令和7年転職者実態調査とは何か?いつ公表されたか?
厚生労働省が2026年9月25日に公表した、転職者を受け入れた事業所側と転職者本人の両面から就業実態を調べる統計で、前回は令和2(2020)年に実施されている。産業別の集計があり、「医療,福祉」について中途採用の実態を全産業と比べられる。本記事では、このうち産業別に公表されている事業所調査の数値だけを使う。
調査時点は令和7(2025)年10月1日で、常用労働者5人以上の事業所から抽出した17,354事業所(有効回答9,154・52.7%)と、そこで働く転職者13,975人(有効回答7,310人・52.3%)が対象(出典:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」令和8年9月25日)。
数字を読む前に、定義を押さえておきたい。この調査の「転職者」は、短時間労働者を除く一般労働者(いわゆるフルタイム)のうち、雇用期間の定めが無いか1年以上の期間を定めて雇われ、雇われる前の1年間に他企業での雇用経験がある人で、令和6年10月1日〜令和7年9月30日に採用された人を指す。パート勤務の看護師や、学生アルバイトだけの経験者は含まれない(出典:同概況「主な用語の定義・解説」)。
「医療,福祉」は転職者をどれだけ受け入れているか?
転職者がいる事業所の割合は48.8%、在籍する一般労働者に占める転職者の割合は8.8%で、どちらも産業計(38.2%・6.4%)を上回り、16産業中3位だった。1年以上の有期雇用で入った転職者がいる事業所の割合は20.3%で、16産業の中で最も高い。
| 指標 | 医療,福祉 | 産業計 |
|---|---|---|
| 転職者がいる事業所の割合 | 48.8% | 38.2% |
| うち雇用期間の定め無しの転職者がいる | 41.5% | 33.4% |
| うち1年以上の有期雇用の転職者がいる | 20.3% | 11.0% |
| 一般労働者に占める転職者の割合 | 8.8% | 6.4% |
| 転職者のうち有期(1年以上)の割合 | 25.9% | 24.5% |
(出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査 事業所調査 1 転職者の状況」表1・表2)。割合の分母は「一般労働者がいる事業所」と「在籍する一般労働者」である。
「医療,福祉」は事業所数で全体の16.0%、一般労働者数で15.5%を占める。規模の大きい産業で転職者比率が高いということは、中途採用の市場で医療機関と介護事業所が競り合う相手が多いことを意味する。なお、産業計の転職者割合は令和2年調査の7.2%から6.4%に下がっているが、概況は産業別の前回値を載せていないため、「医療,福祉」が5年前より増えたか減ったかはこの資料からは言えない。
医療機関は転職者を採用するとき何を重視しているか?
最も多いのは「人員構成の歪みの是正」で54.2%と、産業計の48.3%を上回る。逆に「既存事業の拡大・強化」は29.7%で、産業計の39.5%より10ポイント近く低い。事業を広げるための採用より、欠けた年齢層や職種を埋める採用が中心だと読める。
「組織の活性化」も36.8%で、産業計31.7%より高い。「特に意識しなかった」は8.9%と、産業計(9.0%)とほぼ同じだった(出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査 事業所調査 2 転職者の採用状況」表3)。
職種別の採用理由は産業別に分かれていないが、全産業の「専門的・技術的な仕事」(医師・薬剤師・看護師を含む区分)では「経験を活かし即戦力になるから」が64.1%、「専門知識・能力があるから」が51.2%、「離職者の補充のため」が44.3%だった(同表4)。医療・福祉に限った値ではない点に注意したい。
転職者の賃金は何を基準に決まっているか?
「医療,福祉」で最も多いのは「これまでの経験・能力・知識」の66.9%で、次が「免許・資格」の62.0%。免許・資格の割合は産業計(30.6%)の約2倍で、16産業の中で最も高い。一方で「前職の賃金」と「年齢」は産業計より低い。
| 要素 | 医療,福祉 | 産業計 |
|---|---|---|
| これまでの経験・能力・知識 | 66.9% | 59.2% |
| 免許・資格 | 62.0% | 30.6% |
| 賃金の世間相場 | 32.9% | 34.2% |
| 年齢 | 26.3% | 35.3% |
| 前職の賃金 | 19.8% | 27.0% |
| 学歴 | 16.9% | 12.0% |
(出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査 事業所調査 2 転職者の採用状況」表5)
医療・福祉の中途採用では、前の勤め先でいくらもらっていたかより、資格と経験年数で給与を決める事業所が多い。候補者から見れば、資格手当や経験加算の基準がはっきりしている事業所ほど条件を比べやすい。求人票に「経験・資格を考慮」とだけ書くより、加算の考え方を示した方が応募者との認識のずれを減らせる、というのが編集部の見方である。
入職後の教育訓練はどの程度行われているか?
転職者に教育訓練を実施した事業所は84.4%で、産業計の82.6%をやや上回る。中身では、計画的なOJTは78.1%と産業計(79.8%)並みだが、職場を離れて行うOFF-JTは69.7%、その中の「入職時のガイダンス」は61.5%で、いずれも産業計(64.5%・53.9%)より高い。
一方、転職者に教育訓練を実施しなかった事業所も14.4%ある(出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査 事業所調査 3 転職者に対する教育訓練の実施状況」表6)。経験者採用でも、院内の手順や電子カルテ、感染対策のルールは施設ごとに違う。受け入れ側が「経験者だから教えなくてよい」と考えるかどうかが、この14.4%に表れているとみられる。
今後3年間、医療・福祉は中途採用を続けるのか?
