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インフルエンザ早期流行への対応(クリニック開業ラボ)
経営・集患 公開 執筆 鎌形 博展

早すぎるインフルエンザ流行、クリニックは何を確認する?第38週8.48人から見る受付・治療・ワクチンの実務【2026年版】

厚生労働省が2026年9月29日に公表した第38週(9月14〜20日)のインフルエンザ発生状況では、全国の定点当たり報告数が8.48人となり、前週の5.54人からさらに増えました。前年の同じ週(0.80人)の約10倍で、注意報レベルの10.00を超えた都道府県は沖縄・東京・愛知など9都県に上ります。例年の流行シーズンは12月〜3月とされるため、外来の準備は前倒しが必要です。本記事では、公表された数字の読み方と、受付・治療・ワクチン・証明書の場面で確認しておく点を、厚労省の資料に沿って整理します。

この記事の要点

  • 第38週の全国定点当たり報告数は8.48人で、前年同週の約10倍です。注意報レベル(10.00)を超えたのは、沖縄・東京・愛知・神奈川・千葉・埼玉・茨城・富山・新潟の9都県でした。
  • 定点当たり報告数は、全患者の数ではありません。インフルエンザは5類感染症の定点把握で、報告するのは全国約3,000カ所の急性呼吸器感染症定点などです。地域の勢いを読む指標として使います。
  • 治療・接種・証明書の扱いは、厚労省Q&Aが目安を示しています。抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内、定期接種は65歳以上などが対象で、接種は12月中旬までが望ましく、治癒証明書・陰性証明書は不要とされています。

今シーズンのインフルエンザは、どれだけ早く広がっている?

厚労省の週次発表では、第37週(9月7〜13日)の全国定点当たり報告数は5.54人で、前週(第36週)の3.29人から増えていました。第38週は8.48人です。前年の同じ週と並べると、勢いの違いがはっきりします。

対象週全国の定点当たり報告数前年同週の定点当たり報告数全国の報告総数
第37週(9月7〜13日)5.54人0.72人20,697人
第38週(9月14〜20日)8.48人0.80人31,428人(前年同週は3,073人)

都道府県別では、第38週は沖縄県が26.27人で最も高く、東京都が15.21人、愛知県が15.12人と続きます。学校では、休校19、学年閉鎖171、学級閉鎖870が報告されました。次回の発表は10月2日(第39週分)と資料に記されています。自院のある地域の数字は、都道府県や保健所が公表する週報でも確認してください。

倍率にすると、定点当たり報告数は第38週の8.48人が前年同週0.80人の約10.6倍、全国の報告総数は31,428人が3,073人の約10.2倍です。第37週も5.54人が前年同週0.72人の約7.7倍でした。1週間で倍率がさらに開いており、流行が落ち着く前に拡大している段階と読めます。1週だけの数字で判断せず、複数週の推移で見ることが大切です。

「定点当たり報告数」は、自院の患者数とどう違う?

インフルエンザ(鳥インフルエンザと新型インフルエンザ等感染症を除く)は、5類感染症の定点把握の対象です。厚労省の説明では、全ての患者を報告する制度ではなく、特定の医療機関だけが届け出ます。届出機関は、急性呼吸器感染症定点医療機関(全国約3,000カ所の内科・小児科)と、基幹定点医療機関(全国約500カ所、病床数300以上の内科・外科)です。報告は週単位(月〜日)で行われます。

つまり、公表される「定点当たり報告数」は、これらの定点1カ所あたりの報告数を全国や都道府県で平均した指標です。地域の流行の勢いを読むには役立ちますが、自院の来院数を保証する数字ではありません。自院が定点に指定されているかどうかは、保健所が把握しています。分からなければ保健所に確認してください。

実務では、公表値と自院の数字を並べて見ると判断しやすくなります。たとえば、自院の直近の発熱患者数と迅速検査の陽性数を毎日記録し、週報の推移と見比べます。自院の数字が公表値より先に動くこともあるため、院内の記録が早期の判断材料になります。

早い流行は、外来の運営に2つの形で響きます。1つは、ワクチンの接種時期と流行の開始が重なり、接種を待つ間に感染する患者が出ることです。もう1つは、発熱患者の受診が集中する時期が長くなり、職員の負担と欠員のリスクが続くことです。例年の準備スケジュールを、今シーズンは数週間前倒しで組み直す必要があります。

インフルエンザの症状と感染経路は、どう整理されている?

厚労省のインフルエンザ総合ページは、インフルエンザをA型・B型・C型・D型のウイルスによる感染症とし、そのうちA型とB型が主なものだとしています。典型的な症状は、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛などで、急に始まるのが特徴とされています。感染経路は、咳やくしゃみのしぶき(飛沫)を吸い込むことと、ウイルスのついた物の表面に触れることです。

受付や待合の対応は、この2つの経路を前提に考えます。飛沫に対しては、患者と職員のマスク着用や、待合の間隔・換気が要点になります。接触に対しては、受付カウンターや診察室のドアノブ、検査器具のトレーなど、多くの人が触れる場所の清拭が要点になります。具体的な消毒方法は、院内の感染対策マニュアルと、所轄の保健所の指導に沿って決めてください。

発症前日から感染性があると、待合と動線はどう変わる?

