本記事について
特定の医療機関・施術所を推薦する記事ではありません。また、「あなたのその痛みは、こちらに行くべきです」という判断をする記事でもありません。 医師と柔道整復師にできることが法律上どう分かれていて、健康保険(療養費)がどこまで使えることになっているのかという、受診行動と制度の説明にとどめています。
どちらが優れているかを比べる記事でもありません。 制度が2つを別のものとして設計している、という事実を説明します。出典は柔道整復師法・医療法などの法令と、厚生労働省の通知・統計です(末尾に一覧・確認日を記載)。
はじめに
駅前を歩いていると、「整形外科」「整骨院」「接骨院」「整体」「カイロプラクティック」といった看板が、ときには同じ通りに並んで立っています。腰を痛めた、足首をひねった——そんなとき、どこへ行けばいいのか、そもそも何がどう違うのかが分からないという声を、診察室でもよく聞きます。
「整骨院でも保険証が使えたから、病院と同じようなものだと思っていた」「痛いと言ったら電気をあてて、湿布をもらった」「レントゲンを撮ってもらったつもりだった」——どれも実際に聞いた話です。窓口での体験が似ているために、制度上の違いが見えにくくなっています。
ところが法律の上では、この2つはまったく別の枠組みで動いています。資格が違い、できることが違い、健康保険が使える範囲も違います。ここを知らないまま通い続けると、あとで「全額自己負担です」と言われることもあります。
整形外科は医師が診断・投薬・手術・画像検査まで行う診療科、整骨院・接骨院は柔道整復師が施術を行う施術所で、医療機関ではありません。 健康保険(療養費)が使えるのは、整骨院・接骨院では外傷性が明らかな骨折・脱臼・打撲・捻挫(肉ばなれを含む)に限られ、骨折と脱臼は応急手当の場合を除いて医師の同意が必要です。「整体」「カイロプラクティック」にはそもそも国家資格の制度がなく、健康保険の対象にもなりません。
実際に探すときは
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何ができるかは、資格で決まっている
整形外科は、医師が診療を行う診療科です。日本整形外科学会は整形外科を、骨・関節などの骨格系とそれを取り巻く筋肉、それらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重要視して治療する外科と説明しています。捻挫・骨折・打撲といったけがから、骨粗鬆症や関節リウマチのような加齢にともなう病気、腫瘍や先天異常まで扱う範囲に含まれます。
医師については、医師法第17条が「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めています。診断を下すこと、薬を処方すること、手術をすることは、医師にしかできません。
一方の柔道整復師は、厚生労働大臣の免許を受けて柔道整復を業とする者と柔道整復師法第2条が定めています。同じ条文の第2項は、「施術所」とは柔道整復師が柔道整復の業務を行う場所だと定めています。整骨院・接骨院はこの「施術所」であって、医療法上の病院・診療所ではありません。
柔道整復師にできないことは、法律に明記されています。
- 柔道整復師法第16条——柔道整復師は、外科手術を行い、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない
- 柔道整復師法第17条——柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない
- 柔道整復師法第15条——医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行ってはならない(=柔道整復は柔道整復師の業務独占だが、医師はこれを行える)
つまり、薬を出すこと、手術をすること、骨折や脱臼の患部に(応急手当を超えて)施術をすることは、制度上はじめから柔道整復師の業務の外に置かれています。 整骨院・接骨院で湿布や痛み止めが「処方」されることはなく、市販薬の販売とも区別が必要です。
整骨院・接骨院でレントゲンを撮れないのは、なぜ?
