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感染症の発生届、診断したら何を・いつまでに?
経営・集患 公開 執筆 鎌形 博展

クリニックの感染症発生届、診断したら何を・いつまでに?全数把握と定点把握・オンライン届出の確認点【2026年版】

感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)は、対象の感染症を診断した医師に、保健所への届出を求めています。厚生労働省の「感染症法に基づく医師の届出のお願い」では、全数把握の対象疾患は「全ての医師」が診断時に届け出るとされており、診療所の院長も例外ではありません。届出の期限は、一類から四類までが診断後直ちに、五類の全数把握は原則として7日以内です。この記事では、厚生労働省と国立感染症研究所の資料から、診療所が診断したときに確認する点を整理します。

この記事の要点

  • 全数把握の対象疾患は、診療所を含む全ての医師が、診断時に管轄の保健所へ届け出ます。一類〜四類は診断後直ちに、五類は7日以内です。侵襲性髄膜炎菌感染症・風しん・麻しんは五類でも直ちに届け出ます。
  • インフルエンザのように患者数の多い疾患は、都道府県から定点に指定された医療機関だけが届け出ます。指定を受けていなければ、通常の診療で届出の義務は生じません。
  • 届出は感染症サーベイランスシステムへの入力が基本です。アカウントは保健所が発行し、数日かかります。届出基準を満たさない届出は、保健所から取下げを求められることがあります。

感染症法に基づく医師の届出とは?全数把握と定点把握の違い

感染症発生動向調査は、国内の感染症の発生状況を把握するための仕組みで、医師からの届出がその土台になります。厚生労働省のページと「感染症法に基づく医師の届出ハンドブック」では、届出を次の2つに分けています。

区分届け出る医師・医療機関対象の例届出の時期
全数把握(一類〜四類)全ての医師一類:エボラ出血熱、ペスト/二類:結核、ジフテリア/三類:コレラ、腸管出血性大腸菌感染症/四類:E型肝炎、ウエストナイル熱診断後直ちに
全数把握(五類の一部)全ての医師梅毒、麻しん、風しん、侵襲性髄膜炎菌感染症など原則7日以内(麻しん・風しん・侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに)
定点把握(五類)都道府県が指定した医療機関(指定届出機関)のみインフルエンザ、感染性胃腸炎など患者数の多い疾患週単位・月単位など、区分ごとに異なる

全数把握は、結核・麻しん・梅毒のように、周囲への感染拡大を防ぐ必要がある疾患や発生数が少ない疾患が対象です。一方、定点把握は患者数の多い疾患を、指定された医療機関の報告から推計する仕組みです。厚生労働省のページには、小児科定点が全国約2,000カ所、眼科定点が約700カ所、性感染症定点が約1,000カ所、疑似症定点が約700カ所と書かれています。

ハンドブックには、診療所と病院で届出義務が異なるという記述はありません。分かれ目は、診療所か病院かではなく、都道府県から定点に指定されているかどうかです。なお、感染症発生動向調査事業実施要綱には、法第14条第8項に基づき、指定届出機関以外の病院や診療所の医師に届出を求める場合があることも書かれています。保健所から届出を依頼されたときは、その指示に従います。

診療所はいつまでに届け出る?「直ちに」と「7日以内」の違い

国立感染症研究所のガイドライン(令和7年3月)では、期限を次のように整理しています。

  • 一類〜四類感染症:診断後直ちに届け出る
  • 五類感染症(全数把握):診断後7日以内に届け出る
  • 例外:五類のうち、侵襲性髄膜炎菌感染症・風しん・麻しんは、診断後直ちに届け出る

どの疾患がどちらに当たるかの一覧は、ハンドブックの本文には載っていません。ハンドブックは、疾患ごとの時期は厚生労働省ウェブサイトの届出基準で確認するよう案内しています。厚生労働省のページには、届出基準と実施要綱の一部改正が令和8年4月6日から施行されたと掲載されています。古い版の基準や様式を使い続けないよう、診療所に置いている資料の版を確認しておくと安心です。

届出基準を満たすかは、どう判断する?