厚労省のインフルエンザ総合ページは、ウイルスの排出期間を「発症前日から発症後3〜7日間」としています。症状が出る前日から周囲にうつしうるため、症状のある人だけを離す運用では取りこぼしが出るおそれがあります。総合ページは予防策として、手洗い、湿度の維持、人混みを避けること、換気、ワクチン接種などを挙げています。

外来では、次の場面ごとに、自院の運用を点検しておくと流行期に慌てません。

見直す場面確認すること
受付・問診発熱や咳のある患者を、来院前に把握できる仕組みがあるか(電話・Web予約時の問診など)
待合発熱のある患者と、予防接種や健診で来院する患者の時間帯・動線を分けられるか
診察・検査検査を行う場所と、検査後の換気・清掃の手順が決まっているか
スタッフ職員の体調不良時の出勤ルールと、欠員が出たときの代替要員が決まっているか

検査についても、厚労省Q&Aの範囲では、復帰時に陰性を確認して証明する運用は求められていません。検査を行うタイミングや結果の説明は、診察した医師の判断で行います。院内で検査の運用を決めるときは、この点を前提にしてください。

抗インフルエンザ薬の「48時間」は、予約枠の運営にどう関わる?

厚労省のQ&Aは、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に始めることが重要だとしています。この時期に服用すると発熱期間は通常1〜2日短縮されますが、48時間以降では十分な効果は期待できないとされています。患者が「明日の予約で受診すればよい」と待つほど、治療の機会は減ります。

流行期は当日の受診希望が集中します。当日枠を確保しておく、電話やWeb問診で発症時刻を聞き取って受診の優先度を判断する、オンライン診療を併用する、といった運営が考えられます。ただし、薬を処方するかどうかは診察した医師が個別に判断します。予約の運営はあくまで、患者が48時間以内に受診しやすくする仕組みづくりです。

インフルエンザワクチンの定期接種は、誰が対象で、いつまでに終えればよい?

厚労省のQ&Aによると、定期接種の対象は次の方です。

  • 65歳以上の方
  • 60〜64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方
  • 60〜64歳で、HIV感染による免疫機能の障害がある方

これに当たらない方は、定期接種の対象として案内されていません。同じQ&Aは、12月中旬までに接種を終えることが望ましいとしています。今シーズンは流行が早いため、接種の予約受付やワクチンの在庫確認も前倒しで進めるのが現実的です。実施期間や自己負担の扱いは、所在地の市区町村の案内で確認してください。

接種の予約が集中する時期は、定期接種の対象の方を優先して受け付ける、接種と一般外来の時間帯を分ける、といった工夫も考えられます。対象の方には早めに案内を出しておくと、直前の混雑を減らせます。

治癒証明書・陰性証明書を求められたら、どう答える?

厚労省のQ&Aは、児童生徒や従業員が学校や職場に復帰する際に提出する治癒証明書や陰性証明書は不要としています。陰性であることを証明するのが難しいためです。窓口で保護者や勤務先から求められる場面が増えるため、院内の答え方をそろえておくと対応がぶれません。

出席停止や欠勤の扱いは、学校や勤務先がそれぞれ決めます。診療所としては、患者や保護者に「証明書は厚労省が不要としている」ことを伝えたうえで、学校や勤務先に確認するよう案内するのが基本です。あわせて、受付から診察室、会計までの流れの中で、誰がどの段階で説明するのかを決めておくと、患者ごとに説明が異なる事態を避けられます。院内掲示やWebサイトのお知らせに一文を載せておく方法もあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 定点当たり報告数が10.00を超えたら、クリニックに新たな届出が必要ですか?

厚労省の資料は流行状況の公表であり、医療機関に別の届出を求める内容ではありません。届出が必要かどうかは、自院が定点医療機関に指定されているかで決まります。指定の有無は保健所に確認してください。

Q. 自院が定点医療機関かどうかは、どこで分かりますか?

定点は保健所が指定します。厚労省の説明では、急性呼吸器感染症定点は全国約3,000カ所の内科・小児科です。指定の有無は、管轄の保健所に問い合わせて確認します。

Q. 抗インフルエンザ薬は、発症からどのくらいで始めるのがよいですか?

厚労省のQ&Aは、発症から48時間以内に始めることが重要だとしています。48時間以降では十分な効果は期待できないとされています。処方の判断は、診察した医師が個別に行います。

Q. 65歳未満のスタッフや患者は、定期接種を受けられますか?

定期接種の対象は、65歳以上と、60〜64歳の一定の障害のある方です。これに当たらない方は、定期接種の対象として案内されていません。対象外の方の接種の扱いは、市区町村の案内で確認してください。

Q. 学校や勤務先から陰性証明書を求められたら、発行すべきですか?

厚労省のQ&Aは、復帰時に提出する治癒証明書や陰性証明書は不要としています。陰性を証明することが難しいためです。患者や保護者には、その旨を伝えて対応をそろえます。

今すべきこと(チェックリスト)

  • 自院の数字を毎日記録する。発熱患者数と迅速検査の陽性数を、週報の推移と並べて見る。
  • 在庫と発注の所要日数を確認する。迅速検査キット、抗インフルエンザ薬、ワクチンについて、卸やベンダーに確認する。
  • 来院前の問診方法を決める。電話やWeb予約で、発熱・咳・発症時刻を聞き取る。
  • 待合と動線を見直す。発熱患者と、接種・健診の患者の時間帯や動線を分ける。
  • 職員の出勤ルールと代替要員を決める。体調不良時の扱いと、欠員が出たときのシフトを決めておく。
  • 証明書の請求への答え方をそろえる。治癒証明書・陰性証明書は不要とされていることを、受付でも共有する。

関連コラム

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診療方針や院内の感染対策の適否を保証するものではありません。実際の診療・感染対策・届出の要否にあたっては、管轄の保健所および医師会等にご確認ください。数値・制度は2026年9月時点の情報に基づきます。

公開日:2026年9月30日/最終更新日:2026年9月30日

執筆者

鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身

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