診療放射線技師法第24条が、医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、放射線を人体に対して照射する業をしてはならないと定めているためです。柔道整復師はここに含まれません。
これは細かい法律論ではなく、使い分けの実際にいちばん効いてくる違いです。骨にひびが入っているかどうか、関節の中がどうなっているかは、外から触っただけでは分かりません。画像で確かめる必要があると考えたら、医療機関に行くしかないということになります。
名称についても医療法第3条第1項が、疾病の治療をなす場所であって病院・診療所でないものに、「病院」「診療所」「医院」その他病院又は診療所に紛らわしい名称を付けてはならないと定めています。看板の言葉づかいが違うのは、好みの問題ではありません。
「整体」「カイロプラクティック」は、また別の話
ここを混同している方がとても多いので、分けて書きます。
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)第1条に基づく国家資格です。同法第12条は、「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない」と定め、柔道整復については柔道整復師法の定めるところによる、としています。
これに対して「整体」「カイロプラクティック」「リラクゼーション」といった名称には、対応する国家資格の制度がありません。 厚生省(当時)の通知「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日医事第58号)は、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復以外の医業類似行為について、法の公布の際に届出をした者でなければ行えないものとしたうえで、届出をしていない者については、その施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象になるという整理を示しています。
同じ通知は、カイロプラクティック療法について踏み込んだ注意も書いています。
- 医学的効果についての科学的評価は未だ定まっていないという研究会の認識を示したうえで、
- 腫瘍性・出血性・感染性疾患、リウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等に加え、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものは、カイロプラクティック療法の対象とすることは適当ではない
- 頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、禁止する必要がある
- 長期間あるいは頻回の施術によっても症状が増悪する場合はもとより、腰痛等の症状が軽減、消失しない場合には、潜在的に器質的疾患を有している可能性があるので、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けること
最後の一文は、制度をつくった側が「良くならないなら医療機関へ」と明記しているという点で、読者が持ち帰るべき要点だと思います。
健康保険が使えるのは、どこまで?
ここがいちばん誤解されている部分です。厚生労働省は「柔道整復師の施術を受けられる方へ」というページで、一般の方向けにこう説明しています。
- 整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む。)の施術を受けた場合に保険の対象になります
- 骨折及び脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です
- 単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象になりません。このような症状で施術を受けた場合は、全額自己負担になります
厚生労働省の通知「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」は、支給対象となる負傷を外傷性が明らかな骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり内科的原因による疾患は含まれないとしています。あわせて「外傷性」とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものであり、いずれの負傷も損傷の状態が慢性に至っていないものであること、とも定めています。
言いかえると、「いつ、どこで、どうして痛めたか」が言えるけがかどうかが分かれ目になります。慢性の肩こり・腰の重だるさ・疲労は、制度の側からはじめから外されています。
医師の同意については、同じ通知が次のように定めています。
- 応急手当をする場合は同意が要らないが、応急手当後の施術は医師の同意が必要
- 同意は、患者を診察した上で書面又は口頭により与えられることを要する
- 同意を求める医師は、必ずしも整形外科、外科等を標榜する医師に限らない(かかりつけの内科医でもよい、ということです)