今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は68.4%で、産業計の63.6%より高い。ただし採用予定のある事業所のうち「転職者を優先したい」は36.9%で、産業計(40.0%)より低く、「どちらとも言えない」が53.0%と半数を超える。
「新規学卒者を優先したい」は10.2%(産業計9.8%)だった。中途採用の意向は強いものの、新卒か中途かを決めずに両方から人を集めている事業所が多い(出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査 事業所調査 4 今後3年間の転職者の採用予定」表7)。採用予定が「ない」は7.4%、「未定」は23.7%である。
この調査から言えないことは何か?
確定しているのは、上記の数値が令和7年10月1日時点の標本調査の推計値だということまでである。次の点はこの資料からは判断できないため、数値を自院の判断材料にする際は区別しておきたい。
- 病院・診療所だけの値ではない。「医療,福祉」は日本標準産業分類の大分類で、介護・障害福祉・保育などの事業所を含む合算値である
- 短時間労働者は含まれない。パート勤務での入職は「転職者」の定義から外れる
- 職種別×産業別の集計は概況に無い。医師・看護師・薬剤師それぞれの数値ではない
- 個人調査(離職理由・賃金の変化・満足度など)は、概況では産業別に公表されていない。本記事では使っていない
- 令和2年調査との産業別比較は概況に無い。5年間の増減は産業計でしか言えない
また概況は、四捨五入のため内訳の和が計に一致しないこと、複数回答では内訳の和が計を超えることを注意書きしている(出典:同概況「利用上の注意」)。
自院の中途採用にどう活かせるか?
全産業平均より中途採用が多い業界である以上、採用の成否は「条件の比べやすさ」と「入職直後の立ち上がり」で差がつく。調査結果から見える点を、事務長が確認できる順に並べると次のとおり。
- 給与の決め方を言語化する。資格・経験で決める事業所が多い業界なので、資格手当と経験年数の加算基準を就業規則や求人票で示せるかを点検する
- 採用の目的を「欠員補充」だけにしない。人員構成の是正が最多だった。年齢層・職種の偏りを表にし、どこを埋める採用かを面接担当と共有する
- 入職時ガイダンスを型にする。経験者向けでも、院内ルールと記録方法の説明は省かない。初日と1か月後のチェック項目を決めておく
- 採用単価を並べて見る。紹介経由と直接応募の比率を把握する。人材紹介の手数料率と開示義務については看護師・医師の紹介手数料は何%かで整理している
入職と離職の全体の動きは、同じ厚生労働省の雇用動向調査で見られる。「医療,福祉」の一般労働者が離職超過に転じた令和7年の結果は「医療,福祉」の常勤が離職超過に転じた──令和7年雇用動向調査を採用計画にどう落とすかで解説した。転職者実態調査は「誰を・どう採って・どう育てたか」、雇用動向調査は「どれだけ入って・辞めたか」を見る統計として併せて使える。
よくある質問
転職者実態調査の「医療,福祉」には病院だけが入っているのか?
入っていない。日本標準産業分類の大分類「医療,福祉」で、病院・診療所・歯科診療所のほか、介護事業所や社会福祉施設なども含む合算値である。
パート勤務で入職した看護師は「転職者」に数えられているか?
数えられていない。この調査の転職者は短時間労働者を除く一般労働者(フルタイム)に限られ、雇用期間の定めが無いか1年以上の期間を定めて雇われた人が対象である。
医療・福祉の転職者の賃金は前職より上がっているのか?
本記事で用いた概況には、個人調査の賃金の変化を産業別に示した表が無いため、この資料からは判断できない。事業所調査では、賃金決定の際に「前職の賃金」を考慮した事業所は19.8%で、産業計(27.0%)より低かった。
次回の転職者実態調査はいつか?
本記事で参照した概況には、次回の実施時期の記載は無い。今回(令和7年)の前回調査は令和2年である。
参考資料
- 厚生労働省 / 令和7年転職者実態調査(結果の掲載ページ) / 令和8年9月25日公表 / https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r07.html / 確認日:2026年9月25日
- 厚生労働省 / 令和7(2025)年転職者実態調査の概況 / 令和8年9月25日 / https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-gaikyo.pdf / 確認日:2026年9月25日
- 厚生労働省 / 令和7年転職者実態調査 事業所調査「1 転職者の状況」(表1・表2) / 令和8年9月25日 / https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-1-01.pdf / 確認日:2026年9月25日
- 厚生労働省 / 令和7年転職者実態調査 事業所調査「2 転職者の採用状況」(表3〜表5) / 令和8年9月25日 / https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-1-02.pdf / 確認日:2026年9月25日
- 厚生労働省 / 令和7年転職者実態調査 事業所調査「3 転職者に対する教育訓練の実施状況」(表6) / 令和8年9月25日 / https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-1-03.pdf / 確認日:2026年9月25日
- 厚生労働省 / 令和7年転職者実態調査 事業所調査「4 今後3年間の転職者の採用予定」(表7) / 令和8年9月25日 / https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-1-04.pdf / 確認日:2026年9月25日
※本記事の数値はすべて上記の概況(事業所調査)の記載による。統計表(Excel)や e-Stat の詳細表は参照していない。