届出は、感染症ごとに定められた届出基準を満たしたときに行います。厚生労働省の届出基準には、診断方法に関する共通の定義が置かれています。たとえば「発熱」は37.5℃以上、「高熱」は38.0℃以上です。病原体の「同定」には、生化学的性状や抗血清のほか、PCR法などの核酸増幅法が含まれます。抗体検査による診断は、ペア血清での陽転、ペア血清での4倍以上の抗体価上昇、急性期のIgM検出、単一血清でのIgG検出のいずれかとされています。

国立感染症研究所のガイドラインは、基準の確認で次の点に注意を促しています。

  • 検査方法や検体が、届出基準で指定されたものかを確認する(例:オウム病は、補体結合反応(CF法)だけでは届出基準を満たさない)
  • 症状がないだけでは、無症状病原体保有者の届出基準には当たらない
  • 類型は、患者(確定例)・無症状病原体保有者・疑似症患者のいずれかを選ぶ(死体を検案した場合は、感染症死亡者の死体などを選ぶ)

届出基準に定めのない検査で診断する場合や判断に迷う場合は、管轄の保健所に問い合わせます。届出基準では、地方衛生研究所や国立感染症研究所への確認も求めています。ハンドブックも、急性弛緩性麻痺や急性脳炎のように、微生物診断を伴わず判断に迷いやすい疾患は、保健所に相談するよう案内しています。

届出はどう行う?オンライン入力とFAXの違い

感染症発生動向調査事業実施要綱は、全数把握の届出について「感染症サーベイランスシステムへの入力により行うことを基本とする」としています。入力環境がない場合は、最寄りの保健所が定める方法で届け出てよいとされ、その場合は保健所が届出内容をシステムに入力します。国立感染症研究所のガイドラインによると、2022年10月から医療機関による直接入力が可能になっています。

方法準備流れ
オンライン入力自治体からアカウントを発行してもらう(管轄保健所で発行。発行には数日かかる)ログインして届出疾患を選び、診療情報などをもとに医師が登録する
FAX・文書様式を厚生労働省または自治体のウェブサイトから入手する(PCで作成して印刷しても、手書きでもよい)管轄保健所にFAXで送り、送った文書を保管する

ハンドブックによると、オンライン届出は感染症法上は努力義務で、一部の医療機関では義務とされています。厚生労働省のページには、全数把握の届出様式は都道府県によって異なる場合があるため、最寄りの保健所に確認するよう書かれています。アカウントの発行に数日かかるため、診断してから慌てないよう、あらかじめ管轄の保健所に発行を相談しておくと動きやすくなります。

届出のあと、診療所は何をする?

ハンドブックは、届出後の実務として次の点を挙げています。

  • 診療録に届出を行ったことを記載するか、届出内容のコピーを保管し、重複届出を防ぐ
  • 氏名等を届け出る場合は、保健所から患者に連絡が行く可能性があることを、あらかじめ患者に伝える
  • 様式の項目が記入できないときは、空欄にせず「不明」「不詳」などと記載する
  • 保健所から内容確認や調査のために連絡が来る場合がある

実施要綱とガイドラインによると、保健所は届出内容を確認し、不備があれば医療機関に照会します。通常は報告されない疾患や集団発生、死亡例、院内感染の可能性がある場合などには、感染症法第15条に基づく調査として、保健所から問い合わせが入ることもあります。

届出で誤りやすい点は?国立感染症研究所のガイドラインから

保健所と地方感染症情報センターは、届出内容を「入力は正確か」「未記入や誤りがないか」「症状・検査結果・検体が届出基準を満たすか」「公衆衛生学上の知見と矛盾しないか」の4点で確認します。ガイドラインが挙げる、誤りやすい項目は次のとおりです。