窓口で自己負担分だけ払えるのは、なぜ?
療養費は本来、患者がいったん全額を支払い、自分で保険者に請求して払い戻しを受ける「償還払い」が原則です。ただし柔道整復師の施術については例外として、患者が自己負担分だけを施術所に支払い、残りを柔道整復師が患者に代わって保険者に請求する「受領委任」という方法が認められています。
多くの整骨院・接骨院の窓口が病院や診療所と同じように見えるのは、この仕組みのためです。「窓口の支払いが同じだから、中身も同じ」ではありません。
受領委任では、柔道整復師が患者に代わって請求するため、支給申請書に患者本人が署名することになっています。ここで何のけがとして、何回分が請求されているのかを確かめずに署名すると、後から保険者の照会を受けたときに説明ができなくなります。
同じけがで両方にかかると、健康保険は使えない
厚生労働省のページは、保険医療機関(病院、診療所など)で同じ負傷等の治療中は、施術を受けても保険等の対象になりませんと明記しています。通知も、入院中の患者に対する施術は支給対象としない、柔道整復の治療を完了して単にあん摩(指圧及びマッサージを含む)のみを必要とする患者への施術は支給対象としない、としています。
「整形外科でリハビリを受けながら、帰りに整骨院にも寄る」という通い方は、健康保険の上では成り立たないということです。実際、当サイトが取材した府中市の整形外科のなかには、交通事故の診療について「当院以外の接骨院、整骨院、鍼灸等の代替治療を希望される方は診療を行わない」と方針を明示している院もあります(府中市の整形外科)。医療機関側がこうした方針を掲げる背景には、この制度上の整理があります。
看板やホームページに書けることも、法律で決まっている
整骨院・接骨院のウェブサイトを見て、「整形外科のサイトに比べて、書いてあることが少ない」と感じたことはないでしょうか。これは書けることが法律で限定されているためです。
柔道整復師法第24条第1項は、柔道整復の業務または施術所について広告できる事項を、次の4つに限定しています。
- 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
- 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
- 施術日又は施術時間
- その他厚生労働大臣が指定する事項
そして同条第2項は、広告の内容は、柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならないと定めています。「何が得意か」「どんな手技を使うか」「どこで修業したか」は、制度上そもそも広告できません。
「厚生労働大臣が指定する事項」は告示(平成11年厚生省告示第70号)で7つ定められています。
- ほねつぎ(又は接骨)
- 柔道整復師法第19条第1項前段の規定による届出をした旨
- 医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
- 予約に基づく施術の実施
- 休日又は夜間における施術の実施
- 出張による施術の実施
- 駐車設備に関する事項
3つ目に注目してください。「保険が使えます」と広告するなら、骨折・脱臼については医師の同意が必要だと併せて明示せよ、というのが告示の書きぶりです。制度の側も、ここが誤解されやすいと分かっているわけです。
なお、「届出をした旨」が広告できる事項に加わったのは平成28年の改正で、厚生労働省はその理由を、消費者が施術所を選ぶ際に、その施術所が法に基づく届出を行っているかどうかを見分けることは困難であると指摘されているためだと説明しています。
「整骨院」と「接骨院」で、資格や業務の範囲が変わるわけではありません。 どちらも柔道整復師が施術を行う施術所です。告示が広告できる文言として挙げているのは「ほねつぎ(又は接骨)」で、施術所そのものの名称は第24条第1項第2号により掲げられます。名前の違いから中身の違いを読み取ろうとしても、意味はありません。
医療機関側のサイトの読み方は、医療機関のホームページ、どこを見れば実態が分かる?にまとめています。
街で見かける数は、どれくらい違う?
数字で見ると、印象がはっきりします。
- 柔道整復の施術所は50,924か所(令和6年末現在・厚生労働省「衛生行政報告例」)。就業している柔道整復師は78,666人で、調査開始以降で最多です
- 整形外科を標榜する一般診療所は12,298施設(令和5年10月1日現在・厚生労働省「医療施設調査」。診療科目別の重複計上で、一般診療所104,894施設の11.7%)
数え方が違う(施術所は実数、診療科目は標榜科の重複計上)ので単純な比較はできませんが、街で目にする数としては、整骨院・接骨院のほうがはるかに多いという事実は押さえておいてよいと思います。近所で見かけやすいほうが「近いから行く」対象になりやすく、選んだというより、目に入ったから入ったということが起こります。
ちなみに、はり及びきゅうを行う施術所は35,494か所、あん摩・マッサージ・指圧を行う施術所は17,531か所です(いずれも令和6年末現在)。
よくある誤解は?
