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クリニックの最低賃金、令和8年度は全国平均1,177円に? 時給・月給職員の確認点と手当の扱い
経営・集患 公開 執筆 鎌形 博展

クリニックの最低賃金、令和8年度は全国平均1,177円に?時給・月給職員の確認点と手当の扱い【2026年版】

厚生労働省は2026年9月3日、令和8年度の地域別最低賃金を発表しました。全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円の引上げです(厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金の概要」)。発効日は都道府県ごとに異なり、令和8年10月1日から12月2日まで順次となっています。時給のパート職員が多いクリニックでは、時給だけでなく、月給や日給の職員も含めて最低賃金額以上かどうかを確かめる必要があります。この記事では、一次情報で確認できた金額と発効日、手当の扱い、月給の換算方法を整理します。

この記事の要点

  • 令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(56円増)。東京は1,280円、大阪は1,231円、全国で最も低い宮崎は1,085円です。
  • 発効日は10月1日から12月2日まで都道府県ごとに違います。診療所の所在地の額と発効日を、厚生労働省の全国一覧で確認します。
  • 通勤手当・精皆勤手当・家族手当・賞与・割増賃金などは比較に入れず、残りを時間額に換算して比べます。下回る部分は、本人が合意していても無効です。

最低賃金とは?地域別最低賃金と特定最低賃金の違い

最低賃金制度は、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低限度を定める制度です。使用者は、労働者に最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(最低賃金法第4条第1項。厚生労働省「最低賃金制度とは」)。最低賃金には、都道府県ごとに定める地域別最低賃金と、特定の産業を対象にした特定(産業別)最低賃金の2種類があります。

この記事で扱うのは、毎年秋に改定される地域別最低賃金です。診療所や病院の職種が、どの特定最低賃金の対象になるかは、確認できた資料の範囲では判断できませんでした。特定最低賃金が関係しそうな場合は、管轄の都道府県労働局に確認してください。

令和8年度の地域別最低賃金はいくらに?主要都道府県の額

厚生労働省の発表では、全国加重平均は1,177円(前年度1,121円)、引上げ額は56円です。昭和53年度に目安制度が始まって以降、2番目の高さとされています。全47都道府県で54円から65円の引上げとなりました。最高額は1,280円、最低額は1,085円です。主要な都道府県の額は次のとおりです。

都道府県時間額引上げ額発効日
北海道1,131円56円令和8年10月1日
宮城1,098円60円令和8年10月1日
埼玉1,196円55円令和8年10月1日
千葉1,195円55円令和8年10月1日
東京1,280円54円令和8年10月1日
神奈川1,279円54円令和8年10月1日
愛知1,195円55円令和8年10月1日
大阪1,231円54円令和8年10月1日
兵庫1,172円56円令和8年10月1日
福岡1,114円57円令和8年10月4日
宮崎(全国で最も低い額)1,085円62円令和8年10月24日
沖縄1,086円63円令和8年12月2日

上の表は厚生労働省の「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」から抜き出したものです。上記以外の都道府県の額は、全国一覧で確認してください。

同じ一覧で引上げ率を見ると、全国加重平均は5.0%です。東京は4.4%、大阪は4.6%と相対的に小さく、沖縄は6.2%、佐賀は6.3%(引上げ額65円で全国で最も大きい)と、地方のほうが率は高くなっています。引上げ額そのものは、東京と大阪が54円、沖縄が63円と、地方のほうが大きくなっています。診療所の所在地の額を基準に、自院の賃金テーブルとの差を見てください。

発効日はいつ?都道府県ごとに10月1日から12月2日まで

地域別最低賃金の発効日は、都道府県労働局長が決定するため、都道府県ごとに異なります。厚生労働省の全国一覧では、東京・大阪など10月1日に発効する都府県が多い一方、京都は11月16日、佐賀は11月15日、岩手と熊本は12月1日、沖縄は12月2日となっています。この記事の公開日(2026年10月23日)の時点で、すでに発効している都道府県と、これから発効する都道府県の両方があります。

新しい額が適用されるのは、診療所の所在地の都道府県の発効日からです。給与の締め日・支払日と発効日の関係で迷う場合は、都道府県労働局または労働基準監督署に確認してください。

最低賃金の比較に入れる賃金・入れない賃金は?

最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。次の賃金は、最低賃金の比較には算入しません(厚生労働省「対象となる賃金は?」)。

  • 臨時に支払われる賃金(例:結婚手当)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(例:賞与)
  • 所定労働時間を超える労働に対する賃金(例:時間外割増賃金)
  • 所定労働日以外の労働に対する賃金(例:休日割増賃金)
  • 午後10時から午前5時までの労働に対する賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(例:深夜割増賃金)
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

一方、厚生労働省の確認方法のページには、通勤手当と時間外手当を除いて計算し、職務手当は算入する月給の例が載っています。手当の名称ではなく、上の除外のどれに当たるかで判断します。

なお、名称が「手当」であっても、毎月固定で支払うものは、上の除外に当たらなければ算入の対象になります。賃金明細の手当を一つずつ見て、どれを除くかを決めてください。

月給・日給の職員は、どう時間額に換算して確認する?

