
厚生労働省は令和8年(2026年)9月25日、医療情報ネット(ナビイ)で「かかりつけ医機能」を検索条件に医療機関を探せるようにしたと公表しました。掲載の元になっているのは、令和7年4月に始まった「かかりつけ医機能報告制度」で各医療機関が届けた内容です。厚労省の資料では、令和8年8月17日時点の報告率は80.9%(対象114,437機関のうち92,545機関)でした。自院の報告内容が患者の目に触れる形になった今、何を報告し、何を院内に掲示するのかを整理します。
この制度は、令和5年5月に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」による医療法の改正を受け、令和7年4月に施行されました。厚労省は目的を、地域で必要とされるかかりつけ医機能の充実・強化を図ることと、国民の医療機関選びに役立つ情報を提供することだと説明しています。
対象は、特定機能病院と歯科医療機関を除く全ての病院・診療所です。診療所の院長が押さえておくべきことは、次の3つです。
| 医療機関がすること | 内容 |
|---|---|
| ① 報告 | 毎年1〜3月に、原則として医療機関等情報支援システム(G-MIS)で都道府県へ報告する |
| ② 院内掲示 | 1号機能を有する医療機関として報告する場合、報告したかかりつけ医機能の一定の内容を院内に掲示する |
| ③ 患者への説明 | おおむね4か月以上継続して医療を提供する見込みで、患者・家族から求めがあったときに、治療計画等を説明する |
都道府県は報告内容を確認し、地域の協議の場で、かかりつけ医機能を確保するための具体的な方策を検討します。個々のクリニックにとっては、報告が地域の医療提供体制の議論の材料にもなる、という位置づけです。
厚労省は令和8年9月25日、かかりつけ医機能に関する情報をナビイで提供すると公表しました。ナビイのトップページに「かかりつけ医機能」のボタンが設けられ、押すと検索条件の設定ページに移ります。患者や家族は、かかりつけ医機能に関する項目を条件に医療機関を探せます。
掲載されているのは、制度の施行後に初めて行われた令和7年度の報告の内容です。厚労省の資料によると、医療機関からの報告に基づいて随時更新されます。
| 項目 | 数値(令和8年8月17日時点) |
|---|---|
| 対象機関数 | 114,437機関 |
| 報告機関数 | 92,545機関 |
| 報告率 | 80.9% |
| 未報告の機関数(差し引き) | 21,892機関 |
対象機関数は、G-MISのアカウントが発行済みの医療機関から、歯科診療所と特定機能病院を除いた数です。表の「未報告」は、対象機関数から報告機関数を引いた当サイトの算出で、厚労省が公表した数値ではありません。発表資料には、報告が未了の医療機関の扱いや、掲載内容の更新時期の具体的な記載はありません。
厚労省は、国民に対して、地域でかかりつけとなる医療機関を探す際にナビイを活用するよう呼びかけています。「かかりつけ」を条件に近隣のクリニックを比べる入口が、公的なサイトに用意されたことになります。自院がどう載っているかは、医療情報ネット(ナビイ)で一度確認しておく価値があります。
1号機能は「日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」です。厚労省のマニュアルは、このうち「具体的な機能」を、継続的な医療を要する患者に対して、発生頻度の高い疾患の診療を行い、日常の診療で患者の生活背景を把握して適切な診療・保健指導を行い、必要な場合には地域の医師・医療機関と協力して解決策を提供する機能と定義しています。
全ての診療領域に対応する必要はなく、いずれか1つの領域で一次診療ができれば要件を満たします。疾患を選ぶ画面で括弧内に示される症状や疾患は代表的な例で、その疾患に限定されるものではないとされています。
研修修了者は、かかりつけ医機能に関係すると考える任意の研修を修了した人が該当します。マニュアルには、日本医師会の生涯教育制度や日医かかりつけ医機能研修などが選択肢として挙げられています。このほか、健診、予防接種、地域活動、教育活動も報告の対象です。
2号機能は、通常の診療時間外の診療、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護サービス等と連携した医療提供の4項目です。各項目について「実施している」または「実績がある」ことで、その機能を有すると判定されます。
| 項目 | マニュアルが示す判定の例 |
|---|---|
| 時間外の診療 | 在宅当番医制への参加、休日夜間急患センターへの医師派遣、平日の準夜帯・深夜帯や休日の診療・電話対応のいずれかがあれば「有り」 |
| 入退院時の支援 | 入退院時の支援の状況を報告する(判定の細目は本記事では扱いません) |