「保険証が使えたのだから、医療機関と同じ」——同じではありません。
使えたのは療養費の受領委任という仕組みによるもので、対象はけが(外傷性が明らかな骨折・脱臼・打撲・捻挫)に限られます。診断も、投薬も、画像検査も、制度上そこには含まれていません。
「整骨院はレントゲンを撮ってくれた」——施術所では撮れません。
診療放射線技師法第24条により、放射線を人体に照射できるのは医師・歯科医師・診療放射線技師だけです。撮影を受けた記憶があるなら、それは併設または紹介先の医療機関で受けたものです。
「肩こりでも保険が効くと言われた」——保険の対象外です。
厚生労働省は単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象にならず、全額自己負担になると明記しています。「肩こり」を別の傷病名にして請求されていないか、支給申請書に署名するときに確認してください。
「骨折かもしれないから、まず整骨院へ」——順番が逆です。
柔道整復師法第17条により、骨折・脱臼の患部への施術は応急手当を除いて医師の同意が必要です。骨折・脱臼が疑われる状況では、先に医師の診察を受けるのが制度の想定する順序です。
「整体もカイロも国家資格」——国家資格の制度はありません。
国家資格があるのは、医師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師です。「整体」「カイロプラクティック」という名称そのものには、資格の裏づけがありません。 資格表記の一般的な読み方は「専門医」「指導医」「認定医」の違いって?も参考になります。
「良くならないけれど、通い続ければそのうち治る」——通知が中止を求めています。
医事第58号は、症状が軽減、消失しない場合には潜在的に器質的疾患を有している可能性があるので、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けることとしています。これは厚生省(当時)が示した指示であって、一施設の意見ではありません。
結局、どう使い分ければいい?
制度の側から整理すると、確認する順番は次のようになります。
- 「いつ、どこで、どうして痛めたか」が言えるか。 これが言えるけが(外傷性)かどうかが、そもそもの分かれ目です。思い当たる出来事がないのに痛む、だんだん強くなる、朝に強い——といった経過は、けが以外の原因を考える必要があります
- 骨折・脱臼が疑わしいときは、先に医師にかかる。 変形している、体重をかけられない、腫れが強い、しびれがある——といったときは、画像で確かめられるところに行くのが先です。柔道整復師の側も、応急手当を超えて患部に施術するには医師の同意が要ります
- 通っているのに良くならないなら、いったん止めて医療機関で調べる。 これは通知が求めていることでもあります。「もう少し通えば」と思っているうちに時間が過ぎるのが、いちばん避けたい形です
- 同じけがで、医療機関と施術所を同時にかけもちしない。 健康保険の上では成り立ちません。どちらかに決めるか、切り替えるときは前の医療機関に伝えてください
- 支給申請書に署名する前に、何のけがとして請求されているかを見る。 受領委任では、患者本人の署名で請求が行われます。身に覚えのない部位や回数が書かれていないかを確認してください
- 薬・診断書・画像・手術が必要な場面は、整形外科。 職場や学校に出す診断書、保険会社に出す書類も医師でなければ書けません
自分の住む地域でどこに行けるかを探す段階になったら、この記事の冒頭に置いたエリア別の整形外科の記事か、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)で診療科・診療時間から絞り込めます。夜間や休日に痛めたときの行き先は夜間や休日に具合が悪くなったら、どこへ行けばいい?、大きな病院で検査が必要になったときの手順は紹介状(診療情報提供書)はなぜ必要?にまとめています。
監修者からのひとこと
外来で「実はずっと整骨院に通っていまして……」と、申し訳なさそうに切り出す方がいます。私はそれを責めるつもりはまったくありません。 通って楽になったという方は実際に大勢いますし、近くて通いやすいというのは、続けるうえで小さくない価値です。
ただ、ひとつだけお願いしたいことがあります。「通っているのに良くならない」が2〜3週間続いたら、一度だけでいいので画像を撮らせてください。 打撲や捻挫として様子を見ていたものが、撮ってみると骨折だった、という経験は、整形外科の医師なら誰しも持っています。とくに高齢の方と、成長期のお子さんは、外から触った感触と中の状態が一致しないことがあります。
そしてもうひとつ。骨折や脱臼のときに医師の同意が要るというのは、医師の権限を守るための決まりではありません。 中がどうなっているかを確かめてから手当てを始めましょう、という順序の話です。その順序さえ守っていただければ、どちらに通うかは、生活に合うほうを選んでいただいて構わないと思っています。
よくある質問
Q. 整形外科と整骨院・接骨院は、何が違うのですか。