最低賃金は時間額で定められているため、時給以外の職員は時間額に換算して比べます。厚生労働省の確認方法のページでは、次のように示されています。

  • 時給:時給が最低賃金額以上であること
  • 日給:日給を1日の所定労働時間で割った額が、最低賃金額以上であること
  • 月給:算入しない手当を除いた月給を、1か月平均の所定労働時間で割った額が、最低賃金額以上であること。1か月平均の所定労働時間は、年間の所定労働日数と1日の所定労働時間から出す
  • 出来高払いなどの場合:その期間の賃金総額を総労働時間で割った額が、最低賃金額以上であること

具体例で確認します(数字はこの記事で設定した例です)。東京都の診療所で、基本給18万円と職務手当3万円の合計21万円を支払い、通勤手当は別に支給しているとします。年間の所定労働日数が250日、1日の所定労働時間が8時間なら、年間の所定労働時間は2,000時間です。21万円×12か月÷2,000時間で、時間額は1,260円になります。

この職員は、前年度の東京の1,226円は上回っていましたが、令和8年度の1,280円は下回ります。1,280円を満たすには、算入する月給が約21万3,400円(1,280円×2,000時間÷12か月)以上必要です。月給の職員は、時給の職員より気づきにくい点に注意が必要です。

日給の職員も同じ考え方です。たとえば日給9,000円で、1日の所定労働時間が7時間なら、9,000円÷7時間で時間額は約1,286円です。東京の1,280円は上回りますが、差は6円しかありません。日給が8,800円なら約1,257円となり、東京の額を下回ります。

診療所は、どの順番で確認すればよい?

最低賃金の確認は、次の順番で進めると抜けが出にくくなります。

  • 診療所の所在地の都道府県の額と発効日を、厚生労働省の全国一覧で確認する。複数の都道府県に診療所がある場合は、所在地ごとに確認する
  • 時給・日給・月給・出来高払いなど、賃金の形態ごとに職員を分けて一覧にする
  • 算入しない手当(通勤手当・精皆勤手当・家族手当・賞与・割増賃金など)を除いた額を出す
  • 形態ごとの換算方法で時間額にして、新しい最低賃金額と比べる
  • 下回る職員、または差が小さい職員を洗い出し、見直しの要否を決める

適用の考え方に迷うときは、都道府県労働局に確認してください。厚生労働省は、最低賃金額以上かどうかを確かめる「最低賃金に関するセルフチェックシート」(Excel)も公開しています。

最低賃金を下回っていたらどうなる?

最低賃金を下回る賃金で労使が合意しても、下回る部分は無効です。無効になった部分は、最低賃金と同じ額を定めたものとみなされ、不足があれば差額を支払う必要があります(最低賃金法第4条第2項。厚生労働省「最低賃金制度とは」)。

罰則もあります。地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられることがあります(最低賃金法第40条)。特定最低賃金額を下回った場合は、30万円以下の罰金とされています(労働基準法第120条。大阪労働局の案内による)。罰則の適用は個別の事情によるため、実際の判断は労働基準監督署に確認してください。

地域別最低賃金は毎年度改定されるため、賃金規程や労働条件通知書に時給額を固定で書いている場合は、改定のたびに見直しが必要になります。

人件費の面では、最低賃金に合わせて新人の時給を上げると、勤続の長い職員との差が縮まります。賃金テーブル全体の見直しは、関連コラムの人件費・人材定着の記事も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 通勤手当や賞与は、最低賃金の比較に含めてよい?

含めません。通勤手当、精皆勤手当、家族手当、賞与(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)、時間外・休日・深夜の割増賃金などは、最低賃金の比較には算入しない賃金です(厚生労働省「対象となる賃金は?」)。

Q. 本人が納得していれば、最低賃金を下回る時給でもよい?

よくありません。労使が合意しても、最低賃金を下回る部分は無効です。無効になった部分は最低賃金と同じ額を定めたものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。

Q. 月給の職員も確認が必要?

必要です。月給は、算入しない手当を除いたうえで、1か月平均の所定労働時間で割って時間額に換算し、最低賃金額と比べます。日給の職員は、日給を1日の所定労働時間で割って比べます。

Q. 違反すると罰則はある?

地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者は、50万円以下の罰金に処せられることがあります(最低賃金法第40条)。あわせて、不足している差額の支払いも必要です。

Q. 発効日の前に、新しい額へ引き上げる必要はある?

新しい額が適用されるのは、各都道府県の発効日からです。発効日の前に引き上げる必要があるかどうかを定めた記載は、確認できた資料にはありませんでした。給与の締め日・支払日との関係で迷う場合は、労働局に確認してください。

今すべきこと(チェックリスト)

  • 診療所の所在地の都道府県について、令和8年度の最低賃金額と発効日を、厚生労働省の全国一覧で確認する
  • 時給・日給・月給のすべての職員について、算入しない手当を除いて時間額に換算し、新しい額と比べる
  • 下回る職員がいる場合は、発効日までに賃金額の見直しを検討する
  • 賃金を見直したら、労働条件通知書や賃金規程の記載を現在の額に合わせる
  • 判断に迷う手当や締め日の扱いは、労働局・労働基準監督署または社会保険労務士に確認する

関連コラム

参考・出典

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の賃金設定や法令適用の判断を保証するものではありません。実際の賃金の見直しにあたっては、管轄の都道府県労働局・労働基準監督署および社会保険労務士等の専門家に必ずご確認ください。数値・制度は2026年10月時点の情報に基づきます。

公開日:2026年10月23日/最終更新日:2026年10月23日

執筆者

鎌形 博展(かまがた ひろのぶ)/ 株式会社EN 代表取締役社長。クリニックの開業支援・事務長代行・医業承継(M&A)をワンストップで手がける株式会社ENを率いる。制度改正が相次ぐ医療業界において、開業・承継の実務に精通した立場から現場に即した情報発信を行っている。
医療法人社団季邦会 理事長(首都圏7拠点運営)、東京医科大学救急災害医学講座 非常勤医師
社会医学系専門医指導医、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 田中滋・中村洋ゼミ出身

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