| 在宅医療の提供 | 訪問診療の実施、患者への連絡体制、往診体制、訪問看護体制の確保状況に応じて判定する |
| 介護サービス等との連携 | 主治医意見書の作成、介護支援専門員との相談、地域ケア会議への参加などのいずれかがあれば「有り」 |
判定の細目は項目ごとに違います。報告の前に、G-MISの入力画面とマニュアルで、自院の実績をどう拾うかを確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報告時期 | 毎年1〜3月。初回は令和8年1〜3月 |
| 報告基準日 | 原則として毎年1月1日時点 |
| 実績の対象期間 | 前年1月1日〜12月31日(診療報酬は前年度の4月〜3月分) |
| 報告方法 | 原則としてG-MIS |
| 内容の変更 | 随時の変更報告が可能(マニュアルの記載) |
| 新規開設 | 報告期間中に新規開設した医療機関は、次年度から報告の対象 |
G-MISのアカウントがない医療機関は、新規の申請が必要です。申請方法は都道府県の案内で確認します。
1号機能を有する医療機関として報告する場合は、報告したかかりつけ医機能の一定の内容を院内に掲示する必要があります。G-MISから掲示用の様式を出力できます。
おおむね4か月以上継続して医療を提供する見込みの患者について、患者・家族から求めがあったときは、治療計画等の説明が求められます。厚労省のホームページに患者説明の様式例が掲載されています。
マニュアルには、報告期間中に新規開設された医療機関は次年度から報告対象になるとあります。開業の年は報告が免除されるように読めますが、翌年からは1〜3月の報告が毎年の業務に加わります。開業準備の段階で、G-MISのアカウント取得と、時間外・在宅・介護連携の体制をどこまで整えるかを決めておくと、初回の報告で慌てません。
承継で開業する場合に、報告の主体や既存のアカウントをどう引き継ぐのかは、今回確認した資料からは分からなかったため、本記事では扱いません。承継の時期が報告期間に重なるときは、都道府県の担当窓口に確認してください。
資金面では、福祉医療機構(WAM)の融資で、かかりつけ医機能を有する診療所として開設する計画が新築資金の対象になり得ると案内されています。詳しくは『クリニック開業の資金調達2026|公庫とWAMの融資条件を比較』で整理しています。
ナビイの情報は、医療機関自身が報告した内容がそのまま元になります。実態より少なく報告すれば、本来対応できる診療が患者に伝わりません。逆に、実績のない時間外対応や在宅医療を「有り」と報告すれば、来院した患者との間に食い違いが生まれます。報告の根拠は、1月1日時点の体制と前年の実績という形で説明できるようにしておくのが基本です。
また、院内掲示と報告内容がずれていないかも点検のポイントです。患者はナビイで事前に調べ、来院して掲示を見ます。報告・掲示・実際の診療体制の3つを同じ内容にそろえることが、患者から見た分かりやすさにつながります。なお、報告内容を診療報酬の算定や紹介の増減に結び付ける記述は、今回確認した厚労省の資料にはありません。
厚労省は報告内容の変更を随時受け付けるとしています。体制を変えたときや、報告後に誤りに気づいたときは、次の年度の報告を待たずに、G-MISで内容を直しておきましょう。
訪問看護師が患者宅に同席するオンライン診療(D to P with N)の算定については、看護師同席のオンライン診療は何が算定できる?訪問看護遠隔診療補助料265点と看護師等遠隔診療の確認点【2026年版】もあわせてご確認ください。
厚労省のリーフレットとマニュアルでは、報告しない場合の扱いや罰則に関する記載を確認できませんでした。毎年1〜3月に報告が求められる制度ですので、個別の取扱いは都道府県の担当窓口に確認してください。
いいえ。特定機能病院と歯科医療機関を除く、全ての病院・診療所が対象です。
全ての領域への対応は必須ではありません。17の診療領域のいずれかについて一次診療を行うことができれば、その要件を満たします。
1号機能を有する医療機関として報告する場合は、報告した内容の一定部分を院内に掲示する必要があります。G-MISから掲示用の様式を出力できます。
マニュアルでは、報告期間中に新規開設された医療機関は、次年度から報告の対象になるとされています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の報告の要否や内容の適否を保証するものではありません。実際の報告・院内掲示・患者説明にあたっては、管轄の都道府県の担当窓口および医師会等に必ずご確認ください。数値・制度は2026年10月時点の情報に基づきます。
公開日:2026年10月5日/最終更新日:2026年10月5日
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身