A. 整形外科は医師が診療を行う診療科で、診断・投薬・手術・画像検査を行えます。整骨院・接骨院は柔道整復師が施術を行う「施術所」で、柔道整復師法第2条第2項がこれを定めています。柔道整復師法第16条は、柔道整復師が外科手術を行い、または薬品を投与し、もしくはその指示をする等の行為をしてはならないと定めており、薬の処方や手術は制度上できません。施術所は医療法上の病院・診療所ではありません。
Q. 整骨院・接骨院で健康保険が使えるのは、どんなときですか。
A. 厚生労働省は、整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術を受けた場合に保険の対象になると説明しています。通知はこれを「外傷性が明らかな」ものに限り、内科的原因による疾患は含まれないとしています。外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態で、損傷が慢性に至っていないものを指します。
Q. 骨折や脱臼のとき、先に整骨院に行ってもいいのですか。
A. 柔道整復師法第17条は、柔道整復師は医師の同意を得た場合のほか、脱臼または骨折の患部に施術をしてはならないと定めています。ただし応急手当をする場合はこの限りではありません。厚生労働省の通知は、応急手当後の施術については医師の同意が必要であるとしています。制度の想定する順序は、医師の診察が先です。
Q. 肩こりや腰のだるさで整骨院に通うと、保険は使えますか。
A. 使えません。厚生労働省は、単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象にならず、このような症状で施術を受けた場合は全額自己負担になると明記しています。通知も、単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は療養費の支給対象外であるとしています。
Q. 整形外科に通いながら、同じけがで整骨院にも通えますか。
A. 健康保険の上では成り立ちません。厚生労働省は、保険医療機関(病院、診療所など)で同じ負傷等の治療中は、施術を受けても保険等の対象にならないと説明しています。通知も、入院中の患者に対する施術は支給対象としないとしています。切り替えたいときは、いま診てもらっている医療機関に伝えたうえで判断してください。
Q. 整骨院でレントゲンやMRIは撮ってもらえますか。
A. 撮れません。診療放射線技師法第24条が、医師、歯科医師または診療放射線技師でなければ放射線を人体に対して照射する業をしてはならないと定めており、柔道整復師はこれに含まれないためです。画像で確かめる必要があるときは、医療機関を受診することになります。
Q. 同意をもらう医師は、整形外科の医師でないとだめですか。
A. 通知は、施術につき同意を求める医師は必ずしも整形外科、外科等を標榜する医師に限らないとしています。同意は患者を診察したうえで書面または口頭により与えられることを要するとされているので、かかりつけの医師に診てもらったうえで相談する形でも差し支えありません。かかりつけ医を持つ意味は「かかりつけ医」を持つと何がいいの?にまとめています。
Q. 「整体」や「カイロプラクティック」は、整骨院とどう違うのですか。
A. 整骨院・接骨院は柔道整復師という国家資格者の施術所ですが、「整体」「カイロプラクティック」という名称には対応する国家資格の制度がありません。健康保険(療養費)の対象にもなりません。厚生省(当時)の平成3年の通知は、カイロプラクティック療法について、医学的効果の科学的評価は未だ定まっていないという研究会の認識を示したうえで、禁忌とすべき疾患、頚椎への急激な回転伸展操作(スラスト法)の禁止、症状が軽減・消失しない場合は施術を中止して速やかに医療機関で精査を受けることを求めています。
出典・参考文献
(いずれも2026年9月21日に内容を確認しました。療養費の記載は令和8年6月1日改正までの通知に基づいています。)
- 厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」(「柔道整復師の施術を受けられる方へ」=保険の対象となる負傷の範囲/骨折・脱臼は緊急の場合を除きあらかじめ医師の同意が必要/単なる肩こり・筋肉疲労は対象外で全額自己負担/償還払いと受領委任の関係/支給申請書への患者の署名/保険医療機関で同じ負傷等の治療中は対象にならないこと。あわせて、はり・きゅう、マッサージの療養費に医師の同意書または診断書が必要であること)
- 厚生労働省北海道厚生局「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」(留意事項通知の現行条文の抜粋。第1の5〈療養費の支給対象となる負傷は外傷性が明らかな骨折・脱臼・打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれない/外傷性とは関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態で、慢性に至っていないもの〉・第1の6〈単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は支給対象外〉・第1の7〈柔道整復の治療を完了して単にあんまのみを必要とする患者への施術は支給対象外〉・支給対象外となる場面〈入院中/保険医療機関で同じ負傷を治療中〉。留意事項通知の最終改正は令和6年11月29日と記載)