  • 死亡年月日:届出後に患者の死亡が確認された場合も、入力することが望ましい
  • 感染経路:否定された経路は備考欄などに入力し、感染経路欄には書かない
  • 感染地域:国内・国外が不明のときは両方の「不明」を選び、国外を選ぶのは海外渡航歴がある場合のみ
  • 初診年月日:その感染症による初診日を入力し、ほかの疾患での初診日と区別する
  • 職業:「会社員」などにとどめず、可能な限り詳しい職種を入力する
  • 水痘(入院例):届出の対象は初感染のみ。腸チフスでは、ウィダール反応などの血清診断は届出の対象外

届出基準に合わないとして、保健所から取下げを依頼されることもあります。ガイドラインは、取下げは医師の診断を否定するものではないとしています。明らかに基準を満たさない症例は保健所から連絡が入るので、取下げを検討します。再感染の場合は、再度届出の対象になります。

届出を怠るとどうなる?

ハンドブックには、届出をしなかった場合には罰金が科される(感染症法第77条)と書かれています。具体的な金額は、本記事では一次資料を確認できていないため記載しません。ハンドブックは、迅速な届出がないとサーベイランス情報が不正確になり、対策が遅れて感染が拡大するおそれがあるとも述べています。届出の対象かどうか判断に迷うときは、自己判断で見送らず、先に管轄の保健所へ相談するのが確実です。

よくある質問(FAQ)

Q. 診療所でインフルエンザと診断したら、届出が必要?

インフルエンザは定点把握の疾患で、都道府県から定点に指定された医療機関だけが届け出ます(ハンドブック)。指定されていなければ、通常は届出の義務はありません。指定を受けているかどうかは、管轄の保健所または都道府県に確認します。

Q. 診断から届出までの期限は?

一類から四類までは診断後直ちに、五類の全数把握は診断後7日以内です。ただし、五類でも侵襲性髄膜炎菌感染症・風しん・麻しんは直ちに届け出ます(国立感染症研究所のガイドライン)。

Q. 届出はFAXでもよい?

実施要綱は、サーベイランスシステムへの入力を基本としつつ、入力環境がない場合は最寄りの保健所が定める方法でよいとしています。ハンドブックには、様式を管轄保健所にFAXで送り、文書を保管する方法が載っています。様式が都道府県で異なる場合があるため、使う様式は保健所に確認します。

Q. 患者さんに、届出をしたことを伝える必要はある?

ハンドブックは、氏名等を届け出る場合は、保健所から患者に連絡が行く可能性があることを事前に伝えるよう案内しています。診療録には、届出を行ったことも記載します。

Q. 届出基準を満たすか迷うときは?

管轄の保健所に問い合わせます。届出基準は、文書に定めのない検査で診断する場合などに、地方衛生研究所や国立感染症研究所への確認を求めています。基準に合わない届出は、保健所から取下げを依頼されることがあります。

今すべきこと(チェックリスト)

  • 診療所を管轄する保健所の連絡先と、届出様式(都道府県版)を確認して、院内の見える場所に置く
  • 感染症サーベイランスシステムのアカウントについて、保健所に発行を相談する
  • 厚生労働省の届出基準(令和8年4月6日施行版)を入手し、一類〜四類と五類の全数把握の疾患名と届出時期を、院内で共有する
  • 自院が定点(指定届出機関)に指定されているかを確認し、指定されている場合は届出の曜日・方法を担当者に割り振る
  • 届出をしたら、診療録に記載するか、届出内容のコピーを保管する
  • 基準に当たるか迷う症例は、自己判断で見送らず、保健所に相談する

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参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の症例について届出の要否や診断の適否を保証するものではありません。実際の届出にあたっては、管轄の保健所に必ずご確認ください。数値・制度は2026年10月時点の情報に基づきます。

公開日:2026年10月23日/最終更新日:2026年10月23日

執筆者

鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身

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