
マイナ保険証の利用率は2026年4月時点で全国68.15%に達し、医科診療所では7割を超えました(出典:厚生労働省保険局/第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月)。同時に、期限切れ保険証の暫定的な取扱いは2026年7月末で終了し、2026年度診療報酬改定では加算の施設基準にマイナ保険証利用率30%以上が組み込まれています。窓口の運用設計が、そのまま待ち時間と算定要件に跳ね返る段階に入りました。
全国のマイナ保険証利用率は2026年4月分で68.15%(前月比+0.94ポイント)です。施設類型別では歯科診療所71.52%、医科診療所71.16%、病院68.50%、薬局63.29%と、診療所のほうが病院より高い水準にあります(出典:厚生労働省保険局「マイナ保険証の円滑な利用について」第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月18日)。
利用登録の裾野も広がりました。加入者数に占めるマイナ保険証の利用登録割合は2026年4月末時点で全体75.8%、すべての保険制度で70%を超えています。
| 区分(2026年4月分) | マイナ保険証利用率 |
|---|---|
| 全国平均 | 68.15% |
| 医科診療所 | 71.16% |
| 歯科診療所 | 71.52% |
| 病院 | 68.50% |
| 薬局 | 63.29% |
都道府県別では富山県77.91%、宮崎県76.42%が上位、沖縄県55.31%、高知県59.05%が下位と、20ポイント超の開きがあります(同資料、2026年4月)。自院の数字が全国平均より低い場合、地域要因なのか窓口の声かけ運用の差なのかを切り分けることが、改善の第一歩になります。
有効期限を過ぎた健康保険証を患者が誤って持参した場合の暫定的な取扱いは、2026年7月末をもって終了しました。厚生労働省は保険者・医療機関を通じたリーフレット配布やSNSでの周知を行い、8月以降の受診に支障が出ないよう対応を進めるとしています(出典:厚生労働省保険局/第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月18日)。
窓口実務としては、8月以降に「古い保険証しか持っていない」患者が一定数現れる前提で、その場の案内文言をあらかじめ決めておくのが現実的です。詳細な受付フローは「期限切れ健康保険証」は8月1日から使用不可|クリニックの受付・保険請求フロー実務ポイントで整理しています。
受付の分岐を3パターンに単純化すると、スタッフ間のばらつきが減ります。
| 患者の持参物 | 窓口の対応 | 声かけの要点 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード(実物・スマホ) | 顔認証付きカードリーダーで資格確認。情報提供の同意取得まで案内 | 「薬や健診の情報を先生が見られるようになります」と便益を先に伝える |
| 資格確認書 | 券面情報で資格確認。次回以降のマイナ保険証利用を任意で案内 | 押し付けず、利用登録の方法だけ渡す |
| 期限切れの健康保険証のみ | 2026年8月以降は暫定的な取扱いが終了しているため、保険者への確認・資格確認書の取得を案内 | 「今日は一旦こうします」と当日の会計方針を先に明示する |
運用を回すうえで効きやすいのは、次の3点です。
令和8年度診療報酬改定では、医療DXに係る評価が改組され「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました(出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】」2026年3月10日版)。従来の医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、この加算に整理されています。
点数は次のとおりです。
| 区分 | 初診料への加算(月1回) | 再診料・外来診療料(月1回) |
|---|---|---|
| 電子的診療情報連携体制整備加算1 | 15点 | 2点 |
| 同 2 | 9点 | 2点 |
| 同 3 | 4点 | 2点 |
施設基準は共通要件(1)〜(7)と上乗せ要件(8)〜(10)で構成されます。共通要件には、オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認の体制、取得した診療情報を診察室等で閲覧・活用できる体制に加えて、マイナ保険証利用率30%以上、マイナポータルの情報に基づく健康相談に応じる体制、院内掲示とウェブサイト掲載が含まれます。
加算1は(1)〜(10)のすべて、加算2は(1)〜(7)に加えて(8)電子処方箋・(9)電子カルテ・(10)診療情報の共有のいずれか1つ、加算3は(1)〜(7)のみ、という積み上げ構造です(出典:厚生労働省 令和8年度診療報酬改定説明資料「電子的診療情報連携体制整備加算の新設」)。
利用率30%は、2026年4月の全国平均68.15%と比べれば余裕のある水準に見えます。ただし基準に届かない施設が消えたわけではなく、レセプトベース利用割合が10%未満の医科診療所は2026年4月時点で0.9%残っています(同 医療保険部会 資料3)。自院の実績値の確認は必須です。