- 厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」(平成9年4月17日保険発第57号)(第1の2〈応急手当後の施術は医師の同意が必要〉・第1の3〈同意は患者を診察した上で書面又は口頭により与えられることを要する/同意を求める医師は必ずしも整形外科、外科等を標榜する医師に限らない〉・第1の4〈現に医師が診療中の骨折又は脱臼〉・第1の9〈保険医療機関に入院中の患者の後療〉。このデータベースの本文は第1の5が改正前の文言のままなので、支給対象の現行の文言は前掲の厚生局資料で確認した)
- 厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の改定等について」(算定基準・留意事項等の改正通知の一覧。直近の改正は令和8年6月1日〈保発0601第4号・保医発0601第1号〉で、第1の通則1〜12は改正の対象になっていない)
- 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)(e-Gov法令検索)(第2条〈柔道整復師・施術所の定義〉/第15条〈業務の禁止〉/第16条〈外科手術、薬品投与等の禁止〉/第17条〈施術の制限=脱臼・骨折の患部への施術と医師の同意、応急手当の例外〉/第24条〈広告の制限と、技能・施術方法・経歴にわたってはならない旨〉)
- 医師法(昭和23年法律第201号)第17条(e-Gov法令検索)(「医師でなければ、医業をなしてはならない」)
- 医療法(昭和23年法律第205号)(e-Gov法令検索)(第1条の5〈病院・診療所の定義〉/第3条第1項〈病院又は診療所に紛らわしい名称の禁止〉)
- 診療放射線技師法(昭和26年法律第226号)第24条(e-Gov法令検索)(「医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第2条第2項に規定する業をしてはならない」)
- あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)(e-Gov法令検索)(第1条〈免許〉/第12条〈第1条に掲げるものを除くほか、医業類似行為を業としてはならない。柔道整復については柔道整復師法の定めるところによる〉)
- 厚生労働省「医業類似行為に対する取扱いについて」(平成3年6月28日医事第58号)(記の1〈あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復の免許/それ以外の医業類似行為と届出/人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象〉/記の2〈カイロプラクティック療法の医学的効果の科学的評価は未だ定まっていない/禁忌対象疾患/スラスト法の禁止/症状が軽減・消失しない場合は施術を中止して速やかに医療機関で精査/誇大広告の規制〉)
- 厚生労働省「柔道整復師法第二十四条第一項第四号の規定に基づく柔道整復の業務又は施術所に関して広告し得る事項」(平成11年厚生省告示第70号)(広告し得る7事項。「ほねつぎ(又は接骨)」/「医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)」ほか)
- 厚生労働省「柔道整復師法第二十四条第一項第四号の規定に基づく柔道整復の業務又は施術所に関して広告し得る事項の一部を改正する件について」(平成28年6月29日医政発0629第3号)(届出をした旨を広告可能事項に追加した理由=消費者が施術所を選ぶ際に届出の有無を見分けることは困難/法及び告示に定める事項以外の広告は法違反であること)
- 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(令和6年末現在・就業柔道整復師78,666人/柔道整復の施術所50,924か所/はり及びきゅうを行う施術所35,494か所/あん摩、マッサージ及び指圧を行う施術所17,531か所)
- 厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(表6 診療所の診療科目別にみた施設数〈重複計上〉。令和5年10月1日現在・一般診療所総数104,894施設のうち整形外科12,298施設〈11.7%〉)
- 公益社団法人日本整形外科学会「整形外科のかかりかた」(整形外科は運動器の機能的改善を重要視して治療する外科であること/運動器の範囲/扱う疾患の広がり)
- 厚生労働省「医療情報ネット(ナビイ)」(診療科目・診療時間などから全国の医療機関を検索できる)
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