合、30人+15人×0.5=37.5人です。37.5人は対象事業主の範囲(37.5人以上)にちょうど当たり、37.5人×2.7%=1.0125人の小数点以下を切り捨てて、雇用義務数は1人になります。これは本記事の試算であり、実際の算定は事業主ごとの雇用状況報告で行われます。
役員や院長の扱い、複数のクリニックを運営する法人での合算など、細かな数え方は、参照した資料では確認できませんでした。自院の人数がどちらの側に近いかを判断する前に、管轄のハローワークで算定方法を確認してください。
雇用している障害者の人数も、障害の種類と週の所定労働時間で数え方が変わります。JEEDの資料では、次のとおり整理されています。
| 区分 | 週30時間以上 | 週20時間以上30時間未満 |
|---|---|---|
| 身体障害者(重度以外) | 1人 | 0.5人 |
| 身体障害者(重度) | 2人 | 1人 |
| 知的障害者(重度以外) | 1人 | 0.5人 |
| 知的障害者(重度) | 2人 | 1人 |
| 精神障害者 | 1人 | 1人(当面の間の特例) |
この表は雇用している障害者の数え方で、前の節の「労働者数」の数え方とは別の計算です。労働者数は短時間職員を0.5人、特定短時間労働者を含めない形で数え、障害者の人数は上の表で数えます。
障害者雇用納付金制度は、常用労働者の総数が100人を超える事業主のうち、法定雇用率を達成していない事業主が納付金を納める仕組みです。納付金は、法定雇用障害者数に不足する人数1人につき月額5万円です(JEED)。対象になるのは、前年度に常用雇用労働者の総数が100人を超える月が5か月以上ある事業主です(JEEDの令和8年度版ご案内)。
| 区分 | 対象 | 金額(1人あたり月額) |
|---|---|---|
| 納付金 | 常用労働者が100人を超え、雇用率を達成していない事業主 | 不足1人につき5万円 |
| 障害者雇用調整金 | 常用労働者が100人を超え、法定雇用率を超えて雇用している事業主 | 2万9,000円(年120人月を超える分は2万3,000円) |
| 報奨金 | 常用労働者が100人以下で、年度の障害者数が一定数を超える事業主(申請制) | 2万1,000円(年420人月を超える分は1万6,000円) |
令和8年度分の納付金は、令和8年6月以前は2.5%、7月以降は2.7%で算定し、申告期間は令和9年4月1日から5月17日までです(厚生労働省のリーフレット)。仮に常用労働者が120人で雇用障害者が0人、雇用義務数が3人の状態が1年間続くと、不足3人×月5万円×12か月で、納付金は年間180万円になる計算です。これは本記事の試算で、実際の額はJEEDへの申告で確定します。
常用労働者が100人以下の事業主は、納付金の対象ではありません。ただし、雇用率の義務と、6月1日時点の報告は、対象事業主に引き続き関わります。報奨金は申請制で、障害者手帳の写しなどの添付書類が必要です。
除外率は、障害者の就業が一般に困難とされる業種について、雇用義務数の計算で労働者数から除外率に相当する人数を差し引く仕組みです。法の本則では廃止され、当面の間、段階的に縮小されています。引下げは平成16年4月、平成22年7月、令和7年4月に、いずれも10ポイントずつ実施されました。厚生労働省の資料では、令和7年4月以降、「医療業」の除外率は20%とされています。
ただし、この「医療業」にクリニック(診療所)がどのように当たるのか、自院の算定でどう使うのかは、参照した資料では確認できませんでした。除外率を前提に人数を数えず、まず除外率なしの数字を出したうえで、管轄のハローワークやJEED都道府県支部で確認してください。なお、調整金・報奨金の算定では除外率は適用されません(JEED)。
対象の事業主は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告します(JEED)。あわせて、障害者の雇用の促進と継続を図るため、障害者雇用推進者を選任するよう努めることとされています。厚生労働省の障害者雇用促進法の概要資料には、障害者に対する差別の禁止と、合理的配慮の提供義務も項目として挙げられています。採用や職場づくりでは、雇用率の数字だけでなく、こうした義務への対応も必要です。
支援策も用意されています。厚生労働省のリーフレットによると、障害者雇用相談援助事業は雇入れや雇用継続の相談援助を原則無料で受けられます。職場適応援助者助成金は助成単価や支給上限額などが改善され、職場実習・見学の受入れに対する助成が新設されました。助成の対象や金額は更新されることがあるため、申請前に最新の案内を確認してください。
週30時間以上の職員が38人であれば、常用雇用労働者数は38人で、37.5人以上の基準を超えます。雇用義務数は38人×2.7%=1.026人の小数点以下を切り捨てて、1人です。短時間職員が多い場合は、1人でなく0.5人として数えるため、合計で37.5人に届くかを確認してください。
週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者は、雇用義務数を計算するときの労働者数に含めません(JEED)。一方で、その職員が重度の身体障害者・重度の知的障害者・精神障害者の場合は、令和6年度から0.5人として雇用障害者数に算定できます。
常用労働者の総数が100人を超え、法定雇用率を達成していない事業主です。複数の拠点を持つ医療法人などで職員数が100人を超える場合は、雇用障害者数と雇用義務数を一度、試算しておくと安心です。100人以下の事業主は、納付金の対象ではありません。
週20時間以上30時間未満で働く精神障害者は、当面の間、1人として数えます(JEED)。これは令和5年4月1日からの特例延長に基づく扱いで、今後の取扱いは、厚生労働省やJEEDの案内で確認してください。
管轄のハローワークが基本の窓口です。厚生労働省のリーフレットによると、障害者雇用相談援助事業で、雇入れや雇用継続に関する相談を原則無料で受けられます。納付金や申告の相談は、JEEDの都道府県支部が窓口です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事業主の雇用義務数、納付金の額、報告の要否を保証するものではありません。実際の算定や申告にあたっては、管轄のハローワーク、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の都道府県支部、および社会保険労務士等の専門家に必ずご確認ください。数値・制度は2026年10月時点の情報に基づきます。
公開日:2026年10月19日/最終更新日:2026年10月19日
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身