電子処方箋の導入判断については電子処方箋の導入補助が2026年9月末まで延長|開業医が押さえる対象拡大と申請の実務ポイントもあわせてご確認ください。
現行の顔認証付きカードリーダーは保守期限が2026年3月末から順次到来しており、2026年度より第2世代機の販売が順次始まっています。発売時期はキヤノンマーケティングジャパンが2026年4月22日、パナソニック コネクトが2026年8月予定、リコージャパンが2026年10月予定です(出典:厚生労働省保険局/第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月18日)。
第2世代機は、本体のみでスマートフォンの読み取りに対応し、操作手順やエラーに関する音声案内機能、顔認証精度の向上によるエラー低減といった改善が図られています。
費用面では、令和7年度補正予算により導入費用の一部補助が実施され、申請受付は2026年6月末日より開始予定とされています。別売りテンキーの導入や資格確認端末の入れ替えも、カードリーダーと同時申請であれば補助対象に含まれます(同資料、2026年6月時点)。補助の要件・受付状況は変更されうるため、申請前に最新の公表内容を確認してください。
スマートフォンのマイナ保険証は、約12万の医療機関・薬局(125,047施設)で受付可能となっています。スマートフォンへのマイナンバーカード搭載件数は約800万件(2026年6月7日現在)、医療機関等での利用は累計500万件を超えました(出典:厚生労働省保険局/第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月18日)。
現行機のうち一部は外付けの汎用カードリーダーがないとスマートフォンの読み取りに対応できません。自院の機種が単体でスマホ対応しているかどうかを先に確認し、対応していなければ第2世代機への更新タイミングとあわせて検討するのが合理的です。2026年3月からは訪問診療・訪問看護で使うマイナ資格アプリでも読み取りが可能になっており、在宅を持つクリニックは運用範囲が広がっています。
電子カルテ側の選定は資格確認の運用と密接に絡みます。導入・更新を検討中の方は電子カルテの選び方2026|クラウド型比較と標準化・補助金で失敗しない判断基準も参考になります。
A. 診療報酬上の施設基準で用いられる利用率は、レセプト件数に対するマイナ保険証利用人数の割合です。厚生労働省が公表する全国・都道府県別の数値も同じ定義で算出されています(出典:厚生労働省保険局/第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月18日)。自院の実績値は、オンライン資格確認等システム上で確認できます。
A. 2026年7月末で暫定的な取扱いが終了しているため、8月以降はマイナ保険証または資格確認書の持参が前提です。当日の会計方針(保険者への確認結果を待つのか、いったん自費として後日精算するのか)をあらかじめ院内で決めておくと、窓口での混乱を避けやすくなります。個別の請求処理は保険者・審査支払機関の取扱いに従ってください。
A. 加算3は共通要件(1)〜(7)のみで算定でき、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応を前提としません。初診時4点・再診時2点と点数は小さいものの、要件の多くはオンライン資格確認を導入済みの施設であれば既に満たしていることが多く、届出のハードルは相対的に低い区分です。
A. 一律の買い替え義務が示されているわけではありません。ただし現行機は保守期限が2026年3月末から順次到来しており、スマートフォン単体読み取りへの対応可否も機種によって異なります。保守期限と補助制度の受付期間を照らして判断するのが実務的です。
A. マイナンバーカードを活用して救急業務を円滑化する取組で、2025年度の実証事業を経て2026年度から本格運用の段階にあります(出典:厚生労働省保険局/第212回社会保障審議会医療保険部会 資料3/2026年6月18日)。救急搬送時の情報連携に関わるもので、外来クリニックの直接の届出事項ではありませんが、地域の医療情報連携の方向性を示す動きです。
窓口オペレーションの設計、加算の届出区分の判断、機器更新と補助申請のスケジューリングは、いずれも院長が診療の合間に片手間で回すには負荷の高い業務です。株式会社ENでは、クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで支援しています。制度対応にかかる時間を診療に戻したい方は、お気軽にご相談ください(関連記事はクリニック開業ラボのコラム一覧から)。
本記事は制度・運用の一般的な解説であり、個別の診療報酬算定の可否、届出の要否、税務・法務上の取扱いについては、地方厚生(支)局、保険者、または医師・税理士等の専門家にご確認ください。記載の数値・期限は本文中に示した時点のものであり、今後変更される可能性があります。
公開日:2026年8月16日/最終更新日:2026年8月16日
鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の算定可否を保証するものではありません。実際の資格確認の運用や加算の届出にあたっては、管轄の地方厚生局に必ずご確認ください。数値・制度は2026年8月時点の情報に基づきます。